魔法少女は、自分を取り巻く因果が大きくなればばるほど力を増すという。
例えば何か大きな物語のキーマンや主人公なんかの立ち位置といえば分かりやすいだろう。その人の一挙一動で未来が代わり、世界が分岐するのだ。
少し遠くの街を見ていたときに、そういう人を見かけたことが何回かある。
一人は宝崎市に。もう一人は見滝原市に。
魔法を使っているときにそういう人を見つけてしまうと自然に視線が引き寄せられる。けれど、そこで観測を打ち切らなければとんでもない頭痛と目眩が私を襲う。きっとその人の持つ並行した可能性が勝手に流れ込んできてしまうのだろう。情報過多は毒だ。
ちなみに意図して他人の未来だったりを見ることができない。悲しきかな、どうやら私にそこまでの因果は絡みついていないらしい。できることといえば精々遠景を眺めてにっこりとする程度のことだ。
だけどある日、見てしまった。
無数の魔女が跋扈する街、その中でも一際大きく、街をめちゃくちゃにしていく超巨大な魔女が二体。
その夢を見たときはきっとこれは夢なのだと思っていたけれど、起きてすぐ、少しだけくすんだソウルジェムを見てこれはいつかの未来なのだと悟った。
そしていつの間にか囁かれるようになった、「神浜に行けば魔法少女は救われる」という胡乱な噂。
気になってしまっては行くしかないだろう。好奇心は猫をも殺すし、きっと私もそれに殺されるだろうが。賞味期限も切れかけの人生だ。面白そうなものは味わいに行くに限るだろう。
「……ってなわけで来てみたものの、だけど」
都会、というか大都市ってすごい。とにかく人が多いし駅も大きい。少しでも油断すると押し流されそうになる。とりあえず改札を出て、見通しの良さそうな高台でも探そう。
ぼちぼち歩いて、適当なビルに入ってるファストフード店にイン。しかしやっぱり都市ってすごい。ここに来るまでの道でも魔法少女を何人か見かけた。あまり強い力を持たなかったとて、キュゥべぇに見初められている以上、ある程度の因果は集中しているし普通の人に比べればちょっとは目が引かれるというもの、とはいえ私よろしくそこまで戦闘力の高くない魔法少女たちばかりだった。
そっと目を閉じ、魔力を込め、目を開ける。
すると、ここではない景色が次々と映し出された。
学校の階段、どこかの神社、商店街、電波塔、博物館、ホテル、桜。そして……
チラチラと視界の端に写った……魔法少女?
「……ッ」
ズキリと目が痛んだ。どうにもここは因果が集中する場所が多すぎる。これじゃあ魔法を使った途端自動でどこかに視点が飛ばされて近くの散策もままならないだろう。もう一度試すにしても、また目が痛むかもしれないと思うと気が滅入った。痛いのは嫌いだ。
ポテトを一本つまんで口に放り込む。強めの塩気が移動で疲れた体に染みる。
(色んな場所と魔法少女か……)
私の経験則的に、因果が集中する場所では「なにかが起こる」と見て間違いない。強い魔女が発生したり、強い魔法少女が発生したり。あとはそれらが退治されたり死んだりとか、そのきっかけになる事象が発生したりとか。
場所もそうだけど、魔法少女たちの方も気になる。複数の場所で観測できたってことは何らかの関係があると見て間違いは無さそう。だけどあのローブは一体何なんだろう、何かのチームで統一されているんだろうか。
チームで共通のシンボルを持つことは結構あるあるだ。大体はキーホルダーだったり缶バッジだったりだけど、ああいう完全にコスチュームを覆い隠すようなのもないではない……らしい。人に見られたら困るとか、個々人を特定されたら困るような組織だとか、そんなことは……ないだろう、多分厨二病のすごい強い魔法少女チームとかだと思う、思いたい。
しかし困った。魔法がうまく動かないというのなら自分の足で歩き回らないといけないじゃないか。嫌だなぁ歩くの。いや、歩かないと得られないことも沢山あるし、まるきり嫌いというわけでもないけど疲れる。疲れるのは嫌だ。
またポテトをつまんでひょいひょいと口に放り込む。長い間ぼんやりしていたせいで少し湿り気を帯びて、あんまり美味しくはなかった。
とりあえず今後のプランを考えよう、まずはとにかく地図だ、それっぽい場所をウロウロしてたら何かしらとはエンカウントできるだろうし。
「……よしっ」
はっきり言ってノープランだけどまあ、なんとかなるでしょう。