勇者の孫娘とコウモリ少年 人と獣人との黒き事件簿   作:ごぼう大臣

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トカゲの尻尾切り

 

「ん、んん……」

 

 朝になり、アイリスはまどろみながら身を起こす。小さなベッドに横たえていた薄着の体をぐいと上にのばし、おろした金髪を軽くすく。

 

「はぁーあ、あの人はまだ寝てるのかな……?」

 

 キョロキョロと周りを見渡すと、彼女の薄ぼんやりとした視界に自身のいる部屋の景色が映る。

 床も壁も板木を張り合わせただけの茶一色の部屋。広さはせいぜい六畳ほどで、一人ぶんのベッドに荷物、そして外出時に着る鎧と靴以外に目立つ物は置かれていない殺風景な場所だった。

 

 アイリスはベッドを降りるとトボトボと歩き、部屋を仕切るように天井から垂れ下がる白い布に手をかけた。壁から壁へ渡る大きなそれをめくると、もう一人ぶんのアイリスと同じような居住スペースが現れる。

 

「ロキ、もう朝ですよ」

 

 そう言ってアイリスは何故か上を見上げる。その視線の先には天井のすぐ下に渡された一本の太い(はり)と、そこに《足の甲を引っかけ逆さまになって》ぶら下がるロキの背中があった。マントのように背を覆う黒い翼がぴくりと動く。

 

「ん……あ、おふぁよぅ」

 

 ムニャムニャと返事をしてロキが顔だけ振り向く。その寝起きの表情は安眠のさなかにいたのがありありと窺える。彼にとって逆さで宙ぶらりんになって眠るのはまるで苦ではないらしい。

 

「ごめんねぇ、寝坊した?」

 

「もうギリギリです。早く着替えないと」

 

「はぁーい……」

 

 とぼけた声で返事し、ロキはそのまま寝間着を脱ぎだす。アイリスは一瞬驚いた後、目尻を上げて無言で幕の裏に隠れた。

 

「…………?」

 

 なんとなく背に怒気を感じたロキが振り返る。しかしその先に誰もいないので首をかしげてから平然と着替えを続けた。

 

 

――

 

 

 

「……それにしても、何故ギルド本部の空き部屋など間借りしたのですか」

 

「んー?」

 

 しばらく経ち支度を終えたアイリスは、隣を歩くロキへ向けて心なしか不機嫌そうにたずねた。

 ロキは一つあくびをして、階下への階段を降りながら答える。

 

「そりゃ君は冒険者ギルドの創始者の孫娘だもの。破格の値段で貸してもらえたよ」

 

「しかし、狭い上に仕切りが布一枚というのは問題だと思います」

 

「悪いね、空きスペースが用意できるかは別問題だから……。それに豪華な家とか探すより、後ろ盾の懐の中にいる方が安全だよ」

 

 平然とそう話すロキに、アイリスは憂鬱なため息をついた。うら若き女性にとってのプライベート空間を軽く見すぎだ、という抗議が無意識に彼女の視線に宿る。

 ところがロキはそれを無視し、階段を降りて周りを見回しながら言った。

 

「それに、主な顧客の顔ぶれがいつも見られる。これが仕事においての大きなメリットさ」

 

「…………」

 

 言われてアイリスも周りを見ると、そこにいるのは冒険者ギルドに集まる冒険者たちの姿だった。和気あいあいと話すパーティーもいれば揉めるパーティーもあり、一階の大広間は朝早くから喧騒に包まれていた。

 その光景を眺めていた二人にふと声をかけてくる者がいる。

 

「ロキ殿にアイリス殿。昨晩はよく眠れたかな?」

 

 一階のカウンター奥から声をかけ歩み寄ってくる一人の女性。長い栗色の髪を後ろでまとめて眼鏡をかけたその人は、ヒールをカツンと鳴らしてアイリスたちの前に立つ。

 濃いめの化粧をしたその顔は見た目30歳半ばくらいだろうか。しかし身につけたシャツやベスト、スラックスなどはホコリやシワ一つなく、しゃんと背筋をのばした佇まいと合わせて見るとかなり若々しい。

 その女性に気づいたアイリスは素早く姿勢をただし、会釈して答えた。

 

「おはようございますギルドマスター殿。よく休めました」

 

「デボラでいいよ。以前も言ったが、何かあれば私らで対処するから遠慮しないでね」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

 デボラという女性は"ギルドマスター"という役職にいる、いわばこの王都冒険者ギルド本部においての最高責任者であった。雇った冒険者たちのトラブルの調停や、地方の各支部と権力者周りとの橋渡し役なども担うお偉いさんである。

 そんなデボラはあらたまるアイリスとは対照的に、気安い笑顔で話し続ける。

 

「君たちには期待しているよ。先日、さっそく事件を一つ解決されたとか」

 

