その後は、半ば流されるように王国に向かった。どうやら、こういう流れを予定していたのだろう。
現在地である【神山】のふもとの国である【ハイリヒ王国】が受け入れ態勢を整えているらしい。
教会の正面門にあった台座に乗り、イシュタルが呪文を唱える。
すると、台座そのものが動き出した。
…いや、何だこれ。
どうやらこの神山はかなり標高が高く、途中雲海の中に入ることもあった。その後、王国へと降り立った。正直、少し怖かった。
王都に着くとすぐさま王宮に案内され、玉座の間に通された。
そこに着くまでにすれ違った者の視線は畏敬の念を含んだものが多かった。
騎士も召使も同様だ。
玉座の間は当たり前だが贅を凝らしたものだった。教会が雰囲気を出すために金を使っているなら、こっちは見栄のために金を使っているらしい。
イシュタルは玉座の前で我々を止めると、国王の隣へ進んだ。
国王は恭しくその手を取り、触れるか触れないかという程度に口づけをした。
うん、儀礼とわかってもキメェな。にしても、国王の方が下か、ますますローマ帝国じみてきたな。
その後は、王族、騎士団長、宰相などの自己紹介、そして晩餐会があった。
とりあえず、手当たり次第に食べた。これから先、もうこれ以上豪華な料理は食べられないかもしれないと思ったからだ。
…死ぬにしても、死なないにしても、な。
その後は豪華な部屋で一人になった。
俺は持ち込めたものの整理をしたのち、眠りについた。
朝、起きるといつの間にか着替えが用意されていた。
動きやすいものである。
着替えて外に出ると、メイドさんが立っていた。
「なにか御用でしょうか?神の使徒様」
「神の使徒?」
「神エヒト様が使わせたあなた方は、尊敬を込めてそうお呼びするように言いつけられております」
ふむ、この人としては尊敬、畏敬とかではなく、客人として扱うという考えなのだろう。その方が気楽だ。用件を伝えよう。
「今日のスケジュールを教えてくれ。それと、時間があるなら、資料館…いや図書館か?まあ情報収集のできる場所へのへの案内を任せたい」
「かしこまりました。ではスケジュールは案内しながらお話しします」
「了解」
俺たちは図書館へと移動した。
どうやら、かなり早起きしてしまったらしく朝食までかなり時間があるらしい。大体、本を3分の1くらい読める時間らしい。2時間ほどだろうか?
朝食の後はスケジュールがみっちりあるらしい。マークのない間の情報収集は今のうちだろう。
「時間になったらお呼びに上がります」
「ええ、ありがとうございます」
メイドさんと別れ、司書さんに話しかける。
「この世界の基本的な情報の書いてある本、そうだな…現代と歴史を絡めていろいろな文化、地域について記載されている本を探してほしい」
「かしこまりました」
数分後、司書さんが3つほどの本を渡してきた。
「この本が人族国家についての歴史などの本、こちらは地域ごとの特徴や危険地帯などをまとめた本、こちらは反逆者について本です。2.3の本は同系統の本です」
「ありがとうございます。2.3はまた後程読みます、一つ目の歴史の本だけお借りしますね」
「かしこまりました」
本はイラストが多かったのと、なぜか文字が理解できたのもあって、ざっとだが全体に目を通すことができた。そのあたりでメイドさんがやってきた。
司書さんに礼を言い、俺はまたメイドさんに案内されていった。
朝食の後、今日からの座学と訓練の説明が行われた。
まずは座学?なのだろうか、集まった全員にちょっと大きめの銀色のプレートが配られた。団長からの説明はこうだ。
・これはステータスプレートと言う
・ステータスの客観的に数値化してくれる
・最も信頼性のある身分証にもなる
・神代のアーティファクト
・便利なので一般市民も持ってる
・刻まれた魔法陣に血を垂らすと所有者登録
とのことだ。
恐る恐る、針でちくっとして流れた血を塗る。
すると、文字が浮かび上がった。
月見里伊織 17歳 男 レベル:1
天職:偵察士
筋力:60
体力:150
耐性:100
敏捷:80
魔力:80
魔耐:20
技能:適応・属性適正[闇・火・水・風・地]・属性耐性[闇・火・水・風・地]・複合魔法・状態異常耐性・夜目・気配感知・魔力探知・熱源探知・気配遮断・先読・追跡・言語理解
おお、便利そうなスキルがてんこ盛り、でも、直接戦闘系のスキルがほぼないな。
団長が追加で説明する。
レベル、ステータスについて
・レベル上限は100だが、潜在能力の完全開放なのでそうそういない
・レベルはステータスに連動する
・ステータスが上がるとレベルが上がる
・ステータスは様々手段であげられる
天職について
・才能。技能と連動している
・その領分において無類の才能を発揮する
・戦闘系、非戦闘系に分類される
・戦闘系は千人に一人、物によっては万人に一人
・非戦闘系は百人に一人、十人に一人も珍しくない
初期ステータスについて
・レベル1の平均は10
・俺たちはその数倍から数十倍があると思われる
ふむ…なら結構悪くないんじゃないか?ほかの人のやつも見てみるか。報告してほしいって言っていたし、自慢したい奴は自分から言うだろ。俺は言わないけどな。
お、天之河が行った。さてさてお手並み拝見と行こうか
天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
さすが勇者(ガチ)、ええやん。でも尖りがないのはちょっと良くないな。敏捷下げてほかのとこに振ればもっと強そう。
ちなみに団長はご満悦だ。ステータス3桁、技能もかなりあるというのは規格外らしい。普通は技能は2.3個らしい。
天之河は照れている。褒められて照れるのは珍しいな。先生には人として当然のことです。って感じなのに。
ちなみに団長はレベル62、ステは300前後。これで世界のトップクラスらしい。数値としてはドラクエとかポケモンぐらいか。結構わかりやすくていいな。
あと、技能についての補足があった。技能は先天性の物なので増えない。だが、派生技能というものがあるらしい。ざっくりいうと、熟練度上げたらその系統の新たな力が派生するって感じかな。
ちなみに他のやつらもなんか特異なことが天職になってるっぽい?でも中村さんの降霊術師や、清水の闇術師ってなんだ?俺の偵察士は自分でいうのもなんだが、観察癖とか疑い癖が派生したのかな?
