仮面ライダーディアウト with アウトサイダーズ 作:から傘お化け
今回は9割戦闘。
久々の素ディアウト登場&初のまともな戦闘シーンです!(1話は攻撃を少し躱しただけですぐにカメンライド)
「蛇塚に会いに行ったぁ!?」
昼時の神社にて、ミホは素っ頓狂な声を上げずにはいられず叫んだ。
ゆいなが蛇塚の収監されている刑務所に行ったのと入れ替わりで、ミホは彼女が住んでいるであろう神社を探し当てて訪ねに来ていた。
「神社に住んでいる」という情報だけを頼りにここ周辺の神社をリストアップし、仕事が休みなのを利用して虱潰しに探す。
そんな探偵のようなことをしてまで彼女の住所を特定しようと思った理由、それはやはりゆいなと妹を重ねているからだった。
裁判においてはライバルとはいえ、やはり放っておけない。
その庇護欲がミホの足を突き動かし、ゆいなを探す旅に出かけさせた。
そういうわけで『
ゾックがいるということはゆいなも同様にいるはず。
そう確信したミホは無我夢中でゾックを呼び止め、ゆいなの所在を聞いた。
よし。これでようやく彼女の力になることができる。
ようやく探偵業が報われたと少し安心しかけたミホだったが、ゾックの答えはそれを裏切るのに十分な衝撃だった。
『ゆいなは蛇塚と接見しに行った』
それを聞いた瞬間、ミホの安心は残酷なまでに引き締まり、喉から叫びを上げてしまった今に至る。
「あなたが仕向けたの!?どうしてそんなことを!?」
「チッ……あいつを送り出した途端にこれかよ……」
ミホはゾックに掴みかからんとする勢いで彼を糾弾する。
対するゾックは露骨に眉間に皺を入れ、あからさまに面倒くさそうな態度で彼女の追及を躱す。
「王蛇と会うにはそれが一番手っ取り早いでしょ?俺はあの子の為を思って……」
「だからって一人で行かせる必要は無いでしょ!?アイツがどんな奴か、あんたは何も分かってない!」
無意識にミホはもう殆ど叫んでいた。
ゾックへの怒り、ゆいなへの心配、今すぐにでも駆けつけたい焦り。様々な感情が混ざり合い、意図せずともヒステリックになってしまう。
だがその激情をぶつけられているゾックはというと、申し訳なさなど微塵も無い不快そうな表情を浮かべ、深く溜め息を吐いているだけだった。
早く帰って静かにさせてくれないかな。そう言いたげだった。
「……もういい」
「おっと、どこへ行く気だ?」
「あの子の所に決まってるでしょ」
ゾックの態度に怒りを通り越して呆れさえ覚えたミホは踵を返す。ゾックの問いにも目も合わせず淡々と答えると、ヒールを鳴らしながらそのまま蛇馬神社を後にしてしまった。
「……保護者ヅラか知らないけど、妬けるな……」
足早に神社の階段を下りるミホの背中を見送りながら、ゾックはぽつりと呟いた。
*
ミラーワールドのとあるショッピングモールの駐車場にて。
車は何台も駐車してあるのに、神隠しに遭ったかのように人っ子一人いないという不気味な静けさの中で、二人の戦士は装甲をぶつけ合っていた。
一方は以前ファムとゾルダに襲いかかろうとした仮面ライダーシザース。
もう一方は鮮やかなグリーンの装甲に包まれたカメレオンの戦士『仮面ライダーベルデ』だ。
「中々やるじゃねえか、刑事さんよぉ。そのやる気はどこから出る?蛇塚への妬みか?」
「……!それが何だというのです……!」
「ハハッ!まあ奴は優秀だったらしいしな、後輩にお株を奪われちゃあ恨みたくもなるよなぁ!」
ベルデはシザースの突きをひらりと躱しながら彼を煽る。
シザースの攻撃はベルデの雄弁な舌に転がされるかのように勢いを増し、その代わりに精度が落ちる。
ベルデはそんな大振りの攻撃をあえてカウンターは仕掛けず手を広げながら躱し続け、まるでおちょくるかのような振る舞いを見せた。
「ま、お前の場合はそれだけじゃなさそうだけどな。そこまで蛇塚を責め立てる理由」
「何っ……!?」
「匂うんだよ、お前のコートから。脳みそがクラクラしちまいそうな煙の匂いが」
「!?」
その言葉を投げかけられた瞬間、あれだけ激しく振っていたシザースの腕がベルデに命中する直前でピタリと止まった。
