サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。 作:青いカンテラ
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「―――それじゃあ、オリジナル武器一つで……八百円になるわね」
「はい」
エミさんがアンティーク調なレジで会計をしている。その所作だけでも絵になるというか、大人な女性の気品を感じるなあ。
ちなみにビルダーズパーツは全て一律八百円や。これを割高と感じるかお得と感じるかは人によるやろうけど、ウチとしてはパーツのクオリティに対してこの値段設定はかなりお得やと思う。
「ミオは何を買ったん?」
「ボクはこれだよ。二つの実体剣がセットになってるんだ。それでこの二つは組み合わせると大剣になって、さらに開閉ギミックで敵を挟めるっていう武器」
ミオなに買ったものを見せてもらう。それは、峰の部分に鋭いトゲのようなパーツが等間隔で付けられとる大振りの片刃剣やった。
二つを組み合わせれば開閉ギミックのある大剣になり、峰のトゲは相互に噛み合うことでがっちりと固定される。そしてこのトゲは、開閉ギミックで敵を挟み込んだ時に食い込んで逃がさん役目もあるみたいやな。
「これ、ツインメイスの代わりにしようかと思って。ハサミにすれば、挟んだ敵をそのまま潰すこともできるし」
「なんや、やたらと殺意の高い武器やな……」
「武器はこれくらい厳ついほうがいいよ。見ただけでも威圧感があるし」
そうかな……そうかも。迷いのない目で力説されると、妙に納得してしまう。それにしても威圧感、威圧感かあ。確かに戦いやとそういうのも必要かもな。
名前は……スパダ……スパダ・スピーナ? スマホで調べてみると、どうやら『茨の剣』という意味になるらしい。剣の峰にあるトゲは、言われてみれば茨のトゲトゲっぽい気もする。
「そういうマキナもいくつも買ってたけど、何を買ったの?」
「ウチはミオに選んでもらったのと、後はこれやで」
取り出して見せたのは、長身のライフルに巨大なハサミがくっ付いた武器。一発ズドンとイケる武器としてはしっくりこんかったけど、シャルトーネのメインウェポンを更新するという意味ではよさげやったから買ってみた。
フェダーインライフルとハサミの形をしたクローアームユニットが合体した見た目のそれは……。
「……高枝切りバサミ……?」
ミオが微妙な顔をする。確かにパッと見はそう思うよな。ちなみに名前はバストーネ・デッラ・ケーラ。カニバサミの杖というらしい。
エミさん、自作のパーツにはこうやってイタリア語で名前を付けるのが拘りみたいなんよな。せやからパーツを入れてるビニールの小袋の中に、そのパーツの簡単な説明と一緒に名前が書いてあるんよ。
「見た目は高枝切りバサミみたいに見えるけど、れっきとしたライフルやで。マシンガンだけやと射程が不安やったからな。これで射撃能力強化やで!」
「まあ、マキナがそれでいいなら、いいけどさ……」
そう言って肩を竦めるミオ。ウチは買ったパーツを早速シャルトーネに装備させることにした。
今までメインウェポンとして使ってたGNビームマシンガンを、バストーネ・デッラ・ケーラに変更。そして右肩のマウントラッチを取り外して、ミオが選んでくれたシールド型の武器を装備する。
「結構重装備になったね」
「細かい調整は追々するとして、いまはひとまずこれでフル装備ってところやな」
武器を少し変えた。言葉にすればそれだけのことや。でも実際に違う武器を持ったシャルトーネを見ると、結構印象が変わって見える。
「できたー!」
「ミナカは呑み込みが早いし手先も器用ね。HGとはいえ、この短時間で作ってしまうなんて」
作業スペースからミナカとルベリア、それとルヴィーラさんが出てくる。ファントムのキットを、もう組み上げてしまったらしい。
合わせ目消しなどの工作はしていないパチ組みで、たぶん横からルベリアも助けとったんやろうけど、それでも初心者にしてはとんでもなく早い。
「ミナカ、本当にガンプラ初心者か? 組むのめっちゃ早いやん」
「えへへー、ルベリアが助けてくれたからね!」
「
ふーむ、HGとはいえガンプラを手早く組める、か……。これは将来とんでもないビルダーになれるかもしれへんな。
「……まだ時間もあるし、模型部の活動その二を行ってみよか!」
「活動その二?」
「ガンプラを作ったとなれば、次はGBNで遊ぶ! これも立派な部活動!」
まだ生徒会には正式な部活動の内容として申請しとらんけど、まあ大丈夫やろ!
