災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から 作:Revak
「それで……余はどうしたらいい? 神としての役目はどう果たせばいい?」
そうローフェが問いかけた。
「ローフェは何を司る神なの?」
オーディンが問いかけた。
「余は災害を司る神だ」
災害という言葉にオーディンとスサノオは苦笑した。
「災害、か……それなら……うーん。村長にでもなってみる?」
その言葉にスサノオが待ったをかけた。
「オーちゃん、この神……ローフェにそれは難しいのでは?」
「けど、たとえ悪を司るのだとしても……人とより深く接し、分かり合えると思うんだ」
「オーちゃん……」
スサノオははぁ、とため息を吐いた。
「そもそも、余は今の時代と世界を良く知らない。いや、原初の神々が地上に存在し、その影響で余や其方らの様な神が生まれているという事はわかるが……」
「そうだね。それじゃあ、実際に村を見ながら説明しようか……ついて来て」
「わかった」
ローフェはオーディンに着いて行く。
気づけばオーディンは槍を消しており、スサノオもまた鎧を消した。
中から可憐な美少女が出て来た。此方は黒髪黒目で大和撫子を彷彿とさせる容姿の女だった。
「神々の殆どは
「ふぅん。では今から行く村も神が治めているのか」
「そうだね。ハートちゃんっていう神が治めている。ただ彼女は凡庸型の神で何かを司っている訳じゃない」
「? 神なのに司る物がないのか?」
「まぁ、彼女は原初の神々の余波で生まれた存在だから、ね」
などと話していると村に辿り着く。
「まずはハートちゃんに挨拶しよう。こっちだよ」
そうオーディンがスキップでもしそうな気楽さで歩いて行く。
そうして進んで行くと他の家とは少し違う建物に辿り着いた。
オーディンがドアを開け、三人は中に入る。
入ってすぐは広間になっていた。
子供が遊ぶ用の玩具が散乱しており、それで遊ぶのだろう子供たちも居た。
「あれ、オーディンじゃないか……そっちは見たことない
そう言いながら女神が現れた。
ピンクの髪と青い瞳の少女と言える年齢に見える神だった。
「初めましてだな。余はローフェ。災害を司る神だ」
「おー、災害とはまたすげぇのが来たな……私はハート。気軽にハートちゃんと呼んでくれ」
きゃぴ♡という擬音が聞こえてきそうなポーズをハートはした。
それを見てこの神年齢幾つなんだろうとローフェは疑問を抱いたが深くは考えないことにした。
「それで、ハート。出来れば暫くローフェをこの村に居させて欲しいんだけど……」
「おー、いいぞ。それなら
「ありがとう、ハート。それじゃあ……そうだな」
オーディンが何か悩むような素振りを見せる。
「なー、あんたも神様なのか?」
そこに一人の子供がやって来た。
金髪金目の少年だ。アホ毛がある、活発そうな少年である。
「そうだ。余は災害を司る神だ」
「おー! すげー! けど災害ってなんだ?」
少年は純粋な疑問を発した。
「ふむ……地震や台風、土砂崩れなどだ」
津波や洪水はこの内陸っぽい地ではなさそうだとローフェは判断しそれ以外の災害を言った。
「すげぇー。やってみてくれよ」
少年は無邪気にそう言った。
「いや、ここで災害を起こすと大変なことになるから出来ない。すまないな」
まだローフェは力の制御が出来ない。
封印の眼帯で己の能力を落としていると言っても、それでも大陸規模であることに変わりはない。
恐らく能力が五割ほど減っているが、それでも強大であるのだ。
「こら、ハンス、無茶言うんじゃない」
そうハートが苦笑した。
「ちえー。なぁ、あんたはここにいるのか?」
「暫くは居るが……教会とやらで暮らす事になるな」
「そうか、なら遊びに行くぜ! 待ってろよな!」
そうハンスは笑った。
「それじゃあ、ローフェを教会まで案内してくるね」
オーディンがそう言い、ローフェの手を握った。
「さ、行こ、ローフェ」
「……あぁ」
二人は寺子屋を出た。
■
「この村はハートの村で、結構平和なんだ……ハートが張っている結界の力でモンスターもあまり来ないし」
「そのモンスターは……あぁ、なるほど」
モンスターについて聞こうとした瞬間、ローフェは神の権能でモンスターについて把握できた。
モンスターも言わば、神の一種だ。
人々が感じる恐怖から生まれた存在。それがモンスターの正体だ。
だから人間が居る限りモンスターは存在する。
モンスターもまた原初の神々の力の余波で生まれた存在で、ある意味ローフェの同族ともいえるかもしれない。
と言ってもモンスターの殆どは知性の無い者が多い為会話も出来ないが。
ローフェは己の内に眠る神としての権能を把握しきれていない。
神としての権能は多数ある。物質の創造。空間転移。他者治癒などなど。
「この村の人口は二百人ぐらいだけど……一人村のはずれで暮らしてる人もいるんだ」
そうオーディンと話しながら教会に向かう。
「はぐれ者も居るのか」
「うん。まぁ彼が好きで外で暮らしてるだけなんだけどね」
そうオーディンは苦笑した。
そうして話していると教会に辿り着く。
(でっか)
思わずそう思うぐらい教会はでかかった。
長閑な村には相応しくない、神秘的な教会だ。
中に入る。
「オーディン様! と……ローフェ様。御足労頂ありがとうございます」
入って早々紫色の神をした女が頭を下げた。
