魔法先生ネギま!描かれる物語   作:びーびー

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最終話 しずく

 

 

 

 「どうだ、超?」

 「あいやー、全然わからないネ」

 そんな会話を交わす少女たちの前では数台のモニターが明かりを照らし、先ほどの研究室内の映像が様々な角度から繰り返し流れている。

 先ほど茶々丸と猫の間に何が起こったのかを解読しようと映像を流し続けている二人であるが、その作業に進展はなく、その作業はもう一人の研究室の主が入ってきても続けられていた。

 「二人とも、さっきから何やってるんですかー?」

 モニターにかじりついている二人に入ってきた人物、葉加瀬聡美が声をかけるが、二人はそれに気づいていない様子でモニターを見続けている。

 そんな二人の様子に首を傾げながら葉加瀬は持っていた自分の荷物を近くの椅子の上に置き、備え付けのコーヒーメーカーから自分のカップにコーヒーを注ぐ。

 カップに口をつけ、再び二人の方を向くと相も変わらずの光景がそこにはあった。

 何の気なしに二人の方向に歩き出した葉加瀬を遮るように研究室の扉が開き、室内に新たな人物が入ってくる。

 その人物に気づき右手を挙げて軽く挨拶をする。

 「いらっしゃーい、茶々丸と、あれ、たま五郎?」

 「こんにちは葉加瀬」

 葉加瀬の挨拶に頭を下げて答えながら茶々丸は自らの腕に抱いている子猫を見る。

 子猫は違うという風に首を振っているがそんなことお構いなしに葉加瀬は小走りで茶々丸に近づいてきて、その腕の中の子猫をのぞき込む。

 「そういえば元気になったんだよね、たま五郎。さっそく茶々丸と遊びに行ってたんだ」

 「「茶々丸!?」」

 葉加瀬の言葉にモニターにかじりついていた二人がものすごい勢いで振り返る。

 そんな二人の様子に驚き目を丸くする葉加瀬をよそに二人は茶々丸の姿を認めると、仕切り直しをするようにコホンと一つ咳払いをする。

 「ふん、やっと戻ったか。主人たる私を置いていくとは貴様もまだまだだな」

 「とか言いながらエヴァンジェリンはさっきまでとても心配していたネ」

 素直じゃないヨ、という超にエヴァンジェリンの蹴りが放たれるが超は余裕をもってこれをかわす。

 「冗談ネ、冗談。あまり焦ると本当のことのように見えるヨ」

 「うるさいわっ!貴様は黙っていろ!」

 そのままじゃれあうように目にもとまらに技の応酬を始める二人だが、それを遮るように茶々丸がエヴァンジェリンに声をかける。

 「マスター」

 「む、なんだ茶々丸」

 茶々丸の声に詰められたその真剣さにエヴァンジェリンは手を止めて茶々丸の方へと向き直る。

 しばらく無言で向き合った後に茶々丸は意を決したように口を開く。

 「お願いがあります」

 「ほう?」

 茶々丸の言葉にエヴァンジェリンは笑った。

 

 

 

 

 

 

 数日後、真は商店街で魚の目利きをしていた。

 生活費の大部分を画材へとつぎ込む真に外食をする余裕はなく、基本的には自炊をすることとなる。

 最初は食べられればいいと適当に食材を買っていた真だったが、そのあまりの適当っぷりに見かねた商店街の人々が買い物に来た真を捕まえ、あれが旬だ、鮮度がどうだと教え込んだ結果、持ち前の目の良さもあり、真の目利きはかなりなものになっていた。

