赤い、紅い夜…
「あ……あき……」
見つめる空は紅い月が昇る闇…
「あき……明久!!」
僕を呼び、泣き叫ぶ少女。
彼女も怪我をしていて痛いはずなのに……
「グゥウウウ!!!」
そして視界に映る異形……その手は赤に……いや、
逃がさなきゃ……
でも、体が……動かない……
僕は沈み往く意識の中
「……夢……か……」
懐かしい夢だ。もうあれから結構な時間が過ぎたんだよね……
「今日はAクラスとの試合の日」
「…ん…」
ふと鏡に映る背中を見る。
そこには右肩から左脇腹にかけて抉った様な傷。
「……あれ以来、会ってないな」
夢で見た少女…いやはとこ。
小学校を卒業してからは此方に来てすら…いや、退院してから顔すらも合わせていない。
母さん達曰く元気そうだったとは言っているが……
「まぁ元気そうならいいんだけどね」
僕は制服を着ると指の部分の空いた黒い手袋を右手に付ける。
薄く、しかし頑丈な手袋。
鉄人にも許可取ってるし…右手の傷を出した状態では道を歩きにくいしね。
「しかし日曜は春架のとこに行かなきゃか…着替え持っていかないとだよね…多分」
僕は此処には居ない師匠の事を考える。
別に変な意味で着替えがいるのではない。きっと服が駄目になるからいるのだ。
ま、それ専用の服もあるし…場合によっては…
「さてと……ご飯は……いいか」
別に一ヶ月くらいなら水だけで動き回れるし。
____________________
サクラ舞う……ってほどでもないか…
それにしても日差しが強い……
「ん?あ~転入生か」
校門前に立っていた大柄のスーツを着た男性…先生?
どちらかと言うとスポーツ選手の方が合ってる気がする。
「おはようございます。後すいません」
「いや、編入試験は受けていたしな。
運通の問題は仕方ない」
私は此処を受け、身支度をするために帰っていたのだが
「さて、これが君のクラスだ」
そう言って渡された封筒。
張り出すんではなく一人一人渡してるのだろうか?
「ここに…明久はいるのね」
「何か言ったか?」
「いえ。では行ってきます」
下駄箱に向かいながら私は封筒を開ける。
そこには、
雪香・Y・アレイシア Aクラス
「久しぶりだな…明久、私の事覚えてるかな…」
足取りが少し軽くなってるのを自覚しながら私は自分のクラスに行くために職員室へと向かった。
____________________
「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があっての事だ。感謝している」
教壇に立ち演説を始める赤髪…いや坂本雄二はそう切り出した。
「意外だね、雄二がそんなこと言うなんて」
「いや、これは紛れもない俺の気持ちだ。
ここまで来た以上、絶対にAクラスに勝ちたい。勝って、生き残るには勉強さえすれば良いってモンじゃねぇっていう現実を、成績だけが全てとしか見てねぇ教師共に突き付けてやるんだ!」
「「「「そうだ、そうだ!!」」」」
「皆、ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎討ちで決着を着けたいと考えている」
「は?????」
「どういう事だ?」
「誰と誰が一騎討ちをするんだ?」
「それで本当に勝てるのか?」
雄二の言葉に、教室中にざわめきが広がった。
まぁ、間違った反応ではない。普通学年主席に一対一を挑む人なんていないしね。
「まぁ聞け。やるのは……俺と翔子だ」
皆はひそひそと話し始める。あり得ないとか大丈夫かよ?とか。
「坂本、何か策があるの?」
「一騎討ちのフィールドを限定するつもりだ」
「フィールド?何の教科でやるつもりじゃ?」
「日本史だ。ただし内容を限定する。レベルは小学生程度、方式は100点満点の上限有り。召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」
美波の質問に雄二は答え、秀吉はその理由を問う。
まぁ理由を知ってるけど…
「俺がこのやり方を採った理由は一つ。それは、『ある問題』が出ればアイツは確実に間違えると知っているからだ」
「ある問題?」
「ああ。その問題とは………『大化の改新』」
「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろ、とか?小学生レベルでそんな問題が出てくるのかしら?」
「いや、そんなに掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」
「単純というと…起こったのは何時代かとか?」
「もしくは年号とかかのう?」
「お、ビンゴだ秀吉。お前の言う通り、その年号を問う問題が出たら俺達の勝ちだ」
実際そんなので勝てる筈がない。
しかし…霧島さんは雄二の言うとおりこの問題を間違える。
何故なら…
「あの……」
「なんだ?姫路」
「坂本君って、霧島さんと知り合いなんですか?」
「ああ。アイツとは幼馴染だ」
そう、大事な幼馴染が教えてくれたことだ。忘れるはずがないって!?
「総員狙えぇぇぇぇーーーっ!!!」
「なっ!?何故須川の号令で皆一斉に武器を構える!?」
「黙れ男の敵!Aクラスの前にキサマを殺すッ!」
「俺が何をした!?」
「男とはッ!『愛』を捨て『哀』に生きる者成りッ!それをキサマは汚らわしき欲望を以て気高き才色兼備の霧島翔子を唆し、我等の鉄の掟を踏みにじったのだッ!」
「「「「「「我等異端審問会の血の盟約の下、異端者に死をッ!!死をッ!!」」」」」」
「訳分かんねぇ!何だよ血の盟約って!?つまりどういう事だよ!?」
「「「「「霧島翔子と幼馴染なんて羨ましいじゃねーかこの野郎ッ!!!!」」」」」
あ~あ……
毎回思う。こんなことしなければもてそうなのに……
「あの、吉井君」
「ん?何?姫路さん」
「吉井君は、霧島さんみたいな娘が好みなんですか?」
「へ?そりゃ霧島さんは美人だけど…好きではないかな」
「……」
「けど好みかと言われたら…って、えぇっ!?何で姫路さんが僕に対して攻撃態勢取ってるの!!そして美波!?君は何故教卓なんて物騒な物を僕に投げつけようとしてるのさ!!僕が一体何をしたと!!」
「吉井君にはお仕置きが必要な様ですね」
「覚悟しなさいアキ。その性根を叩き直してあげるわ!」
まって!?今僕変なこと言ってないよね!?
「だ~!!とりあえず黙って聞け!!そこの二人もだ!!
俺と翔子は幼馴染で、俺達が小さい頃に俺がアイツに間違えて『大化の改新は625年』って教えていたんだ」
「貴様ッ!!まだ幼くて何も知らない純粋無垢な霧島さんに嘘の情報教育を施していやがったのかッ!!」
「何て外道な奴なんだ!!」
「………許されざる行為…」
「えぇーい、話が進まん!!」
こんなぐだぐだで大丈夫だろうか……
僕は外を見て、ため息をついた。