ルートB   作:かりん2022

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交渉

 

 山彦 鏡佳に会う。そう決めたものの、問題があった。

 

「どうやって会えばいいんだ?」

「きゅ?」

 

 月喰が首を傾げた。

 

「そうだよねぇ。月喰も分かんないよねぇ」

「きゅ!」

「可愛い」

 

 撫でる。

 

 現実逃避終了。

 

 山彦鏡佳。妖魔との融和を唱える宗教団体、その代表である。

 

 表向きは人と妖魔が争わず生きられる社会を作ろうと唱えている。

 

 あくまでも表向きはというだけで、実態はというと。

 

「胡散臭いんだよなぁ……」

 

 滅茶苦茶胡散臭い。

 

 僕が知る未来では、学校とも協会とも揉めていた。

 それもそうだろう、無許可で妖魔を飼う。

 禁じられた術を研究する。保護を名目に危険個体を囲い込む。

 協会が討伐指定した妖魔を勝手に持ち去る。

 それだけなら、今の僕なら多少見る目も変わったかもしれない。

 

 問題はあいつ自身だ。

 

 あの男は妖魔を慈しんでなんかいなかった。

 自分の命令を聞く妖魔を増やしたかっただけ。

 融和を唱えながら、やっていたのは支配。

 

 それでも。

 

 世界を滅ぼしたあの巨大妖魔へ、最後まで干渉し続けた。

 

 それは失敗した。

 

 失敗したけど、僕達が武器を振るっている間に、あいつだけは違うやり方で大妖魔の力を削っていた。

 

「惜しかったんだよなぁ」

 

 今なら分かる。

 

 あの男には何かが決定的に足りなかった。

 

 そして、その何かを僕は知っているかもしれない。

 

 慈しむ。

 

 調律する。

 

 邪念と、それ以外を分ける。

 

 そんな僕が、山彦の研究を手に入れる事ができたら。

 

「すごいことになるかも」

「きゅ!」

「だよな!」

 

 拳を握る。

 山彦の知識を手に入れる。

 研究も。術も。人脈も。

 全て奪う。

 

 その上で。

 

「最終的には僕の言うこと聞かせる」

「きゅー!」

「よし!」

 

 完璧な計画である。

 

 問題は、山彦側から見れば、僕はただの十五歳だということ。

 会わせてくださいと言って会える相手でもない。

 

 協会経由で正式に面会申請を出す?

 絶対止められる。

 

 こっそり探す?

 

 住所を知らない。

 

 未来の本拠地なら知っているけれど、この時代にはまだ使っていなかったはず。

 

「……面倒だな」

 

 僕はベッドへ転がった。

 

「向こうから来てくれないかな」

「きゅ」

「そんな都合よくないか」

 

 月喰が僕の腹へ乗る。

 重くない。

 むしろ幸せ。

 

「まあ、少しずつ探すか」

 

 そう思っていた。

 

 ◇

 

 三日後。

 

「今日は回収任務です」

 

 先生が資料を配った。

 

「回収?」

 

 健が露骨に嫌そうな顔をする。

 

「戦闘ないんですか?」

「ない方がいいでしょう」

「いやぁ」

「何?」

「何でもないです」

 

 ある程度慣れてきたせいで、健は戦闘任務を楽しみにし始めている。

 戦うのが好きというより、自分が強くなっている実感が好きなのだ。

 思い返してみれば、僕じゃない僕の世界でも好戦的だった。

 向こうでも早くに死んでしまったけれど……。こちらでは性格を知る前に死んでしまったので、健のことを知れるのは嬉しい。

 

「場所は?」

 

 桜が資料を見る。

 

「山沿いの旧研究施設。ずっと前に閉鎖されてるんだけど、その一部に妖気反応が出たらしい」

「討伐じゃなくて回収なんです?」

「先に調査へ入った班が、呪具らしきものを確認してる。危険度が低いから、訓練を兼ねて僕達が回収する」

「なるほど」

 

 僕も資料を見る。

 

 施設名。

 

 地図。

 

 古い見取り図。

 

「…………」

 

 何か引っかかった。

 

「琥珀?」

「はい?」

「どうしたの?」

 

 先生が僕を見る。

 

「いや……」

 

 見たことがある気がする。

 

 でも。

 

 未来?

