サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。 作:青いカンテラ
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『―――これで、終わりね!』
ウイングスラスターから炎の尾を引きながら、ガンダム・バエルが横に回り込んでその手にした剣を振り抜く。それは低レベルに設定されている敵MS……NPDリーオーを両断して、空中に爆発の花を咲かせた。
それが最後だったらしく、空中に《Mission Complete!》と表示された文字を電子音声が読み上げた。
「お疲れ様、二人とも。チュートリアルミッションは危なげなく終えられたな」
『こんなのは最初の一歩だからね。躓いてはいられないよ』
『うぅーん、まったく物足りないわね。もっと手ごわい相手と戦いたいわ!』
ギャラリーモードで見ていたウチの前に、さっきまでチュートリアルミッションでNPDリーオーをしばいとったミオとルベリアの顔がポップする。
ガンプラバトルがしたいわ! とうるさいルベリアを、GBNではまずチュートリアルミッションをやらないと始まらんのや、と何とか説得して受けさせた。ルベリアも、そしてミオもGBNは初めてやからな。やっぱりまずは慣らしから入らんとな。
そう思ってたけど、二人はウチの想像よりもだいぶガンプラの操縦の筋がええ。ガンダム・バエルはナノラミネートアーマー持ちでビーム兵器に強いとはいえ、無傷でリーオーを倒してもうた。このチュートリアルミッション、以外と難易度が高くてそこそこ被弾したり機体が壊れたりする人も多いらしいねんけどな。
「ルベリアも動きよかったけど、ミオも中々やったで! GPDとかやってたん?」
『いいや、初めてだけど。……ボクよりも、マキナの貸してくれたこのガンプラの性能に助けられたのが大きいよ』
「まあ、まだ目玉の武装も用意できてない未完成なんやけどな。でも、そう言ってくれるのは嬉しいで!」
『
「まあ、そっちは先代の部長さんが作ったガンプラやからね」
急だったこともあって、ミオにはウチが組んでた途中のガンプラ、そしてルベリアは棚にあったガンプラから選んだものを使ってもらっとる。
それにしても懐かしいなあ……。先代の部長さん、
ウチより背が少し低いくらいやったのに、凶悪なでっかいものを持ってた先輩の、ゆるふわな笑みが脳裏に浮かぶ。ほんまビルダーとしてもファイターとしてもすごかったからそこは尊敬しとるんやけどな……。まあ、過ぎ去ったことはええわ。今はGBNのことに目を向けよう。
「ミッション終わったし、二人とも一度戻って来るか?」
『そうする。他にやることもないし』
『
そう言って帰還するためにセントラルゲートへと向かう二人。さて、ウチはこの間にミッション少し見とこかな。
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「マキナ! 待ってる間、誰かに変なことされなかった!?」
「誰かって誰やねん」
ロビーに戻って早々、ミオがそんなことを言いながら走り寄って来る。ここは天下のセントラルロビーやで? ダイバーに変なことしようとしたら一発で通報もんや。
「そんな心配せんでも、セントラルロビーで変なことしようと思うような変なやつなんかおらへんよ」
「そう……。ならいいけど」
「もし万が一マキナに手を出そうとするようならボクが潰せばいいよね……」とか不穏なこと呟いてるんは聞かなかったことにする。
「あれ、ルベリアは?」
「え、一緒に帰ってるはずだけど……」
ミオと一緒に戻ってきたはずのルベリアの姿が見えず、周囲をキョロキョロと見回す。
すると、少し離れたところでアロハシャツを着た金髪のケモミミという組み合わせの男ダイバーに「お嬢ちゃん、ここだけお得な情報があるよ」とかなんとか言われてるルベリアの姿があった。
そしてなんか変なミッションを受けさせられそうになっとる。あ、あかーん!
