災害の女神になったので異世界巡ります。神話の時代から 作:Revak
更に五十年が経った。
ハンスの葬式に出席した後各地を放浪していたローフェは神都に来ていた。
神都の中央には多数の神々、そして原初の神々が居た。
空と風の女神セラ。
竜神にして時と空間を司るドラヘル。
武功と武具の
大地と自然の女神ネイカ。
商売と政治の神ゼニス。
魔法神ツァオバー。
狩猟の神ヤクト。
愛の女神ラマル。
八柱の神々のリーダー格、セラが喋りだす。
「我々はこれより神界に帰ります。ですが我らの力は地上に残り続けます。神器を世界に残しておきました。それは世界各地に散らばっています……そして、それらの作り方もまた、皆の知識にあると思います。どうか、賢明な判断を頼みます──それでは」
原初の神々以外は神界に行けない。
神界に行くには格が足りないのだ。
そして八柱の神々は光の柱となって天に昇っていった。
■
三百年の時が経った。
その間、ローフェはこの大陸各地を回っていた。
神々はまだ正気を保っている。だから神殺しはまだしていないが、それでも人口が緩やかに増加していく事によって狂いゆくモンスターたちが居た。
人が何世代も経つ年月を生きたが、一つの場所にとどまらず各地を放浪することでどうにか人の死を意識から遠ざけ、ローフェは正気を保っていた。
そんなローフェは狂ったモンスターを討伐するため湖に来ていた。
「でかいな」
来たのはホーホという森の中にある湖だ。
サイズとしては諏訪湖より若干小さい程度の大きさで、多数の生物やモンスターが住まう。
ローフェは浮遊しながら湖の上を進んで行くと、すぐに目的のモンスターが現れる。
全長百メートルほどの巨大な竜だ。
形としてはリヴァイアサンに近い、頭部に一角獣の様なねじれた角がある。
青白い鱗に覆われたモンスターで、その名もまさしくリヴァイアサンである。
このリヴァイアサンはかつては湖の守護者としてエルフ達に崇められていたが、原初の神々の残滓が薄くなった事で正気を失ってしまった者の一人である。
だから、ローフェが終わらせに来たのだ。
「GIIIIYAAAA!!!」
リヴァイアサンが声にならない叫びをあげた。
口に水属性の魔力が集まっていく。
そして、放出。レーザーとなってローフェに襲い掛かる。
「暴風の盾」
ローフェがそう言いながら右手を向け、風の盾を形成する。
荒れ狂う嵐を無理矢理盾の形に押し込めたような代物だ。薄い緑色をしているタワーシールドである。
レーザーが盾にぶつかり、霧散していく。
二秒後、レーザーを撃ち終えたリヴァイアサンは驚愕の表情を浮かべた。
「暴嵐の刃」
続いて左手を向け、今度は巨大な──それこそ直径五十メートルを超える規模の三日月型の風の刃を生成し飛ばした。
リヴァイアサンは避けようとするがそれよりも刃の方が速い。胸に命中した。
体の半分ほどを抉り切った。だが、致命傷にはならなかった。
「GIYAAAA!!!」
リヴァイアサンは痛みでそう絶叫しながら再生能力を持って傷を再生させていく。
再生持ちは幾つかある。特定の条件を満たさないと無制限に再生する者。再生に魔力などのエネルギーを消費する者。一定回数や時間制限がある者などだ。
リヴァイアサンは魔力を消費して再生するタイプだ。そして攻撃にも魔力を再生するのであまり無駄使いは出来ない。
長期戦となるとローフェの方が有利だ。
ローフェのステータスはかなり高く並大抵の攻撃では傷一つつかないし、傷を負ったとしても腕の欠損などでも魔力を消費する事で再生できる。
何なら今も手加減している。封印状態は維持しているのだ。それに割いているリソースを無くせば一撃で倒すことも出来るだろう。
いや、それをすることなく隕石でも落とせばそれだけで殺せるが、それは出来ない。
