作者:妄想めっちゃ代理人 さんの作品にインスパイアされてます。
https://syosetu.org/novel/419011/
「それじゃあみんな、準備はいい?」
「いつでもいいよ、真樹ちゃん!」
「僕も大丈夫」
「カメラは? ちゃんと回ってる?」
「バッチリですよ先輩。リスナーの皆さんも待ってます」
10階層にある安全地帯。
薄暗いダンジョンのその場所で6人の高校生たちが最終確認を行っていた。
壁面に埋め込まれた発光石がぼんやりと周囲を照らし、彼らの表情を浮かび上がらせている。
小柄な体格にショートカットの黒髪。
動きやすい軽装の革鎧に身を包んだ彼女が、この「オレンジ・シーカーズ」のまとめ役だ。
「もう一度、確認するよ。今日の目標は12階層」
慎重な仕草で人差し指を立て、続けて中指、薬指と立てる。
パーティーメンバーには見慣れた光景だ。
「ここから先は初めてだから無理はしないこと。危ないと思ったら直ぐ撤退。いい?」
「真樹ちゃん、それ配信で毎回言ってるよー」
笑ったのはパーティーのムードメーカーである
長身で体格もよく、表面に無数の傷の付いた大盾を背負っている。
「大事なことだから、何度でも言うの」
真樹が軽く睨むと、翔太はわざとらしく肩をすくめた。
「はいはい、了解ですリーダー」
「翔太ってば、真面目に聞きなよ」
ため息をついたのは、魔法で後衛火力を担当している
長い金髪を後ろで一つに束ね、古風なローブを着こなしている。
手には装飾の施された
「陽子先輩の言う通りですよ、翔太さん。リーダーの指示は絶対です」
カメラを構える
細身でメガネをかけた彼は、情報収集と配信管理を一手に引き受けている。
今も配信用魔導具『キャプチャー・オーブ』を浮遊させ、リアルタイムで映像を配信している。
「配信の調子はどう?」
真樹が尋ねると、健斗はオーブの
「快調です。現在の視聴者数は───あっ、300人超えてます!」
キャプチャー・オーブには視聴者から送られたコメントが次々と表示されている。
その内容は概ね好意的なものばかりだ。
『オレンジ・シーカーズ、キター!』
『真樹ちゃんのリーダーっぷり好き』
『翔太くん今日もイケメン』
『陽子ちゃんの魔法たのしみ!』
『健斗くんカメラワーク上手になってきたね』
『今日も安全第一でがんばれー』
『初心者パーティーのやからね』
『無理するなよー』
「皆さん温かいですね」
健斗が嬉しそうに笑う。
オレンジ・シーカーズはダンジョン探索者として、まだ駆け出しの部類だ。
全員が高校生で、探索者ライセンスを取得したのも三ヶ月前。
10代の若者なら、承認欲求や特有の全能感で突っ走るかもしれない。
だが、かれらは探索者協会から推奨された14階層までの範囲を厳守して活動していた。
「最後にもう一回だけ確認するね。前衛は翔太くんと―――」
「俺だな」
手を挙げたのはもう一人の前衛役の
短気なところが玉に瑕だが、ここぞという時の突破力はパーティー随一で全員信頼している。
「後衛はいつも通り陽子ちゃん。それから―――」
「回復と支援は俺の役目だね」
穏やかな声で応じたのは最後の一人・
近代的なタクティカルベストとベルトポーチに複数のポーションや治癒魔導具を提げている。
パーティーの癒し手であり。
その落ち着いた性格からオレンジ・シーカーズの良心とも苦労人とも呼ばれることもしばしば。
「よし。それじゃあ、行こっか」
真樹の号令で、6人は安全地帯を後にした。
11階層の通路はこれまでの階層よりも天井が高く横幅も広い。
壁面の発光石の数も増えているがその分だけ影も濃くなっている。
空気はひんやりと冷たく、微かに
「ここから岩場が多いので、足元に気をつけてください」
注意を促す健斗を挟む形で、翔太と剛が左右に展開しいつでも迎撃できる態勢を取りながら進む。
「モンスターの気配は―――まだ遠いですね」
健斗が感知スキルを発動させ、周囲の魔力反応を探る。
キャプチャー・オーブは彼の視界、やや上方を定位置に追従していた。
「どんなのが出るかな」
翔太が盾を構えながら、どこか楽しげに言った。
「階層としてはまだ浅いから、そんなに強いのは出ないでしょ」
「せいぜい、ロックゲッコーかシャドウバットだろ」
剛が軽口を叩く。
「油断は禁物だよ、剛くん」
雅人がたしなめるように言うと、剛は「わかってるって」と苦笑した。
