その後、ホルアドの宿で一泊して、俺たちは王都へ帰ってきた。
流石に大半のやつは戦える雰囲気ではなかった。その上、神の使徒の一人が死んだので、流石に教会や王国に報告が必要だったからだ。
勇者一行にメンタルケアが必要の可能性もあると判断されたのもあるのかもしれない。
王国に帰ってきてからは、乾いた笑いが何度も出た。
南雲が死んだと伝えられた時の反応は、人によって様々だった。
王国側は死んだのが無能と言われていた南雲と分かると、明らかにホッとしたらしい。
国王やイシュタルでさえその有様だった。だが、貴族の中には南雲をさらに罵るものもいた。
当然、天之河はキレて教会や王国側に猛抗議した。こういうところだけ見たらいいやつなんだよな〜とは思う。
まあ、無能どころか、使徒全滅の危機を救った英雄なのだがな…
ちなみに、南雲を死に追いやった魔法は、流れ弾が当たったということになっている。
現在、だれもがあの誤爆(?)の話はしない。
まあ、自分が殺した可能性があるとやりづらいってのは分かる。まあ、私は水弾撃ってたから絶対に違うけどね。
クラスメイト達は、南雲が自分で何かドジを踏んだせいだということにしている。だれも、そのことで悩みたくないからだ。
まあ俺としてはかなりの確率で檜山だと思っているがな。あいつ風適正なのに火球使うの計画的犯行すぎるだろ。というか、あの時盗み聞いた会話的にほぼ確定じゃないか?
ちなみにメルド団長は事件究明を行おうとしたが、イシュタルがこれを禁止した。団長はこれに抗議したが、国王にも禁止をくらい、断念せざるを得なかった。
ちなみに南雲の死を悲しんだのは、俺たちが少しお世話になった国家の錬成師の皆さんだ。
異世界の知識を知れて、毎日が楽しいと言っていた。
南雲が作ったものを俺たちの記憶頼りに再現しようとして、あーでもないこーでもないとなりながら、魔力回復薬に頼りながら色々試作もした。
俺が持つクロスボウもその一つの試作品だ。この実践訓練を経て改善していこうと皆ウキウキしていた。
南雲の持つ海賊の銃モドキに至っては執念がやばすぎて手作業で作ろうとした人すらいた。
…んで、だ。
今は二人だけで会議をしている。いや、もはや会談とも言えるかもな。
「これからどうする?」
「さあ、わからん」
少々投げやりな様子で清水が返事をする。
清水は、闇魔法に関する本を読み漁っている。ちなみに俺はアーティファクトや魔法の創作に関係するものなどがメインだ。本格的にゴーレムカーとかの移動手段を確保しての逃走を視野に入れる必要が出てきたためだ。
この世界、どうやら六属性以外の魔法は、補助魔法ぐらいしかない。ゲームでよく見る空間魔法や重力魔法はないらしい。
だが、大迷宮を作った反逆者達が、神代魔法と呼ばれるものを使っていたという記録はある。その中には空間魔法や重力魔法があったとされている。
大迷宮が反逆者のアジトだったりしたら、…魔術書が残ってるかもしれない。
で、本題だがゴーレムカーを作るのはほぼ無理だ。
理由としては、俺たちの魔法への理解度的に無理ということだ。
イメージできるさ。車型の石が、四つ車輪ついて、動くってのはさ。
やってみたよ。
動かねえんだわ、まじで。
重い、遅い、硬い、狭い、操作性最悪。そもそも五人がかりで土魔法を使い続けないと動かない。という感じで、散々な結果だった。
清水の闇魔法の方はいい感じの使い方は思いつきそうだが、まだ無理とのこと。
…前途多難だ。南雲が死んだことで、無理にでも状況は動き始めてしまった。何もせずに、なんの成果も出せずにいられる時間が、どれだけ残されているのかわからないのに…
その後、俺たちは参加者の非常に少なくなった訓練に出てきた。参加しているのは中心四人組、小悪党四人組、あと中村、谷口、あと永山の方のパーティ、それと俺たち二人だな。
檜山がチラチラと天之河の方を気にしている。
その様子を少し観察する。
檜山としてはここはかなりの正念場だろう、ここでどうにか全員のヘイトを減らさないと、腫れ物扱いになる可能性がある。
ちなみに檜山は帰りの馬車は一緒のやつに乗ってきた。つまり、中村に対する二重スパイ、そして俺の陣営に加わるということだ。
天之河が手を叩き、注目を集める。
