災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から 作:Revak
夕方の少し前に三人はアインスに戻った。
組合に戻り、素材受付所に行く。
リーダーであるローフェが
ホワイトエイブの毛皮からジャイアントトードの肉。バインドシャークの皮など多数の魔獣系モンスターの素材だ。
受付の男は臆することなく受け取った。
「解体は最低限済んでるな。換金額はこれだ」
簡単に換金をすませ、そこそこの額が渡される。
ローフェは礼を言って受け取り、二人の元に戻る。
「おーい。換金終わったよ。これが二人の取り分ね」
そう言って三分割した金を渡す。
「結構な金になったな」
四級のパーティの一日の報酬としてはだいぶ多い方だろう。
「それじゃあ、このパーティで正式登録する?」
エルフィがそう提案した。
「いいぜ。今日もそこそこ連携出来たしな。パーティ名どうする?」
ワーカーがパーティを組んだ場合、組合に報告する必要がある。
だからパーティ名は必須だ。
下手な名前で登録してしまうとその名が周知され、ワーカーたち以外からもその名で呼ばれることになってしまうので下手な名はつけれない。
「ここはリーダーのネーミングセンスに期待だな」
そうウーが笑みを浮かべた。
それに対しエルフィも同意した。
「私が決めるの? いいけど……うーん」
ローフェは少し悩む。
ローフェの名付けセンスは少し悪い方だ。
ゲームでも名づけが必要なときは外国語からとってきたりする。
だが今ここに辞書などは無い。
(災星……それだと余がバレるな……なら)
「それじゃあ……三日月の旅団、でどうかな?」
「おー、いいじゃん」
「なんか傭兵団っぽいけど……いい名前ね。それで登録しましょ」
「うん。それじゃ登録してくるね」
そう言ってローフェは受付に行き、パーティを登録した。
これでこの三人は正式な一党だ。
四級ワーカーチームとして登録された。
「それじゃあ、今後も冒険頑張るぞ!」
ウーがそう言って拳を突き上げ、二人もそれに乗るのだった。
■
一月が経った。
三日月の旅団は少年二人と少女一人を連れて平原で狩をしていた。
そしてウーが平原に出現するモンスター、アルミラージを仕留めた。
「うし、解体頼むわ」
「はいっ!」
そう元気よく返事するのは少年だ。
少年は手際よく解体し、リヤカーに素材を別けて置いた。
三日月の旅団は三人の少年少女を雇っていた。
理由は幾つかあるが、大きい理由は運搬と解体を委託し、楽をしたいというのがあった。
いかに
だがパーティメンバーの誰かがリヤカーを引いているといざ戦闘の時に邪魔になる。
それにここ最近は討伐するモンスターの数も多くなり、解体が間に合わないこともあった。
そのことを組合に相談すると人を雇ってはどうか、と言われ雇ったのだ。
この少年二人と少女一人はワーカーに登録したての六級ワーカーだ。
彼らに対しモンスターの倒し方を見させ覚えさせ、解体を実際にやらせて覚えさせているのである。
初心者はやり方を覚え報酬からいい武器を買え、熟練者は手間を少し減らすことが出来るというウィンウィンの関係であった。
「この調子でどんどん行くよ」
ローフェはそう言い、三人に微笑んだ。
「はいっ!」
三人はそう元気よく返事をした。
■
その日の夜。
暁の車亭という酒場にて。
「かんぱーい!」
ローフェ、エルフィ、ウーの三人は酒場で酒盛りしていた。
「この調子だとすぐ三級の昇級試験受けれそうだね」
ローフェはそう言いながらつまみを食べる。ソーセージだ。
ローフェはビールが苦手だ。正確には炭酸が苦手である。舌が痛くなるのだ。
だがこう言った場で飲まないのは失礼に当たるのでローフェは神の権能で一時味覚をカットすることでビールを飲んでいた。
因みに神に毒は効かない。そのためアルコールも毒判定を喰らうのでローフェは飲もうと思えば大樽だろうと飲み干せる。
「しかし順調だな。開拓の方も」
ウーがそう言いながら漫画肉を頬張った。
「開拓村の護衛依頼受けたけど、問題なく進んでいたからねぇ」
エルフィもそう言いながらビールを飲んだ。
この世界の飲酒は年齢で禁止されていないので合法である。
「けどここまで順調だとそろそろでかい問題起きそうで怖くないか?」
ウーはそう言いながら酒を飲む。
「まぁ、問題なんて起きないでしょ。仮に起きたとしても、ワーカーの手ならいちころよ!」
「それもそうだな! ガハハハ!」
それがフラグになった。