『ロックゲッコーは火が弱点』
『なら陽子ちゃんのファイアボールで一発だな』
『でも数が多いと面倒なんだよな』
『翔太の盾捌きが見もの』
『剛くん、油断しすぎじゃない?w』
『雅人くんがいるから大丈夫でしょ』
コメントが次々と流れていく。
視聴者もこのパーティーの実力をよく理解しているので過度な期待や無謀な要求はしない。
オレンジ・シーカーズの配信は、そういう「民度のいい」コミュニティで知られていた。
十分ほど進んだところで、健斗がぴたりと足を止めた。
「前方、三十メートル。反応が三つ」
「種類は?」
真樹が即座に尋ねる。
「魔力パターンからして―――ロックゲッコーです。サイズは中型が二、小型が一」
「なら、翔太くん、剛くん。いつものフォーメーションでいくよ」
「了解!」
「任せな!」
前衛の二人が前に出る。
翔太が大盾を構えて正面からの攻撃に備え、剛がやや右にずれて側面からの突入に備える。
「陽子ちゃん、援護をお願い」
「うん。
陽子が魔導書を開き、詠唱を始める。
魔導書から小さな火の玉が灯り、それがゆっくりと回転を始めた。
「健斗くんは索敵継続。雅人くんは後方待機で、いつでも回復できるように」
「了解です」
「わかったよ」
それぞれが持ち場につく。
通路の奥から岩同士がぶつかるような不気味な音が響いてきた。
やがて、暗闇の中から三つの影が姿を現す。
ロックゲッコー。
岩と爬虫類を掛け合わせたような外見のモンスターで、全身が硬い鉱物の鱗で覆われている。
中型は体長一メートルほどで、小型はその半分。
見た目に反して壁や天井に張り付くことができ、長い舌で遠距離からも攻撃できる。
「来るよ!」
真樹の警告と同時に、中型の一匹が飛びかかってきた。
「らあっ!」
翔太が盾を打ちつけて迎撃する。
金属と岩がぶつかる鈍い音がダンジョンに響き、逸らしたロックゲッコーを弾き飛ばす。
「今だ、剛くん!」
「おう!」
剛が弾き飛ばされた個体に肉薄し、ガントレットで渾身の一撃を叩き込む。
魔力強化された拳がロックゲッコーの側面を捉え甲殻を打ち砕いた。
「ギシャア!」
苦し紛れに伸びてきた舌を、剛は身をひねってかわす。
真樹はすかさず、ロックゲッコーの伸びた舌に剣を突き立て地面に縫い付けた。
「陽子ちゃん!」
「ファイアボール!」
陽子が放った火球が、剛が砕いて露出させた部分に爆炎を上げ直撃する。
ロックゲッコーは燃え上がる体を転がしながら、悲鳴にも似た断末魔を上げる。
「真樹ちゃん、小型がそっちに行ったよ!」
翔太がもう一匹の中型に大盾を叩きつけ、陽子がトドメの一撃を見舞っている。
すり抜けた小型が壁を這って真樹の背後に回り込んだが後方で見ていた雅人は見逃さなかった。
「───遅い!」
真樹は振り返りざまにショートソードを振り抜く。
刃は小型の胴体を横一文字に切り裂き、モンスターは断末魔もなく光の粒子となって消滅した。
「ふう、終わったね」
残心を解いた真樹が剣を収める。
『おおー!』
『安定の連携!』
『翔太の盾捌き、ほんと上手くなったな』
『剛くんの一撃も重そう』
『陽子ちゃんの魔法、精度上がってる』
『真樹ちゃんの反射神経やばい』
『雅人くんの視野の広さも光ってた』
『健斗くんもカメラアングル見やすかったで』
コメントが一気に加速する。
「皆さん、ありがとうございます!」
健斗が嬉しそうに配信に語りかける。
視聴者数は400を超え、応援のコメントが絶え間なく流れていた。
「でも、まだまだこれからだよ。12階層はもう少しモンスターの数も増えるからね」
真樹が気を引き締めるように言った。
「わかってるって。でも、俺たちなら大丈夫だろ」
剛がガントレットを打ち鳴らす。
「その自信はいいけど、過信はダメだよ」
雅人が優しくたしなめ、陽子が小さく笑う。
「雅人くんはいつも冷静だね」
「これでも緊張してるんだよ?」
落ち着いた空気の中、6人はさらに奥へと進んでいった。
12階層への入口は大きな岩門で区切られていた。
門の両脇にはダンジョン文字が刻まれた石柱が立ち、かすかに青白い燐光を放っている。
「ここから12階層か・・・」
真樹が門の向こうを見つめる。11階層までと明らかに空気が違う。
魔力濃度が上がっているのか、肌がピリピリと痺れるような感覚があった。
「協会の資料だと、12階層からはゴースト系のモンスターも出るんだよね?」