「……GBNするのはいいけど、ミナカの分のダイバーギアはどうするの? ボクら予備は持ってないでしょ」
「あ……」
ミオに言われて固まる。確かに、GBNをするにはダイバーギアが必要や……。どうしようかと思ってた所に、エミさんが助け船を出してくれる。
「ふふ。大丈夫、ダイバーギアならうちのを使えばいいわ」
「これがダイバーギア……。ありがとー!」
「エミさん……。おおきにな!」
「可愛いお客さんのためだもの。これくらいはね?」
ミナカにダイバーギアを渡しながら、エミさんはふんわりと笑う。
「ミナカちゃん、初GBN楽しんでいらっしゃい」
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お店の機器から、GBNへとログインする。ログインポートを抜けた先のセントラルロビーは、今日も行きかうダイバーたちでごった返しとる。
「相変わらず人が多いなあ」
「マキナが一番乗りみたいだね」
しみじみとアクティブ二千万の多さを感じていると、ログインポートからアバター姿のミオが出てきた。
「おー、ミオ。あれ、衣装変わったか?」
「う、うん……。せっかくアバターであれこれと衣装が着れるから、思い切って変えてみた……。どう、かな……?」
そう言って、後ろ手に組んで顔を横に向けながらもチラチラと見てくるミオ。前は暗めの青色のパーカーに同じ色合いのズボンやったけど、今は青を基調として白いアクセントの入っとるドレス姿。
確かにリアルの方やとあまり見んような服装や。前の地味めな感じからするとかなり大胆なイメージチェンジってところやな。
ウチもミニミニスカートなエプロンドレスなんてリアルだと恥ずかしさが勝って着れんけど、GBNやとアバターの衣装としてかわええから着とるしな。
「うん、かわええと思うで!」
「そ、そう? なら、いいかな……へへへ……」
てれてれと笑うミオ。そんな所もかわええなあとは思う。
「二人とも早いのね」
「ルベリアも来たか。後はミナカだけやな」
「あの子は初ログインだし、少し待つことになりそうだね」
やって来たルベリアは変わらずの赤いリボンに赤いドレス姿。赤と青で、後は黄色が揃えば信号機カラーになるな……とかそんなことを考えながら、ミナカが来るのを待つ。
「へへ、お嬢ちゃんGBNは初めてか? ならいいもんがあるぜ……」
「え、いいもんってなに!?」
「いや声デカ。もうちょっと声を小さくしてくれるか?」
待っとったら聞き覚えしかないクソデカボイスが聞こえてくる。そちらを見ると、胡散臭い金髪の男が、黒を基調に所々に金の装飾があしらわれているノースリーブのドレスを着たミナカらしきダイバーに話しかけとった。
「ねぇねぇおじさん、いいものってなーに!?」
「おじ……。いやもうおじさんでいいけど、声のボリューム下げてくれる? ほら、みんなに見られてるからさ……」
……いや、デジャブぅ!
既視感を覚えながらも、ミナカが変なものを押し付けられる前に割って入ろうと走り出した……その直後。金髪男の背後に、ぬっと長身の影が立った。
「―――ヤス? あんた、初心者相手に変な商売しないって誓ったわよねぇ? これで何回目かしらぁ?」
「ひ、ひぇぇぇ!? ご、ごめんなさぁぁぁい!」
その人に凄まれると、胡散臭い金髪男……ヤスはすたこらさっさと逃げ出した。
「まったく……。そこのアナタ。大丈夫だった?」
「うん! 私は大丈夫だよー!」
「あらやだ、とっても元気なのねぇ」
「マギーさーん!」
ヤスを凄みで退散させたその人……引き締まった腹筋を見せるように半ばまでジッパーの下ろされたライダースーツに、赤いジャケットを羽織り、薄い紫色の髪を頭の後ろで一つにまとめているダイバーに、手を振る。
「あら……? マキナちゃんじゃなーい! 久しぶりねえ!」
ミナカのクソデカボイスにもイヤな顔一つせず、にこやかに「とっても元気ね」と言ってのけるその人は、マギーさん。このGBNでは色んな意味で有名なお人や。
「はい、お久しぶりです、マギーさん」
「もうマキナ、急に走り出さないでよ……」
「ここがGBNでよかったわね。ええ、本当にね?」
ミオとルベリアが合流して来る。いや、急に走り出したんは悪かったと思うけど、そのジト目で見てくるのはやめてほしい。
「その子たちは、お友だち?」
「あ、はい。こっちはウチの模型部の部員の、ミオとルベリアです。それで、そっちは新しい部員になった、ミナカって言います」
「どうも……」
「初めまして、マギーお姉さま」
「私はミナカだよー!」
マギーさんに三人を紹介する。ミオは軽く会釈、ルベリアはカーテシーを添えて、ミナカはクソデカボイスで、それぞれ三者三様の対応をした。