翌日。三日月の旅団はワーカー組合に来ていた。
狩りをするついでに討伐依頼でも受けて金を得ようという算段であった。
エルフィとウーは何か談笑をし、ローフェがクエストボードを見る。
見る限り良い依頼は無かった。
今日はどうするかな、なんて悩んでいると慌てた様子の四人の男が組合に入って来た。
頭以外全身鎧に身を包んだ男が受付に立って居た男を腕でどかしながら叫んだ。
「ドラゴンだ! ドラゴンを見たんだ!」
その言葉に組合がシーンと静まり返った。
「ドラゴン、ですか? それは本当に?」
倒された男は目を点にし、文句を言う事もなく固まっている。
「本当だ! 黒い竜を見たんだ、真っすぐこっちに飛んできている!」
「それはどこで見たんですか? 数は?」
「ハージ村で見つけた! 遠くから飛んできている! 数は一体だ!」
ドラゴン、竜。その存在を前にワーカーたちは固まってしまう。
この世界、一口に竜と言っても種類が三種類ある。
下位の竜は竜という名の動物に近い存在だ。
外見が竜に似ているだけで実際はただの魔獣だったりする。アースドラゴンやワイバーンが該当する。
中位の竜は言語を操ったり魔法を駆使することもあるまさにドラゴンと言ったと存在だ。強力な個体なら街一つ滅ぼしても可笑しくない。
上位の竜は神話に出てくるような竜だ。竜神ドラヘルが創造せし眷属である。
最低でも小国を滅ぼせるような力を持ち、肉体が滅びても魂は不滅の為時間経過によって蘇ることが出来る強力な存在だ。
だから、まだ絶望しきれない。まだ下位や中位の竜ならばワーカーたちにも薄いが勝ち目はあるからだ。
だが──上位の竜ならば何もできず死ぬだろう。
ニヒツにも竜が居るが、数は少なく俗世に関わることはない。
まだ余裕はある。ハージ村はこのラモトラの最果ての村で、普通に行くならば馬車で四時間はかかる。
このワーカーたちは虎の子の転移の
まぁ、上位の竜ならあってないようなものだが。
「すぐにワーカーを集めます! 皆さんは正門前に集まってください!」
受付の男がそう叫び、ワーカーたちは声を上げ動き出した。
(竜かぁ……)
ローフェはうーんと正直悩む。
上位の竜とて所詮は眷属。神本体には遠く及ばない。
故にローフェが本気を出せばたとえ上位の竜であっても片手間で殺せる程度の相手だ。
だが、下手に力を使うとローフェの実在が大衆にバレてしまう。
余談だがローフェを信じる宗教は存在する。災禍教という宗教だ。
その宗教のトップとローフェは知人の関係で、宗教の腐敗を防いでいる。
大衆にバレるのは大問題だ。五百年前のように世界を統治する気はもはやないのだ。
だから表立って動く事は出来ない。
「それじゃあ、いこっか」
ローフェは手加減した状態で勝てるかな、と不安に思いつつ正門に向かって走り出した。
■
十分後。正門前にはこの街が保有する最大のワーカーたちと騎士たちが居た。
騎士たちはこのアインス固有の者たちだが、各国から集められた精鋭たちだ。
だが戦力として頼りになるかというと不安が残る。
騎士の相手は人間がほとんどで、モンスターはワーカーが倒すのがほとんどだ。レベルこそ高いが、中には対人特化のクラスに就いている者も居るため対モンスター戦では不安が残る。
その分対人なら同レベルのワーカーより強いが。
相手は一体のドラゴン。人類最強の戦術である囲んで棒で叩くというすべは通じない可能性がある。
だがそれでもわずかな希望にかけ数で挑もうというのだ。
ローフェはそれを尊く思う。自分が彼らの立場だったら恥も外見も投げ捨てて逃亡していただろうから。
自分には力があるから余裕が有る。それが無ければ自分等みっともない弱者に過ぎないのだ、と。
彼らは決して命を投げ捨てる為に戦うのではない。街を、人を守る為に戦うのだ。
そして決して勝算が無いわけではない。勝算は二つある。
一つはこの街最高位、一級のワーカーとこの街の領主。
それらが居るからこそ、逃げずに立ち向かえるのだ。
空を飛ぶ相手に意味があるのかわからないが簡単な塹壕とバリケードを設置していると、竜の雄たけびが聞こえた。
その声に全員武器を抜いて構える。
そして、来た。
やって来たのはブラックドラゴン──上位の竜だった。
黒い鱗に包まれた強靭な肉体。人の手に近い鱗に覆われた手。太い足に胴体。
黄金色の一対の角を持ち、そのサイズは驚異の二十メートル。
雷属性のブレスを放つことが出来る上位の竜が、現れた。
(……ギリなんとかなる、か?)
