ポカンとする茶々丸の顔を見ながら真は恥をそこらのごみ箱に捨て去り言葉をつづける。
「俺は魔法使いだから動物の気持ちとかも一目瞭然なんだぜ」
「そうなのですか?」
道化師のように言葉を紡ぐ真とは対照的に茶々丸は冷静に普段通りに馬鹿にした様子もなく真に訪ねてくる。
そんな茶々丸の様子に自分のやっていることが馬鹿らしくなり道化師のような口調をやめて普段通りに話し始める。
「まぁ話半分で聞いてくれていいんだけど、なんか絵をかいてるとそのモデルの気持 ちとかなんやらが見えたりする時があるんだよ」
そう話す真の話を茶々丸は変わらずに聞き続ける。
それは彼女自身の性格というよりはむしろ魔法使いが実在することを彼女が知っているからだった。
もちろん真自身は魔法使いが実在するなどということは知る由もなく、空気を和ませるためにそんな冗談を言ったつもりだった。
「だから今こいつをスケッチしたときにさこいつの内面というか思っていることみた いなのはわかったんだ」
そこまで一息に言い放って真は頭を抱える。
(そんなわけがあるか)
自分で言っておいてあまりの荒唐無稽さに自分であきれていたのだった。
もちろん真が言っていることは事実なのだが、それを言葉にしたときのその胡散臭さに自らあきれてしまう。
(これはもうだめかもわからん)
そう思いながら死んだ魚のような目で茶々丸を覗うと、真にとっては以外にもあきれた様子を見せず真の言葉を待っているようだった。
その様子を不思議に思いながらもこれ幸いと真は言葉をつづける。
「まず第一にこいつは、怒ってて、怖がってる」
その真の言葉を聞いた瞬間、茶々丸無表情の茶々丸の瞳から一筋、涙が零れ落ちる。
それはやはりというあきらめの気持ちと悲しみの気持ちから生み出された静かな、悲しみのそして彼女が生まれてから始めて流す涙だった。
「ただそれは!」
悲しみのそこに沈もうとする茶々丸の意識を、先ほどより強い真の声が引き上げる。
はっとしたように茶々丸が真を見ると、彼の表情には優しげな笑みが浮かんでいた。
「それはさ、絡繰の手におびえてしまい、お前を傷つけてしまった自分に対しての怒 りで、お前に嫌われてしまうんじゃないかっている恐怖だよ」
「えっ……」
茶々丸はその瞬間、真が何を言っているかわからないというような表情を浮かべる。
もちろん言葉は一言一句聞き漏らしてはいないが、その言葉の意味を考えるのに、そして理解するのに少し時間がかかってしまった。
その間にも真は言葉をつづける。
「トラウマっていうかさ、やっぱりけがを負ったことは覚えていて、その際にこいつはお前の手がちょとばかし怖くなっちゃったんだよ」
そう言って真は椅子の上にいた猫を抱え上げながら茶々丸に近づく。
「普通だったらお前が近づくだけでも逃げちゃうもんだろうけど、こいつはお前が大 好きだからさ、撫でてほしくて頑張ったんだ」
それでも体の方がちょっとびっくりしたみたいだけどな、とつづけながら真は腕の中の子猫の頭を撫で茶々丸に笑いかける。
「だからさ、心配すんなよ。こいつはお前のことが大好きだとさ」
「あっ……」
そう言って真は子猫を茶々丸の膝の上に下してやる。
茶々丸の体が一瞬こわばるが子猫が茶々丸の顔を見上げ一つ鳴くと茶々丸の体に入っていた力がゆるゆると抜けていく。
「今度はお前ががんばる番だぞ」
その真の言葉につられるように恐る恐る茶々丸が子猫に向けて手を伸ばす。
そしてあと少しで触るといったところでまたもや子猫の体に震えが走り、それを見て茶々丸の手も止まってしまう。
また先ほどと同じようになってしまうのかと目を閉じ、おびえそうになった茶々丸の肩に優しく手が置かれ、後ろからそっと背中を押すように真の声がする。
「大丈夫、がんばれ」
その声にはっと目を開けた茶々丸の視界に映ったのは信じるようにこちらを見上げる子猫の姿だった。
わずかに体を震わせながらそれでも茶々丸の膝から動かずに彼女を見上げるその姿に、止まっていた茶々丸の手が少しずつ動き出した。
最初は壊れ物を触るように恐る恐る。
次第にゆっくりと愛おしむようにその手つきからは恐れが消えていく。
しばらくしてお代わりを注ぎにきた定員の目には先ほどまでの悲しみに暮れる少女の姿はなく、ある種の絵画のようなじゃれつく猫を優しく撫でている微笑みを浮かべた少女の姿があった。
その少女の目には先ほどとは違う意味のしずくがあふれていた。
真もこの能力のせいで過去いろいろありましたがそれはまた別のお話ということで。
これからもよろしくお願いします。
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