 

 違う。

 

 ここそのものに来た記憶はない。

 

「気のせいです」

「そう?」

「はい」

 

 資料を閉じる。

 月喰が僕の肩で「きゅ」と鳴いた。

 

「お前も行くよ」

「きゅ!」

 

 ◇

 

 山道を登る。

 道路は途中から舗装がなくなり、古い門の向こうにコンクリート製の建物が見えた。

 

「廃墟って感じ」

 

 桜が言う。

 

「こういう所、絶対何か出るよな」

「もう出てるから来たんでしょ」

「そうだけど」

 

 健が門を押す。

 

 錆びた音。

 

「先生、ここ昔何の施設だったんです?」

「民間の霊障研究所だったらしいよ。潰れた理由までは資料にない」

「怪しい」

「それだけで怪しい判定しないの」

 

 僕は何となく周囲を見る。

 

 古い。

 

 でも。

 

「…………」

 

 静かすぎる。

 

 虫の声。

 

 ない。

 

 鳥。

 

 いない。

 

 山なのに。ありえる?

 

「月喰」

「きゅる……」

 

 肩の月喰が唸った。

 

「先生」

「うん」

「何か変です」

 

 先生も足を止めた。

 

「僕もそう思う」

 

 健が剣へ手を掛ける。

 桜も周囲を警戒した。

 

「妖気?」

「違う」

 

 先生が低く言う。

 

「結界だ」

 

 その瞬間。

 

 背後で。

 

 ガシャン。

 

「え?」

 

 門が閉じた。

 

「健、触るな!」

 

 先生の声が飛ぶ。

 健の手が止まる。

 

 門。

 

 黒い文字。

 

 さっきまではなかった。

 

「……術式?」

 

 桜が息を呑んだ。

 

「展開された」

 

 先生が辺りを見る。

 

「全員、固まって」

「はい!」

 

 僕も武器へ手を掛けた。

 月喰の体を片手で支える。

 おかしい。

 事前調査が済んでいる。

 低危険度回収任務だぞ。

 

「…………」

 

 いや、待て。

 

 この感覚。

 

 結界。

 

 気配の消し方。

 

 外から内へ誘導する構造。

 

「……まさか」

 

 思い出した。

 

 山彦の連中が未来で何度かこういうことをやった。

 

 正面から襲わない。人を誘導する。気づいた時には退路がない。

 

「…………」

 

 僕はちょっとだけ笑いそうになった。

 

ーー向こうから獲物が来た。

 

「琥珀?」

「何でもないです」

「顔が何でもなくない」

「気のせいです」

 

 先生の視線が細くなる。

 まずい。

 僕は顔を引き締めた。

 

「先生、これ、多分普通の結界じゃないです」

「分かる?」

「少し」

「どういうの?」

「分断系かもしれません」

 

 言った瞬間。

 床が光った。

 

「全員離れろ!」

 

 遅い。

 白い光。

 

「月喰!」

「きゅ!」

 

 抱き込む。

 

 視界が消える。

 

 ◇

 

「…………」

 

 暗い。

 

 埃っぽい。

 

 僕は床に膝をついていた。

 

「月喰?」

「きゅ!」

「よし」

 

 月喰さえいれば何も問題はない。オールオッケー。無事判定。

 

「先生!」

 

 返事なし。

 

「桜!」

 

 なし。

 

「健!」

 

 なし。

 

 完璧に分断された。

 

「…………」

 

 月喰を肩へ乗せる。

 廊下だな。同じ建物の中だとは思う。

 でもみんなの気配が遠い。

 それでも、月喰との接続は切られていない。

 僕じゃない僕の世界で罠にハマった時は黒影とも分断された。

 それに比べれば全然大丈夫。

 