陽子が魔導書を握りしめながら言った。
「物理攻撃が効きにくいから、陽子ちゃんの魔法と雅人くんの浄化が頼りだね」
「うん、任せて」
「僕も準備できてるよ」
陽子はいつでも火球を使えるようにし、雅人は聖水と同じ効果の聖印を取り出した。
「よし、行こう」
真樹が一歩を踏み出した、その時だった。
───ゴゴゴ・・・
「───え?」
地面が、揺れた。
いや、揺れているのは地面だけではない。
空気が震え、壁面の発光石が不規則に明滅を繰り返す。
岩門に刻まれたダンジョン文字が一瞬だけ強く輝き、消えた。
「な、なにこれ・・・?」
翔太が盾を構えながら周囲を見回す。
「地震・・・? ダンジョンで地震なんて聞いたことないぞ」
剛が身を低くして警戒する。
「健斗くん、何か感じる?」
真樹が尋ねると、健斗は青ざめた顔で感知スキルの反応を凝視していた。
「ま、魔力反応が…急上昇してます…!」
「モンスターか?」
「いえ、これは・・・モンスターの反応というより、空間そのものが・・・」
健斗の言葉が終わらないうちに、異変は起きた。
12階層に繋がる岩門の奥、見えない闇の向こうから深紅の光が漏れ出した。
それはゆっくりと、しかし確実に膨れ上がりやがて人型を形成し始める。
「なんだ、あれ・・・?」
誰かが呟いた。
人型はどんどん大きくなりやがて天井に届くかという巨体に成長した。
深紅のオーラを纏い、両腕には無数の棘が生えている。
頭部には三つの光る目があり、それがぎょろりと動いて6人を捉えた。
「───ブラッドゴーレム・・・!?」
真樹の声が裏返った。
ブラッドゴーレム。
ダンジョン30階層から出現する高ランクモンスターだ。
血液を固めて形成されたような外見を持ち、物理攻撃はほとんど効かず、魔法耐性も高い。
探索者協会が定める危険度はB+。駆け出しの探索者が遭遇していい相手ではなかった。
「な、なんでこんなところに・・・!」
「こんな浅い階層にはいないはずだろ!」
「そんなの今はどうでもいいから! 逃げるよ、みんな!」
真樹の指示に、全員が我に返った。
「撤退! まずは11階層、そして地上に戻る!」
翔太が殿を務めるように盾を構え、剛が陽子と雅人を先に行かせようとする。
健斗が撤退経路を確認しようとマップを操作した。
───しかし。
「グオオオオオオッ!」
ブラッドゴーレムの咆哮がダンジョンを震わせた。
同時に、腕の棘が一本の束になり、触手のように伸び放たれる。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
触手は狙いすましたように6人を分断し、撤退経路を塞いだ。
「くそっ、やられた!」
剛がガントレットで触手を殴りつけるが、ぶよぶよとした感触が返ってくるだけだ。
「やっぱダメか・・・!」
「魔法で───ファイアボール!」
陽子が火球を放つが、ブラッドゴーレムの体表に触れた瞬間に蒸発するように消えてしまった。
「そんな・・・!」
「魔力抵抗が高すぎる・・・!」
「みんな!」
真樹が指示を出そうとするが、触手の壁はどんどん分厚くなり、6人は完全に分断されてしまった。
『なんだこれ!?』
『ブラッドゴーレムってもっと下のモンスターだろ!?』
『なんで12階層に!?』
『やばいやばいやばい』
『誰か協会に通報して!』
『もう通報した! でも到着まで最低十五分はかかるって!』
『十五分も持たないだろこれ!』
『あああああ真樹ちゃん逃げて!』
コメントが悲鳴に変わる。
視聴者数は一気に千人を超えたが、誰もが成す術なく画面を見守ることしかできなかった。
「真樹ちゃん!」
翔太が叫ぶ。彼は盾で触手を押し返しながら、なんとか真樹の方へ向かおうとしていた。
「翔太くん、無理しないで!」
「無理しなきゃ死んじまうだろ!」
剛が叫びながら触手を殴り続ける。
しかし、攻撃のたびに反動で弾き飛ばされ壁に叩きつけられる。
「剛くん!」
陽子が駆け寄ろうとした瞬間、別の触手が彼女の足を払った。
「きゃあっ!」
「陽子先輩!」
健斗が手を伸ばすが間に合わない。
陽子は地面に倒れ込み、魔導書が手から離れて遠くへ転がった。
「───陽子!」
雅人がポーションを取り出そうとしたが、それよりも早く触手がタクティカルベストを叩いた。
「ぐっ・・・!」
「雅人くん!」
真樹は触手を斬りつけるが、刃が通らない。