「檜山が何か、言いたいことがあるらしい。みんな、何も言わずに聞いてやってくれ」
なるほど、考えたな。取れる中でも最良手だ。檜山が前に出て、いきなり土下座した。
「本当に申し訳ない!俺の身勝手でクラスメイトのお前らを危険に晒し、あまつさえ、一人を死なせる原因を作っちまった。俺の言うことを信じる必要なんか無いけど、本当に反省してるんだ。許す必要も、俺を仲間だなんて思う必要もない、だけど、どうにか挽回のチャンスをくれ!南雲の一人の命の分の挽回なんてできないかもしれない。だけど…自分でもおかしなことを言ってると思うけど、罪を贖わせてくれ!」
いいね、天之河にきっちりと刺さるものだ。
「…とのことだ、俺は檜山を許すべきだと思う。檜山だって悪気があったわけじゃ無いんだ…香織に良いところを見せたかったんだろう。檜山じゃなくても、他のやつがやる可能性だってあったんだ。だからみんな、俺の顔を立てると思って許してやって欲しい」
ここからは俺達があらかじめ考えておいた茶番を入れる。
「なあ、檜山。お前本当に反省してるのか?俺からみたら、天之河の善性につけ込んで、他の奴らから糾弾されにくいようにしてるとしか思えないぞ?」
「なんて事言うんだ月見里!」
「待ってくれ天之河、俺がちゃんと話す」
天之河がキッと俺を睨みつけてくる。予定通りだ。
「確かに天之河の善性を見てこの状況を作ったと言うのはある。だけど、必死で謝って、その誠意を伝えれば、そう言うのを天之河はきっちり理解してくれると思ったからこうしたんだ。人が同情で味方になってくれることを見越して謝罪するなんて、最低なことだと思う。でも、そうでもしないと、俺はずっと謝罪を受け入れてもらうことすらできなかったと思ったからだ」
「…なるほどね。すまないな檜山、確かに謝るというのも勇気のいる行動だ。俺がそう言うことを指摘するのは、お門違いというものだな…」
「いや、月見里の指摘は合っている。他のやつにそれを知らしめるためにも必要だった…」
檜山は俯く。周りが暗い雰囲気になる。
また、天之河が舵を取る。
「他に何か言いたいことがあるやつはいるか?だが、檜山への罵倒は俺が許さない」
…計画通り。クラスメイト達は皆考えているのか、そのフリをしているのか、何も言わない。
八重樫は顰めっ面をしていたが、やがてため息を吐いた。
「檜山君、本当に反省しているのね?」
「ああ、本当だ!八重樫」
「私の目を見て、それを言える?」
檜山は一瞬怯んだが、それでも負けじと見返した。
「俺は…俺は本当に反省したんだ」
絞り出すように、檜山が言った。
八重樫は、圧を消した。
「…香織がなんで言うかは知らないけど、私は一旦保留にさせてもらうわ」
「ありがとう…八重樫」
という感じで、この話は終わった。
さてさて〜訓練に行きましょうか。
今、俺たちは清水、俺、檜山の3人で訓練場の一角に集まっていた。
「さて、檜山が正式に許されたわけだし、とりあえずお前を鍛えようと思う」
「お前が?俺を鍛える?」
「ああ、『具体的には使い方を教える』という言い方をしても良いだろう。」
檜山は怪訝な顔をした。
「お前達が南雲のオタクをいじり倒していたとはいえ、流石にワンピースやドラクエぐらいは知ってるはずだ」
「まあ、そうだな。流石にそんぐらいのは触れてるな」
「じゃあ結論から言うとだな、お前らには漫画やゲームの技を使えるようになってもらう」
「お前何言ってんだ?」
「そんな反応になるのも無理はない。ああいうのは普通に無理だって思うだろ?でもな、今の俺たちには超人的な身体能力と魔法がある。これを使えば十分可能だ」
檜山が興味深そうな顔になっていく。
「お前の天職が軽戦士、尚且つ風適性ありなら、風魔法で空気を圧縮して、そこを蹴り付けてスカイウォーク(月歩)とか、風を纏って高速移動、挙げ句の果てには飛翔までできるかもだぞ?なんなら風魔法には浮かぶ魔法があるしな」
檜山の顔がどんどん楽しそうな顔になっていく。
「と、まあ強くなる方法はいくらでもあるわけだ。これからはステータス上げだけではなく、そういう戦い方を重視するわけだ。力任せの勇者よりも余裕で強くなれるさ。」
俺たちは、訓練を始めた。
描写はありませんが、ハジメは原作通りです。