出現したドラゴンをローフェは神眼で見る。
神眼は最上位の鑑定系魔法と同等の効果を持つ。その目で見ればドラゴンのレベルも見通せる。
竜の名はストルン。雄の竜だ。レベルは四十五。
ローフェの公称レベルは三十二。レベル差が十三もある。本来なら勝てない相手だ。
だがあくまでそう言っているだけでステータスはレベル百の
竜──ストルンが口を開き、雷光が集まる。
「ブレスが来るぞ!」
スカウトの一人がそう叫んだ。
各々塹壕に入り、防御魔法を展開していく。
三日月の旅団も近くの塹壕に入り、ローフェが防御魔法を唱えた。
「
ローフェが魔法を唱えると同時に雷のブレスが届く。
ローフェのところは無事だ。曲がり何もレベル百が唱えた防御魔法によって防がれる。
だが他のところはそうはいかない。軽減は出来ても大ダメージを負った者や……耐えきれず亡くなった者も居た。
ストルンが地上に降りる。
「弱いな、定命の者は……こんなところで何をしているのやら」
そうストルンは見下しながら言った。
ストルンがここに来たのは定命の者──死の概念がある者の事──たちが集まって何やら作っているのが気になったからだ。
取りあえず力関係をわからせるため半分程殺してから何を作ってるのか聞こう、ときたのだ。
それに反抗するのが一人。
「人間様舐めてんとちゃうぞ蜥蜴風情が!」
そう叫び突撃するのはこのアインス一番のワーカー、ガンツだ。
己の背を超えるほどの大剣を持っている。その剣は全てアダマンタイトで出来ている剣で城が買えるレベルの代物だ。
黒髪黒目の男で鎧の上からでもわかる分厚い筋肉を持っている。
ガンツのレベルもまた高い。三十四という人類の中でも最高峰に近いレベルの持ち主だ。
だからブレスを
そこに唯一のパーティメンバーの少女のバフ魔法が重なる。
「死ねいドラゴン!」
ガンツが突撃し、大剣で斬りかかる。
ストルンは腕で防御する。
生物に当たったとは思えない硬質的な音が響いた。
「む!」
だが、斬れた。
鱗が斬られ、竜が血を流す。
「こいつも血が通った生物だ! 殺せる!」
ガンツはそう叫び後退しながら
行使する
これは飛ぶ斬撃を放つ
飛ぶ斬撃を喰らったストルンは一瞬怯んだ。
その隙を逃すワーカーたちではない。
ワーカーたちは既に塹壕やバリケードから出ている。
ローフェはこっそり飛行魔法を唱え空を飛んでいた。
その他多数の魔法攻撃と矢が飛んで行く。
どれも
一つ一つはカスダメージでも重なれば面倒なダメージになる。
「煩わしいぞ、定命の者ども!」
ストルンはそう叫びブレスの構えを取る。
ブレスは竜最大の攻撃だ。上位の竜ともなるとそれは致命の一撃と化す。
「
ローフェが魔法を放った。
風の巨大な刃がストルンの顔に命中し、ブレスの予備動作をキャンセルさせた。
これはストルンにダメージを与えた。レベル百の放つ魔法はそれだけで脅威だ。例え低位の魔法だとしても。
一瞬、ストルンは目を閉じてしまった。
その隙を突いてガンツが攻め立てる。
重量のある大剣だというのに短剣かのような速度で剣を振るう。
小さいながらもダメージが蓄積していく。
「煩わしいぞ、定命ども!」
ストルンはそう叫び腕でガンツを吹き飛ばした。
ストルンには細かいダメージが蓄積している。
放置すれど死にはしないが、煩わしいダメージだ。
ストルンが再びブレスの構えを取る。
その瞬間、空から攻撃魔法が降って来た。
第五環魔法の
黒い魔力によるレーザー砲がストルンの胴体に命中した。
「何者だ?!」
ストルンは叫び、空に顔を向けた。
空には異形が居た。
二メートルという長身の人型。頭髪の無い頭。首が二つ生え、頭も二つある。
脇の下からもう一対腕が生えている。
上の両手には
異形種ドゥルガン。このアインスの街領主のカール&ユルゲンだ。
上の手はカールが。下の手はユルゲンが操作している。
「よくぞ持ちこたえたワーカーたちよ。もうひと踏ん張りだ!」
ユルゲンがそう叫び、空から急降下しストルンに襲い掛かる。
