仕事の都合上亀更新が続くと思いますがこれからもよろしくお願いします。
詳しくはあとがきで
「どうして、ここに?」
「偶然お見かけしたので」
「ついてきたってことか」
真の疑問に茶々丸は頷くことで答える。
そんなのんきなやり取りをしている二人に、怯みから解放された千雨がしびれを切らしたかのように声を上げる。
「なんだよ、大きな声を出せば私がビビるとでも思ってんのか!」
そう言いながら千雨はそのまま視線を茶々丸に移す。
「それにあんただってそうだ、なんでロボが人に交じってのほほんと勉強してんだ よ。おかしいだろ!」
そう言い切ると千雨は荒い息をつきながら肩を上下させている。
そんな状態でありながらも千雨の視線は厳しさを維持したまま真と茶々丸をとらえ続ける。
真はそんな千雨の様子に困ったような表情をしながら冷静になった頭で考えるように口をつぐむ。
詳しい話は分からないが千雨の様子を見ると彼女が麻帆良に何かの隔意を持っていることはわかる。
真は現状では情報不足だと考え、確認するために口を開こうとするが、その真より先に茶々丸が口を開く。
「長谷川さん」
「な、なんだよ!」
茶々丸は静かに、ゆっくりと空いている手を胸に当てながら千雨をみる。
「私は確かにあなたの言う通りロボット、正式にはガノイドです。人間ではありませ ん。ですが……」
そして一呼吸おいて茶々丸はその声にはっきりとした意志を携えながら千雨に言葉を投げかける。
「私はあなたたちと一緒にいてはいけないのでしょうか?」
「っそれは……」
茶々丸の言葉にうろたえる千雨を見て真は思考をいったん止めて溜息をつく。
そして重くなった空気を霧散させるかのように寄りかかっていた茶々丸から体を離し、声もなく視線を合わせたまま動かない千雨に声をかける。
「長谷川さん、でいいのかな?」
茶々丸に目を向けていた千雨は真の声に反応して真の方へと目を向ける。
茶々丸の言葉により冷静さを取り戻した千雨を見ながら真は落ち着けるように優しく言葉を選びながら話し始める。
「俺は君に何があったのかはわからない。だから偉そうなことは言えないんだけど」
向けられる千雨の視線に頭をかきながら真はいったん言葉を切って少し考えた後、話を再開する。
「俺はさ、昔麻帆良の外でちょっといろいろあって孤立っていうか村八分みたいに なったことがあってさ」
「清水さん」
心配そうな表情で真に声をかける茶々丸に軽く笑みを浮かべると言葉をつづける。
千雨は唐突な真の告白に若干慌てながらもその真剣な雰囲気から口をつぐみながらも真を見続ける。
「あの時は誰も周りに味方がいないって思ってた。友達も家族もみんな俺から離れて いったと思っててさ」
そう言って真は過去を想い返すように静かに目を閉じる。
「まぁその後なんやかんやあって麻帆良に来たんだけどさ、ここに来た時俺は結構荒 れてて周りにあたってたんだよ」
恥ずかしいことにな、と言いながら真は自身の過去を何でもないことのように話す。
まるでその場の重い空気を軽くするかのように。
「でも、そんな俺でもこの街の人は受け入れてくれた。驚くよな」
そう言いながら真が千雨を見ると彼女は思い当たる節があるようにじっと考えている。
「だからあんまり悪く言わないでほしいんだ、俺の恩人たちをさ」
真はそう言うといまだ黙り込んだままの千雨の方を見るが千雨はしばらく黙りこみ何かを考えているようだった。
千雨は真の話を聞き彼と自分が似た境遇にあったことを知る。
真は麻帆良の外で、千雨は麻帆良の中で孤立した。
しかし二人には大きく異なった点があった。
真は麻帆良という場所で理解者を得て麻帆良という街に受け入れられたが、千雨はいまだ麻帆良という地で孤立している。
その一点、それが真の言葉を納得し理解しようとする千雨の心にストップをかけている。
真の言葉は千雨にとって既に救われた立場、自分より上の立場から投げかけられた言葉であり、また真が恩人だと言い、悪く言わないでほしいといった麻帆良の住人に今現在千雨は傷つけられているということもその一因だった。
そしてその事実がいったん冷静さを取り戻しかけた千雨の怒りに火をつけ、再び真に向けて鋭い言葉を飛ばす。
「あんたはいいさ、あんたの言う通りあんたはこの街に救われたってんだろうから な」
そう言いながら千雨は真達を再びにらみつける。
「あんたはまだ理解してないみたいだから言っておくぜ」
そう言って千雨はいったん言葉を切るが、怒りで感情が高ぶっているのか彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「あんたが恩人だと言っている奴らが、この麻帆良の人間があたしを嘘つき呼ばわりしてんだよ!」
そうやって叫びながら千雨は涙を流す。
ずっとため込んでいたものを涙とともに吐き出すかのように彼女は叫ぶ。
その嗚咽交じりの声は叫びという大きな声でありながら、恐怖より悲しみを呼ぶ色を備え、心を揺らす。
「クラスメイトも先生も近所の人も……父さんも、母さんもっ」
そう言って彼女は力をなくしたかのようにうつむく。
悲しみに染まった涙は絶えることなく千雨の両頬を濡らし、彼女の中で澱んでいたものを言葉とともに外に流していく。
「悪口じゃ、ねえんだよ。私だって……」
そこで千雨の言葉は途切れる。
結局のところ千雨も麻帆良の人々が、クラスメイトや近所の人々、そして家族が好きだったのだ。
そして好きだからこそ、自分が受け入れられない現実に傷つき、弱い自分を守る仮面をかぶった。
本来ならうまくやっていけるはずだった。
しかし今日彼女は自分の悩みを理解してくれるかもしれない存在、希望を見出した。
しかしその希望は希望自身に打ち砕かれ、それとともに彼女のかぶっていた仮面もまた壊れてしまい弱い自分が顔をのぞかせる。
「私は……独りぼっちだ……」
真、説得に失敗するの巻ですね。
長らく更新せずにすいませんでした。
難産だったこともそうですが仕事の部署がちょっと変わってしまいしばらく更新が遅くなりそうですが、これからも楽しみに待ってていただけたら幸いです。
それではまた次回をお待ちください。