「ふむ、これからも頼りにしてくれたまえよ。事件は早く片付けないと不安が広がっちゃうからねぇ」

 

「助かるよ。お恥ずかしながら冒険者どうしはトラブルが付き物でね。私も前任が降りちゃって就任した若輩者だ」

 

「謙遜しないでよ。こっちも頼りにしてるんだから」

 

 ロキはアイリスと違いおおらかな態度でデボラの軽口に応じる。しばし彼らの間には和やかな空気が流れていた。

 しかし、話していたデボラの視線がふとわずかに動く。

 

「……それで本題なんだが、今夜君らにお願いしたい事が……」

 

 そう言いかけた時だった。デボラの顔の近くを一匹の蚊が横切る。ロキとアイリスはそれに気付き何気なく視線をそちらに向け、無意識にあの耳障りな羽音を予感した。

 しかし、そうはならなかった。デボラは手を素早く振りかざし、蚊に対して刃のように薙ぎはらったのだ。それはおよそ並の人間には知覚できぬ速度で蚊に襲いかかり、一瞬にして体を潰しバラバラに飛散させる。アイリスとロキにもその様はほぼ認識できず、羽音だけが遅れて二人の耳にプゥン……と届いてやっと気付いたのだ。

 

 アイリスたちはハッと息をのみ、蚊のいた辺りを注視する。しかしそこには何もなく、二人はただデボラのやり遂げたような顔色とただならぬオーラによってその刹那に起きた事を察したのだった。

 

「…………」

 

 二人はどっと冷や汗をかき、ひきつった笑顔を見合わせる。そんな二人に気付いているのかいないのか、デボラは朗らかな笑顔で口を開いた。

 

「失礼。君らに今夜頼みたい事があるんだ。聞いてもらえるかい?」

 

 デボラは話題を再開したが、アイリスとロキがそれをきちんと聞ける状態になるまでは少し時間を要した。

 

 

 

――

 

 

「ロキ……もしやあの方、とんでもないベテランなのでは」

 

「あいにく歳も何も知らないんだ。僕の知り合いもみな彼女には深入りしたがらない」

 

 ……その日の夜、アイリスとロキはそろって緊張した顔を見合わせていた。思い返すはあの昼間のデボラのただならぬ雰囲気である。二人とも彼女に頼み事などされれば一にも二にもなく従ってしまうだろう。

 そんな彼らは今、とある場所にいた。彼らの部屋の何倍も広い豪華な食堂で、席についた目の前には何メートルもの長いテーブルとその上を埋め尽くすより取りみどりの料理が並んでいる。灯り用の凝った燭台や手洗い用の水入れまでキチンと用意され、当のアイリスとロキも華やかなドレスとタキシードをそれぞれ着ている。

 

 そんな場所に何故いるかはさておき、アイリスはかなり緊張しているらしく肩肘を張ってカチコチになっていた。ロキはその横で手元のワインをちょびちょびと味わっている。

 そんな彼らに向けて、向かいの席から声をかける者がいた。

 

「アイリス殿、そう堅くならずに。こちらのもてなしなのですから、遠慮なさらず」

 

「は、はいっ」

 

 アイリスはピッと背筋をのばし前を見る。そこにいるのはこれまた紳士用の礼服に身を包んだ青年だった。

 

「冒険者の中でも我々は上位の収入です。このくらいの贅沢なら普通ですから」

 

「はあ……ありがとうございます」

 

「しかし、いざ見てみると驚きますね。この料理の質といい、お屋敷といい……」

 

「ハハ、屋敷は借家ですがね。これも我々の功績あってのもの」

 

「信用ある一部の方は家を持てるとは聞きましたが……冒険者の身でご立派です」

 

 笑ってワインをあおる青年をロキはわざとらしい笑みで誉めた。アイリスは居心地悪そうにしながら、そっとワインに口をつけつつ昼間の事を思い出す。

 

――

 

『実はある冒険者パーティーが君たちを食事に招待したいと言ってきてね。急だが今夜にお願いできないだろうか』

 

『パーティーの方が、ですか?』

 

『ああ、コネを作りたいのが見え見えではあるが……わりとここでは実績を上げている方らしくてね。少し付き合ってやってくれ』

 

『は、はぁ……』

 

――

 

 ……というワケでアイリスとロキはこの堅苦しい席に招待されているのだった。二人の向かいにいる青年はほろ酔い状態でさらにペラペラと話しかける。

 

「まあ、ご入り用なら是非このザックめに。なんてったってリーダーである俺は並の実力じゃねえッスよ」

 

「えーと……ありがとうございます。ザックさん」

 

「むふふん」

 

 青年ザックは自慢げに言いつつ自前の金髪をわざとらしく撫でつける。そしてそこそこ精悍な顔をいやらしく歪めて言った。

 