シスターか何かなのだろうが、普通の服を着ている。神秘さはない。
「うん。インガン。彼女がローフェ、新しい神だ。彼女を暫くここで暮らさせて欲しいんだ。いいかな?」
「神の頼みとあれば断ることなどありません。どうぞ心行くまで滞在してください」
そう女──インガンは微笑んだ。
「よろしく頼む」
ローフェもそう微笑み返した。
ローフェは美人だ。ボーイッシュ系の美女で女性受けもする容姿である。
インガンはそのほほえみを見て顔を赤くした。
「そ、それでは部屋に案内させていただきます」
「よろしくね。それじゃあ……私は神都に戻るね。また何かあったら
そういうとオーディンとスサノオは走って去っていった。
「では、こちらです」
「よろしく頼む」
ローフェはインガンに着いて行く。
少し歩くと奥の扉を開き、通路に出る。
外見以上の広さを有しているがこれはなんだろうか、とローフェは考える。
すると答えが出てくる。
空間に関する神の権能を持ってあらゆる場所の空間が拡張されているのだ。
神としての権能の一つの情報系の能力がある。対策を取られてない場合相手の情報を得られるのだ。
そうして少し進むと部屋に着く。
「どうぞこちらの部屋を自宅と思ってお使いください」
そうインガンは微笑んだ。
「感謝する」
そうローフェは小さく頭を下げた。
「感謝など勿体ない! 我々教会の者は神に仕える事こそが喜び。私どもを使い捨てにしてくださっても結構です」
「そこまであくどい神になるつもりはない……食事はどうしたらいい?」
神の体なので飲食不要だが、出来ない訳ではない。
丸一日飲み食いしてないので気分的にはしたかった。腹が減っている訳ではないが。
「では夕食の時間になりましたら部屋まで食事を運ばせて頂きます」
「そうか……感謝する。それでは、部屋で休ませてもらおう」
そう言ってローフェは部屋に入る。
この世界ではベッドに入るとき以外は靴を脱がないらしい。靴置き場がなかった。
ローフェは真っすぐベッドに進み、靴を脱いでベッドに上がる。
そして仰向けに倒れ込んだ。
「疲れた……」
肉体的疲労とは無縁だが、精神的疲労までは無効化出来ない。
ただ精神干渉に対しては無敵に近い耐性を持つがそれは精神的疲労を無効化してくれるわけじゃない。
この二日で色々ありすぎた。
己の死。そして転生に女神化。これで疲れるなという方が無理がある。
神としての権能の一つに
力の流れ。相手のステータス。相手の心の読唇などを可能にする。神ならデフォルトで持っている能力だ。オーディンもハートも持っている。
と言ってもすべてを見抜く事は出来ず、高位の対策を積んでいる者には通じないという欠点がある。
しかしこの時代の住人は対策なんてしていない。だからハンスやインガンの心を読める。
いずれは制御できるのだろうが、今は得た力に振り回されているローフェに制御はまだできなかった。
それにやはり、異世界転移というのがローフェに対し負担をかけていた。
現実離れした事に心が追い付いていないのである。
「…………」
ローフェは己の胸を揉んだ。
胸のサイズはDカップ程度だろう。
そして、己の股間に──女性器に手を伸ばした。
■ R18じゃないからバッサリカットだ!
何とは言わないがナニをした翌日。
ローフェは村の広場に来ていた。
前日は夕食を取り、睡眠した。
神の体は睡眠不要だが出来ない訳ではない。寝ようと思えば決まった時間分眠れる。
広場では子供たちが鬼ごっこをしていた。子供の数は十人程だ。
元気に駆け回っている。自分も子供の頃はああやって走り回ったのだろうか、と遠い目をした。
「なー、ねーちゃんも一緒に鬼ごっこしようぜ!」
そこにハンスがそう話しかけて来た。
「……余が入るとすぐゲームが終わってつまらなくなるぞ」
ローフェが近接特化の神でないとしても神は神。肉体能力は全力を出せばマッハは出せる程だ。勿論そんな速度を出せば子供たちはミンチよりひどいことになる。
そんな化け物が子供と混じって鬼ごっこなどしようものなら相手が悲惨なことになるか、ゲームが一瞬で終わってしらけるかのどちらかだ。
「えー、じゃあかくれんぼならどう?」
それもまた駄目だろう。
神眼はあらゆるものを見通す。未来は見えないが過去は少しは見える。
だからこの眼がある以上隠れた場所もすぐ見つけてしまう。
「……それならいいだろう」
だが何もしないのもな、と思いローフェは了承した。
それに体を動かしたかったのもある。
「よっしゃ! みんな! かくれんぼしよーぜ! ねーちゃんが鬼だ! 百眼つむっててくれよな!」
「わかった」
言われるがままローフェは目を閉じた。それにより視界がシャットダウンされる。
そして正確無比に百数えたのち、動き出す。
広場から子供の影は無くなっていた。だが過去視の力でどこに行ったかわかる。
木の後ろを見る。そこには少女が居た。
ぽん、と肩に手を叩く。
「見つけた」
「見つかっちゃった!」
えへへ、と少女ははにかんだ。
ローフェも微笑みで返し、他の子どもたちを探す。
そして全員見つけた。五分もかからなかった。
「ねーちゃんつえー! かくれんぼの神様か?!」
ハンスがそう叫んだ。
「いや、災害の神だ……しかしそうか、これが神の権能か……」
ローフェは己の力に恐怖していた。神とはかくも偉大で恐ろしい者である、と。