サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。   作:青いカンテラ

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「ガンプラバトルをするからには本格的にしなければいけないものね!」

 -03-

 

「模型部に入部希望よ! いいかしら!」

 

 スパァァァン! と勢いよく部室のドアが開かれる。そこにいたのは、車椅子に乗った白髪の女の子やった。

 

「……え、どちらさん?」

 

 思わず言葉が出る。百合星指定の制服を着ているということは、たぶんここの生徒なんやろうけど……こんな子おったかな。

 

 ウチもさすがに百合星の生徒全員を知ってるわけではないけど、それでも車椅子に白髪なんて子がおったらさすがに覚えてると思うねんけど……。

 

(わたくし)としたことが失念していたわね! (わたくし)はルベリア! ルベリア・朝日奈(アサヒナ)・リベロール! 模型部の三人目の部員になりに来たわ!」

「いやまあ、入部希望っていうなら歓迎するけど……その目はどないしたんや?」

 

 ルベリアと名乗った女の子。その両目は閉じられてる。もしウチの思ってる通りなら模型部に入ったとしても、部の活動には参加できない名義貸しの数合わせだと思われてまう可能性が大いにある。

 

「―――ご安心くださいませ、サカイ様。お嬢様はいわゆるア・ル・ビ・ノという体質でして。日の光は目に眩しいので、普段は目を閉じているのですわ」

「どちらさんそのに!」

 

 スッ……とウチの隣にいきなり誰かが現れる。完全な不意打ちな登場の仕方に、全身がびくっと跳ねた。ウチがネコちゃんやったら尻尾の先まで毛が逆立ってるところやで。

 

「もうルヴィーラ、恥ずかしいから言わないでちょうだい」

 

 ポッ、と頬を赤くするルベリア。恥ずかしがるところどこやねん。……出かかった言葉は飲み込んでおく。

 

「……それで、どちらさん?」

「申し遅れました。私は、こちらのルベリアお嬢様の身の回りのお世話をさせていただいております、ルヴィーラと申しますわ。見ての通り、いわゆるメイドというものですの」

「そら見たらわかるけども」

 

 ルベリアの隣に移動したルヴィーラと名乗ったメイドさんは、足首あたりまである長いスカートをつまんで一礼する。いわゆるカーテシーってやつやな。

 

「それで、ルベリアさん? やっけ「ルベリアでいいわよ!」……ルベリアは目は大丈夫ってことやねんな?」

「ええ! それはもうばっちりよ!」

 

 両目はばっちりと閉じたまま、ふんす、と薄い胸を張って見せるルベリア。……問題ないならそれでええけどな。

 

「……あの子、ボクとキャラ被ってない?」

「どこがやねん」

 

 さっきからずっと黙りこくってたミオがそんなボケた発言をしたので、思わずツッコんでもうた。二人の似てる要素どこやねん。髪が銀髪か白髪かくらいしか似てるところないやろ。

 

 

 

 -04-

 

「ところでなんやけど、どうして模型部に?」

 

 丁寧な字で書かれた入部届を受け取って、ふと出てきた疑問を口にする。こういったらアレやけど、別にウチみたいな廃部五秒前みたいなところに来なくても、他によさげな部活はあると思うんやけど。

 

「……お嬢様は高等部に入られてから体調が優れず、これまで自室での療養に充てられていたのですわ。それも先日ようやく外に出られるほどに体調が安定され、今日ここに来たという次第ですの」

 

 なるほど、だから見たことなかったんやな。身体が弱くて体調を崩しやすいからあまり学校にもこれずと。

 

 ……その割にはここに来た時にでかい声出してたりとやたら元気そうやったけど、あれはやっと学校に来れたからテンションが高かったとかそういうあれなんやろか。

 

「事情はなんとなくわかったけど、それは模型部に来る理由にはならないんじゃない?」

「せやんな。わざわざこんな潰れかけの部に来る理由としてはちと弱い気がするわ」

 

 体調崩しやすいならなおのこと、文芸部とかにいった方がええと思うねんけど。あそこなら人も多いしな。

 

(わたくし)、ガンプラバトルがしたいのよ」

 

 棚に飾ってあるガンプラを眺めていた(目を閉じてるせいで見えてるかどうかはわからんけど)ルベリアが、ぽつりと言葉を漏らす。

 

「それもただのガンプラバトルじゃないわ。お互いの身を削り、貪り合うような、そんなバトルよ」

 