「ちょい待ちぃ!」
「あ、マキナ! ちょうどいいところに! いまこの親切なおじさんが、ルーキー向けのミッションを紹介してくれるって!」
「おじさ……!?」
間一髪のところで止めに入る。アロハシャツのケモミミはおっさんとか言われてダメージ受けてるけど、そんなことはどうでもええ。
「ルベリア、こういうところで初心者相手にお得な情報があるとかレアアイテムをお安くしとくよとか言ってくる輩は、総じて初心者をカモにしようとするカスだから。相手にしない方がいいよ」
「そうなの?」
「ミオの言う通りやで。GBNにはちょくちょくおるんよ。何も知らん初心者に危険なクリエイトミッション踏ませてボコボコにする初心者狩りが。このおっさんもその手の類やで。見つけたら通報一択や」
「カ……! おっさ……! い、いやだなぁ……! お嬢ちゃんたち、このオレがそんな怪しい人間に見えるっていうのかい? 俺、これでも初心者に優しい気のいいお兄さんで通ってるんだけどな!」
ひくひくと頬を引きつらせながらそんなことを言うアロハのおっさん。いやどう見たって怪しいやん。アロハやし金髪ケモミミやし、よー見たらピアスバチバチに開けてる人間の耳まであるし。耳4つて。GBN始めたての初心者の声をとっても拾いやすそうやね。
「は? おじさん今さっき自分がしようとしてたこと忘れたの? ミッションカウンター以外でダイバーから受けるタイプのミッションは、その人が自由に設定ができるクリエイトミッションでしょ? どうせ何も知らない初心者を食い物にしてやろうって思って近づいてきたんだろうけど、そんなのはちょっと調べればすぐに出てくる手垢のつきまくった手口なんだよね。残念だけど、ボクたちはあんたみたいな怪しいおっさんから受けるミッションなんかないから。わかったらとっととリアルに戻ってシコッてれば?」
いや口悪っ! そういや、ミオはイラつくと口が悪くなるんやった……。ていうか、こんなこと言われたりしたら相手怒るんやないか……。そう思って恐る恐るアロハのおっさんを見ると、案の定顔を真っ赤にしてぷるぷる震えとった。
「あ、あかん。ミオ、さすがに言いすぎやで!」
「なにが。本当のことじゃない?」
「このガキ! 言われておけば調子に乗りやがって!」
ついに我慢の限界になったらしいアロハのおっさんが腕を振り上げる。ぼ、暴力反対やで!?
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「―――おい」
けれど、その腕が振り下ろされることはなかった。代わりに後ろに捻りあげられてしもうたからや。
「いでででで!?」
「このオレの前で少女に暴行を働こうとは、いい度胸をしているなキサマ……。それに、少し話が聞こえていたぞ。初心者を騙すためのクリエイトミッションがどうとか」
「は、放しやがれ!」
「黙れ。オレは初心者をカモにしようとするやつが嫌いなんだ」
アロハのおっさんの腕を捻りあげてもうたのは、これまた頭にケモミミを生やした女性ダイバーやった。手足はケモノ系やけど、顔は人間のまま。ただ、頭に狼っぽいケモミミがある。旅人風のポンチョを着て、雰囲気もある。
「く、クソッ! 覚えてやがれ!」
「……チッ、逃げ足の速いやつだ」
アロハのおっさんは片手でウインドウを操作すると、その場から消えてもうた。たぶんワープ系のシステムでどっか行ったんやろうな。手慣れとったし、逃げ足だけは一流ってところやね。
「フン……。そこのチビ竜、挑発するなら相手を見てからするんだな」
「……助けてもらったのは、どうも。でもおねーさんが来なくたって、ボクだけでもマキナは守れたけどね」
「どうだか……」
「た、助けてくれておおきにな。えっと……」
「セネカだ。どうせもう会うこともないだろう。オレの名前など忘れていい」
な、なんてクールなケモミミお姉さんなんや……。これで胸がデカかったら惚れてたかもしれんで……。
「―――ねえ、セネカさん。あなた、お強い人とお見受けしたわ。
「ルベリア!?」
今度はルベリアがセネカお姉さんに挑発を!? はらはらとしながらセネカお姉さんとルベリアを交互に見る。お姉さんはじっとルベリアの真紅の瞳を見つめとった。それは数秒やったかもしれんし、数分やったかもしれん。ただ、時間だけが過ぎていく。
「……オレは弱いやつを嬲る趣味はない。じゃあな。チビども」
そう言ってくるりと踵を返すと、お姉さんは去っていった。
「あら残念。振られてしまったわね」
「と、当然やろ! なにいきなりバトルふっかけとんねん!」
「え? でもよく言うでしょう? 目と目があったらガンプラバトル!」
「言わんわ!」
どこのポケットなモンスターやねん!