何故ならあくまで目的は堕ちたリヴァイアサンの討伐。周辺に被害を出せばその時点でローフェの負けだ。
「暴嵐の刃──四刃」
四つの刃がリヴァイアサンを襲う。
リヴァイアサンは飛んで回避しようとするが一つしか回避できなかった。
そして三つ目の刃によって尾を切断された。
ローフェは痛みに悶えるリヴァイアサンに向かって突進する。
そのまま素手でリヴァイアサンの頭をダブルスレッジハンマーで叩き落とした。
水面にリヴァイアサンがものすごいスピードで着水しダメージを受ける。
リヴァイアサンは生物に見えるが生物ではない。だから頭蓋骨が陥没し脳にダメージが入っても生存可能だ。
だが思考能力は鈍る。再生が襲い。
「業火」
ローフェはそう言いながら指を鳴らす。
それにより超高温の炎が産み出され、リヴァイアサンを包み込む。
リヴァイアサンは絶叫すら上げることが出来ず焼かれていく。
炎もまた災害の一種だ。山火事や最近では太陽フレアだって災害の一種だ。その気になればローフェは通信を乱すことだって出来る。
火傷の苦痛に悶えながらリヴァイアサンが突撃してくる。
「暴嵐の刃」
百メートルを超える巨大な三日月上の風の刃が生成され、真っすぐ飛んで行く。
そして──リヴァイアサンを真っ二つに両断し、絶命させた。
モンスターは死体を残さず消えていく。元がはかない幻想であるが故だ。
ローフェがこういったモンスターを殺すのは初めてではない。もう数えきれない程殺している。
自分の手で生物を殺すことにはもはや慣れてしまった。と言っても超常的な力で殺しているので殺している実感が薄いというのもあり、あまり心には来ていない。
「これで終わりだな」
ふぅ、と息を吐いてからローフェは飛び、依頼主の元に飛んで行った。
■
ホーホの森の深くにエルフの森はあった。
エルフは人間種の一つで金髪緑眼に尖った耳を持っている種族だ。そして誰もが美しく、寿命は千年と長い。
体形はスレンダーな者が多い。
そのエルフの森の祠にローフェは来ていた。
「いやー助かったよローフェ。おかげで漁を再開できるよ」
そう笑いながら言うのはエルフが信仰する神エイヴァだ。
長く尖ったエルフ耳を持ち、金髪緑眼の優れた優男、と言った雰囲気の
祠の中は清潔で、エイヴァは玉座に座っている。
エイヴァは戦闘系の技能をあまり持たないタイプの神だ。だから狂ったリヴァイアサンを前には何もできなかった。
ただ、戦闘タイプでなくとも堕ちれば戦いようがあるが、それは最期の手段だ。
故に各地を放浪しているローフェにエイヴァはリヴァイアサンの討伐を頼んだのである。
「いよっし、それじゃあ、宴会でもしようぜ! とびっきりの魚料理を馳走してやる!」
そうエイヴァは笑った。
■
約七百年の時が経った。
ローフェは各地を巡りながら、狂っていく神々を処分して回っていた。
ある日、ローフェは自分の街近くで神と戦っていた。
相手するのは龍。黒い鱗に覆われた龍である。
その龍の名はヘファイストス。鍛冶を司る神である。
「GIIIIYAAAA!!!」
ヘファイストスは叫ぶ。
そして権能を最大限使う。
創り出すのは神の力が籠った伝説級の武具。
この世界には
ランクは下から順に下級、中級、上級、秘宝級、聖遺物級、伝説級となり最後が神が直接作った物だけに与えられるランクの神器がある。
伝説級というのはそれだけで国宝クラスで、戦局を変える代物だ。
それが数百から数千、無造作に創造されローフェを襲う。
「嵐のマント」
今度使ったのはマント系の魔法に近い権能だ。
風と雷を身にまとう事であらゆる攻撃を軽減し、近づいてくる相手を吹き飛ばすことが出来る。
しかし使われた武器は伝説級の一品。無効化には至らない。
体にダメージを負っていく。肌が切られ、傷が増えていく。