ベルデは石像のように動かなくなった猛攻を前に、仮面の下で不敵な笑みを浮かべる。
「ボヤを隠すなら火事の中……蛇塚のスキャンダルは汚職の隠れ蓑に丁度良いよなぁ?」
「……何が言いたい……!」
「別に?むしろそういうの良いと思うぜ?誰かを蹴落としてでも自分の願いを通す。社会の在るべき姿じゃねえか。俺だって自分の利益の為に蛇塚減刑の側に立ってるさ。何たって裏の世界にゃ、奴の減刑に大金を叩く物好きな連中がいるからなァ!」
ベルデは固まってしまったシザースに顔を近づけ、声高々にそう言い放った。仮面のせいで表情は見えないが、シザースは自分の心の内を見透かされた悔しさで下唇を噛む。
ベルデはシザースの僅かな身体の震えから彼の感情を読み取り、してやったとほくそ笑む。
――この時、ベルデは演説に夢中になり過ぎて判断が遅れた。
『ファイナルベント』
雪崩のように迫り来るミサイルとビームの嵐への判断を。
「何っ!?」
ベルデとシザースが気付いた時には、回避するには手遅れな距離までミサイルが迫っていた。
二人が戦っていた場所から離れた位置に停車してある黒塗りの車。
その後ろに紛れるように聳え立つ緑の巨体。生物どころかロボットにしか見えない、全身に銃火器を備えた鋼鉄のボディ。
仮面ライダーゾルダの契約モンスターでもある、牛型ミラーモンスター『マグナギガ』。その全身に備え付けられたミサイルポッドやキャノン砲が全門展開され、ベルデ達が気付かぬ間に一斉に火を吹いていた。
「「ぐわああああああぁっ!?」」
エンドオブワールド。終末の名を冠する、ゾルダのファイナルベント。
マグナギガから一斉発射された遠距離兵器の波を回避することが出来ず、ベルデとシザースは爆炎に包まれながら吹き飛ばされた。
「うぐっ……!」
エンドオブワールドの有り余る余波に吹っ飛ばされたシザースは、燃え盛る駐車場に倒れ込み呻き声を上げた。
閑散としていながらも車がそれなりに停まっていて現実のそれに近かった駐車場は、一瞬にして大破した車と瓦礫が散乱する火の海と化した。
幸いゾルダのファイナルベントはあくまで広範囲を制圧するマップ兵器であり、被弾対象一人に対する威力は他のファイナルベントに比べると高くはない。当のシザースも無事とは言えないが、撃破されライダー裁判に敗北するまでには至っていない。
シザースは全身の痛みを堪えつつ、硝煙と土煙で視界が悪くなっていながらも周囲を見渡す。
さっきまで戦っていたベルデがいない。あの爆撃で自分とは違う方向に吹っ飛ばされたのだろうか。
シザースはまだ軋む自身の身体に鞭を打ち、気力を振り絞って立ち上がろうとする。
何せ今は煙のせいで視界不良だ。ベルデが戻ってきてどこからまた襲いかかってくるか分からない。
シザースの精神は見えざるベルデの脅威で張り詰めていた。
『ストレンジベント』
――それ故に、ベルデ以外の脅威への警戒が手薄になっていた。
『ナスティベント』
「うがぁぁっ!?」
突如、脳を刃物で突き刺すような耳障りな超音波が、シザースを襲った。
音は視界不良という悪条件を貫通して聴神経に針の如く襲いかかる。吐き気さえ催す不快な音波に脳の機能を蹂躙され、シザースは頭を押さえてのたうち回った。
『ファイナルベント』
頭に響く超音波はシザースの思考を奪い、咄嗟の判断を困難にする。
煙の幕を突き破って一直線の軌道を描く黒い人間ロケット――リーサルのファイナルベントたるポインティングバレットが、動けないシザースの身体に吸い込まれ爆発を引き起こした。
「クソッ……!俺としたことが……!」
一方のベルデもエンドオブワールドの衝撃で吹っ飛ばされ、なんとか立ち上がるも軋む痛みに身体を引き摺らせていた。
その進路を塞ぐかのように何者かが立ち塞がる。
エンドオブワールドを発動した張本人、仮面ライダーゾルダだ。
ゾルダはベルデの前に姿を現すと、腰のマグナバイザーを手に取りその銃口を彼に向ける。
ベルデは彼女が手負いの自分にトドメを刺しに来たのかと考え、血の気が一気に引く。
が、格好の獲物を前にゾルダは手をガタガタと震わせていた。
(で、できないですっ……!そんなこと……!)