「甘いな」

「きゅ?」

「何でもない」

 

 それよりも、罠を張ってきたのは本当に山彦なのか。

 まだ断定はできない。でも仮にそうなら……。

 

「…………」

 

 逃げて、先生達と合流する? それが正解だ。普通ならね。

 でも僕は山彦 鏡佳に会いたかった。このチャンスを逃せば次はいつになるか。

 

「…………ちょうどいい」

「きゅ?」

「向こうから送迎してくれるんだって」

「きゅ!」

「助かるよな」

 

 月喰は元気に返事をした。

 良い子だ。

 

「じゃあ行こう」

 

 罠の奥へ。

 

 ◇

 

 3回。

 

 露骨な誘導の数である。

 

 右の扉だけ開いている。廊下の先だけ灯りがつく。世界のルートだけ綺麗に掃除してある。あからさまな歓迎の証。

 

「雑だな」

「きゅ」

「いや、僕が気づいてるだけか」

 

 普通の十五歳なら怖いだろう。

 知らない結界。

 仲間と分断。

 誰かに見られている。

 逃げ道も分からない。

 

 でも、残念。僕は一回死んでいる。

 

 それどころか、多分二回死んでいる。

 

 2回世界を滅亡させてしまった僕に怖いものはない。

 

 中身は一番戦意旺盛な二十五歳だぞ。無謀ともいう。

 応用を知り始めて、さりとて酸いも甘いもまだわからない、一番無敵な時期。

 転んでもまた我武者羅に走れる年齢。

 臆することを知る前の年齢。それも2回分。

 

 ともかく。

 

「無鉄砲に行こう」

「きゅ?」

「月喰は怖い?」

「きゅ!」

「偉い!」

 

 頭を撫でる。その瞬間。

 

「楽しそうだね」

 

 落ち着いた声。色気があって、グッと引き込まれるような魅力的な声。

 

 僕は立ち止まった。

 

 廊下の奥の扉。

 

 いつ開いた?

 

 そこに。

 

 一人。

 

 立っていた。

 

 黒く長い髪。

 

 細身。

 

 穏やかな笑顔はとても整っていて中性的だった。

 

 こんなにも整っているのに、どう見ても胡散臭い。

 

「初めまして」

 

 男は笑う。

 

「琥珀君」

「…………」

 

 来た。

 

 山彦 鏡佳。

 

 若い。

 

 当たり前だ。

 

 十年前。

 

 でも、笑い方は同じだった。

 

 人好きのする顔。

 

 相手を安心させる声。

 

 人も妖魔も狂わせた、魔性の男の笑いである。

 

「月喰君も」

「きゅる……」

 

 月喰が唸る。嘲るような目と声に、僕は驚いた。

 月喰の性格の悪いところを初めてみた。何故だ。

 

「あれ、嫌われてる?」

 

 山彦が少し目を丸くした。

 

「嫌われてる?」

「どうなのかな。相性悪いのかもしれませんね」

「それは残念」

「それにしても、随分落ち着いてるね」

 

 山彦が笑う。

 

「そうですか?」

「普通、もう少し怯えると思うんだけど」

「誘拐されたから?」

「それは言い方が悪いね」

 

 苦笑する山彦。

 

「じゃあ何です?」

「招待」

「本人の同意なし。教師と友人から分断。退路を封鎖」

 

 くすくすと山彦は笑う。

 

「誘拐ですね」

「賢いね」

「十五歳なので」

「よくできましたと褒めてあげよう」

「ありがとう」

 

 話しながらも、互いを観察していた。

 術式。身につけているもの。呪具。もちろん霊力も探る。

 それは向こうも同じ。

 

「それで」

 

 僕は聞いた。

 

「何の用です?」

「分かってるんじゃない?」

「確認です」

「せっかちだね」

「先生が結界ぶち破ってくる前に話を済ませた方がいいですよ」

「…………」

 

 山彦の笑顔が少し深くなった。

 

「それもそうだね。君に興味があるんだ。月喰君。君が作ったんだって?」

 