 ルベリアがウチらの方を向く。閉じられていた両目は開かれていて、血のように真っ赤な瞳が、日の光を受けて怪しく輝いている。

 

「ルヴィーラ」

「はい。お嬢様」

 

 メイドさんがスマホを操作して、開いた動画を見せてくる。それは、ミオも見ていたあの蛮族令嬢さんのバトル動画やった。画面の中では素組らしいウイングガンダムと、元はジンクスらしい改造ガンプラの2機が激しくぶつかり合っている。

 

(わたくし)は焦がれてしまったの、このお方の熱いガンプラバトルに……」

 

 赤くなった頬を両手で包み込みながら、ルベリアは恍惚とした表情で言う。

 

 ……あかん、ヤバい人が模型部に来てもうたかもしれん。

 

 

 

 -05-

 

『一曲目から全力でぶちかましていくぜ! ハウリングバスターライフル最大出力!』

 

 サリサリとやすり掛けをしながら、G‐Tubeで例の蛮族令嬢さんの動画を流す。あのオーガを倒した時のバトル動画が有名らしいけど、探せば他にも色々と動画が出てきた。

 

 フリーマッチで対戦相手を完膚なきまでにボコボコにしてるやつとか、野良バトルで相手に中指を立てながらボコボコにするやつとか、相方らしいダイバーと組んで数で上回る相手をボコボコにするやつとか。

 

 ……どれもこれもボコボコやな。そしてどれもお口がめっちゃ悪い。煽りもするしジェスチャーもするし戦い方は荒っぽいし。蛮族やん。

 

 ミオが動画見てたし、ルベリアもこれに勇気づけられたとか言ってたから、どんなもんなんかなと思って見たけど、これが今の流行りなんやろか。世紀末かいな。

 

 そういやそのルベリアも、模型部に来れば『本気のガンプラバトル』ができるのよね! と期待してみたいやけど、残念ながらウチの模型部はガンプラバトルはもうできへんのや。

 

 一昔前に流行ってたガンプラを実際に動かして戦わせるガンプラデュエル……GPDの専用筐体、何代か前の部長の頃はあったらしいけど、維持費が高いってんで無くなってもうたんよな。

 

 ルベリアもしょげてたけど、今のガンプラバトルの主流はGBNやって知ったら、GBNがあればガンプラバトルができるのね? とか言ってたけど。なんかやらかしそうな目をしとったな……。あんま変なことでなければええけど。

 

 それにしてもGBNかあ。最後にログインしたのいつだったかな。先輩たちが卒業しはってから、なんとなく遠ざかってたんよな。……先輩たち、元気にしてはるやろか。

 

 っと、そんなこと考えとったら動画が終わってた。やすり掛けもキリのええとこやし、そろそろ寝よかな……。

 

 動画を閉じて、机の上を少し片づけてから布団に入る。そのまま朝までスヤァ……して翌日。部室に行くと、とんでもないことになってた。

 

「な、なんやこれ」

「あ、来たのねマキナ! これでGBNができるわよね!」

「マキナ、なにドアの前で突っ立ってるの? ……って、なにこれ」

 

 あとから来たミオも唖然とした顔をしとる。それもそのはず、部室の中に鎮座していたのは……

 

「ガンプラバトルをするからには本格的にしなければいけないものね! だから取り寄せたわ! GBNを!」

 

 GBN、というか、それをプレイするための筐体。それもガンダムベースでしか見かけないような本格的なタイプ。昨日は影も形もなかったそれを、一晩のうちに運び込んで稼働できる状態にまでしてしまったらしい。

 

「お嬢様の頼みでしたので。頑張りましたわ」

 

 メイドさんが一晩でやってくれました。やないねん! 廃部寸前の弱小模型部にこんな機材持ち込むなんて、学校をどう説得したんや……!

 

「心配には及びません。百合星女学園には、朝日奈財閥よりすでに多額の寄付がされていますの」

 

 いや、学校はよくても模型部顧問のマリエせんせは……!

 

「すでに最高級プリンを賄賂に買しゅ……快くご了承くださいましたわ」

 

 ウチの思考を読んだかのように答えていくメイドさん。それはそれとして思い立ったが即行動なお嬢様の行動力と財力ぅ……!

 

 

 

 ―――To Be Continued




札束でぶんぶんぶん殴り。
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