災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から   作:Revak

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第11話

 

「俺たちの勝利だ! 勝鬨を上げろ!」

 

 ガンツがそう叫び、ワーカーと騎士たちが拳を上げ声を叫んだ。

 

 強敵を打倒したことによる喜び。まだ生あることに対する感謝。

 そして、この戦いで亡くなった者たちに対する黙とうをかね、彼らは叫んだ。

 

 ローフェも叫んだが、少し恥ずかしそうに叫んでいた。

 元日本人としてカラオケででもないのに大声を出すのは恥ずかしいのであった。

 

 

 

 

 ■

 

 ストルン討伐で報酬を得、ワーカーたち一同で組合で宴会をした。

 ローフェもその日ばかりは日本酒などを飲み、歌い、笑った。

 

 そして、これからは平穏な日々が続くのだ──と思った翌日。

 

 組合で前日のようにどの依頼を受けようか、なんて三人で談笑していると再び男がやって来た。

 呪文詠唱者(スペル・キャスター)のようにローブを着用している男だ。

 

「ドラゴンが来た!」

 

 その声に一同固まった。

 

 ドラゴン。世界でも上位に入る超生物。

 それが再びやって来た。

 

「嘘だろおい?!」

「見間違いじゃないのか?!」

 

「確かに見た! 馬鹿でけぇ白いドラゴンがこの街に来ている!」

 

 もう一度ドラゴン相手に勝てなど、もはや不可能に近い。

 ワーカーたちは前日の戦いで疲労しているし、更に言えば消耗品──巻物(スクロール)やポーションなどは殆ど消費している。

 前日のようにドラゴンに一斉攻撃なんてことはもはや出来ない。

 更に言えばストルンのブレスで何人も死んでいるし、怪我が治ってない者も居る。

 

 絶望した空気が流れる。

 

 ローフェはそれを見て、どうするか悩んだ。

 

 正直に言えばローフェ一人でドラゴンなど倒せる。だが、ここで力を振るえば正体がバレる。

 見捨てるべきだろう。己の正体がバレるというリスクを背負ってまで助ける義理は無い。

 

 だが、かつて人を導いた神としては、見捨てる事など出来なかった。

 

「御免私ちょっとトイレ!」

 

 ローフェはそう言いダッシュで組合を出た。

 あまりの速さにウーとエルフィが何か言う間も無かった。

 

 そして外に出たローフェは路地裏に走ると封印を一段階解除する。

 それにより身長や胸が元に戻り、大人の姿に変わる。

 

 そして飛翔。竜の気配がする方へ飛んで行った。

 

 だが竜はすぐそばに来ていた。

 

(でかいな)

 

 街の少し外の上空には竜が居た。

 アイボリー色の鱗に覆われている。背中には竜の翼とは別に鳥の様な翼が一対ずつ生えている。

 圧倒的巨体。全長四十メートルにも達する巨体を誇り、髭を携えている。

 

 神眼で見たそのレベルは、六十。

 国を亡ぼすことも容易な怪物である。

 この街の戦力が万全な状態だったとしても決して打ち勝つことは出来ぬ逸脱者である。

 

 だが、ローフェには遠く及ばない。

 

 ローフェが<小空間>(ポケットスペース)からグングニルを取り出す。

 これを一回ぶん投げるだけで勝てる相手だ。

 

「神は全て去ったと思っていたが、地上に残っている者がいるとはな」

 

 そう竜が口を開いた。

 

「余は例外だ。そして竜よ。何故この街を襲う?」

「それは誤解だ。私はこの街を襲いに来たわけではない……だがここに来た黒竜──ストルンはここを襲ったというのか……代わりに謝罪しよう」

 

 そう言って竜は頭を小さく下げた。

 

「私の目的は二つ。ストルンを止める事……それは貴女様によってなされたようなので達成されている。もう一つは定命の者たちが何か街を作っているので、それを見に来たのだ」