打倒コアミラーの同盟を組んだゾルダとリーサルは、ミラーワールドに飛び込みそのコアミラーの元を目指していた。そしてその道中で、ベルデとシザースが戦っている現場に遭遇した。
可能なら無益な戦闘は避けたかったが、残念なことに回り道をするのは難しく、コアミラーに辿り着くには彼らを強行突破する必要があった。
そこで、リーサルはある作戦を提案をした。
ゾルダがファイナルベントでこの駐車場一帯を制圧、ベルデとシザースにダメージを与えつつ分断した後、分担して各個撃破するというものだ。
今頃、恐らくリーサルはシザースを倒しに行ってるはずだ。なら自分はベルデを担当する必要がある。
だが、いざベルデを前にするとゆいなの手の震えは止まらず、引き金を引くどころの話ではなくなっていた。
ファイナルベントでマグナバイザーをマグナギガの背面にセットし、トリガーを引いて攻撃指令を発した時は震えは無かった。あまりにスケールが大きすぎて、どちらかと言うと自分ではなくマグナギガの攻撃だと認識していたからだ。
しかし、今はマグナバイザーの銃口を手負いのベルデに直接向けている。
他者、それも弱っている相手に発砲するという行動は、純粋過ぎるゆいなにとっては刺激が強く耐え難い残酷な行為だった。
「おいおい舐めやがって……!」
自分を追い詰めているにも関わらずトドメを刺さないゾルダに、ベルデは情けをかけられていると勘違いして怒りが湧く。その苛立ちのままにカードデッキからカードを引くと、左大腿部に取り付けられた召喚機『バイオバイザー』のワイヤーを伸ばし、それにカードを挟む。そして手を離しワイヤーが巻き戻ってカードをスキャンした。
『ホールドベント』
「喰らいやがれ!」
「きゃあっ!?」
ベルデは彼の契約モンスターの目玉を模したヨーヨー『バイオワインダー』を召喚すると、糸を伸ばして鉄の塊をゾルダにぶつけ反撃した。追撃せずただ突っ立って震えていただけだったゆいなに敵の反撃への対処など出来るはずもなく、バイオワインダーがクリーンヒットし武器を落としてしまう。
ベルデはそれを好機と言わんばかりに気力を振り絞って立ち上がると、荒々しくゾルダに掴みかかってその顔に何度も拳を喰らわせる。
「うへぇ……社長さんに呼ばれて来てみたらいきなりミサイルが飛んでくるしどうなってんだ……って、社長さん!」
「遅ぇよインペラー!丁度良い、手伝え!」
更にそこに援軍が現れる。
ベルデの軍門に降っているライダー、仮面ライダーインペラーだ。
元々対シザースの為にベルデに呼び出されてミラーワールドに来た彼は、その道中でゾルダのエンドオブワールドの余波に巻き込まれていた。あまりの理不尽に愚痴を漏らしていたところ、ゾルダに暴行を加えている雇い主のベルデを発見したのだ。
手伝えと命令するベルデだったが、当のインペラーは乗り気でないのか気まずそうに頭を掻く。
「う〜ん……でもなんか可哀想っていうか……」
「ゴチャゴチャ言うんじゃねぇ!手伝ったら報酬上乗せするぞ!」
「……!はいはいわかりました、わかりましたよ!」
あまりに一方的というか無抵抗に殴られているゾルダに良心の呵責を覚えるインペラーだったが、ベルデが提案した追加報酬によりあっさりと気を変え、自身のカードを膝当て型召喚機『ガゼルバイザー』に差し込む。
『スピンベント』
左腕に巨大な2連装ドリル『ガゼルスタッブ』を装着すると、インペラーはベルデに加勢した。
ベルデのバイオワインダーによる素早いジャブと、インペラーのガゼルスタッブによる大振りのスマッシュ。互いの弱点を縫う猛攻に、得物を失ったゾルダは無抵抗のまま蹂躙される。
やがてインペラーの放った一撃がゾルダを大きく吹き飛ばし、ゾルダは火花を散らしながら地に伏した。
「うぅっ……」
倒れ込んだまま痛みに呻くゾルダ。その仮面の下には戦意など無く、暴力によるトラウマのフラッシュバックに涙を浮かべている。
「ごめんね〜。アンタに恨みは無いけど……社長さんとの契約だからさぁ!」
そんな彼女に対して軽い口調で謝罪しつつも、彼女のトラウマを知らずベルデとの契約を無碍にするわけにはいかないインペラーは容赦なくガゼルスタッブを振り上げる。
