それは夢……もう9年くらいなるだろうか……
「……」
僕は窓から外を眺めていた。
「痛っ!!」
背中に感じる痛み。傷は治り、退院したがまだ完治とは言えず通院は確定だった。
「外に行こう」
あの時の僕はただ何かから逃げるように動き回っていた。
そして……
「……疲れたな……」
「あら……あの時の坊やじゃない」
「え?」
「元気そうね」
山奥で出会った女性……いや、
「あの時の……」
「覚えてたのね」
「で?なんでこんなとこまで来たのかな?」
白い太もも近くまである髪を縛らず、そして血を思わせるような深紅の瞳。
「……ユキの言ってた……たしか、アル……ベニ?」
「アルビノ、ね。訳ありだけど違うわよ?」
あの人はそう言うと僕の隣に座って来た。
「それにしても何かお悩みの様ね?」
「……ちがうもん」
「あらあら……悩みなら相談してくれてもいいのよ?
私は君よりか遙かに長く生きてるからね。あ、私の名前は春架ね」
「はるか?」
「そそ、漢字は……って言ってもわからないか」(苦笑
春架はそう言うと頬をかく。
「で?二度目だけど何に悩んでるの?」
「……僕……守れたのかな……」
「え?」
「僕はユキを守れたのかな?
ただ殴られて、背中を切られて……」
僕は話した。どうせ母さんや姉さん達に言っても信じてはくれない。
あの場にいたあの人だったからこそ話せたのかもしれない。
「う~ん、私から言えることは……どう考えても君の年で考えることじゃないし、悩むことでもないと思う」
「……どういうこと?」
「君は守ろうって頑張ったんでしょ?動けないからって理由で諦めなかったんでしょ?
ならそれは誇っていいことだろうし、次への反省にすればいい」
当時僕にはこの言葉の意味は分からなかった。
「何もせずに諦めるよりやって後悔したほうがいい……
だけどね、後悔ばかりして先に進まないことはいけないことなんだよ」
「……」
「あと言ってあげる。
背中から血を流しながら……怖いって恐怖と闘いながら腕を広げ、歯を食いしばり女の子を守ろうとした君をかっこ悪いだとか駄目な奴なんて私が言わせない。
私が保証してあげる。
君はあの子を守れていた、間違いなく……君達で言う
「……ヒーロー」
「そう、だから自信を持ちなさい」
彼女はそう言い頭を撫でてくれた。
「はるか」
「あらま、呼び捨てかい」
「あ……駄目?」
「いや、別にいいよ?お姉さんって歳でもないしね」
「?」
当時意味がわからなかったが、後に理解した。
見た目は17~8くらいだが千歳を超えてるとか……
「はるかは……なんで強いの?」
「そりゃ鍛えてるからね。
君達を襲った異形……あれを狩るのが私の仕事だから」
「……僕も強くなれるかな?」
「へ?」
「僕もアイツ等に勝てるくらいに強くなれるかな?」
「……正直、お勧めはしない。勝つと言うことは異形を殺すということ。
さすがに君には荷が重すぎる」
「……」
「でも……強くはなれる」
「え?」
「肉体だけだけど強くはなれる。それでも良いなら……ここに来なさい。
私はこの近くにいるから、修行くらい付き合ってあげるわ」
それ以来だろうか……さすがに通院中は勉強を教えて貰ったりしたが春架との師弟関係が始まったのは。
しかし何が肉体だけさ。ちゃんと精神面まで考えてるじゃないか。
歳に驚き、スケジュールが日に日にハードになって行くのに悲鳴を上げ、しかし遊び心、僕の事を考えてくれた。
それこそ本当の姉……家族の様に……だからこそ、
「本当に……いいのね?」
中学二年の夏。僕は継承の儀を受け本格的な修行を受けることを言った。
「その質問何度目だろうね」
「当り前でしょ?まぁ……基本修行をやりすぎたり自分の事を話し過ぎた私にも問題はあるけど」
「そうだね~いつの間にか崖を片手で登れだとか、組み手にまで発展したり。
話聞けば家の事や異形についての詳細まではなしてくれたし」
「うっ…仕方ないじゃない、初めての弟子だったから何したら良いのかわからなかったのよ!!
それに教えて行くうちに楽しくなって喋り過ぎちゃったし……」
春架は頭を抱えため息をつく。
修行をしながら気づいたことは、春架は天然、ドジっ子持ちであるということだった。
は~、とため息をつき、春架は表情を引き締め、
「基礎的なことなら問題はないわ。
けど…すべてを受け継ぐなら…人を止める…私と同じ人外になると言うことよ。
その覚悟が…明久にはある?」
本当は此方に来てほしくない…しかし僕の意見も尊重してくれた。
だからこそ、
「…構いません。僕が決めたことですから」
僕は右手を差し出し、
「そう……なら継承の儀を行う」
横に空間が開き、春架は2mになるほどの大太刀、燈影を取り出す。
そして、
「っ!!」
僕の右手の甲を切り、
「……!!」
自ら刃に左手の平を滑らせ、血が流れる手を僕の右手に重ねた。
継承の儀、春架の一族は魔と戦うため自身を人から外すことを選択した一族であり、その方法は互いの血を混わすこと。
その後、僕は数日間寝込むことになった。
その間春架が看病してくれたらしいが……(夏休みのため泊りがけで行ってた
中学二年の夏…僕は人を止めた…
そんなこんなで異能、そして黒楼を手に入れたのだが……
「明久の能力と器って異様よね……」
「そう?」
「あのね、私の力も十分に異様なのは自覚してるけど……
普通斬り飛ばした腕とかが数時間でくっ付くと思う!?どんな大怪我になろうと一晩で治るし!!
私でも腕切り落とされたりとかしたら数週間かかるわよ!!???」
「僕的には腕切り飛ばしたり、大怪我させたりする方がおかしいと思うんだけど……
僕的には助かってるしね~姉さんの折檻の傷もすぐ治るし……」(遠い目
『再生回廊』多分死にさえしなければどんな傷だろうと長くて一晩で治ると言う僕の異能。
そう……姉さんの腕折りとかサンドバックもこれのおかげで……
「ごめん、明久……
とりあえず器の方に関しては形がないのよね?」
「うん。唯僕が刀剣のあの形が一番使いやすいから」
「形のない器……しかもどれだけあるのかわからないと。
私の記憶にはそんな器を発現させた者はいなかった筈よ」
前黑楼を最大で出そうとしたら巨大なボールが出来た。
しかもまだ霧状にあるって来たもんだからね~
でもそれが僕の中にあるってのだから驚きだ。
「それに器が意思を持つなんて……」
思えばその黑楼が召喚獣にまで影響を与えてるもんだから笑い物だよね……
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「……あき…あきひ……明久」
まどろみの中僕を呼ぶ声……
ん?この柔らかい感触はなんだ?壁に寄り掛かって寝たはずなんだが……
「あ、明久起きた?」
目を開けると僕を覗きこんでくるユキ。なるほど、この目線からして膝枕か。
しかし顔……てか胸近いわ。
最後狙っただろうって?
さすがに30分くらいで考えてるネタで狙えるはずがない。
タダノグウゼンデス。