「確かに街を作り、開拓している。それが何か問題なのか?」

「うむ……この大陸の殆どは我ら竜が支配している。その支配地で見慣れぬ種族の者たちが何かを作っている。警戒するなという方が無理があるだろう? いったいそちらは何者なのだ?」

 

 人間種はニヒツにしかいないある種のレア種族だ。だから竜が知らなくとも無理はない。

 

「この街を作っているのは人間という種族だ。と言っても領主はドゥルガンという異形種だが」

「人間……竜神から聞いたことがある。脆弱だが、可能性に満ちた種族だ、と……そうか。大陸を渡って来たのか」

 

 竜は目を閉じ、何かを考える素振りを見せる。

 

「うむ。竜を代表して謝罪と、慰謝料を払おう。そして……その街が我々に害がないか見極めないといけない。私をその街まで連れて行ってくれないか?」

「街を見極めた後はどうするつもりだ?」

「うむ……まずは貿易を、と考えている。襲撃した詫びもかねて、レートはそちらに有利にしようと思っている」

「……いいだろう。だが少し待ってくれ」

 

 そういうとローフェは自らを封印し、幼女形態になった。

 

 姿が変わったことに竜は驚くも何も言わなかった。

 

<念話>(テレパシー)。エルフィ、聞こえる?」

『ロー?! 急に居なくなってどうしたの?! 今街の外で準備してるんだけど、そっちで何かあったの?』

「うん。実は一人で竜と話してきた」

『はぁ?! 何考えてるの?!』

「それで落ち着いて聞いて欲しいんだけど、竜は謝罪と、街と貿易をしたいって。危害を加える気はなさそうだから、案内したいんだけどいいかな?」

『え?! 竜が?! ……まぁ、上位の竜なら喋れても可笑しくないけど……貿易って?』

「貿易の内容はわからないけど、まぁ悪いことはしないと思うよ。嘘はついてないし」

『なんでそれがわかるのよ……けどちょっと待って、今領主様に話しとおすから』

「うん。わかった。決まったら<念話>(テレパシー)お願いね」

 

 そういうと念話が切れる。

 

「暫く待ってくれ。街の領主に話が今行っている」

「わかった。待つのは苦ではない。幾らでも待とう」

 

 そうして十分後。ローフェに念話が来る。

 

『領主様に聞いたけど、取りあえず来ていいって……ただ、武装して待ち構える事にはなるけど』

「わかった。それでいいと思う。それじゃあ向かうね」

『……気を付けてね』

 

 そうして念話が切れる。

 

「領主が会ってくれるらしい。ただ、武装した状態で、だが」

「構わない。したことを考えればその対応も仕方がないだろう……では、案内してくれ」

「こっちだ」

 

 そして二人は空を飛んで行く。

 レベル六十という高レベルの竜であるため飛行能力も相応に高い。

 と言っても幼女形態のローフェの本気の速度についていける程ではないのでローフェは速度を落として飛ぶ。

 

 飛ぶ事十分と少し。アインスの街に着く。

 

 門の前、領主やワーカーたちが待つ前に二人は着地する。

 

「初めまして。私はラグーン。このガロルモロウを統べる竜だ。そちらの名は?」

「私はカール」「俺はユルゲンだ」

「では、カール殿、ユルゲン殿。まずは私の配下の竜がこの街を襲撃したことに対し謝罪を」

 

 そう言ってラグーンが頭を下げた。

 竜はプライドが高い種族として知られている。その竜が頭を下げたことにワーカーたちが驚愕する。

 

「その謝罪を受け入れよう。だが、誠意は見せて欲しい」

「勿論、相応の金銭で賠償しよう……ここで話すのもなんだ。姿を変えよう」

 

 そういうとラグーンの体が光った。

 次の瞬間、ラグーンは人型になっていた。

 上位の竜は擬人化能力を持つ。

 

 身長百七十五センチ。白髪赤目。初老の男性と言った雰囲気の男だ。

 背中からは竜の翼が生え、頭には角が生えている。

 

