教室に沈黙が走る。
先ほど春架が口にしたこと……上位退魔士に認められた?
「ちょっと待って、どういうこと?普通……」
「えぇ、普通は下位から始めるわ。でもね明久、あなたにはそれが不要なの」
「え?」
下位から中位飛んで上位ってのも気になるが不要?
「それは私が説明しよう」
「おじさん……」
「明久君、君が今まで狩った魔を覚えているかな?」
「えっと……名前までは……」
「君が単独で狩った魔……黒闘牛ノヱ、死連空綴、剥離餓鬼」
「ちょっと待ってくれ、それマジなのか!?」
おじさんが例を挙げると雄二が声を上げた。
「えっと、どういうこと?」
「今のやつらは中位でも単独では倒せない奴らなんだよ。それこそ上位退魔士に依頼するレベルだ」
「え……でも」
「そこまで苦労するレベルじゃないでしょ」
「それは君の基準でだ、春架君。明久君だから良かったものを……
他の者なら即で死んでいるぞ」
「ちゃんと手助けするために近くにいたわよ。手助け必要じゃなかったけど」
「だろうな。これからどれだけ訓練がハードだったかわかるよ」
「流石です、明久様」
おじさんは頭を抱え、春架は何がおかしいんだという表情をする。
晶は晶で目を輝かせてるというか……
「とりあえず、極めつけはあれよ」
「あれ?」
「……黑煌狼単独討伐」
その言葉とともに部屋の空気がガラリと変わった。
それは例えるなら畏怖の感情だ。
「……上位でも最強の一角に立つ黑煌狼。
それは今いる上位退魔士でも複数人で勝てるかも微妙。
それを討伐したっていう実績のおかげで上位になったっていうわけ」
「まって、でもあれは……」
「あのね、明久。
黑煌狼はその強さの理由の一つはたとえ瀕死であろうと変わらないその戦闘力。
逆に瀕死であれば強さがますわ。そうそうないけどね」
「……」
「その黑煌狼に勝ったのは事実。本来最上位の位を上げても良かったのよ。
でもきっと貴方は受け取らない。しかしその実績は覆せない」
「……うん」
「だから妥協として上位とするわ。本来妥協で与えられる位じゃないけど……
自分に見合わないって言う前に、胸を張れるように努力しなさい。
弱音を吐くくらいなら鍛えなさい。私はそう教えたはずよ」
「それに最上位になるにしても経験的問題もあるからね」
「いや、君のせいでありまくりだと思うぞ」
「うっさいわよ」
何やらおじさんと春架は仲が悪いのか?いや、もし聞いてる話が本当なら春架は話もしないらしいけど。
「しかし流石です。私も頑張らなくてわ」
「そういえば晶~貴女何も言わず出たでしょ!!」
「い、痛いです!!春架様!!」
春架は腕で晶の首を固定すると拳骨をこめかみに押し付ける。
うん、あれは痛そうだ。てか絶対痛い。
「おかげであっちは大慌てになってたのよ~」
「ご、ごめんなさい!!い痛い!!」
ある程度そうやってると春架は晶を離した。
「まぁ今回は許してあげるわ」
「ごめんなさい……」
「ちょっといいか?」
「あら、貴方は……」
「あぁ、俺は坂本雄二って言います。時間も時間なんで明久を休憩に出したいんですがいいですか?」
やはり雄二の敬語って違和感あるな~
「あっそれはごめんなさいね。後春架でいいわ、様は得意じゃないのよ」
「いえ、こちらこそすいません……
ってことで今のうちに行って来い。今島田達は試合でいないが……そろそろ戻ってくるしな(ボソッ」
「えっ、なんて?」
雄二の最後の言葉がよく聞こえず、僕が聞き返すと雄二は何もなかったような顔をし、
「なんでもねぇよ。そうだ詩祇」
「なんでしょうか?」
「お前もついでに休憩とって来い」
「え?しかし……」
「明久だけだと心配で身が入らないだろう?」
「いえ仕事ですし、明久様からも……」
「丁度いいや、案内とかしたかったし行こうか」
「宣伝でその服は着といてくれ」
「え~」
「休憩なしにすんぞ」
「行ってきます!!」
僕は敬礼するようにして小物を取りに隣の部屋に向かった。
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「あっ明久様……」
詩祇が明久の後を追うようにして部屋を出ると春架……さんは笑い、
「晶も昔から変わらないわね」
「昔、ですか?」
「あぁ、無理に敬語じゃなくていいわよ。
でっそうね、昔はよく明久をお兄様って言てね。よくその後ろをひっついて追いかけてたわ」
「お兄様?」
なんでお兄様だ?どっちかというと昔とは言え……
「勘違いね。あの子は3月、明久は10月。年を勘違いしてたってのもあるわ」
「しかしまぁ、明久君は面倒みはいいからな。雪香もよく後ろをついて行ってたよ」
そう言うとおっさんはハッとした顔をし、
「そうだった。雪香のとこに顔を出さないとな。ではまた」
そう言って店を出ていった。忙しい人だな。
「しかしなんでまた明久を明久様って言ってるんだ?
流石に勘違いが治ったにしては……」
「それは流石に言えないわ。ただあの子には辛いことがあったっということだけよ」
「……」
馬鹿共は気づいてなさそうだがあの敬意は異常だ。それこそまるで……そう、盲目的にも見える。
……まっ、
「明久に任せればいいか。アイツならどうにかするだろ」
「……どうしてそう思うの?」
「春架……さんほどじゃないにしろ、俺はあいつの友人だから……でいいのかね?」
あの馬鹿がそれを放置すると思えない。
短いかもしれない年月にしろ、アイツとつるんでいるからこそそう思うのだ。