災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から   作:Revak

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第13話

 

 昼過ぎ、十三時ごろにローフェは準備を終え、庭に戻った。

 

「戻ったぞ」

 

 ローフェは<小空間>(ポケットスペース)にありったけの巻物(スクロール)や短杖(ワンド)をしまい込んだ。

 普通魔法はレベルアップ時に三つの魔法のうち一つを選択して習得する。

 レベル百時点で百の魔法を覚えることになる。

 だが、それ以外にも魔法を覚える方法はある。

 他者からの伝授や魔導書という読むだけで魔法を覚えられる魔法道具(マジックアイテム)を使うなどだ。

 ローフェは呪文詠唱者(スペル・キャスター)としてのクラス構成をしているが、魔法を一切習得していない状態で生まれた。

 そのため魔法は他者から教えられるか、魔導書を読むか、あるいは自力で開発するしかない。

 その長い生でオリジナルの魔法も創っているが、そのほとんどは便利系や香辛料創造などの魔法だ。攻撃系魔法の習得数は少ない。

 そして魔導書は高い為、ローフェと言えど気軽に買える物ではない。

 そのため習得していない魔法は短杖(ワンド)や巻物(スクロール)で代用するしかない。

 もはや先に魔導書買っておいた方が安かっただろ、というぐらい短杖(ワンド)と巻物(スクロール)を持っているがそれはご愛敬だ。

 

「では行くぞ」

 

 二人の近くにより、ローフェは魔法を唱える。

 唱えるのは<上位転移>(スペリア・テレポーテーション)という第七環魔法だ。

 第五環魔法にも複数人で転移できる魔法があるがこれはそれの上位版だ。

 第五環魔法だとマーキングした場所にしか転移出来ないが第七環の場合は記憶してある場所や一度見たことある場所ならマーキングする必要なく転移出来る。

 

「<上位転移>(スペリア・テレポーテーション)」

 

 そして転移魔法で三人は壁に囲まれた街、カルコゾに転移した。

 と言っても街のすぐ外だ。街中への転移魔法は緊急時を除き禁止されている。

 

 ハジメを先頭にし三人は街の門へと進む。

 

 門の前には騎士が立っており、警備している。

 騎士が三人を呼び止める。

 

「止まれ。通行証と通行税を。一人銀貨一枚だ」

 

 かつてあった円制度は暴落し、意味を成さない物となった。

 信用崩壊やらなんやらかんやら起こりすぎてただの紙くずと化したのだ。

 結果新しく各国で通貨を作り始め、貴金属である金、銀、銅が使われるようになった。

 通貨も金貨、銀貨、銅貨が使われている。ちなみに公共機関で使える通貨がこの三種類なだけで銅粒や銀粒と言った貨幣も使われている。

 余談だが、紙幣の偽装防止であるシリアルナンバーから着想を得た天邪鬼が富くじという宝くじを発明し、大儲けした。

 

 ローフェが支払おうとしたらアルバスが前に出て止め、アルバスが<小空間>(ポケットスペース)から銀貨三枚と通行証を取り出した。

 

「確認した。通ってよし」

 

 そして三人は街中に入っていった。

 

 

 

 このカルコゾの街には大きな特徴がある。

 

 ローフェはこの街は変わらんな、と少し周囲を見る。

 

 見れば、各家に一体ずつゴーレムが居るのが見えた。

 

 ゴーレムとは広義で言えば魔法道具(マジックアイテム)の一種だ。

 術者と材料によってレベルが変わる存在であり、元が物体なので疲労も病も無縁な存在だ。

 ただ装備を使う事や魔法を行使する事は出来ない存在であるし制作にコストもかかる為一山いくらの雑兵になりやすい。

 ローフェもゴーレムを創造する魔法は習得しているが良い材料を使っても二十レベルのゴーレムを作るのが限界だ。

 

 ゴーレム使いには専用のクラスがある。そのクラスに就いてない場合制作に時間がかかるし、作れても弱いゴーレムしか作れない。ローフェのように高レベル故のごり押しというのもある程度利くが。

