災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から   作:Revak

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第14話

 

 ヘルビムとルッセル卿の使者を乗せた馬車は問題なく進んで行った。

 この国も戦争の空気に当てられた者や他国からの敗残兵などの野盗が来ているが、まだ露骨に護衛が多くそして貴族の馬車を襲うような愚者は居なかった。

 仮に居たとしても優れた護衛たち、更にレベル七十のヘルビムが居るので何があっても問題なかっただろうが。

 

 ヘルビムのクラス構成は特殊な前衛戦士型。どちらかというと特殊能力(スキル)攻撃に特化している為多数の特殊能力(スキル)を持つ。

 その反面魔法行使能力は無く魔法は一切使えない。

 余談だがローフェへの連絡は創造された者と創造主間の繋がりを使って連絡するため連絡は問題ない。

 

 そうしてヘルビムを乗せた馬車は王都に入り、王都内も進む。

 

 公爵家の馬車ともなると周囲から注目を集める。更に引いている馬が特殊ならばなおさらだ。

 馬車を引いている馬は異形種のモンスターの一種、スレイプニルという八本足のモンスターだ。

 スレイプニルとは魔獣系モンスターの一種だ。レベルは十。

 レベルは低いが移動能力特化型であり運送能力も非常に高い。

 八本足の馬の外見をしており馬の十倍以上の運動力を持つくせに食事量は十分の一で済むというとんでも生態をしている。

 

 それが二頭。馬車を引いている。

 

 スレイプニルは普通の軍馬の五倍の値段を持つ馬だ。その馬が引いているというだけで注目を集め、畏怖される。

 因みに地味に十レベルあるので下手な野盗なら襲った側が逆に殺されることもあるだろう。

 

 ヘルビムは馬車の中で使者と軽い雑談を交わしているとついに王城の庭にまで到着した。

 

 ヘルビムが馬車から出ると、周囲が神聖な空気に変わる。

 そういう特殊能力(スキル)を持っている訳ではない。ただ、存在として神聖存在の為変わるだけだ。

 

「あ、あなたが……天使様、ですか」

「見てわかるでしょう?」

 

 ヘルビムは普通に天使の輪と翼を持っているので見てわかるだろう。

 だがこの世界には翼を持つ亜人種もいるので翼だけではわからないだろうが、謎の浮遊する天使のヘイローは他の種族には無い特徴なのでこれでわかる。

 

 この世界の情報伝達手段は主に二つ。

 一つは<念話>(テレパシー)の魔法、もしくはその魔法が込められた魔法道具(マジックアイテム)の使用。

 もう一つは早馬や速力特化ビルドの者による足による伝達だ。

 

 <念話>(テレパシー)の魔法には一つ欠陥がある。術者の技量──魔力量や魔法攻撃力によって届く距離が変わるというものだ。

 そのため魔法始めたての者の念話だと百メートルぐらいしか届かない。

 無理に距離を伸ばそうとすると音に雑音が混じり、誰の声かわからないぐらい変換されてしまう。

 そのため念話の魔法は緊急時は使われるが基本は使われない。

 故に馬や人を使った手紙などのやり取りが一般的だ。

 

 今回の場合は速度を重視したため王宮の呪文詠唱者(スペル・キャスター)に公爵家お抱えの呪文詠唱者(スペル・キャスター)が<念話>(テレパシー)で連絡をしておいた。

 

 だがそれでも、実在する天使が来るとなると王宮は騒がずにはいられない。

 勿論それを表に出すことはない。だが、内心は心臓バクバクのドッキドキである。

 現代で例えるなら一般家庭に皇族が来ました、みたいなものだ。平常心で居ろという方が無理がある。

 

 ヘルビムと使者──オルムは王宮内に通される。

 

 駐車場を出て王宮内に入り、三階へ上がる。

 この世界、魔法を使った昇降機があるのでいちいち長い階段を登る必要が無いので便利だ。

 エレベーターを出て廊下に出る。

 

 廊下は王が暮らす城らしく豪華な作りだ。

 芸術品である壺や何かよくわからない絵画などが飾られている。

 そうした廊下を通り、客室に通される。

 

 オルムは別の部屋に通された。

 

 ヘルビムはメイドが持ってきた紅茶を飲む。

 

 そうして少し待つとノックと共に老いた男がはいって来た。

 歳は五十代程。髪に白髪が混じっている。

 だが鋭い目をしている。戦士と言われても納得するような体つきもしている。

 

「……初めまして、天使様。私はこのジュリアード王国の宰相を務めているニルス・ラドン・エスターライヒと申します」

 

 そうニルスは頭を下げた。

 

「初めまして。ラドン殿。私はヘルビム。女神ローフェ様に創造されし天使の一人です」

 

 そうヘルビムは微笑んだ。

 美女の微笑みを見て、ニルスは並みの相手ではないと判断した。その目に宿る深い知性を見抜いたのだ。

 

「失礼」とニルスがヘルビムの向かい側のソファに座る。

 

