Faber est suae quisque fortunae 作:ラグなロック
昔から、空を眺めるのは好きだった。
特に夜空が好きだ。
普段は太陽の光に隠れて見えない星々の光さえも見渡せる夜空。
月明かりがそれを照らし、幻想的な雰囲気に感動したこともある。
新月の夜はさらに星が良く見える。
人間の肉眼で見える星の明るさは六等星が限界と言われているが、自分にとってはそうではなかった。
どれだけ暗く小さな星でも、自分なら
それがどれだけおかしなことか気づくのにそう時間は掛からなかった。
どれだけ遠くにあっても。どれほど小さくても。自分ならすぐに見つけられた。
それもあってか、小さい頃から失せ物探しは得意だった。
どれだけ前に失くして諦めたものであってもすぐに見つかる。
……そのせいで、自分が隠した犯人なんじゃないかと言われたこともあった。
その時はまだ園児くらいの年齢だったから、可愛い悪戯程度で済まされた。
それからは、何事も程ほどにしないと余計なトラブルを引き寄せるということを学んだ。
だから、本当に困ってるときでないとこういう手助けはダメだ。
それでも。周りを見てはつい体が動いてしまう。
きっと。自分はお節介焼き、という奴なのだろう。
同年代位の子たちがおもちゃの取り合いで喧嘩していると、仲裁に入って取り成す。
色鉛筆が無くなった子に自分のを貸してあげる。
風で飛ばされ木に引っ掛かった帽子を梯子を持ってきて取ってあげようともした。
……最後のは流石に周囲の大人が全力で止めに入ったけど。
おかげで大人たちからは「子供たちを上手く纏めてくれるリーダー格」という評価がついてしまった。
別に率先してやっているわけではないが、どうしてか
一度。大人に相談したこともあったがその時は「貴方が優しい子だからよ」と、当たり障りない言葉で誤魔化された。
いや。きっとあの人たちも困っていただろう。
手は掛からない。むしろ自分たちの手伝いと思しき行動をとっている。
同年代の子供と比べても大人びている。
ついた綽名が――――「ミニ先生」
助かると同時に、不気味に思った人もいるだろう。
事実。自分が知る範囲で三人ほど辞めていった人たちもいた。
子供とは、泣き、笑い、怒り、騒ぎ立てる生き物。
自分はその逆を行っているのだから当然だろう。
だからといって今からそういった行動が取れるのかと言われると首は横に振らざるを得ない。
小学校に上がる頃には周囲全員が慣れていた。
その日も、皆で公園で遊んでいた。
いつもと同じように。周りをよく見ていた。
すると。人知れず公園のベンチで一人座っている子を見つけた。
自分たちと同じではない。きっと近所の子供なのだろう。
周りもそれが分かってか中々近づかなかった。
子供であろうと、異分子は中々自分たちの輪の中に入れ辛いもの。
だから、なのだろうな。
「一緒に遊ぼう?」
いつもと同じように。声をかけたのはある意味必然だったのだろう。
☆
ふと。目が覚めた。
やや硬めのベッド。マットレスではない、煎餅布団のような薄っぺらい敷布団をベッドの木枠に乗せただけのもの。
特にベッドが恋しいということはないが、就寝環境は良好であればあるほどいいものだ。
眠気が残る体に徐々に喝を入れつつ起き上がる。
枕元の時計を見ると、時刻は午前四時を少し回ったほど。
周囲は未だ薄暗い。朝から働きに出かけるサラリーマンも、まだ夢の中だろう。
それでも欠伸を噛み殺しながら、ベッドから降りて着替えを始める。
ハンガーに掛けてある制服――私立聖祥大付属中学――をスルーして、傍に置いてあるジャージを手に取る。
機能最優先のそれは少々奇抜な色味をしていたが、早朝から動くには目立って車除けにもなる。
何より着易さが段違いだ。
……いや。機能最優先だから奇抜なのか。
買うときは何も思わなかったが、いざ冷静に考えるとよくできていると感心する。
一分かからず着替えが終わると、そのまま外に出る。
四月とはいえ、早朝はまだ肌寒い時期だ。
身震いしながら自転車を走らせること数分。
着いた場所は新聞配達の集積所だった。
自転車を所定の場所に停め、中に入る。
「おはよーございまーす」
「おっ、おはよう! 毎朝ご苦労!」
「ッス。今日の分は」
これね、と新聞の入った鞄を渡された。
ずしりと、紙の束が入っている特有の重さを感じる。
「……なんか多くないですか?」
「実は今日中山君が風邪ひいちゃったみたいでね。みんなで分担しているんだ」
悪いね、というと他の人にも新聞を渡す。