「お二人、特に勇者様のお孫さんであるアイリス殿とは良い関係を望んでいるのです。お前らもそうだな?」

 

 ザックは使っているフォークで隣二席を指し示す。料理の切れ端がくっついたフォークの向けられた先で、仲間らしき男女がうなずく。

 

「も、もちろん……。まだ至らない部分はあるけど、俺も助け合えたらと思います」

 

「トニー、お前はムダに謙虚だからウザいんだよ。アニはどうだ?」

 

「そりゃもう……異論はないよー。あ、これ美味しーアハハ」

 

 気弱そうに苦笑する青年トニー、そして食べながら適当に返事をする少女アニ。その仲間二人の様子からは、リーダーであるザックがいまいち信用されていない事が見てとれた。それが気まずかったのか、アイリスはつい手元のワインをおかわりする。

 一方、ザックはそんな目で見られているとは気付いていないのか、トニーやアニよりさらに奥の席をジッと見る。

 

「おいデビット。お前も何か言わねえか」

 

 そう剣呑な口調でうながす先には、黙々と料理を食べる一人の青年がいた。やせ形の長身で、全身が緑色のウロコに覆われ太い尻尾が生えている。トカゲの獣人である。

 デビットと呼ばれたその獣人は黄色い三白眼をジロリとザックに向けると、ボソボソとした声で答える。

 

「ああ……僕も同意見ッスよ。いつも通りッス……」

 

「チッ、なーんかお前はしょっちゅう暗いんだよなぁ。メシの食い方までみみっちいしよ」

 

「爬虫類は少食なんス……。食べたくても食べられないんスよ」

 

 デビットは伏し目がちになって面倒そうに答える。ザックは小さく舌打ちし、アイリスたちへ向き直り媚びた笑顔になる。

 

「いやーすいませんね。俺以外はクズばっかりで。ホント」

 

「…………」

 

「お気になさらず。あなた方の良さは功績が証明していますよ」

 

 酔いもあってかザックの言い方に険が混じる。アイリスは不愉快そうに無言になり、ロキだけがにこやかに世辞を送っていた。

 

「……ん?」

 

 その時ふと、ザックはワインボトルの中身が少なくなっているのに気付く。すると彼はデビットに向かってボトルを掲げ言った。

 

「おいデビット! ちょっと酒蔵に行ってこい。ワインが足りねえや」

 

「無理ッスよ……地下は寒いし。僕が気温に敏感なの何度も言ったじゃないスか」

 

「んだよ。お前はいつも使えねーな!」

 

「仕方ないスよ爬虫類なんだから。体が勝手に……」

 

「かーっ、本当にお前は。全くお前は。いつもお前は」

 

 拒否するデビットだが、ザックの当たりはますます強くなる。他のパーティーメンバーはそのやりとりに全く口を挟まず知らん顔をしていた。こんな場面が今まで珍しくなかったのがうかがえる。

 調子を合わせていたロキも、表面上は笑顔ながら目は呆れた様子で細めている。何か言うでもなく、見つからないようにテーブルに目を落としため息をついた。

 そんな時、ガタンと音を立ててアイリスが立ち上がる。

 

「何をしているの()すかザックさん!」

 

「あ、すみません気に障りました……か?」

 

 ザックはあわてて作り笑いをして向き直る。しかしアイリスと目が合うと表情がとたんにギョッとする。

 アイリスはいつの間にか顔を真っ赤にして、立った姿勢のままフラフラとまるでヤジロベーのごとく体を揺らしていたのだ。

 空になったアイリスのグラスを見て、ロキがやれやれとほくそ笑む。それにまるで気づかないアイリスはろれつの回らぬ口調でザックに向けて怒鳴った。

 

らめ(駄目)れしょー。にゃかま(なかま)の人に無理じいしちゃあ。りーぁー(リーダー)なんれしょー!?」

 

「あ、その……すみません」

 

しゃかぐら(酒蔵)にゃんてあるならぁー、案内してくらさいよ。ほら、今すぐー!!」

 

「へ!? は、はいっ! ではこちらへ!」

 

「えへへー、やったー。一度みたかったんだぁ。酒樽のなりゃんだ(並んだ)トコー」

 

 まるで子供のようにはしゃぐアイリスへ、ザックがあわてて駆け寄って手を貸す。女性を手助けするのはその世界のマナーではあったが、その場ではマナー関係なく支えてやらねばらなかった。何しろ今のアイリスは顔どころか首筋や肩までタコのように赤らみ、歩こうとすると慣れないドレスの裾の上でタップダンスを踊りだす有り様だったのだ。

 

 そんなワケなのでザックは皆が心配そうに(ロキ除く)見守る中で肩を貸してやるのだが、それで波乱は終わらなかった。ザックが肩を貸した瞬間にアイリスは足をもつれさせ、倒れそうになった勢いでザックの顔をテーブルの上にぶち落としてしまったのだ。