「ま、お姉さまだなんて! ルベリアちゃんはお上手ねぇ! ……マキナちゃん、部員が来ないってずっと悩んでたみたいだけど、こんなにも個性的な子たちが部員になってくれたのね……。お姉さんも嬉しいわ!」
「あはは……。まあ、色々とありまして」
何かじんわりと来たらしく、涙を拭う仕草をするマギーさん。ほんまに情に厚いお人やなあ……。たぶん、こういうところが色んな人に好かれてる所なんやろうな。
「ところでマギーさんはいつもの見回りですか?」
「ええ、そうなのよ。ほら、最近はブレイクデカールの件もあって物騒でしょう? だから、初心者や下位ランカーの子たちが変なことに巻き込まれたりしないか目を光らせているのよ」
「ブレイクデカール……」
『ブレイクデカール』の単語が出たあたりで、ミオが苦々しい顔をする。ブレイクデカールやらマスダイバーにはええ印象なんか皆無やからな。こんな表情になるのも仕方ない。
「それを使うマスダイバーって、ボクたちも遭遇しました。けど、そんなに増えてるんですか?」
「あらぁ、アナタたちも会ったことがあるのね……。そうなのよ。ここ最近は特にね。マスダイバーのせいでおかしなバグだって起こってるみたいだし……」
「バグ?」
何となしに呟かれたその単語を、ミオが拾う。バグ。全人類を十分の九とか、なんとかかんとか……というのとは違うのは分かる。
マギーさんが言ってるのは、ゲームの異常な挙動とかの方やろうな。バグなんて、GBNやとそれほど聞くことのない単語ではあるけど……。
それが起こってる? それも、ブレイクデカールを原因にして? ウチらの視線に気づいたマギーさんは、「あらやだ、少し喋りすぎたわねぇ」と口元を手で隠す。
「……アタシは見回りがあるからもう行くけれど、アナタたちもマスダイバーには気つけてね? もし遭遇して、危ない目にあったら……構わず逃げなさい。それか、救難信号を出すのよ。そうすれば、誰かが助けてくれるから。それじゃあね」
そう言って、マギーさんは行きかうダイバーの中へと消えていった。マスダイバーと会ったら逃げろ、か……。ウチの後ろにおる二人がそれを素直に実行するとは到底思えんけどな……。
「それで、どうする? チュートリアル……はウチらは参加できんし」
「せっかく四人いるのだし、フォースを組むというのはどうかしら。GBNではダイバーが集まればフォースを組むものなのでしょう?」
ルベリアがそう提案してくる。確かに、フォースはGBNの醍醐味の一つや。フォースを作っておくことで、フォースバトル、フォースミッションといったものの他に、参加条件のあるフェスなんかにも参加できる。長く遊んでいくつもりなら、まず外せん要素ではあるけど……。
「フォース組むためには、ミナカのダイバーランクをDまで上げんといかんのよな」
「え、私ー?」
フォースはGBNの目玉要素の一つといってもええけど、そのフォースを立ち上げたり入ったりするためには、ダイバーランクがDに到達しているというのが条件になっとる。
このあたり、GBNは他のそういうゲームとは違うところやな。まあ一応はフォースを組めん相手でもチームになることで、一時的に同じミッション受けたりすることはできるようになっとるけど。
そんで、ウチとミオ、ルベリアはダイバーランクがD以上。けど初心者ほやほやのミナカは当然ながらスタートダッシュのFランク。フォースを組むためにはミナカのランクが足りんってことになる。
「なら連戦ミッションでも行かない? これなら臨時のチームを組めば全員が参加できるし、獲得ポイントも結構あるよ」
ミッションを見とったミオが助け船を出してくれる。連戦ミッションならウチら全員で戦えるし、クリアした後にいくつか低難易度のミッションこなせばすぐにDランクにいけるくらいのポイントは獲得できるな。
「ほな、連戦ミッションするかー。ミナカもそれでええか?」
「みんなに任せるよー!」
「それじゃ早速、ミッション受けに行くでー!」
そうしてミッションカウンターに向かおうとすると、ルベリアが違うところを見てることに気がついた。
「……」
「どしたん、ルベリア」
「誰かが見ていたような気がするのだけど……。気のせいみたいね」
―――To Be Continued
ヒロインは
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ヨノモリ・ミオ
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ルベリア・朝日奈・リベロール
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構わん、両方抱け。