気配隠蔽で呼ばれないかやってみるか。自分は透明、自分は空気~とイメージする。
あ、南雲の番だ。…表情硬くね?なんか、青ざめてね?変な笑いももれてるし…。
うーん、ここからじゃ見えないな。あっ、檜山が掠め取った、軽戦士は伊達じゃねえな。
檜山が読み上げたのはこうだ。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
…すまん南雲、これだけは言わせてくれ。
雑魚過ぎるだろ!
もうそれはこの世界に人じゃん。何だこれ?ギャグかな?
そのプレート壊れてるんじゃねえの?
あっ、檜山が笑いすぎて先生に切れられた。
ん?先生のステータス?
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
農業革命を起こせそうなスキルっすね。なんだこれ、実は農協のトップとかのレベルだろ。なんで教師やってたんですか?
南雲があしたのジョーみたいになった。
うん、気持ちは分かるけど普通に愛子先生が怖い。何だこの人。
ひと騒ぎした後、団長が呼びかけた。
「ごほんっ、ハプニングはあったが、話を戻そう。…?もう全員報告したか?」
「えーと?あれ?さっきまでで何人やりましたっけ?」
「確か…メモに書いた名前は24だな」
「クラスが25人に愛子先生を足して、26個ないといけないですよね」
天之河が団長と話す。
先生もクラス名簿と見比べている。ちなみに残り二人は俺と、団長の横で手を振っている遠藤だ。
ふむ、影の薄さを遠藤と同等にできるなら十分有用なスキルだな。ちなみに遠藤は自動ドアにすら無視されるらしい。
遠藤が肩をたたき、話しかけてやっと気づいた。ちなみに遠藤は暗殺者だった。不意打ち最強だな、気を付けよう。
んで残ったのは俺か、気配遮断を切りながら団長に近づいていく。
「どうやら、俺が最後らしいですね」
「月見里!?どこにいたんだ!?」
「その辺にいたぞ」
「そ、そうか…」
団長にプレートを渡す。
同時に耳打ちする。
「俺のステータス、スキルは漏らさないでください。皆には悪くはないぐらいに言っておいてください」
「なぜだ?」
「俺の世界では、個人情報を大勢の前で公開するようなことはあまりしないんですよ」
「そうか。できる限り、配慮しよう」
「あと、団長のも見てもいいですか?」
「それは構わないぞ」
「ありがとうございます」
メルド=ロギンス 38歳 男 レベル:62
天職:騎士
筋力:350
体力:350
耐性:330
敏捷:320
魔力:290
魔耐:280
技能:物理耐性[+斬撃大耐性][+刺突耐性][+打撃耐性]・剣術[+斬撃速度上昇][+弱点特効]・剛力・縮地[+爆縮地][+震脚]・先読・気配感知
つっよ。ステータスが今の天之河の三倍でも、派生技能の効果次第では、もっと強そうだ。
「強いですね」
「まあな、これでも王国最強だからな」
がはは、と笑った。これからお世話になります、どうぞよろしくお願いします。と心の中で言っておく。
「んで、お前のやつだが…偵察士か」
メルド団長が、少し考えるようにプレートを眺めた。
「いいんですか?」
「悪くない。むしろ、かなり便利な天職だ」
「そうなんですか?」
「暗殺者や狩人でも偵察はできる。だが、あいつらはあくまで暗殺や狩りが本分だ」
なるほど。
「偵察士は違う。敵を見つける、地形を調べる、罠を探す、進める場所を判断する。そういうことに長けている」
「探索のエキスパート…ですね」
「そういうことだ」
メルド団長は頷いた。
「だが…戦闘能力だけを見ると、少し渋い」
メルド団長が少し苦い顔になる。
やっぱり…か。技能的に魔法以外の攻撃手段の適性がかなり死んでいる。
「だが、戦闘だけが戦争じゃない。敵の情報をつかむだけで多くの兵士が死なずに済むかもしれない」
情報のアドバンテージというやつだな。
「戦闘職ではある。だが、正面から敵を叩き切るための職じゃない。かといって、完全な非戦闘職ではない」
「器用貧乏では?」
「言い方は悪いがな」
メルド団長は少し笑った。
「だが、その中途半端さが強みになることもある。前に出るやつらを生かすために戦う。そういう役割だ」
縁の下の力持ち、というやつだな。
「頼りにしているぞ」
「ありがとうございます」
天之河がしびれを切らしたのか、声をかけてきた。
「メルド団長!月見里のステータスはどうだったんですか」
「ああ、前に出て敵を倒すタイプではないが、部隊にいれば間違いなく助かる。戦友としてはかなり頼もしいな」
「なるほど」
俺は天之河に向き直る。
「天之河には及ばないと思うが…まあ、こちらこそ改めてよろしくだな」
「ああ」
そういう感じで一波乱あったこの話は終わった。
メルド団長のステータスは妄想です。
偵察士のイメージとしては生存能力、情報収集能力が高く、ある程度の戦闘能力も担保された天職といった感じです。
ただし、暗殺者、狩人と比べると明確に戦闘面では劣ります。