 

「ぐばあっ!?」

 

 ザックの顔面が卓上のシチュー皿にスッポリとはまり、くぐもった悲鳴と飛沫があがる。バランスを崩したままアイリスがしなだれかかるのを堪えつつ、ザックはどうにか上体を起こそうとする。そうして鼻の穴左右にそら豆が詰まってシチューまみれの顔をどうにか起こした。

 が。

 

「ふわっ!?」

 

「ぎゃぶっ!?」

 

 アイリスがまたもバランスを崩し、派手にしりもちをついた。隣で支えていたザックもまんまと下へ引っ張られ、彼はテーブルの角に前歯を強打してひっくり返る。ものすごい音を立てて倒れる二人へ、ロキがサッと足を差し出し後頭部を受け止め強打を防いだ。

 

(あー……世界が……回る……)

 

 ザックのうめき、メンバーたちのさわぐ声などを聞きながらアイリスはボンヤリと天井を見上げた。ろうそくの灯りで照らされた視界に、心配そうに覗きこむトニーやアニの顔が入ってくる。その顔が少しずつぼやけ、アイリスはまぶたが重くなるのを感じた。

 

「あはは、こりゃ大変だ」

 

 ロキの呆れた声が降ってくる。それを最後に、アイリスは睡魔に負けて心地よい暗闇へと落ちていってしまった。

 

 

――

 

 

「――はっ」

 

 それからどのくらい経っただろう。アイリスは自身の息をのむ声を聞き、横たわっていた体を起こした。見るとベッドに寝かされており、八畳ほどの一人部屋にいるのが分かった。中央の椅子に座っていたロキがちらとアイリスの方を見る。

 

「よく眠れたかい?」

 

「あ……どうも」

 

「君があんなに酒に弱いとは知らなかったよ。運ぶの大変だった」

 

 肩をすくめるロキ。アイリスがおそるおそるすぐ近くのバルコニーにつながる扉を見ると、明り窓から月光が射し込むのが見える。

 

「もう夜中だよ。今夜は泊めてもらえる事になってるから、休んでおきな」

 

「ごめんなさい、とんだご迷惑を」

 

「気にしなくていいよ。どのみち夜に街を出歩くのは危ないし」

 

 ロキはそう言ってゆっくりと立ち上がり、出口のドアに手をかける。最後に背を向けたまま振り向いて言った。

 

「あれ面白かったよ。ザックを叩きのめしたの」

 

「ち、違います! あれは偶然ですから!」

 

「はは、おやすみ」

 

 あわてるアイリスに笑いかけてから、ロキは部屋を出た。アイリスはしばし恥ずかしそうに一人うなっていたが、ふと割れるような頭痛がして額を押さえる。

 

「つっ……」

 

 アイリスの脳裏に酔っていた最中の記憶がよみがえる。直後に彼女は羞恥と自己嫌悪に襲われ、恥じらいと酔いとで寝起きの顔が再び赤くなる。

 

「風……当たろう」

 

 力なくかぶりを振り、バルコニーへと出るアイリス。外に出たとたん夜風が頬をふわりと撫で、髪をほどくと金色のそれが緩やかにたなびいた。

 ふぅ、と息をつくアイリス。見上げると薄雲のかかった月が見える。

 

 その月を見ながらアイリスは考える。あの月がいくら空で輝こうとも、夜の闇には数えきれないほどの人々の憎しみや恨みが潜んでいるだろう。二階の高さから街を見渡したが、それだけでも家々の影は無数にある。

 先日たまたま事件を一つ解決したが、同じような事件にまた出会わないとも限らない。

 

「また、獣人の誰かが犠牲になったりなんて……」

 

 その時、アイリスは自然と人間ではなく獣人が被害者になるのを想像していた。初めての事件がそうだったせいもあるが、戦争に負けた立場に無意識に同情していた。

 ともかく、今夜ぐらいは広い部屋で平和に眠っておきたいーー彼女がそう思って踵を変えそうとした、その時。

 

 バタン、と下の方から音がした。アイリスはとっさに手すりから身を乗り出して音の方向を見ると、一階の部屋の窓が一つ開け放しになっている。

 

「…………?」

 

 その窓を見ながら彼女は眉をひそめる。というのも、その窓辺に人の気配がしないのだ。自分のように夜風に当たっているのかと最初は思ったが、それなら窓から顔が少しは見えないだろうか。

 もちろん、窓を開けてすぐ離れた可能性もある。だが今は深夜だ。目が覚めてもすぐにまた眠るだろうに、窓を開けっぱなしになどするだろうか。

 

(……一体、何が)

 

 アイリスの中で警戒心が高まっていく。それは以前に事件を体験した事からくる予感だった。

 そして、その予感はすぐに当たる。

 