「舐めるな定命!」
ストルンはそう叫び殴り掛かる。
拳と斧が衝突した。
ストルンの腕に傷が入った。そのことにストルンは驚愕する。
ストルンのレベルは四十五。そして竜はレベル以上のステータスを持つ。その己が
ドゥルガンは二種類のクラスレベルを持つことが出来る種族だ。
故にカールが
そのためそのステータスや攻撃は面倒な処理方法になっている。
ステータスが合算されている訳ではなく、それぞれの攻撃時に己のステータスで処理が入るのだ。
そしてレベルとHP、MPは共通する。
カール&ユルゲンのレベルは三十四。非常に高い者だ。やり方次第では単独で小国を滅ぼすことすら出来るだろう。それだけの力を持っている。
そしてすでにユルゲンはカールから多数の支援魔法を受けている。だから格上のドラゴン相手に攻撃が通じるのだ。
「
右の頭、カールが召喚魔法を唱えた。
召喚魔法は原則術者より強いモンスターを召喚、使役は出来ない。と言っても強力な
召喚されるのは
五メートルほどの巨大な狼であり、腕はどこか人っぽいが毛皮に覆われている。
配下の狼系モンスターを強化する
召喚魔法で複数のモンスターを召喚する事は出来るが特化型でない場合は強力なモンスターを一体か弱いのを四体程度しか召喚出来ないのだ。
召喚系魔法は他の魔法を上書きして召喚するので第五環魔法で召喚した上第四環魔法で召喚する、という事は出来ない。
「獣風情が!」
ストルンがローウルフロードに向かって殴りかかる。
しかしローウルフロードは紙一重で避けた。
ローウルフロードは攻撃力は同レベル対より低いが、その代わり移動速度が非常に高いのである。だから竜の一撃を避けれる。
避けられ体勢を崩したところをユルゲンが攻撃し、それを補助するようにローフェも魔法を唱えた。
「
「<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上><闘争心><超狂化>!」
ユルゲンが使ったのはステータス上昇系の
<肉体向上>はステータスをレベル一分。<肉体超向上>はレベル二分。<真・肉体向上>は三レベル分上昇させる。これで合計六レベル分ステータスが上昇した。
<闘争心>は斧を持っている場合のみ使える
ローフェの風の刃によってストルンの右腕に大きな傷が入り、ユルゲンがそこに追い打ちをかけた。
それによりストルンの右腕が斬り落とされた。
「ガアァァァァァァ! 定命の者風情が!」
ストルンが怒り叫んだ。
ストルンの斬られた右手の切断面から血がドバドバと流れる。
竜にとってもこれは致命傷だ。放置すれば死に至る。
だからすべきは撤退だが、竜のプライドがそれを許さなかった。
ストルンは己の翼をはためかせ、空に上がろうとする。
しかしローフェがそれを許さない。
「
魔法を四重化──四つ同時に発動させた上
それはストルンの翼を引き裂き、飛行能力を奪った。
「なんだと?!」
少し浮き上がっていた体は地面に落ちる。
そこにガンツとカール&ユルゲンが襲い掛かる。
即席の連携。だが、両者とも熟練の戦士。息の合った、とまではいかないがお互いの動きを邪魔しない連携でストルンを攻撃する。
「舐めるなぁぁぁ!」
そうは叫ぶも、ストルンの敗北は近い。
右腕を斬り落とされたことによる迫る出血死。それにより焦りが生まれ、行動が裏目に出やすくなる。
そこに格下とはいえ自身にダメージを通せる強者二人。
更に、隙を見ては遠距離攻撃を飛ばしてくるワーカーや騎士たち。
スタミナや魔力は限界だ。だが、回復のポーションで無理矢理回復させ攻撃する。
駒かいダメージが蓄積していく。それによりさらに焦りが生まれる。
焦燥は精密性を奪っていく。
戦闘開始して二十分後。ついに──
「止めだぁぁぁぁ!」
ガンツがそう叫び、大剣でストルンの首を攻撃した。
斬り落としたとは言えない。だが深い傷を与えた。致命傷だ。
「定命の者……なんぞに……」
それが最後の言葉となり──竜は倒された。