 

 この街の領主の一族は代々ゴーレムクラフターというゴーレムを作る専用のクラスを修めている。そのためこの街にはゴーレムが多数いる。

 と言っても一般家庭に販売されるのは高くてもレベル五程度のゴーレムだ。更に緊急時は製作者側の命令を聞くよう指示を受けている為、武力として使う事は出来ない。家に強盗が入ったなどの時は防衛してくれるが。

 

 ゴーレムの外見は岩を削り、すらっとした人型にしたものが多い。

 ゴーレムクラフターでない場合雑な造形になりやすいが、そのクラスに就いている者が作っているので体形もある程度自由自在だ。やろうと思えばメイド型ゴーレムなんてのも作れるだろう。

 

 ハジメの足取りは少し重いが、ローフェはあえてそれを気にせずずかずか進む。

 

 ローフェが本来の姿でこうして歩くと、ある程度注目を集める。

 ラモトラでは違うが、この大陸ではやはり災禍教が広まっているからだ。わかりやすく言えばキリストの外見した奴が居れば嫌でも注目を集めるのと同じだ。

 

 熱心な信者ならローフェを見て文句を言いそうなものだが、ローフェが放つ神としてのオーラがそれを許さなかった。

 

 そうして暫く歩くと大きな屋敷に辿り着く。

 

 当然門番が居り、ハジメが二人いる門番の騎士の片方に近づく。

 懐からある紋章を取り出す。

 

 門番はそれを見て目を点にした。全身鎧で兜をかぶっているので外からは見えないが。

 

「そ、その紋章は……!」

「どうか通してくれないかな? 大事な話があるんだ」

「か、畏まりました! 少々お待ちください!」

 

 片方の門番が走って屋敷へと向かった。

 屋敷には柵というか壁があり、壁内には馬鹿広い庭があるので行き来するのに苦労しそうだ。

 だがこの世界の存在は鍛える──レベルを上げると身体能力が相応に上昇するので一般的な騎士──レベル十程度でも全身鎧を着た状態だろうとフルマラソンを二時間程度で完走できる。

 

 そしてまたしばらく待つと今度は執事らしき男と共に門番が戻って来た。

 

「我が公爵家へようこそおいでくださいました。我が主君がお会いになるそうです」

 

 そう執事は言い、どうぞこちらへと手招きした。

 

 三人は小さく礼をしてから執事に着いて行く。

 

 門を通り、庭を通って屋敷内に入る。

 

 この世界では家の中でも靴を脱がない。ベッドに入るときぐらいしか靴は脱がない。

 

 そのまま屋敷の二階の客室に案内される。

 執事がドアを開けると、そこにはカルコゾの領主にして現公爵、マルクス・ルッセル・カルコゾが居た。

 まだ若い……二十代後半程度の男だ。だが、荒事を経験した者の目つきをしている。

 公爵らしい豪華絢爛な服を着ている。一流のデザイナーが手掛けた一品もので、魔法道具(マジックアイテム)でもある。

 魔法道具(マジックアイテム)としての機能は気温調整程度で防具としての機能は全然ない。

 金髪碧眼の男だ。

 

 そして、部屋を囲うように騎士たちが居た。

 

「ようこそ、我が国の敵である帝国の皇子様。私の領地に何の用かな?」

 

 そうにっこりと作った笑みでマルクスは問いかけて来た。

 相手の方が身分が上だというのにマルクスは座ったままで、騎士たちは剣呑な雰囲気を出している。まさに一触即発と言った感じだ。

 

 マルクス側にとってみれば、敵国が望む物がなんでうちに来た、という怒りがある。

 これこそまさに帝国が攻めてくる大義名分そのものが来たような物だ。マルクスにとってハジメは敵である。

 

「敵とはずいぶんな言いぐさではありませんか。貴方は私の妹であるレーナを娶ったはず。その兄に対する言葉ですか?」

 

 ハジメも若干煽った。

 そして三人はソファに座る。

 