「ぎゃあああぁーーーッ!!?」

 

 ドアの外、一階かららしき悲鳴にアイリスは驚いて振り返る。バタバタと戸口へ駆け寄ると、アイリスが戸を開ける前に何者かが中へ飛び込んできた。

 

「アイリスさん!」

 

「あ、あなたは……」

 

 暗い中でアイリスは目をこらす。目の前にいたのはあのトカゲ獣人、デビットだったのだ。額に汗を浮かべ見るからに憔悴した彼は、息を整える余裕すらなさげに口を開いた。

 

「はっ……はっ……大変ッス……さっき」

 

「どうしたんですか、何が……!」

 

「あ、怪しい人物が……僕を、げほっ」

 

 とぎれとぎれのデビットのセリフは途中で止まる。アイリスが心配そうに彼に寄り添うと、ふと相手の姿に違和感を覚える。

 

「デビットさん? それ……」

 

「へっ?」

 

 アイリスの視線はデビットの腰の辺りに向いていた。デビットが見ると彼の尻尾が根本からぷっつりと無くなっていた。

 

「あ……これは」

 

 デビットは我にかえって一拍おき、声をひそめて言った。

 

「実は……さっき不審者に会って。逃げる時にちぎれたんス」

 

「ち、ちぎれた?」

 

「はい。トカゲは敵から逃げる時に尻尾を囮にするでしょ?」

 

「いやそれより、不審者って!?」

 

 身構えて言うアイリスへ、デビットは自分の来た戸口の向こうを振り返り、向き直ってこう話す。

 

「……追って来ないのを見ると、目的は別だったみたいスね。廊下の向こうから来たんスけど……」

 

「一階にはどなたが?」

 

「ザックさんとか、他のメンバーの個室があるッス」

 

 そう言いながらデビットはそろそろと廊下に出る。アイリスがついて行くと、デビットはすぐ近くの階段の踊り場まで降り、下を指さした。

 

「僕、あそこで見たんス……」

 

 そう言って示す先には、デビットのものらしき緑色の尻尾が根本から先まで床に残されていた。不審者とやらは姿を現さない。まだ屋敷にいるのだろうか……とアイリスが勘ぐっていると。

 

「どうかしたの?」

 

「うわあッ!!?」

 

 急に隣から声がし、アイリスはデビットと一緒になって飛びのく。見るとそこには寝巻き姿のロキがちゃっかりナイトキャップまでかぶって立っていた。その呑気な格好の相棒にアイリスはあわてて抗議する。

 

「お、脅かさないでくださいよ! どこから出て来たんですか!?」

 

「隣の部屋だよ。騒がしいから出てきたんだ」

 

「そんな平然としてる場合じゃないですって! 緊急事態なんですから!」

 

 切羽詰まった口調で叫ぶアイリス。「不審者が……!」と言いかけた彼女だったが、それは別の声に中断された。

 

「アイリスさん! ロキさん!」

 

 第三者の叫ぶ声とともに、廊下の向こうのアイリスたちとは反対側の階段からドカドカと人が駆け上がってきた。トニーとアニ、デビットと同じくザックと組んでいた男女である。彼らはアイリスの元へ駆け寄る時間も惜しい様子で、廊下の端から届く大声でこう叫んだ。

 

「ザ……ザックが……死んでます……ッ!!」

 

「……え?」

 

 

――

 

 

「首を刃物でザックリ……むごいね」

 

「アニさん、あまり見ない方が……」

 

「う、うん」

 

 ……数分後、アイリスら一行はザックの寝室に集まり惨状を目にしていた。ベッドに横たわったザックは首を大きく切りつけられほぼ即死だったであろう状態。枕元は死体から流れた血で赤黒く染まっていた。室内は荒らされた様子はなく、一つきりの窓が全開になり風が吹き込んでいる。

 ロキは室内を一通り眺め、落ち着いた顔で言った。

 

「とりあえず物取りじゃなさそうだね。じゃあ怨恨かな」

 

「ロキ……ザックさんの名誉も考えてください」

 

 軽々しく怨恨だなんて、と言外に言ってアイリスは後ろに集まるパーティーメンバーたちを見る。しかし仲間であったはずの彼らの口からは予想外の言葉が飛び出した。

 

「いや……あり得るかもしれません」

 

「と、言うと……?」

 

「見たでしょー、夕食ン時のザックの態度。ぶっちゃけムカつくじゃん」

 

 聞き返すアイリスに答えたのはアニだった。彼女は気まずそうにするトニーをちらと見て続ける。

 

「生きてる間は言えなかったけどさー。あちこちから恨み買ってたんだよ。ギルドの空気悪くしても、実力はあるからってふんぞり返って」

 