絶体絶命。その時だった。
「うわっ!?」「何だ!?」
突如、ゾルダの身体が紫の閃光を放ったかと思えば、彼女の腰のVバックルが弾け飛んでゴトッと地面に落ちた。
Vバックル、及びカードデッキの放棄はライダーバトルを投げ出すも同然のこと。閃光とともに起こった不可解な現象を前に、インペラーとベルデは思わず攻撃の手を止めてしまう。
そんな二人を前にして、ゾルダは人が変わったかのように一言も発さずゆっくりと立ち上がる。
画竜点睛の如く、Vバックルが失われ物足りなさが漂うゾルダの腰部。
そこに欠けたパーツを補うように、暗い色をした植物の蔦がどこからか現れるとゾルダの腰に絡みつく。
やがて腰に巻き付いた植物は徐々にその質感を変え、カメラのような漆黒のバックル――ディアウトドライバーへと変じた。
見慣れぬベルトに困惑するベルデ達を脇目に、ゾルダは黒いカードホルダーたるアウトブッカーからミラーワールドの仮面ライダーとは違う技術で造られたカードを取り出す。そしてそれを彼らの前に掲げ、抑揚の無い声で呟いた。
「変身」
『カメンライド』
『ディアウト!』
カードをドライバーに挿入しハンドルを操作すると、ゾルダのボディは白濁した複眼を持つ漆黒とバイオレットのそれに上書きされる。そこに無数の黒いプレートが彼女の体の中心から外へ広がるように突き刺さり、刺々しい悪魔のようなシルエットを作り出す。
ゆいなはゾルダから本来の装束たる仮面ライダーディアウトへと上書き変身した。
「おいおい何だよその姿は……!?そんなライダー聞いたこともねえぞ……!?」
「社長さん!なんかヤバそうじゃないですかアレ!?」
ベルデもインペラーも、ライダー裁判にいないどころか影の一つも聞いたことがない仮面ライダーの出現に驚かずにはいられず、先程まで滾っていた戦意も忘れて混乱していた。
そんな二人の混乱が冷めるのも待たず、ディアウトはさっきまでの弱々しさの欠片も感じさせずに容赦なく距離を詰める。
「うがっ!?」
気づいた時にはもう遅い。
インペラーが思考を戦いに戻すよりも早く、ディアウトの拳は彼の顔面に重い一撃を喰らわせていた。更にそれとほぼ同時に、近くにいたベルデを流れるようにハイキックに移行し吹き飛ばす。
強烈且つ的確に視覚を封じる一撃にインペラーは怯み、彼女のラッシュを許してしまう。顔、胸、腹。顔面への初撃を発端に始まったパンチとキックの連撃が、インペラーに反撃の隙すら与えない。
「この野郎ォ!」
先程までいたぶっていたはずの弱いゾルダが、急に姿を変え容赦の無い強烈な反撃をしてきたことを受け入れられず、怒りのあまり叫びながらバイオワインダーを伸ばしぶつけようとするベルデ。
だがディアウトはインペラーを乱暴に投げ捨てると、鞭のようにうねるディスクを見切り掌でキャッチする。そしてそのまま引っ張って自分の方へと手繰り寄せた。
あまりの怪力でストリングを引っ張られ、ベルデは踏ん張りが利かずディアウトの方へと引き寄せられ宙に浮かんでしまう。
身動きが取れず空中でバタバタするベルデ。
ディアウトはそんな彼を自分の元へと引き寄せると、その勢いを利用して紫のオーラを纏った拳を突き出し、奴の腹に正拳突きを食らわせた。
「ぐはあっ!?」
彼女の攻撃をもろに喰らったベルデは背中を地についたまま鎧を削りながら地面を滑る。
ここまでものの十数秒程度。
そんな短い時間の中で、ディアウトは二人のライダーを圧倒した。
「てめぇ……ふざけやがってぇぇっ!」
『クリアーベント』
ベルデは怒りと屈辱が混ざった叫びを上げつつも、降参などせずにカードを使用し逆襲を試みる。
すると彼の身体がカメレオンの保護色のように周囲の景色に溶け、その姿に不可視の力を与えた。
「!?」
その僅か数秒後、ディアウトの身体に金属がぶつかる衝撃が何度も走り火花を散らす。
クリアーベントのカードで透明化したベルデが、バイオワインダーで見えざる攻撃を叩き込んだのだ。
卓越した戦闘スキルを持つディアウトといえど、見えない攻撃への対処を急には出来ず怯んでしまう。
