書きためは23話途中まではあるので、推敲したのち投稿していきます。
頻度は下がりますが、エタる予定は今のところありません。
どこぞの滅びの呪文を唱えた後みたいな光が収まった。目を開けると、どうやらかなり広い建物の中にいることが分かった。
壁には壁画がある。壁と床は…大理石というやつだろうか?神殿とか聖堂の中っぽい。
壁画の前には自分たちの立つ場所がある。固い材質だ。
どうでもいい思考をやめて周囲の状況、特に自分以外の人がいるかを見回す。
目の前には見知らぬ人間が30人ほどの人がひざまずいている。
謎の集団以外にはクラスメイトがいる。ざっと見まわす。
南雲、清水はすぐ近くにいた。
天之河たちもすぐそこにいる。
その他大勢も変わらずだ。
愛子先生もいたことから、人を選んだ、というよりは特定の場所にいる人間丸ごと転移させたらしい。
謎の集団は、おそらく服装からして宗教団体だろう。全員が上品かつ意匠を凝らしたような装飾をしているので、かなり身分が高いようにも見える。
その中から一人、大きすぎる烏帽子っぽいものを被り、特にきらびやかな装いのおじいさんが話しかけてきた。
…いや、まじででかいな。落ちるだろ。
顔は笑っているが、こんな状況で笑いかけられるのは普通に怖いな。
イシュタル・ランゴバルドという明らかやばそうな名前の爺さんは、歓迎の言葉らしきものを口にしている。
だが、俺の耳にはほとんどの言葉がぼんやりとしか聞こえなかった。自分の思考がまとまらず混乱しているのがわかる。
俺たちは、とても大きなテーブルがいくつも並んだ大広間に移動した。
豪華絢爛という言葉が似合う部屋だ。
教会ってのはもっと質素なもんじゃねえのか?まあ、イシュタルさんがローマ教皇みたいな立場であるのならば、筋は通りそうだ。
天之河が落ち着かせたことでクラスメイトは誰も騒がなかった。今はのんきに周囲を見渡しているもの、興奮の抑えきれないもの、俺のように思考の海に沈むものとさまざまである。ちなみにイシュタルとやらは事情はまとめて説明すると言って前を歩いていた。
みんなロボットのようにテーブルに着いていった。順番は…いつもの四人組と先生、その他って感じだ。まあ、この辺は重要ではないだろう。
ちなみにここはさっきの聖堂と同じ建物だと思われる。広すぎる。サグラダ・ファミリアが完成したらこんな感じかな?
そんなことを考えている間に全員が着席した。
すると、扉が開き、メイドさんが出てきた。
教会にメイド?意味不明だな。
飲み物を配膳してくれたメイドさんに礼を言う。メルシーでいいかな?
ちなみに周りの少年たちはメイドに釘付けだ。
ふっ、若いな。
こういうのは見て楽しむのではなく、優雅さを楽しむのだよ。
…いや、何を現実逃避しているんだ俺は。
イシュタルさんが1から全部お話ししてくれるらしい。正直助かる。
で、聞いたのがざっとこんな感じの話。
・世界の名前はトータス
・大きく分けて3つの種族 人間族、魔人族、亜人族が存在している
・魔人族は質より量、人族は数がいるので対抗していた
・近年、魔人族が魔物の使役を何らかの手段で可能にした
・人族やべえわ滅ぶで君ら
・そこで神エヒト様が君らをこの危機を救うために召還した
・というわけで魔人族ぶち殺してきてね♡
結論 戦 争 に 行 け
ふ ざ け ん な 死 ぬ わ 。
お、愛子先生が立った。
…頼みますよ。
ここで教師が嘘でも「仕方ありませんね」とか言い始めたら、俺は何も信じれなくなる。
「ふざけないでください!」
その後愛子先生は少しの間喚いていた。
子供に戦争させようとすんな、そんなことは許さない、これは誘拐だ。
という感じ。
まあ、俺もそう思った。神のご意思(笑)だろうが、俺たちが救世主だろうが、別にそんなことはどうでもいい。これは立派な拉致監禁だ。
愛子先生、明らかやばそうな人たちに抗議したことは評価に値します。ちょっと、いや、かなり見直しました。
…で?
本当に返してくれると思ったわけ?
こんな意味不明な方法で人をさらうような奴らがさ?
「お気持ちはお察しします。しかし…あなた方の帰還は現状では不可能です」
飲み物が気管に入ってむせた。
不可能?え?
エヒト様とやらは危機救ったら返すよ、みたいなこと言わなかったんですか?」
気づけば、口が勝手に動いていた。
「申し訳ないのですが、先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「…そうですか、まあそりゃそうですよね」
「ご理解いただけて幸いですじゃ」
俺は全身の力を抜き、上を見上げた。石造りの天井しか見えないが、なんだか車酔いのように頭がぐわんぐわんする。クラスメイト達の騒ぎ声が耳障りだった。パニックになる気持ちは分かる。…だが、うるさい。
人間が大人数で騒いでいると、大抵まともな結論にはならない。
イシュタルさんはそのパニックになったクラスメイトを見ていた。…侮蔑のようにも見える。一瞬、俺と目が合った。俺は肩をすくめた。イシュタルさんは少し顔を顰めた。
突然、誰かが机を強くたたいた。思考が引き戻される。
どうやら天之河が音の発生源らしい。
まあ、こんな状況でかじ取りができるのはこいつだけだろう。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない」
そう言って、天之河はこの世界に人々のために戦争に参加する意を述べた。
どうやらイシュタルさん曰く、俺たちは元の世界の数倍から数十倍の力を持っていると考えられるらしい。その力を人々のために奮うんだとさ。
周りのクラスメイト達は乗り気…いや、乗せられているな。男子は浮足立ち、女子は天之河に熱い視線を送っている。
「お前ならそういうと思ったぜ。お前ひとりじゃ心配だからな。…俺もやるぜ?」
坂上が即座に乗った。後、八重樫、白崎がそれに乗っていった。周りのクラスメイト達もそれに賛同していった。愛子先生は頼りなく止めている。
…もう少し強く止めてほしかった。
どうせ流れで全員参加すると思われているし、言質対策で優雅に飲み物を飲んでよう。
にしても、だ。
こんなに流されやすかったか?
…いや、パニックになった人間ってのはそういうものか。
それよりも用心すべきはこの馬鹿どもの頭ではなく、あのタヌキじじいだ。
正直なことを言って、天之河たちの戦争参加の決意は現状での最適解だとは思う。
帰る方法は、現状なし。
なら、この世界で生き残るための力を得る。
現状だけを見れば、それは間違っていない。
俺は、浮足立って饒舌になったクラスメイト達と、それを目を細めて眺めるイシュタルを見比べていた。
…最適解、それは現状における最高の行動。
ただしそれがいい結末へ続く行動とは限りません。
追記
1話目のあとがきに伊織のイメージを公開しました。
AIイラストですので苦手な方はお気を付けください。