 あまりにもアッサリと文句を言い出すアニに、アイリスは内心で驚いていた。仮にもリーダーが死んだというのにせいせいしたとばかりに肩をすくめ、ため息をつく姿。しかしトニーやデビットが止めないのを見ると、残念ながら本当に嫌われていたのかもしれない。

 気の毒に……とアイリスが十字を切っていると、デビットが口を開く。

 

「きっと誰かが屋敷に忍び込んだんスよ。ほら、窓も開いてるし」

 

 相変わらず風の吹き込む窓を指さすデビット。犯人はそこから外に逃げたのだろうか。だとしたら見つけるのは至難の業では……とアイリスは思ったがロキが待ったをかける。

 

「いやぁ、まだ分からないよ」

 

 そのセリフにアイリスやデビットたちが振り向くと、ロキが死体のかたわらに立ち神妙な表情を浮かべていた。視線は首もとの凄惨きわまりない傷口へと向いている。

 戸惑うアイリスたちへ、ロキがころりと笑顔をつくって顔を上げる。そしてこう言った。

 

「犯人はこの中にいる」

 

「ええっ!?」

 

「……かもしれない」

 

「はあ~~ぁっ……」

 

 ギョッとして硬直しかけた者たちがいっせいに腰砕けになる。そしてアイリスが怒った顔でロキへ詰め寄った。

 

「こんな時に変な冗談やめてくださいよっ!」

 

「まさか、冗談じゃなくて本気だよ」

 

「またあなたは……!」

 

 いい加減に黙って、とアイリスは勢い込んで叫びそうになった。しかしそれより先に、ロキがアイリスの陰からひょいと顔を出し他の面々にこう告げる。

 

「ともかく、証言くらいは確認しないとね。君ら、ザックが寝てた頃はどうしてた?」

 

 言われたトニーやアニの顔に怯えの色が浮かぶ。そして無実を証明しようと必死になって言った。

 

「ね、眠っていました! 部屋から一歩も出ていません!」

 

「ウチも! ちょっとお菓子つまみ食いしてたけど、部屋から出たりなんかしてないよ!」

 

 相次いで証言する二人。ロキはそれにうなずくと、まだ答えていないデビットを見る。

 

「さて、あとは君だ。怪しい人物を見かけたんだっけ?」

 

「そ、そうスよ。トイレに出た時に」

 

「詳しく聞かせてもらえるかい?」

 

 ロキが言うと、他の面々の視線もデビットへ集まる。デビットはその視線に小さくなりながらもどうにか答えた。

 

「……用を済ませて部屋に戻ろうとしたら、廊下の向こうに人影が見えたんス。知らない人だからジッと見てたら、僕の方に来ようとしたんスよ。思わず叫んじゃって」

 

「あー、あの時の悲鳴かぁ」

 

「で、触れられて逃げる拍子に尻尾が取れちゃって。そしたら不審者は逃げ出したんス」

 

「逃げたのですか?」

 

「はい。たぶん追いかけるより逃げるのを優先して、ここの窓から出たんだと思うッス。たぶん、その時にはもう……」

 

 沈んだ声になるデビット。それからアイリスの方を見て続ける。

 

「それで僕は恐ろしくなって。すぐ階段を昇ってアイリスさんの部屋に行ったんス」

 

 そこまで来てアイリスはすかさず呼応した。

 

「彼の話は本当です。デビットさんは部屋に来て、階段の下の尻尾も見せてくれました」

 

「ふむ……」

 

 ロキはうなずき、目を伏せて考え込む。その横でトニーとアニが首をひねってこう口にした。

 

「という事は……ソイツがどこかから屋敷に侵入して、ザックを殺害する」

 

「そんで元の出口から帰ろうとするけどー、途中でデビットを捕まえそこねて引き返すと」

 

「そして窓から逃げた。これだと思うッス」

 

 最後にデビットが断定的に言う。アイリスもそれにつられて思考もそこそこに口を開いた。

 

「筋は通っていますよね。失礼ながら、犯人の当ては何人かいるようですし」

 

「何人か、なんてモンじゃないスよ。殺せなくなって悔しがる人がどれ程いるやら」

 

 デビットがうんざりした口調で言う。それを見てアイリスも不謹慎ながらホッとした。彼は獣人の身分ゆえ、いっとう酷い目にあわされてきただろう。犯人のおかげ……と言ってはなんだがやっと肩の荷が降りたに違いない。

 ……などと彼女が考えていた矢先だった。

 

「待った。そう考えるのは早計だよ」

 

 またもやロキが水をさす。アイリスはそれに多数派を代表するかのように反論した。

 

「けど、階段の下にはデビットさんの尻尾があります。危険な目にあったのは間違いないかと」

 

「現場を見たかい? デビットが不審者に捕まりかけて逃げるところ」

 

「いえ……」

 

 事実見ていないアイリスは首を横に振る。するとロキは天井を見ながら独り言のように言う。

 