「……余計な問答はよそうか。何故、ここに来た? ここを帝国に売る気か?」

「その逆です。帝国に対し戦争を仕掛ける為に来ました」

 

 その言葉にマルクスは驚いた表情を見せた。

 

「……祖国を裏切るというのか?」

「裏切ったのは祖国の方ですよ。皇帝が私を殺しに来たので、やり返すだけです」

 

 ハジメはそう肩を竦めたように言った。

 勿論これはポーズだ。

 

「……だが、私が帝国に牙をむいて何になる? そもそも国王陛下がそれを許すとは思えない」

 

 現状、カルコゾがある国──ジュリアード王国は公的には帝国と敵対していない。

 第三王女であるアンナが公爵家に嫁いだからだ。だから帝国もジュリアード王国に対しては敵対を選んでいない。

 ただジュリアード王国としては帝国に見切りをつけ、裏で帝国に敵対する国家に対し支援をしているが。

 だからマルクスも既に帝国との戦争は秒読みの段階だと知っている為、先の発言はブラフだ。

 

「私から、帝国を滅ぼした暁には正式に領地を分譲する事と……宝物庫から幾つかの国宝の明け渡し。それを証明するために……アルバス、剣を」

「うむ。<小空間>(ポケットスペース)」

 

 アルバスが異空間からアダマンタイトで出来た青い剣を取り出した。

 

「それは……!」

 

 青い輝きはアダマンタイトの証。それで出来た刀剣は屋敷を買ってお釣りがくるレベルの剣だ。そこに更に魔化──魔法道具(マジックアイテム)化が施された剣ともなると城が買えるレベルである。

 

「これをジュリアード王国に対し贈ります。これでは不十分ですか?」

 

 そうハジメは微笑んだ。

 

 そのことに対しマルクス公爵は悩む。

 

 内心はこうだ。

 

(……帝国との敵対は既に決まっているもの。ただ敵対した状態で宝物庫から財宝を得られる……うぅむ)

 

 どの国も宝物庫に対しては厳重な警備を敷いている。

 単純な高レベルの者の配置から、魔法的や物理的なトラップの配置までしている。

 更に大貴族レベルともなると解錠そのものに一定条件を満たした者でないと開けれない、なんてのも仕込む。

 この世界、貴族としてのレベルもある。と言ってもレベル上限は戦士などと同じで三十もあればそれはチンギス・ハンだとかレオナルド・ダ・ヴィンチを超えた化け物ともいえる頭脳を持つだろう。

 勿論それは後天的に得たクラスの影響であり、先天的にそれらに匹敵、あるいは凌駕する頭脳の持ち主もいるだろうが、それは置いておこう。

 

 つまり解錠の条件に一定レベル以上の特定の血──遺伝子を持つ者とすることも可能だ。

 

 だから、敵国の城を手にしたけど宝物庫が開けられません、なんてことが起こりうる。

 勿論物理的に破壊すれば済む話だが、当然破壊されにくいように対策はしているだろう。

 

 ハジメの提案を受け入れるという事は、その手間がなくなる程度の物でしかない。

 

 だから別に受けても問題はない話だ。何せ帝国との戦争の準備は現在進行形で行っている。

 

「そこに、余が兵士として参戦しよう」

 

 そこにローフェが口を挟んだ。

 

 マルクスは一見妙なオーラを放つ従者が口を挟んだ事に眉を潜めた。

 

「あぁ、紹介が遅れました。この方は災禍教が崇める女神、ローフェ様です」

 

 その言葉にマルクスと騎士たちは目を点にして驚いた。

 

「女神本人、だと……?!」

 

 マルクスは思わず口にしてしまうぐらいには驚いた。

 マルクスは災禍教の信者ではなく、大地と自然の女神ネイカを崇めるネイカ教の信者である。

 女神の神託を受けたことはなくとも、神の実在は疑ってないのがこの世界の住人だ。

 