「まあ、あの人が強そうっていうのは分かるけどね。それに挑んでみたいっていうのも」
「ミオまで……。はあ、心臓がいくつあっても足りんわほんまに」
「それより! チュートリアルは終わったのだから別のミッションをしましょう! できれば対人戦がいいわ!」
「そういうと思て、よさげなの見つといたで」
「わぁ、ありがとうマキナ!」
「むぎゅっ」
「むっ……」
ルベリアが抱きついてくる。肉付きの少ないうすほそやけど、これはこれで……。と思ってたらなぜかミオが不機嫌そうになってた。なんでやろ?
「いつまでくっついてるの。ミッションするなら早くしよう」
「そうね! マキナ、どんなミッションを見つけたのかしら!」
「それはな。ちょうど始めたての低ランクでも、軽く対人戦ができるっていうミッションや」
ミオが間に割って入ってルベリアと引き離される。ええ匂いがした……ような気がする。バーチャルやからほんまに気がするって程度やけど! それで気を取り直して、二人に見つけといたミッションを伝える。
「2on2のデュエルバトルスタイルや」
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月面のバトルフィールド。そこに向かう2機のガンプラ。それはルベリアのガンダム・バエルと、そしてミオのクロスボーン・ガンダムX2改や。
といってもミオの方は、ウチが改造途中のままで貸したガンプラやけど。バスターランチャーは無いけど、それ以外の装備は一通り揃ってるし、肩には複合照準ユニットがあるおかげでセンサー機能が充実しとる。
『さっきは地上だったけど、今度は月なのね!』
「下に月があるとはいえ、ほとんど宇宙戦みたいなもんや。さっきとは感覚が違ってくるけど、いけそうか?」
『大丈夫よ! むしろ重力がない分、体が軽いわ! こんな気持ちで戦うのは初めて!』
「ルベリア、そのセリフはあかんで」
フラグになってまう。
「ミオの方はどうや?」
『うん。大丈夫そう。元々クロスボーンガンダムは宇宙で戦うことを想定してるんでしょ? ならこっちの方が本領発揮ってものだよね』
感覚を確かめるように機体を動かしてたミオの方も、問題なさそうやな。これなら宇宙戦もすんなりこなせそうや。
『お相手さんはもう着いてるみたいだね』
『
ミオの乗ってるクロスボーン・ガンダムX2改は、肩に追加した複合照準ユニットのおかげでセンサー類の範囲が拡大してるからな。
基礎工作はしてるとはいえ素組のバエルよりも、もっと遠くを見れるんや。本当はこの目の良さを生かした機体にしたかったんやけど、コンバートが間に合わんかった。
『ん……? ちょっと待って、何か様子がおかしい……』
『え?』
「ミオ、どうした?」
ミオが何かを察知したらしい。もしかしてバトルフィールドに異変か? と思って見てみると、なぜかすでにバトルが始まっとる……!?
『なんだこいつ……アバーッ!?』
『あ、相棒ー! よくも相棒を……グワーッ!?』
ミオとルベリアが着いた時には全てが終わっとった。対戦相手だっただろう、ザクの改造機は何者かに襲われて爆散。宇宙の塵となった。
『よぉ、さっきぶりだなあ。ガキども』
『その声……!』
ミオとルベリアがバトルをするはずやった月面のバトルフィールドにおったのは、ゼネラルレビル所属カラーのリゼル。そしてそれに乗っとるのは……。
『せっかくお前らをクリエイトミッションに誘導してポイント稼いでやろうと思ってたのによ。そうすりゃ怖い目に合わずに済んだんだぜ?』
さっきセネカお姉さんにやられとったアロハのおっさん!
『あら、あなたはさっきの……』
『なにおじさん、さっき人前でボコられたのが頭にキタから今度はボクの対戦相手ボコして、ボクたちもボコボコにしてやろうって? やってること何から何までダサいよ』
『うるせぇ! 口の減らねえガキにはオシオキが必要だな! 二度とガンプラバトルなんかできねえようにしてやるよ!』
アロハのおっさんの怒号に反応するように、リゼルを黒っぽい紫のオーラが包み込む。
ま、まさか……あれは……
「ブレイク、デカール?」
―――To Be Continued
どす黒い悪意が、牙をむく。