「トカゲの尻尾を見ると、人はソイツの危機を連想する。階段の下にそれがあればつい"急いで手近な階段を昇ってきた"と考えるだろう」

 

「違うのですか?」

 

「違うかも、というだけさ。例えばあらかじめ一階で事を起こしたとしても、階段の下でわざと尻尾を切断すれば同じ状況を作れるんだ」

 

 ロキが話すうちに、デビットの顔が険しくなっていく。そして疑われるのに耐えかねたのかトゲのある口調でたずねる。

 

「なんスかさっきから。僕が犯人だって言うんスか?」

 

「そうは言わないけど……ちょっと出来すぎてる気がしてね。もしかしたら君が架空の第三者をでっち上げたかもと」

 

「まさか! 言いがかりッスよ!!」

 

 怒りだすデビットだったが、ロキは笑ったまま嫌みっぽくこう言う。

 

「けど妙だなぁ。最初はおそらく来たルートで逃げようとしたけど、デビットに目撃され追いかけて……結局は現場の窓から逃げるって」

 

「は……?」

 

「あー、言われてみれば。窓から逃げるなら目の前に窓があるじゃんね」

 

「そ。逆に知ってるルートで引き返すなら、デビットは逃げたんだから放ってルートを辿ればいいしさ」

 

 アニが危機感なく、むしろ感心した様子でロキを見る。一方ロキはアイリスへと話を振る。

 

「アイリス、君はどう思う?」

 

 言われたアイリスは少し考える。彼女が知るデビットは先ほどまで下っ端扱いの苦労人で、犯人かもとはまるで思わなかった。

 しかし、ロキの推理を聞くとその認識を疑わなければならなくなる。そしてついに、彼女はある重大な事実を思い出した。

 

 そう、あのバルコニーにいた時。あの時、確か窓が開くのを目撃したはずだ。

 アイリスは真っ先に目の前の窓に飛びつき体を乗り出した。首をひねり上を見ると、視界の端には確かにアイリスの立っていたバルコニーが見えた。

 

 この窓から誰かが飛び出したようには見えなかった。そうだ。デビットの言った不審者らしき人影など無かったではないか。

 アイリスが振り返ると、固い表情をしたデビットと目が合う。心なしか警戒心をのぞかせる彼へ、アイリスは静かに言った。

 

「デビットさん。この窓からは誰も出てきていませんよ」

 

「な、なんで……!?」

 

「私は上から見ていました。間違いありません」

 

 アイリスが言い切ると、デビットの顔がさあっと青くなる。その顔をトニーやアニも戸惑って見つめた。

 

「まさか、自分で開けた?」

 

 トニーがつぶやくと、デビットが心なしかビクリと震える。その様子を見て、ロキが輪の中に入り口を開く。

 

「とりあえず君たち。ナイフとか持ってる?」

 

「うっ……」

 

「見せてくれないかな」

 

 言われたデビットが腰のポケットを押さえる。冒険者たる者、不測の事態となれば護身の道具を自然と持ち出すものだ。案の定、トニーもアニも懐からナイフを取り出した。

 それらを預かり、ロキはデビットの方を見る。デビットはしばし目をおよがせ、焦った口調で言った。

 

「ほ、ほら! これで満足ッスか!?」

 

 デビットはナイフを取り出すと、ロキの前で鞘から抜いてみせる。中から銀色の刃が飛び出し室内できらめいた。

 

「よく見てください! この通り血も何も付いていないスよ!!」

 

「別に血がどうとかまで言ってないけど。ふーむ……」

 

 ロキは刃のスレスレまで顔を近づけナイフを観察する。デビットの言う通り血痕は見えない。そのせいかロキが黙っていると、デビットは一瞬だけ安堵した目になる。

 ところが、ロキは不意にデビットへ詰め寄るとその体をパタパタと手でまさぐりだした。

 

「ひっ、何してんスか!?」

 

「ボディチェックさ。えーと……」

 

 ロキはそう言いながら手をせわしく動かし、やがて何かをつかんで引きずり出す。それは一枚のハンカチだった。

 暗闇の中でアイリスが目をこらすと、それはかなり汚れているようだった。ロキはそれを両手で広げ、穴があくほど見つめる。

 それから鼻を近づけ匂いをかぎ、真面目な顔になって言った。

 

「血と……それから爬虫類の(あぶら)の匂い。これでナイフを拭いたんだね」

 

「う……くっ」

 

「しくじったね。急いで逃げた演出にこだわって、捨てるタイミングを逃したんだろう」

 

「…………」

 

 そう告げてロキがハンカチを返すと、デビットは受け取らずに力なくうなだれた。部屋の中に沈黙が流れ、同時にデビットの無言が一同にとっての自白となる。

 しばらくして、アイリスが恐る恐るたずねる。

 