 何せ信仰系魔法──回復魔法などは神を信仰してないと習得できない魔法だからだ。

 と言っても、神が力を与える事で習得する、というシステムではなく信仰心を元に習得するシステムなのでぶっちゃけ神が居なくなっても習得、使用は可能なのだがこの世界の住人にとってみれば信仰することで神が力を与えてくれた、と認識しているので問題はない。

 

 だからこそ、ローフェが放つ神のオーラと周知されているその容姿を見て女神だと確信出来た。

 

「……なるほど。女神が力になってくれるというのならこれほどありがたいことはない。この話、受けさせてもらおう」

「感謝します。ルッセル卿」

 

 そうハジメは小さく頭を下げた。

 

「ですが、まずは王都に女神が参戦することを伝えなくてはなりません。そのために王都に使者を送らなければ……暫くの間。この屋敷に滞在してもらいたいのですが、いいですか? 女神様」

 

 マルクスはローフェに許可を取る様に問いかけた。

 人の王より当然女神の方が立場が上である。そのため本来なら王がローフェが居るここに来るべきだが、メンツという物がある為それは出来ない。

 ローフェ自身は気にしないだろうが、このことがローフェを崇める災禍教の者たちに知られれば面倒な事になるだろう。

 

「わかった。暫く世話になるぞ、ルッセル卿」

「えぇ。精一杯おもてなしさせていただきます」

 

 マルクスはそう笑みを浮かべた。

 

 

 

 ■

 

 その後、こまごまとした話を終えた三人はゲストルームに通された。

 各々一人ずつの部屋だ。

 内容としては女神をただの人と同じ部屋に入れていい物か、という話でありアルバスと同部屋には出来なかった。

 女として生きた年月の方が圧倒的に長いローフェにしてみれば女性と同部屋でももはや何も思わないが、相手の好意だから遠慮せず受け取ろうと一人部屋を受け取った。

 

 マルクスは公爵家なので屋敷も当然でかいし広い。だから一人一部屋でもまだ余裕がある。

 

 そうして初日を終えた次の日の朝。

 

 三人はマルクスと共に朝食を取っていた。

 

 この世界、食文化が結構発達している。

 原因は言うまでもなくローフェだ。日本食が恋しいローフェは食の開発に余念がなかった。

 更にこの世界には魔法という便利ツールがある。

 特に便利なのは<保存>(キープ)という第二環魔法だ。

 この魔法は食物を腐らせず長期間──それこそ何十年とか術者の技量によっては百年単位で保存することが出来る魔法だ。

 この魔法と交通網の整備。更に森司祭(ドルイド)という自然操作系に特化した呪文詠唱者(スペル・キャスター)の手によって農作物は安定した収穫を見せた。

 その結果、食料品は安価になり、飢える事はよほどのことが無い限り亡くなった。

 と言っても今の時代──ローフェが統治を辞めた結果一部の技術はロストテクノロジーになったりしたが、それでも大国ならば食料品は安価に買える。

 

 結果、貴族の家ともなると豪華な食事になる。

 

 分厚いトースト二枚に卵黄が二つの卵焼き。ウィンナーにレタスなどのサラダだ。

 この世界の植物などはローフェがなんかこれキャベツっぽいからキャベツな、などと命名しているので日本のと同じ名前が多い。詳しい分類を言えば違う物もあるが。

 

 いただきます、と手を合わせ食事をする。

 

 因みにローフェに飲食は不要だ。だが出来ない訳ではなく、食事をしてバフを得ることも可能だ。

 この世界の優れた料理人──コックなどのクラスを持つ者が調理すればそれは一定時間のステータス増強などのバフを得られる食事となる。

 無論相応のバフを得るには食材も厳選しないといけないが、一般的な食材でもちょっとしたバフを得るぐらいは可能だ。

 

「女神様。出来れば王に女神さまが居る、という事を示す証が欲しいのですが……何かありませんか?」

 

 ローフェはマルクスの言葉にふむ、と考える。

 普通に考えれば女神が参戦します! と言ったところで何を言っているんだお前は、となって終わりだ。だから女神が参戦する証明が居る。

 ローフェは何かないかな、と考える。

 