「話は使者から少し聞きました。何でも、我が国とダルマナック帝国との戦争に参戦してくださる、と……それは真ですか?」

「はい。我が女神はこれまでの縛りを捨て、俗世に大きく関わるつもりです。ですので、暴虐の限りを尽くしている帝国に対し神罰を下そうかと」

 

 そうヘルビムは微笑んだ。

 神罰、という言葉にニルスは引きつった笑みを見せた。

 神が実在する世界で神罰を喰らったとなれば、それは周辺諸国全てを敵に回したも同じだ。帝国の味方をしている国も掌を返して帝国を攻撃するようになるだろう。

 それどころか帝国の貴族や皇族は一族郎党皆殺しにされる。

 神罰とはそれだけ重いのである。

 

「と言っても、悪戯に被害を出す気はありません。ですので戦争に参加し、その合戦を勝利に導く、程度に抑えようと思っています」

「……なるほど。それならば、問題ないでしょう」

 

 と言いつつそれでも問題多いなとニルスは考える。

 女神が敵に回った、というだけで帝国内でも反乱がおきるだろうし、逃げ出す者も出るだろう。

 だが、ニルスは冷静に帝国の悪行を考え、そうされても仕方がないと判断する。

 

 今の帝国は腐敗している。

 皇帝が老いでボケたのをいいことに皇帝にある事無い事言いふらして自分に都合のいいように動かそうとする者。戦争に乗じ自国内を荒らす者などが居る。

 だから、それらを考えれば完全に滅んでも仕方がない、とニルスは判断する。帝国内の罪なき者には申し訳ないが。

 

「では。戦争に関する詳しい話をしましょう」

「えぇ。よろしくお願いしますわ」

 

 

 ■

 

 二週間後。

 

 ジュリアード王国は帝国に対し正式に宣戦布告をした。

 それに対し、ハジメの妹であるアンナは仕方がない、と了承しハジメとアンナ両方が帝国内に関するあらゆる情報をジュリアード王国にもたらした。

 結果、王国軍は帝国の西方一番の都市であるウェーステを攻めようと陣地をしいていた。

 

 ローフェは空を飛び、その陣地内に向かう。

 何故一人だけ空を飛んでいるのかというと、演出だ。

 この戦には女神が参戦している、というわかりやすい演出が必要だった。

 

 そして女神の飛行能力ならすぐ王国軍の陣地が見える。

 

 空からくる女神を歓迎するように場が開けられており、ローフェはあえてゆっくりと下降した。

 

 ローフェの姿を見て、兵士たちの間に動揺が広がる。

 この戦に参戦すると決まってから、王国側でローフェの肖像画などを兵士に見させ、ローフェを周知させた。

 その姿そのまま──いやそれ以上の美貌を持つ女神を前に歴戦の兵士たちも固まるしかない。

 

 だが、王国の大将軍ルーウェンは違った。

 

 ルーウェンは大柄な男だ。身長は二メートルもある。

 表情は笑顔。金髪碧眼の男だ。ガタイもよく、重層鎧を難なく着こなしている。

 

 ルーウェンは異形種の男だ。種族名はハーフゴーレム。

 ハーフゴーレムは人などが後天的になる事でしか生まれない異形種だ。

 種族的特徴としては飲食不可、睡眠不可で物理的なステータスが高い代わりに魔法行使能力が低いという特性がある。

 

「ようこそ、女神ローフェ様。私が今回の戦の総司令官であるルーウェンです」

「よろしく頼む。ルーウェン」

 

 ローフェはそう言い右手を差し出し、握手をした。

 ローフェの格下の存在消滅は長い年月によって一時的にオフにすることが可能になっている。

 

「ではあなた様の天幕に案内しましょう」

 

 末端の兵士ではなく自ら案内することでローフェを重要人物と認識していると知らしめるのだ。

 

「感謝する」

 

 ローフェはルーウェンに案内され天幕に辿り着いた。

 

「どうぞ。ごゆるりとおつくろぎください」

 

 そうしてルーウェンは去った。

 

 天幕の中は豪華な作りだ。

 <小空間>(ポケットスペース)の魔法が込められた魔法道具(マジックアイテム)により物資の運搬は非常に楽であるこの世界では天幕にもある程度家具を持ち込むことが出来る。

 と言っても完成品を持ち運ぶような事は流石に出来ないので簡単な組み立て式の物だけだ。

 ベッドに机に椅子があり、<照明>(ライト)の魔法が込められた灯りもある。

 

「さて、どうなるかな……」

 

 

 

 翌日。

 

 ローフェは天馬に乗っていた。

 白馬であり、翼が生えている馬である。綺麗な馬であった。

 この馬は第八環の召喚魔法で召喚したモンスターの馬で見た目通りペガサスである。

 レベルも五十四と非常に高い。

 移動能力が非常に高く、空を飛ぶ事も可能な馬だ。

 能力として騎乗者のステータスを上昇させる事が可能な上、騎乗者がどこに居ようと周辺環境から守る能力を持つ。

 海底深くだろうが宇宙空間だろうがペガサスに乗っていれば移動可能である。

 