「うおおおおおぉっ!」
その怯みを見逃さず、インペラーは雄叫びを上げながらガゼルスタッブを振りかざす。
通常なら見切って反撃することなど造作も無いが、ベルデの妨害がある今はそうはいかない。ベルデの攻撃に耐えつつなんとか躱すのに精一杯だった。
ディアウトはこの状況を打開するべく、インペラーの攻撃をいなしながら隙を見てアウトブッカーからカードを取り出し、ドライバーに装填する。
『カイジンライド』
『ナイトジャマト!』
ディアウトの隣にシルエットが交差し、さっきまでいなかったはずの存在を召喚する。
2頭の馬を象った頭部を持つサボテンの怪人『ナイトジャマト』だ。
ナイトジャマトは召喚されるや否や人間と同程度のサイズの身体が膨れ上がる。2m、3m、4m……縮尺はそのままにそのボディは巨大化し、怪人は巨人と成る。
「ええええっ!?ウソだろ!?あんなモンスター見たことないぞ!?」
最終的に10mはあるほどの巨体まで巨大化し、ナイトジャマトをディアウトがアドベントしたミラーモンスターだと勘違いしているインペラーは驚きで顎が外れてしまう。
ベルデは透明化してて見えないとはいえ、ディアウトに攻撃していることからそう遠くにはいないはずだ。
ならば、自身の肉体を自在に拡大、縮小出来るナイトジャマトを巨大化させ、この辺り一帯を薙ぎ払って炙り出せばいい。
巨大化したナイトジャマトは身を屈めると、地に爪を立ててその巨大な腕で辺りを薙ぎ払った。
「ぐはあっ!?」
超大な質量を持つ腕が周囲の瓦礫を巻き込んで、範囲にいたインペラー、そして透明化してディアウトに闇討ちしていたベルデを容赦なく弾き飛ばす。
クリアーベントを過信していたベルデはスケールの大きすぎる攻撃に見事に炙り出され、透明化が解除されながら吹き飛ばされる姿を現した。
吹き飛ばされたインペラーとベルデは空中でぶつかり、一緒に地面に墜落する。
『アタックライド』
そこに間髪入れず、ディアウトは新たなカードを投入する。
巨大なナイトジャマトが役目を終え虚像へと霧散すると、彼女は腰のアウトブッカーを取り外し銃型のガンモードへと変形させた。そして無情にも呻き苦しんでいる2人のライダーに銃口を向ける。
「ヤバい……!」
「おいてめっ……!」
インペラーは己の危機をいち早く察知すると、力を振り絞りベルデを置いて脱兎の如く逃げ出した。
インペラーの背信行為に怒り呼び止めようとするベルデだったが、彼はこの戦闘前にゾルダのエンドオブワールドをもろに喰らい手負いの状態だった。それが軽く巻き込まれた程度のインペラーと体力差をつけてしまい、ディアウトとナイトジャマトの攻撃を浴びた後は足を動かす気力が残っていなかった。
そんな彼にディアウトは情けをかけず、ドライバーのハンドルを押し込む。
『ブラスト!』
ディアウトが引き金を引くと、アウトブッカーの銃口が瞬間的に分身し絶え間なく弾丸が放たれる。
スコールのように放たれる必殺連射は逃げ遅れたベルデを蜂の巣にし、彼を爆炎に包んだ。
爆炎が明けると変身者がミラーワールドから弾き出され砕けたベルデのカードデッキが転がる。インペラーのカードデッキは無いことから、彼は間一髪で逃げ切ったようだ。
「……驚きましたよ。その姿、まさかあの話が本当だったと言うのですか?」
ベルデを撃破したディアウトに、シザースを始末したリーサルが合流して声をかける。
不意打ちでシザースを撃破したリーサルは、途中からゾルダ及びディアウトの戦いを瓦礫に隠れつつ観察していた。
ゾルダの時は作戦通りにベルデに追撃出来ず逆に追い詰められていた彼女が、ディアウトに変身した瞬間別人かのように戦鬼へと豹変した。
ディアウト。あんなライダーはデータベースに存在しない。
ミホが言っていた『ゆいなは異世界から来た』という話は冗談か何かだと思っていたが、異質なまでの彼女の豹変ぶりを見るに事実なのかもしれない。
現にリーサルに声をかけられたディアウトは返事の一つもせず、無駄な動き無くアウトブッカーを下ろすだけだ。普段の彼女ならまずあり得ない。
「まあ話は後で聞くとして、今は急ぎましょう。コアミラーはこの地下にあります」