 そんなわけで今日も安価でおいしい食事を食べるため目利きにせいを出していた真だったが、自分の名を呼ばれたような気がして顔を上げ、あたりを見回す。

 「清水さん」

 「うおっ!って絡繰か」

 思ったより近くから聞こえた声に驚きながら声のする方を振り向くとそこには買い物袋を手にした茶々丸が立っていた。

 「よぉ、この間は無理に誘って悪かったな」

 「いえ、こちらこそごちそうになってしまいありがとうございました」

 「いいって、俺が誘ったんだしな」

 そう言って笑う真に、茶々丸はもう一度ありがとうございましたと頭を下げた。

 「そっちは買い物か?」

 このままではあの日のように埒が明かないと考えた真は多少強引に話をそらす。

 茶々丸はその言葉に頭を上げると、そうですと返して一つ報告がと言葉をつなげる。

 「報告?」

 「はい、先日の猫なのですがマスターの許可を得て家で飼うことになりました」

 「お、そいつはよかったな」

 しずくと名付けました、と言う茶々丸に真は笑顔で返し、手に持っていた買い物袋の中から先ほど目利きしたばかりの鯵を取り、茶々丸の買い物袋の中に入れる。

 最初は遠慮していた茶々丸だが真がスケッチさせてもらったモデル料だよというと淡い笑みを浮かべながらそれを受け取る。

 再びありがとうございますと頭を下げる茶々丸に苦笑いしながら、ふと強い悪寒を感じ茶々丸の遠く後方にこちらを見ている金髪の小柄な少女の姿に気づく。

 「そんなにいちいち頭を下げなくても大丈夫だよ。それよりいいのか、向こうで友達 が待ってるみたいだぞ?」

 その言葉に茶々丸は頭を上げる。

 本来ならもう少し話をしていたいところではあったが先ほど感じた悪寒がその思考を中断させる。

 「また今度な」

 そう言って手を振る真に茶々丸も挨拶を返す。

 「はい。またお会いしましょう」

 茶々丸はそういうと踵を返し彼女を待つ少女の方へと小走りでかけていく。

 その後ろ姿を見送り真は再び今日の夕飯のための目利き作業に戻っていく。

 先ほど感じた悪寒について風邪かな、などとのんきなことを考えながら。

 

 

 

 

 茶々丸がエヴァンジェリンのもとへ戻るとそこには不機嫌そうな顔をしたエヴァンジェリンとその傍らににやにやといやらしい表情でボイスレコーダーを茶々丸に向ける彼女のクラスメートである朝倉和美が立っていた。

 「突然すいませんでした、マスター」

 「ふん、かまわんさ」

 先ほど、買い物を終えて帰宅しようとしていた茶々丸とエヴァンジェリンであったが、茶々丸が真の姿を見つけ彼女はエヴァンジェリンに許可をもらい真のもとへ向かった。

 買い残しでもあったかと茶々丸に許可を出したエヴァンジェリンであったが、茶々丸が見知らぬ男子生徒と親しげに会話をしている姿を見て彼女の中の父性本能が刺激されつい強くその男子生徒をにらんでしまった。

 エヴァンジェリンにとっての苛立ちの種はそれだけではとどまらなかった。

 茶々丸が話しているところを運悪くクラスメートの朝倉に見つかってしまい、さらに朝倉の質問の矛先は茶々丸と一番近い位置におり、今手持ち無沙汰なエヴァンジェリンに向いてしまったことで彼女の苛立ちはピークに達しようとしていた。

 そんなエヴァンジェリンを知ってか知らずか朝倉の質問の矛先は小走りで駆け寄ってきた茶々丸にうつる。

 「絡繰さん、今の人ってだれ!?結構仲よさそうに話してたけど、もしかして彼  

 氏!?」

 そんな朝倉の矢継ぎ早の質問に茶々丸は首を振ってこたえる。

 「いえ、清水さんは彼氏というものではありません」

 その茶々丸の言葉にエヴァンジェリンから発せられていたプレッシャーが緩む。

 朝倉はえー、と残念そうに声をあげるがすぐさま気を取り直したように質問を続ける。

 「でも結構仲よさそうだったしー、ほらたとえばデートとかしたことないの?お茶し たり、買い物したりとか。」

 「喫茶店でコーヒーをごちそうになったことはあります」

 その茶々丸の言葉に二人の動きが一瞬固まる。

 その後朝倉の目には狂気のような光が宿る。

 「え・・・マジで?二人で?」

 「はい」

 不気味なほどの静けさの中、茶々丸は朝倉の質問に淡々と答えていく。

 「どこのお店で?」

 「路地裏の影時計というお店でした」

 店名を聞いた途端朝倉の顔が赤くなる。

 浩輔が真にこの店を紹介した時にも浩輔は言っていたが、影時計は恋人同士のデートスポットとして有名な店だった。

 「うわー、これはもう確定かな、ありがとう茶々丸さん」

 朝倉はそう言いながらいつの間にかボイスレコーダーから持ち替えていたメモ帳にすごい勢いで文字を書き込んでいく。

 何の事だかわからないと首をかしげる茶々丸の前に今まで不気味な静けさを保っていたエヴァンジェリンがフラっと近寄る。

 そんなエヴァンジェリンに気づかない朝倉はメモ帳から顔を上げずにとどめともいえる質問を口にする。

 「絡繰さんはさっきの、清水さんだっけから何かされてないの?キスとかさ」

 その言葉に茶々丸は胸の前で自身の手をもう片方の手で優しく包み、まだぎこちないながらも淡い笑みを浮かべる。

 「手を、優しく握っていただきました」

 その直後、商店街に女子生徒の嬌声と説明しろという怒声が響き渡った。

 このニュースは翌日には朝倉の手によりクラス中に広まり、茶々丸の生みの親も知るところになった。

 その日の放課後、父(エヴァンジェリン)と母(超)と娘(茶々丸)とその他一名(葉加瀬)による緊急家族会議が開かれ、誤解が解けるまで真は身に覚えのない悪寒に苦しめられることになる。

 

 




これにて第一章は終了し、物語は次の章へと移ります。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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