金田と山田は走った。
大通りを突き抜けて、少し人気の少ない小さな公園に出た。月明りと噴水の近くにある小さな街灯だけが辺りを照らす飾り気のない場所だった。
二人はやっとそこで走るのをやめると、石畳を外れた芝生が茂るエリアで並んで転がるように倒れこんだ。
仰向けに寝ると、荒い呼吸を落ち着かせるためにしばらくは無言だった。
噴水の水の跳ねる地味な音だけが辺りにじんわりと広がっていた。
「…ぶっ」
金田がふいに噴出した。
「ははは!」
そして、腹の底から無限にわいてくるような、抑えきれないおかしさをそのまま笑い声にした。
「あはははは!」
釣られるように、傍らの山田も大声で笑いだす。
「…お、お前…俺になんつーことさせんだよ!」
ひきつる腹筋を抑えて、金田はなおも笑いながら山田にそう言った。
「じ、自分でやったんじゃんか!知らんがな!」
山田もお腹を抑えて転げまわりながらそれに応えた。
「あーあ、取り返しつかんかなぁこれ…」
しばらくの間そうしていた後、少し落ち着いた金田は、空を見上げて自嘲気味にそう呟いた。
「…でも、スカッとした!」
しかし、すぐにそう言い切った。
「…誰があそこまでやれって言ったんだよ、このお人よし目」
上半身をわずかに起こした山田が、金田の顔を覗き込みながらそういった。
金田を真っすぐに見る純粋な瞳は、あきれ気味だったがそれ以上に嬉しそうだった。
「…ああいう時に限ってサービス精神旺盛なんだよな…でもお前ほど不器用じゃないぞ」
その瞳を真っすぐに見返した金田がややいじわるそうな笑みを浮かべてそういった。
「…ホント、あほだな…で、誰が妹だって?」
山田が一瞬、ふっと柔らかい笑顔で目を細める。そしてすぐに悪戯っぽい笑みで切り返す。
「…まぁまぁ、勢いってあるじゃん」
手のひらを山田に向けて苦笑いする金田、山田はそんな金田の様子を見て、胸になにか温かいものがこみ上げるのを感じた。
「…ありがとね、お兄ちゃん」
そういうと、山田は金田にぎゅっとしがみついた。
その行動は、山田なりの妹感を演出したものではあったが、そこには信頼の色が見て取れた。
「おぉう、デレんなよ」
金田は山田の頭に手を置いて髪の毛を一撫で。山田も素直にそれを受け入れる。
やはりそこに流れる空気も、信頼の関係だった。
「…ひひ、今なら恋愛してやってもいいぜ?大サービスだ」
山田はいたずらな笑みをこぼしつつ、冗談交じりにそう言って離れた。
「俺がいくらイケメンでも、リアルJCはさすがに無理ですわー」
金田もそれに冗談で返しながら、山田の肩に手を置いて、その身体を引きはがした。
そして二人は、夜の噴水広場で、子供のように笑い転げた。
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『ボクが見た優しい異世界の話。』
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