リーサルは地下駐車場の入り口を指しそう言う。
「あなたが取り逃したインペラーがまだ近くにいるとも分からない……私がここで見張っておきますから、あなたはコアミラーの破壊を頼みます。おや……?」
そう提案したリーサルが言い終わると同時に、ディアウトは彼に返事さえせずゆっくりと歩みを進め地下駐車場へと降りて行った。
ディアウトの漆黒のシルエットが地下の暗闇に溶けてますます見えなくなっていく。
「やれやれ……まああの話が本当ならば……折角だから見せてもらいますよ。あなたの力とやらを」
リーサルは変身前のゆいなの影も形も無いディアウトの態度に苦笑しつつも、「地下の入り口での見張りをする」という言葉に反して彼女を陰から尾行し始めた。
*
カツカツとコンクリートにブーツを踏み鳴らして地下駐車場を探索するディアウト。
地下迷宮のように入り組んだ静寂の空間を歩き回っているうちに、遂に彼女は目当てのものを発見した。
それは全ての面が鏡でできた、3mほどの巨大な直方体の石碑のようなオブジェクト。
埃一つ無い鏡面に映し出されているのは、紫のコブラのようなミラーモンスター。辺りを見渡してもこの周囲にいないはずのモンスターがマネキンのように微動だにせず全ての面に映し出されており、まるでマジックミラーの箱のようだ。或いは永久凍土に閉じ込められ凍結したマンモスのようにも見える。
これこそが蛇塚がゆいなに壊すよう懇願した『コアミラー』の正体だった。
元のゆいなだったら閉じ込められているコブラにピンと来る節があっただろう。
だがディアウトに変身した彼女は元の弱気な彼女を心の奥底に沈め、目的だけを淡々と遂行する本能のままに突き動かされていた。
紫のコブラを前に閃きなど一切無く、ディアウトはただアウトブッカー ガンモードを構えコアミラーに銃口を向ける。
白濁した複眼で鏡像の自分を見据え、発砲しようと指に力を込めたその時――
「貴様……一体何のつもりだ?」
「……?」
何かが雪のようにひらひらと降り始めたかと思えば、コアミラーの頂上の方から声が響いた。
ディアウトは想定外の出来事にプロンプトを妨害され、思わずアウトブッカーを下ろし声の主を見る。
まるで神話の一節のように舞い散るは黄金の羽根。
そしてコアミラーを背に地下駐車場の天井から神の御使いの如く舞い降りるのは、黄金の不死鳥の騎士。
金色の羽毛が舞う空間を支配する、神々しさを纏った光の番人。
「私は仮面ライダーオーディン。コアミラーの番人だ」
コアミラーを守護する番人――仮面ライダーオーディンはコンクリートの地面に降り立つと、コアミラーを破壊しようとするディアウトの前に立ち塞がった。
「!?」
その次の瞬間、オーディンはディアウトの目の前に現れた。
あまりに突然の光景にディアウトは対処する間も無く、彼女はオーディンの裏拳をノーガードで喰らい吹き飛ばされてしまう。
ディアウトは地面を転がりながらも手に持ったアウトブッカーを急いで構え直す。そして転がりが止んだ瞬間に体勢を立て直すと、オーディン目掛けて銃を突き出した。
「……!?」
だが、銃口の先に既にオーディンはいなかった。
「こっちだ」
「!」
ディアウトが銃を向けるまで僅か2〜3秒。
その間にオーディンは彼女の背後に回り込んでいた。
ディアウトは背後の危険を察知し振り返ろうとするが、その前にオーディンの蹴りを防御出来ずに喰らってしまう。
「貴様のようなライダーの参加は承認されていないはずだ。一体何者か……降参せぬなら実力行使で聞き出すまでだ」
オーディンは手元から光を放つと、先端に畳んだ翼のようなパーツが付いた錫杖型召喚機『ゴルドバイザー』を召喚し手に取る。そしてカードデッキから引き抜いたカードをスキャンした。
『ソードベント』
黄金に輝く二振りの双剣『ゴルドセイバー』を召喚し構えるオーディン。
すると次の瞬間、オーディンの身体が金色の羽根となり崩れたかと思えば、一瞬のうちにディアウトの背後に瞬間移動した。そして間髪入れずにゴルドセイバーの二連撃を叩き込む。