……まあしゃあないか。
重さからみてそこまで回る件数が増えたわけではないだろう。
後からどこを回るかだけ知らされ、そのまま各自配達に出かける。
鞄を自転車の籠に入れる。
と、空を見上げる。
まだ若干薄闇が空に残っているからか、光の強い星たちがその存在を主張していた。
「……よし」
気持ちを切り替え、自転車のペダルを漕ぐ。
☆
もはや日課となった新聞配達のバイトから帰ると、時刻は午前六時になっていた。
……少し遠かったからかな。
部屋に戻って着替えを取りに行き、そのままシャワールームに向かう。
途中で起きていた職員の人とすれ違う。
「お、おはよー。毎日大変だね」
「おはようございます。やっ、もう習慣みたいなものなので」
そういうと、職員は少し困ったように笑みを浮かべながら話す。
「……前にも言ったけど。無理して出ていかなくてもいいんだよ? 君、特待生で学費は全額免除になってるし。こっちとしては負担がないから大丈夫だよ?」
「前にも言いましたが、ご心配なく。早く出たい、というより自分のことは自分でしたいだけなので」
アパート探しを手伝ってもらったのは本当に助かりましたよ。
そういって軽く笑う。
職員はそれ以上は何も言えなくなったのか、ため息をつく。
「……君って本当。大人だよねえ。話してるこっちが子供なんじゃないかってくらいに」
「俺だってまだまだ子供ですよ。早く成人してー、って毎日思ってます」
「それ。絶対世間一般の子供が思う理由じゃないでしょ」
どうでしょうねー、というとそのまま汗を流しにシャワールームへ向かう。
職員はその背中を見つめていた。
……本当。14歳とは思えないよ。
その職員はここにきてそれなりに歴が深い。
無論。今すれ違った少年とも親交はあった。
それでも毎度見せる大人びた表情と言動、思考には面食らうことが多々あった。
今ではそれもあの子の個性と認識して特に驚くようなこともなくなったが、ああしていると自分がまるで怠けてきた人間のように思えてしまう。
……やっぱあれかな。天才って奴なのかな。
そう思いながら、今日の朝食当番は自分だということを思い出し、慌ててキッチンへと向かっていった。
☆
「行ってきまーす」
いってらっしゃーい、という声を背後に自転車のペダルを踏むこむ。
時刻は七時三十分。
ここから少年の通う私立聖祥大付属中学は自転車でそこそこの距離だ。
本来ならバスもあるのだが、そっちは毎月の交通費の面から辞退した。
自転車で海沿いを走る。
この時期の海沿いは心地よい風が吹く。
潮風の独特の香りと、清涼感すら与えてくれる風がいい具合にシャワーで火照った体を冷やしてくれる。
海鳴市の海は日本なのか、本当はここ沖縄か何かではないかと思ってしまうほどに綺麗な澄んだ色をしている。
……海の底には竜宮城があって海は澄んでいる、っていうのもまあわかるな。
今頃浦島太郎は竜宮城で宴会か、などと益体も無いことを考えながら自転車を走らせる。
しばらく走っていると、バス停が見えてきた。
このコースは私立聖祥大付属小学校の通学バスが通る場所で、もう少し時間が経てば、バスを待つ小学生たちが目白のように並び始める。
そして、そのバス停に聖祥の初等部の制服を身に着け、辺りをきょろきょろしている少女が一人いた。
……なんか最近どんどん起きるの早くなってないか?
まだ小学生だろうに、そう思いながら自転車のスピードを緩める。
その音に気付いたのか、その少女は少年の方を振り向くと嬉しそうに笑顔になる。
少女の近くで自転車から降りる。
飴色のツインテールを揺らしながら挨拶をした。
「おはようございます凪咲さん!」
「はいおはよう、なのはちゃん」
少女――高町なのはと、少年――鳴無凪咲。
歳の離れた二人。
平和に見えたこの海鳴市で、事件に巻き込まれていく。
それが分かるのは、もう少し先だった。
やあ (´・ω・`)
ようこそ、リリなの二次創作へ。
このスピリタスはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この二次創作を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「怒り」みたいなものを感じてくれたと思う。
Fateまだかよ、とか。さっさとしろよ、とか。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。いやごめんやっぱ忘れて。