 情報は思ったより漏れているようだ。

 

「既存の妖魔じゃない。式神でもない。術者と生命的な繋がりがあって、力を循環させている」

「よく調べましたね」

「君の学校、報告書をきちんと残すから」

「…………」

「それだけじゃない」

 

 山彦は続ける。

 

「君は妖魔から何かを抜く」

「はい」

「それを黒い石にする」

「黒泥石って言います」

 

 山彦が取り出したのは黒泥石だった。どうなってんだ学校の管理体制。

 

「妖魔が消える場合もあれば、残る場合もある」

「そうですね」

「残った妖魔の一部は、以前より穏やかになっている」

「そうみたいですね」

「面白い」

 

 愉悦。好奇。そしてその奥に隠された深い渇望。

 

「ずっと知りたかったんだ」

「何を?」

「妖魔は何なのか」

 

 僕は黙る。

 

「人間の敵。災害。悪意の塊。そういう説明は聞き飽きた」

「…………」

「全部が同じなら、どうして個体差がある? なぜ人を襲わない妖魔がいる? なぜ言葉を理解する個体がいる? なぜ人間へ執着する? なぜ場所に縛られる?」

 

 そして、山彦は僕を見た。

 

「そして、どうして君はそれを分けられる?」

「…………」

「これ、本来は食べるんだってね。食べてみたよ。私の中に憎しみが広がった。妖魔はこれに侵されているんだね。それは人を襲うだろう。君のおかげで、研究が少し進んだ」

「だったら僕にもリターン欲しいんですけど」

「ほう? 何を望む? いいよ、言ってごらん」

「お前の研究全部」

 

 キョトンとした後、山彦は考える顔をした。

 

「君は私の何を知っているんだい?」

「大規模妖魔洗脳術式研究してるでしょ。ちょうだい」

「……へぇ。これは一本取られたな。スパイ行為を受けてるのは私の方も同じということか」

「ちょうだい」

「まだ完成してなくてね。それに、それを何に使う気だい?」

「世界救済」

「それは私の望みでもあるね」

「月喰くんの作り方とトレードではどうかな」

「材料の生成に一年掛かる。欲しい?」

「欲しいね」

「お前の全部と交換ならいいよ。あげる」

「研究の全部?」

「命、研究、命令権、部下、組織、使役してる妖魔、とにかく全部」

「……それで世界を救済したい?」

「そう」

 

 山彦は少し考えた様子を見せたあと、にっこり笑う。

 

「私達は、同じなのかもしれないね」

「そうなの?」

「そうなんだよ。だからこそ、君の野望は叶えさせない」

「僕のは世界救済なのに」

「君視点ならそうなんだろうね。君視点ではね」

「鏡を見てるだけじゃない? 俺のはちゃんと救済だし。人にしてほしくない救済の野望なんて捨ててくれない?」

「そういうわけにはいかないんだ」

「恋人を妖魔に殺されたから? それ山彦のせいじゃん」

「私のせい? 私が何をした!」

「非術師恋人にするなんてわかりやすい弱点作った上で上に逆らうとか、刺客を送ってくださいって言ってるも同然では?」

「なんだと……」

「妖魔が悪くないとは言わないけど、全部を妖魔のせいにするのやめてくれない?」

 

 そこで、僕は近づく気配に気づいた。

 

「まあ、使い魔の材料は用意しとくよ。代価は考えておいて。全部は全部だから。お前が僕を手に入れるんじゃなくて、僕がお前を手に入れる。OK?」

「君は一体……」

「知らないの?」

「何を」

「男の子も秘密で着飾るんですよ。みんなには内緒ですよ? 僕とあなただけの内緒の取引です」

 

 僕がシーっと指を立てる。

 そして、僕は口に手を当てた。

 

「せんせー助けて〜!」

 

 ドン!!

 

 建物が揺れた。

 

「…………」

 

 山彦がはっと天井を見る。

 

「せんせ〜こわーい!」

 

 もう一度。

 

 ドン!!!