死角からの斬撃を喰らってよろめくディアウト。そのよろめいた先には、またも瞬間移動したオーディンが待ち伏せしており剣を振る。
美しき金色の羽根が舞い散るフィールドでは、逃れられない瞬間移動と斬撃の罠が醸成されていた。
カードの力に頼らない瞬間移動能力に、単純な高火力。
このオーディンとかいうライダー、ベルデやインペラーとは一線を画す別格の強さだ。
ディアウトは瞬間移動からの待ち伏せ斬撃というオーディンの凶悪なコンボから抜け出せず、為されるがままにゴルドセイバーの刃の軌跡の餌食となる。
このままやられるわけにはいかない。
ディアウトは斬撃の嵐の渦中にいながらも、次の斬撃が注がれるまでの一瞬の間に、アウトブッカーを天井のある一点に狙いを定めて撃ち抜いた。
アウトブッカーから放たれた銃弾が一直線に向かった場所、それは天井のスプリンクラー。
ディアウトはスプリンクラーを破壊すると、そこから撒き散らされる水の激しいシャワーで辺りを水浸しにした。オーディンが散布していた羽根が水を吸って重くなり、優雅さを失って水たまりに無残にも墜落する。
「ムッ……!?」
想定外の手にオーディンの攻撃の猛勢がほんの少しだけ緩む。
それにより僅かに生まれた針穴よりも小さな隙を見逃さず、ディアウトは2枚のカードをドライバーにスキャンする。
『カイジンライド』
『ポーンジャマト!』
『アタックライド』
『スラッシュ!』
ジャマトの中でも位が低い雑兵にして、かつてゆいなを死の淵まで苦しめたポーンジャマトが3体召喚され、ディアウトに密着し彼女を取り囲む。ディアウトはポーンジャマトによる肉壁に囲まれながらアウトブッカーをガンモードからソードモードに変形させる。
このポーンジャマトの戦闘力はナイトジャマトを遥かに下回る。オーディンに攻撃されようものなら一撃で消し炭になるだろう。
だが、ポーンジャマトは他のカイジンライドと違い3体同時に召喚される。つまり今のように全方位を取り囲む肉壁にしたりできるなど、単純な戦闘力以外で使用用途に大きく差別化が為されていた。
オーディンの瞬間移動からの双剣による二連撃も、どこから攻めようが初撃はどうしても全方向を守るポーンジャマトに命中してしまうだろう。
ポーンジャマトが初撃を肩代わりしたらそれを呼び水にして、二撃目が来る前にカウンターを喰らわせる。
それがディアウトの狙いだ。
「ジャッ!?」
狙い通りディアウトの背後に回り込んだオーディンは、片方のゴルドセイバーの一太刀で彼女の背中を守るポーンジャマトを斬り裂いた。
ジャマトの短い断末魔をセンサー代わりにして、ディアウトは背後の脅威を察知する。
アウトブッカーの柄を握り締めると、もう片方のゴルドセイバーによる斬撃が飛んでくる前に素早く振り返り、ポーンジャマトの遺骸ごとオーディンを袈裟斬りにした。
「うぐぅっ!?」
アタックライド・スラッシュのカードで強化された研ぎ澄まされし刃が、ジャマトの身体を両断しオーディンの胸部装甲に大ダメージを与える。オーディンは窮鼠の思わぬ反撃に心身ともに衝撃を受け、体勢を崩す。
だが、致命傷には至らなかった。
ディアウトは追撃を加えるべく振り下ろしたアウトブッカーを素早く斬り上げたが、正常な戦闘思考を奪われるに至ってないオーディンはそれを瞬間移動で躱す。
そして彼女の死角から現れるとゴルドセイバーの横一閃でポーンジャマトごと斬り裂いた。
ポーンジャマトは一瞬にして消滅し、ディアウト自身も吹き飛ばされその身で水たまりを割る。
「中々やるようだが……サバイブの力を持つ私には敵わない」
スプリンクラーの雨が止み、オーディンは不敵にそう言ってゆっくりとディアウトに歩み寄る。コンクリートに染み込まず残る水を踏む音さえも、彼の圧倒的な強さによって重厚な行進にも聴こえる。
「……やはりあのオーディンには敵いませんか」
そんな二人の一連の戦闘を、リーサルは物陰から観戦していた。
未知なるディアウトの力に興味を持ったので、オーディンにぶつけて強さを測る。それ故に彼は入り口付近での見張りという嘘を吐いて陰から一部始終を見ていた。