だが致命傷には程遠い。ダメージも負った傍から再生されていく。
ローフェは格下の存在が触れると存在が消滅する。
だがその権能も封印によって弱体化しており、格下と言っても大分下の相手でないと機能しない。
この世界にはレベルがある。
一レベルから百レベルまであり、あらゆるクラス──職業が存在する。
そしてクラス以外に種族レベルというのもあり、種族としての強さのレベルもある。
クラス、種族レベルの最大レベルは十五。と言っても種族やクラスによっては十や五が限界の物もある。
それらを積み重ねる事で百レベルまでなるが、誰もが百レベルに成れるわけではない。
だがローフェなどの神々は全員例外なく百レベルであり……ステータスもまた神に相応しいほどに高い。並みの百レベルでは相手にならない程だ。
そしてローフェの格下の存在消滅は通常時は百レベル以下の存在消滅。今は五十レベル以下の存在消滅となっている。
この権能は格下なら存在を消滅させれるが、それ以外だとダメージの軽減なども出来ない微妙な能力である。
「暴嵐の
右手に大剣が生成される。
薄い緑色の風で出来た剣だ。両刃の剣で刃だけで百五十センチある大剣だ。
剣を持ってしてローフェはヘファイストスに突進する。
ヘファイストスは口を開き、武器のブレスを吐いた。
吐息が刃に変わり、ローフェを襲う。
ローフェは剣を盾のように構える事で最大限軽減しながら突撃するも体にダメージが重なっていき、心臓を貫かれた。
だが神は生命ではない為致命傷ではない。だがそれでも大ダメージである。
この世界にはステータスがある。
HP、
ローフェにもステータスの概念は適応され、そのステータスはどれも膨大な数値になる。
故に心臓という急所の一つを潰されても死ぬほどのダメージには至らない。
そのまま暴嵐の剣でヘファイストスを斬る。
胸を袈裟斬りにするが、ヘファイストスはまだ動く。
龍の腕をもってしてローフェを殴り飛ばした。
「暴嵐の刃──六刃」
吹き飛ばされながらローフェは六つの五十メートルほどの巨大な三日月上の風の刃を飛ばす。
ヘファイストスは巨大な盾を創り出し、刃を防いだ。
「ソーラーフレア」
空から炎が降って来た。
太陽の炎。温度は一万度にも上る超高温の炎である。
それがヘファイストスが創造した盾と衝突する。
盾は伝説級。故に太陽の炎相手にも耐えることが出来る。
だが壊れるのは時間の問題だ。あと一分も経てば融解するだろう。
しかし神相手に一分あれば充分である。
ヘファイストスは雄たけびを上げ、巨大な剣を創造した。二十メートルを超える剣である。
それが振り落とされ、ローフェを襲う。
ローフェは暴嵐の剣で防御した。
地面が陥没する。骨に罅がはいる。
お互いに硬直状態に入る。どちらが先に防御が負けるのかの試合だ。
そして先に負けたのはヘファイストスの方だった。
盾が完全に融解し、ヘファイストスの体が溶けていく。
意識を保てなくなったのか、創造した武器が消えていく。
いかに鍛冶神であっても伝説級の武器は一時的にしか創造出来なかったのだ。だから消えてしまう。
ローフェはそれを好機と見、突撃。
苦しませるつもりはないので暴嵐の剣で縦に斬り裂いた。
「アリガ……トウ……これを……」
そうヘファイストスは言い残し、防具を残した。
残ったのは軽装鎧だ。
この世界最高位の金属であるアポイタカラの胸当てに小手。指先が空いている黒い手袋。
アポイタカラのブーツに、高位の魔獣の毛皮のマント。
鍛冶を司る神だからこそ創り出せた神器だ。己の命を消費して作り出した防具である。
「……感謝する」
ローフェはそう言い、消えたヘファイストスに礼を言った。
ローフェは創られた防具を身に纏う。神の力で一瞬で着替えが終わった。
「うん。いいな」