 と言ってもローフェは宇宙空間には素で居られるし、海底でも魔法で対策すれば居られるが。

 そのためこういう戦場でかっこ付けでもない限り乗ることは殆どない。

 

 ウェーステ前の平原に王国軍四万が広がっていた。

 対するウェーステ側は十万という六万もの差があった。

 当然まともに戦えば勝てるはずもなく、更に相手は有利な籠城戦を選んでいる。

 

 だがローフェがそれを許さない。

 

 ローフェは馬上でグングニルを軽く回す。

 

 ローフェ単独で都市の一つや二つ攻め落とせるのだ。

 

 ローフェがまだかな、と待っていると拡声の魔法で声が遠くまで聞こえて来た。

 

「全軍、突撃!!!」

 

 その声に従いローフェはペガサスを走らせた。

 

 そのまますぐ先頭に躍り出て、高速で走る。

 ペガサスのスタミナは膨大。一昼夜全力疾走してもまだまだ余裕が有る。

 

 ペガサスの速力によりアッと言う間に門に近づく。

 ローフェは特殊能力(スキル)を幾つか使う。

 

<投擲><爆破鎗><衝撃拡散>の三つだ。

 

<投擲>はその名の通り持っている武器をぶん投げる特殊能力(スキル)。

<爆破鎗>は相手に穂先が触れると相手を爆破させ、<衝撃拡散>は着弾の衝撃を拡散させる。

 

 そしてグングニルの特性である必中により門に命中し、門が爆散した。

 

 鉄で出来ている上魔化されている強力な門が一瞬で瓦礫の山と化した。

 

 ローフェは門に向かって邁進する。

 

 当然それを阻止せんと相手の呪文詠唱者(スペル・キャスター)や弓兵がローフェに向かって攻撃する。

 しかしここで格下の存在消滅をオンにすることで格下──レベル五十以下の相手の攻撃を無効化する事で攻撃の一切を無視した。

 

 ローフェが街中に入った。

 そこには門を突破された際の守りである軍人たちが居た。

 

 ローフェは手元に戻ったグングニルを使い、馬上から攻撃する。

 正しく一騎当千の無双ゲーム。敵がバッタバッタと死んでいく。

 

 それを止めようと敵の精鋭が来る。

 

「あいやまたれぇい! 我こそは──」

 

 何か口上を上げようとした他とは違う装備の男にグングニルをぶん投げ殺した。

 

「さて」

 

 ローフェは反転し、城壁へとペガサスを跳躍させた。

 城壁上では帝国軍人たちが大砲や魔法で王国軍を攻撃していた。

 

 それらに対しペガサスで轢き殺していく。ペガサスは余裕で時速百キロ以上出せるので交通事故より相手がひどいことになる。ミンチよりひでぇや! 

 

 ある程度城壁上の敵を殺したら今度は奥に見える城に向かってペガサスを飛ばす。

 グングニルをぶん投げ城の壁に風穴を開け、そこにペガサスを突入させる。

 

「敵の親玉はどこかな」

 

 ローフェはそう言いながらペガサスから降りる。

 

 召喚の残り時間はまだあるのでペガサスは戦場に戻らせ味方の援護をするように指令を出す。

 

 そのままローフェはそこそこの速度でダッシュ。

 

 敵の集団──軍人四人組を見つけたので接近し文字通りの神業で三人を斬り殺した。

 

 倒れた最後の一人に槍先を付ける。

 

「この街の領主はどこにいる?」

「さ、最上階に居ます!」

「そうか」

 

 ローフェはそういうと軍人の胸を貫いて殺した。

 

 ローフェは<小空間>(ポケットスペース)から巻物(スクロール)を取り出した。

 

「<妖精の導き>(フェアリー・ガイダンス)」

 

 この魔法はローフェがまだ習得できていない魔法の一つで、目的地まで最短ルートで案内してくれる魔法だ。

 と言っても道中の罠や敵などは考慮してくれないので危険性はある。

 これらの上位の巻物(スクロール)はラモトラで発見されたダンジョンで発掘されている物だ。

 

 ローフェは出現した可愛らしい妖精に従い着いて行く。

 

 階段を何度か登り、道中の軍人や騎士を殺していくとある部屋の前で妖精が消えた。ここが目的という事だ。

 

「ダイナミックエントリー!」

 

 ローフェはなんとなくそう叫びドロップキックでドアをぶち壊し突入した。

 

 部屋の執務机には禿げたデブのおっさんが居た。この街の領主だ。

 

「ひぃ?! もう敵がここまで?!」

 

 そうウェーステ領主は情けない声を出した。

 

「そうだ。死にたくなかったら降伏しろ」

 

 ローフェはグングニルを突き付けながらそう言った。

 

「わ、わかった! 降伏する! 降伏させてください!」

「よし。ではお前の兵士たちに降伏するよう指示をだせ」

「わ、わかりました!」

 

 こうして最初の戦は終わった。

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