が、流石にコアミラーの番人たる奴には善戦こそすれど敵わなかった。それもそうだ。彼は裁判の勝敗からは逸脱した、他のライダーとは異なる特殊な立ち位置。普通のライダーが勝てるように設計されていない。
少し番狂わせを期待しつつも予想通りの結果に少し落胆した様子で、リーサルは踵を返そうとした。
――この時、ディアウトやオーディンはおろかリーサルさえも気付いていなかった。
彼女らの戦いを観戦しているかのように浮遊している、目のようなオブジェクトに。
「……仕方ない。少しだけ手を貸してやるか」
蛇馬神社の敷地内の木に肩を預けているゾック。
彼はそうぽつりと呟くと木から離れ、すぐ近くのある所へと足を向ける。
人間の背丈と同じくらいの、そこそこ大きな祠。
ゾックはその前に立つと、祠の扉を開ける。
そこに奉納されていたのは、ミイラのように干からびた奇妙なジャマトだった。
全身が枯れ草のような色に侵食され微動だにしないその姿は、生きてるのか死んでるのかも判別がつかない。唯一元の色が残っているのは、頭部や肩に飾られた彼岸花にも線香花火にも見えるワインレッドの器官のみ。
そして何よりその腹部には、ゆいなの物には無い緑色の蔦のような紋様が浮かんだディアウトドライバーが装着されていた。
ゾックは謎のジャマトを見下ろすと、懐から一枚のカードを取り出す。そしてそれを腰のドライバーに装填し、左右のハンドルを押し込んだ。
『ファイナルカイジンライド』
『ジャジャジャジャマト!』
「ウガッ……!?」
「……?」「何……?」
突如、ディアウトは頭を押さえて苦しみ始めた。
オーディンは思わず足を止め、観戦を止めて帰ろうとしていたリーサルも見返る。
怪訝そうに見守る二人のライダーの視線に晒されながら、ディアウトは激しい頭痛に苛まれる。
激しい痛みにより彼女の中のリミッターは暴走し、奥底から真の力が沸騰する。
「ウガアアアアアアァァッ!!」
痛みを身体のうちに押し込むことが出来なくなったディアウトは、腸の底から悲痛な咆哮を吐き出す。
すると周囲に無数の灰色の影が展開し現れた。オーディンとリーサルが驚愕すると、間髪入れずにそれはソニックブームの衝撃を伴ってディアウトの身体に収束し、彼女に新たな姿を与えた。
全身に突き刺さったプレートは木の枝のように湾曲し、更なる禍々しさを付与する。白濁した複眼は深いグリーンに染まり、邪鬼の形相の如く吊り上がる。
「フーッ!フーッ!」
ディアウト、否、仮面ライダージャマーディアウトは激痛から解放されて獣のように息を整えた。
以下、現時点でのディアウトについての簡単な解説です。
■仮面ライダーディアウト
外道ゆいながディアウトドライバーを用いて変身する仮面ライダー。
見た目のベースはディケイド。黒と紫のボディ、外側に広がるように突き刺さるプレート、白濁した複眼が相違点。
◆変身ツール、武器
●ディアウトドライバー
ゆいなが所持するディアウトに変身する為の変身装置。
見た目は黒いディケイドライバー。ギミックや変身方法もディケイドライバーと同様。
蛇馬神社の祠にいる謎のジャマトが所有している、植物を模した緑色の紋様が入ったバージョンもあるようだが……?
●アウトブッカー
ディアウトのカードケース兼可変型武器。
長剣のソードモードとショットガンのガンモードに変形可能。
見た目は黒を基調に緑のラインが入ったライドブッカー。
●マシンディアウター
ディアウトが所有するバイク。
見た目は黒と緑のマシンディケイダー。
◆所持カード(カメンライドと現時点で未使用のファイナルアタックライドは省略)
●アタックライド・スラッシュ/ブラスト
ディケイドの物と同様の効果。
●アタックライド・マシンディアウター
マシンディアウターを召喚。
●カイジンライド
ポーン、ナイト、ルーク、ビショップジャマトのカイジンライドカードを所持。
使用することで対応するジャマトを1体(ポーンジャマトのみ3体)召喚できる。
●ファイナルカイジンライド・ジャマト
ゾックが所持するカード。
蛇馬神社の祠にいる謎のジャマトのドライバーに使用することで、ディアウトを仮面ライダージャマーディアウトにパワーアップさせる。