「デビットさん……どうしてこんな事を」

 

「どうして、ッスか?」

 

 聞かれたデビットが乾いた笑いをもらす。そしてアイリスが初めて見るような凶悪な目つきになったかと思うと、怒鳴るようにして答えた。

 

「もう聞いたでしょう! ザックはいつもいつも偉そうにして、僕や周りをイジメてばかりで! もう限界だったんスよ!!」

 

「それなら、私に相談してくだされば……」

 

「相談ん? はっ! アンタ、今日会ったばっかりじゃないスか!」

 

 アイリスの言葉をさえぎり、デビットは非難めいた口調で怒鳴り続ける。

 

「ザックに呼ばれてノコノコやってきて、調子を合わせて笑ってた! んで終いには、酒で醜態をさらしたでしょうが!」

 

「それは……っ!」

 

「今になって調子のいい事を、いい加減な事を言うな! アンタは今まで僕の事なんか知らなかったじゃないスか!!」

 

 デビットは泣き叫び、牙をむいて声を枯らした。その様子を見てアイリスは内心でハッとする。アイリスは人間と獣人の平等を願っていた。そのための気概もあるし、努力もするつもりだった。

 だがしかし。少なくともデビットにとっては、アイリスは出会ったばかりの部外者に過ぎないのだ。信用できないのは何もおかしくない。

 

「…………」

 

 相談してくれれば。軽くそう口走ってしまった傲慢に彼女は自己嫌悪する。するとロキが冷徹な口調で言った。

 

「けど、アイリスをアリバイづくりに利用したのは君だろう」

 

「…………」

 

「彼女も甘かった。でも君はそれを知っていたから証人に仕立てあげたんだ」

 

 ロキの言葉にデビットは小さくうなっただけだった。やがて、トニーやアニが同情を目に浮かべながら口を開いた。

 

「デビット……僕らにも相談できなかったんですか? 今まで……」

 

「確かにウチら、何も出来なかったけどさ……」

 

「出来なかったじゃなくて、しなかったんでしょう」

 

 仲間二人に、デビットは吐き捨てるように言った。そしてボンヤリと天をあおぎ、薄ら笑いでつぶやく。

 

「いつの間にか、僕が貧乏くじを引くのが当たり前になってたッスよね……。みんな何もしなかった。僕も……」

 

「デビットさん……」

 

「はは、遅かれ早かれ尻尾切りされたでしょうねぇ。だからもういいんスよ。へへ」

 

 投げやりにそう言って、デビットは壁に背をあずける。そしてそのままズルズルと腰を下ろした。膝を抱えて床を見つめ、うわ言のようになおもつぶやいた。

 

「来るのが遅いよ。言うのが遅いよ。何もかも今さら……!」

 

「…………」

 

 空が少しずつ白み、部屋に光が射し込む。うっすら照らされた室内でデビットの両の目がほの暗く浮かび上がっていた。

 

 

――

 

 

 ……それから、彼らは朝までデビットを見張った上でギルドに連れていき、様々な対応に追われた。ギルドでは仰天するデボラへ根気強く経緯を説明し、現場に兵隊を案内して始末をお願いし、とにかく気の休まる暇がないまま時間は過ぎ、二人がようやく帰路についたのは夕暮れ時だった。

 

「いやーお疲れ様。とんだ一夜だったね」

 

「…………」

 

 往来でめいっぱい伸びをするロキ。それを横目にちらと見て、アイリスがつぶやく。

 

「……私、勘違いしていました」

 

「ん?」

 

「心のどこかで、獣人は必ず被害者であると……。そう思っている私を、デビットさんのような方は頼ってくれるに違いないと思っていました」

 

 神妙な顔でそう話すアイリスを、ロキはしばし見つめてこう返す。

 

「そんな深刻にならなくても。事件は解決したじゃないか」

 

「けど、デビットさんがあそこまで追いつめられているのに気づけなかった……」

 

「あれは君の責任じゃない。パーティーの連中が皆やるべき事をしなかったせいだ。それどころか君は騙された立場じゃないか」

 

 ロキは少し怒ったような口調になる。それを受けてアイリスは視線だけを隣へ向けると、ロキが肩をすくめて言う。

 

「人と人の間に摩擦があるのはどこでも同じ。取り返しのつく内に気づけて良かっただろ」

 

「そう……ですね」

 

 アイリスは小さくうなずく。そしてロキへ遠慮がちにたずねた。

 

「この先、また悩んだら相談しても構いませんか?」

 

「……しょうがないなぁ。じゃあお互い溜め込まないって事で」

 

「ありがとうございます」

 

 自分たちは、なるべく破綻のない関係でいよう。今回の事件を受けて後味の悪さを覚えつつも、アイリスはせめての教訓を胸に刻むのだった。

 

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