「うむ。では私の屋敷まで案内しよう……」「ワーカーたちは一旦解散してくれ」

 

 そうして次の危機は去った。

 

 

 

 

 ■

 

 竜、ラグーンが来てから二か月が経った。

 その間で、このアインスも大きく発展した。

 

 ラグーンの支配領地と大々的に交易が始まったのだ。そして、人の流通も。

 

 それを見て、ローフェはこれ以上自分がいるとロクなことにならないな、と苦笑した。

 圧倒的強者が居ればそれに依存したシステムが出来てしまう。その強者が不老不死に近いとなればなおさらだ。

 だから、ローフェはニヒツに帰る事を決めた。

 

「という訳で、パーティ解散しようと思うんだ」

 

 ワーカー組合に併設されている酒場で。ローフェは唐突にそう切り出した。

 

「え? もっと稼ごうよ!」

 

 それに反対するのはエルフィだ。

 パーティも二級に上がり、得られる報酬も大きくなってきている今、解散するのはありえないと否定する。

 それに対しウーは同意するように頷いた。

 

「まぁ、ここらが潮時だな。ワーカーとしてこれ以上居てもロクな事にはならなさそうだ」

 

 今このアインスには竜やその支配下の者たち……例えばオークやロックモルド、カプレシアなどの異形種や亜人種が来ている。

 それらの異種族との衝突による多少の治安の悪化。そして、対モンスター戦を常備軍がすることによるワーカーへの依頼数の低下。

 勿論常備軍でも強者は少ないので二級ともなればまだ依頼は多数あるので問題ないだろう。

 だが、街全体にワーカー排除の流れが出ていることをウーは察知していた。ローフェは気づいていない。

 

 ワーカーとは対モンスター用の傭兵の様なものだが、はたから見れば武装した個人の集まりなど国などにとってみれば邪魔でしかない。

 必要ないならば排除したいのが人心というものだ。

 そして今、確実に下位のワーカーたちは不要になってきている。モンスター戦において多種族の力を借りればいいのだから。

 

 だから、ウーは解散することに賛同した。

 

 二対一という不利を悟り、エルフィはぐぬぬとうねった。

 

「それにエルフィ、あなた魔術師組合から勧誘受けてるでしょ? そっちのが安定してない?」

「それは……そうだけど……」

 

 魔術師組合とは呪文詠唱者(スペル・キャスター)が所属する相互組合だ。

 呪文詠唱者(スペル・キャスター)、魔術師同士で魔法の開発をしたり、開発した魔法を公開したりする。

 更にある程度仕事を回している。巻物(スクロール)短杖(ワンド)の作成などだ。

 短杖(ワンド)とはその魔法が使えるクラスに就いている者のみ使える魔法道具(マジックアイテム)で、込められた魔法を一定回数使うことが出来る。

 威力などは作成者のステータスに依存する。また使い切ると壊れる。

 これの上位版の魔杖(スタッフ)というのもある。

 

 その日暮らしの安定していないワーカーなんぞより魔術師組合で魔法の研究開発、巻物(スクロール)の量産や組合が持ってくる幾つかの仕事をこなした方が安定した暮らしが出来るに決まっている。

 

 このアインスの街の組合も発展してきており、仕事も多くある。

 金も多く流通してきているのだ。

 

 エルフィ個人としてはワーカーの仕事に未練などはない。

 生きていくのにその仕事しかなかったから、ワーカーを選んだだけなのだ。

 今のエルフィは第四環魔法すら使える熟練者。魔術師組合も大手を振るって歓迎するだろう。

 

「……わかったわ。けど、ウーはどうするの?」

「俺は領主様に騎士にならないかって誘われてるからそれ受けるわ」

 

 ウーも既に就職先を見つけていた。

 だから解散することに賛成したのだ。

 

「それじゃあ、せめてもので今日は解散パーティを開くわよ! めっちゃ飲むから覚悟しなさい!」

「二日酔いには気を付けてね」

 

 この後めちゃくちゃ酒盛りした。

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