防具の能力としてはやはり攻撃性能を上げるのではなく防御超特化、攻撃性能は一切ない。
だがローフェは災害の神。攻撃力は既にバカ高いため問題はない。
その恰好は実に似合っていた。
銀髪碧眼のウルフカットに似た髪型で肩までかかっている。
顔つきはボーイッシュ系というのだろうか、王子様系女子に近い美女。
ダークシルバー色の胸当て。へそは丸出しという強気のファッション。
レギンスもまたダークシルバー色の軽装鎧で、ブーツもまた同じ色。
小手もつけており、手には指先が空いている手袋……オープンフィンガータイプの黒い手袋をつけている。
アキレウスの鎧という神器である。
正しく女神と言った風貌の存在になった。
「さて……」
ローフェは徒歩で今の拠点に戻っていった。
■
「神様! ありがとうございます!」
「俺たちを救ってくれてありがとう!」
街に戻るなりローフェはそう称賛の嵐を浴びた。
それを見てローフェは苦笑する。こんなに褒められる人間ではない、と。
自分はたまたま力を得てしまっただけの一般人だ。誰だってこの力があれば同じことを出来るだろう。
今、この世界は混迷している。
神々が狂い堕ち、モンスターとなっていく。
それに対し対抗できる戦力はそれこそ神ぐらいの者だ。
狂った神にはまだ正常な神を当てて対処している。
ローフェは唯一原初の神々を除き狂わない神だ。だから、多くの人を救うことが出来る。
この街も最初は小さな村だった。
ローフェが拠点にし、神を殺していくだけの場所だった。
だが、その村の神が狂い堕ち、ローフェが殺してから話が大きくなった。
神々が狂い始めていることを人々も知っている。だが、それでも神に縋りたいのだ。
だから、ローフェは人を救い始めた。
井戸がないところには井戸を生成し。
日照りとあれば雨を呼び、逆に雨が多ければ空を晴らした。
これらは災害の力を規模を落として使えば問題なく出来た。
日照りと水害の操作である。
モンスターが出れば対処し、人々の才能を見抜きモンスター戦の知識と技能を与えた。
いままでなんとなくでやっていた仕事を真剣にやらせ、食糧事情を改善させた。
正しく救いの神としてローフェは行動していったのだ。
ローフェがこんな風に街を統治しているのは、成り行きでしかない。
不在の支配者の代わりに、村を治めてくれと村人たちから懇願され、見捨てるのも悪いと思いローフェは村長の立場になった。
そして支配する側に回れば人は変わる物だ。ローフェの中の人が人であるがゆえに。
だから、その暮らしの改善をして行こうとし、積極的に動き続けた。
それは噂を呼び、村の外の者たちもその支配下に入ろうと向かってきたのだ。
ここ十年で人口も徐々に増えつつあった。
ローフェはこの街一番の屋敷に入っていく。作りは洋風の物で、三階建ての建物だ。
「お帰りなさいませ、ローフェ様」
そうで迎えるのは金髪碧眼のメイド服を着た女性だ。美人でもある。
「あぁ。今戻った。仕事はどれだけ溜まっている?」
「大量に」
「それはすぐ処理しないといけないな」
ローフェはそう言いメイドと共に執務室に入る。
執務室の椅子に座り、書類の束を貰う。
この街のすべての決定権はローフェにある。だから、ローフェが承諾しないと進まない仕事が多い。
街道の整備。街の治安維持のための警備。新しい農法の実験、農地に出たモンスター駆除。
ある程度──七割ほどはローフェが直接赴いて処理しないといけない仕事だが、徐々に人に仕事を任せつつある。
騎士団を作り治安維持をし、農相を作り農業をさせる。
最低限国としての形は保っているだろう。
ローフェはこれは神都の神々から己一人に依存先が変わっただけでは、と思いつつも終わりつつある世界で人を維持するにはこうするしかないという思いからこの街を存続させざる負えなかった。