 

 壁に亀裂が走る。

 

「逃げないの?」

「キュキュア!」

 

 煽るようにいうと、月喰がまさかのザマァと鳴いた。

 そういえば月喰作ってる時に山彦ザマァって思ったわ。

 そうかー僕のせいかー。

 

 僕は、山彦に散々引っ掻き回された記憶を思い出した。

 先生は優しいから、友達だった山彦のあれこれに本当に苦しめられていた。

 山彦の自業自得だな! もっと苦しめ。

 

 バキン。

 

 結界が割れる。

 

「琥珀!」

 

 必死な先生の声。

 近い。

 

「悪い子だ」

 

 山彦が笑う。

 

「失礼な。僕ほどのいい子はいないですよ」

「私と君は本当に似ている。わかった、一年後に会おう」

「連絡先」

「こちらから連絡するよ」

 

 山彦は踵を返す。

 姿を消すと同時に、壁が吹き飛んだ。

 

「琥珀!」

「先生! 怖かった〜!」

「キュ〜!!」

 

 僕と月喰は先生に甘える。

 これみよがしに助けを求めて、ヨシヨシされた。

 誤魔化しきれたな。ヨシ!

 

 ◇

 

「…………」

 

 正座。

 

 僕。

 

 月喰。

 

 並んで。

 

 正座。

 

「きゅ……」

「月喰は悪くない」

「琥珀」

「はい」

 

 先生。

 怖い。

 

「鏡佳に取引を申し出たそうだね」

「…………」

「琥珀」

 

 告げ口なんてひどい。これが教祖のやることか……?

 あっ 桜と健は無事だった。

 二人とも僕の部屋を探索中である。

 先生の説教も同級生の部屋調査も全部教祖が悪い。

 二人だけの取引だよ、内緒だよって言っただろ!

 

「琥珀」

「先生! 僕よりあんな教祖の言うことなんかを信じるんですか!?」

「琥珀。僕の目を見ていって。教祖に取引を申し出なかったと言うこと?」

 

 僕は目を逸らした。そういうのずるいと思いまーす。

 

「琥珀は、何が目的なのかな?」

「色々」

「色々?」

「せんせー! 『僕の知らない僕について』ってノート見つけたー!」

「あっあっあっ」

「よくやったね。見せて」

 

 先生はノートを見る。

 

「琥珀」

「はい」

「どういうこと?」

 

 僕は口をパクパクさせて。

 

 最後にはゲロった。

 

「琥珀、どうして報告しなかったの」

「シンプルに報告しようと思いつかなかった」

「琥珀」

「はい」

「報連相について補修。夏休み抜き」

「ええ!?」

「ばーかばーか! 助けてくれたのはありがとう!」

「ちょっと私、5年後に死ぬって事? ちゃんと私も助けてよね!」

「桜と健も巻き添え」

「「ええー!!!!」」

「先生も自動的に夏休み消滅だから安心して」

「どうすんだよバカ!」

「どうしてくれんのよ、琥珀ぅ!」

 

 僕は必死で頭を下げてプルプルする。月喰も。可愛い。

 

「でもそうか、鏡佳、最後には助けてくれるのか」

「助けきれてないですから! 信じちゃダメですよ、先生!!! 山彦いっつも離反してるから! 離反が生きがいの男だから!」

「琥珀」

「はい」

「鏡佳のこと、もっと聞かせて。僕は結局、あいつを理解してやれなかったから」

 

 先生がいい人すぎる。

 僕はしおしおとして、今度こそ、素直に、一切の誇張もなくできるだけ公平に未来情報を話していった。

 

 健も桜も先生も、聞いてくれた。

 

「琥珀」

「はい」

「先生としてじゃなく、白峰千景個人として、お願いしていいかな」

「はい」

「最上の未来を勝ち取るために、協力してほしい」

「はい!」

 

「先生に一人前として認められちゃった〜♪」

「ああっ ずるい!」

「俺らも協力するからな!」

「キュウ!」

「うん、頼むよ皆」

 

 作戦会議は、始まったばかりである。

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