「では、災禍教の天使を一人呼ぼう。彼女なら使者として相応しいはずだ」

 

 ローフェが持つ神としての権能──特殊能力(スキル)に<天使創造>という物がある。

 この特殊能力(スキル)は魔力を消費することで天使を創造することが出来る特殊能力(スキル)である。

 消費した魔力量に応じて創造される天使の強さは変わる。

 普段自堕落に暮らしているローフェに変わり災禍教の自浄作用をしている天使で、名をヘルビムという女の天使だ。

 ローフェは彼女以外に何人か天使を創造している。

 基本創造した天使は効果時間が終わると消えるが、聖者の遺体を使う事で効果時間を無限にすることが可能だ。

 そして創造系特殊能力(スキル)や魔法は召喚系魔法と違い複数の創造が可能である。

 

「天使様、ですか……実在しているとは」

 

 天使はローフェが創造しただけでなく、原初の神々も創造している存在だ。

 ただ原初の神々の場合作成コストがなく、効果時間も無限というインチキだが。

 

「あぁ。朝食を終えたら念話の魔法で呼び出しておこう」

「お願いします」

 

 

 

 ■

 

 朝食を終えた後。ローフェは中庭に出ていた。

 

「<念話>(テレパシー)。ヘルビム、聞こえるか?」

『マスター、何か御用ですか?』

 

 聞こえてきたのはまだ若い女の声だ。妖艶な美女の声である。

 

「あぁ。今ある戦争に参加する事になったんだが、王への使者として其方に来てほしくてな。今どこにいる?」

『カーバインの教会に居ますわ』

「ならそこにゲートを開く。此方に来てくれ」

『畏まりました』

 

 ローフェが最上位の転移魔法を唱える。

 

「<転移門>(ゲート)」

 

 <転移門>(ゲート)は第九環魔法の転移魔法だ。

 転移阻害をある程度無視して転移可能で距離無限転移可能数は魔力の許す限り無限だ。

 今のローフェなら一度に五万人程度なら転移させられる。

 

 ゲートから一人の妖艶な美女が出て来た。

 

 艶めいた黒く長い髪。目は真紅のように赤い。

 黒いトーガを着ており、着崩しているのか豊満な胸がまろびでそうである。

 背中には白い天使の翼を持ち、頭上には紫色の天使の輪が浮いている。

 顔つきはどこか妖狐の擬人化的な、傾国の美女を思わせる顔つきだ。街を歩けば十人中十人が振り返るだろう。

 ローフェはその女──ヘルビムの胸と己の胸を見比べた。

 ヘルビムの方が圧倒的にでかい。サイズで言えばGカップぐらいはある。

 それに対しローフェはDカップ程度。ヘルビムは己が創造したはずなのに何故こんなに差があるのか。解せない。

 

「よく来たな、ヘルビム。先ほど念話で話した通り、このジュリアード王国の王に対し余が戦争に参加することに対する使者として赴いて欲しい」

「畏まりました。災禍教の方はどうしますか?」

「一時仕事を……そうだな。エクシアの奴に代わりにさせる。こちらから連絡しておこう」

「畏まりました」

 

 ローフェが千年統治している間に聖者──高レベルの神官は何人も生まれ、死んでいる。

 その間に創造した天使の数は六体だ。

 エクシアもまた女性型の天使である。

 

 そこにマルクスがやってくる。

 

「……そちらの方が天使様か」

 

 マルクスがヘルビムを見て感嘆の息を漏らした。

 今を生きる人間にとって天使はもはや伝承でしか登場しない存在だ。その人物を生で見れたことに対する感動である。

 

「初めまして。私はヘルビム。ローフェ様に創造されし天使の一人ですわ」

「初めまして、ヘルビム殿。私はマルクス・ルッセル・カルコゾ。このカルコゾ領の領主を務めています」

 

 ヘルビムの方から手を差し出し、両者は握手をした。

 

「馬車の用意は出来ています。すぐにでも出立しましょう」

 

 そうしてヘルビムは王都に向かったのだった。

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