焦った彼女は何度も斬りつけるが触手はびくともしない。
「グオオオ・・・」
ブラッドゴーレムが、嗤ったように見えた。
そして、最も近くにいた剛に向けて引き戻した巨大な腕を振り下ろした。
「剛くん、避けて!」
真樹の叫びに剛は反射的に飛び退った。
しかし、完全には避けきれず左腕を掠めていく。
「がっ・・・!」
袖が破れ、露出した肌から血が噴き出した。
深く裂けた傷からは、ドス黒い何かが染み込んでいくのが見える。
「毒・・・!?」
「剛!」
翔太が盾で触手をなぎ払い剛のもとに駆けつける。
しかし、剛はすでに顔面蒼白で立っているのがやっとの状態だった。
「腕が・・・動かねえ・・・」
「雅人、頼む!」
「今行く・・・ぐっ」
雅人は胸を叩かれた際に胸骨を折っていた。
不幸中の幸いは、タクティカルベストを着けていなかったら下手をすれば即死していたことだ。
「健斗くん、協会には!?」
「受理されてます! でも、あと十五分はかかるって…!」
「ッ、十五分・・・!」
真樹は唇を噛んだ。
十五分。
この状況で持つはずがない。
「グオオオオッ!」
ブラッドゴーレムが再び腕を振り上げる。今度は真樹を狙っていた。
「(───死ぬ)」
真樹の脳裏に、言葉がよぎった。
どれだけ安全に気をつけても、どれだけルールを守っても理不尽は存在する。
それがダンジョンなのだと、誰かが言っていたのを思い出す。
「(でも───こんなのって)」
振り下ろされる腕。時間がスローモーションになる。
翔太が叫びながら駆け出そうとしている。
剛は動かない腕を引きずって立ち上がろうとしている。
陽子は涙を流しながら魔導書を拾い上げようとしている。
雅人が必死に手を伸ばそうとしている。
健斗は絶望の表情を浮かべている。
そして、コメント欄には無数の叫びが溢れていた。
『誰か助けて!』
『もうダメなのか!?』
『嫌だ死なないで!』
『神様お願い!』
『誰か! 誰かあああっ!』
───ダァンッ!
硬質で乾いた炸裂音が、ダンジョンに響き渡った。
銃声に似ていた。
しかし、ただの銃声ではない。
もっと深く重く、震わせるような衝撃音。
「グオ・・・!?」
振り下ろそうとした腕が何かに弾かれて大きく仰け反り、ブラッドゴーレムの動きを止める。
三つの目が驚愕に見開かれ、その視線が真樹たちの背後に向けられた。
「・・・え?」
真樹は呆然と振り返った。
他の5人の視線も、同じ方向に集まる。
10階層に続く階段の入口。
そこに、誰かが立っていた。
ダンジョンの薄明かりに照らされたシルエット。
手にした何かをだらりと下げ、肩で息をしている様子がわかる。
やや猫背で立ち姿には妙な力みがない。
気の抜けたような呼吸音が、静まり返ったダンジョンで妙に響く。
「おーい、少年ー」
その人物は、呼吸を整えると片手をひらひら振りながら、気安い口調で続けた。
「手助けは必要かい?」
そこに立っていたのは、三十代前半とおぼしき男性だった。
特徴のない顔立ちにくたびれたジャケットとジーンズという出で立ち。
手には、深紅と黒を基調とした奇妙な形状の銃らしき物が握られている。
強そうには見えない。
とてもダンジョンを潜る装備にも見えない。
どこにでもいそうな普通の人間だった。
「・・・えっと、誰?」
翔太が呆然と呟いた。
その声に答えるように、男性は困ったように頭をかいた。
「うーん、通りすがりのおじさんかな」
男性の肩の上で、何かが動いた。
手のひらサイズの、プチアソートで見るような小さな箱。
それが跳ねながら、ブラッドゴーレムに向かって鳴き声を上げる。
「クッキー!」
「うん、大丈夫。やるだけやってみようか」
男───
「グオオオオッ!」
ブラッドゴーレムが咆哮を上げ、標的を変える。
無数の棘が一斉に彼めがけて殺到した。
「うわっ、ちょっ!」
慶三は慌ててその場から飛び退く。
先ほどまでの飄々とした態度はどこへやら、明らかに戦闘慣れしていない動きだった。
しかし、慶三は棘の直撃を避け、真樹たちの前に転がり込む。
「あぶな・・・やぁっぱ、慣れないなあこれ・・・」
慶三は後ろを一瞥し、冷静に状況を分析した。
「とりあえず、逃げられそうなら逃げようか」
「そうしたいのは山々ですけど、あいつが・・・!」
雅人が言いかけた時、ブラッドゴーレムが再び腕を振り上げた。
「ああもう、話の途中だってのに」
言うが早いか、斜めに傾け胸の位置で両手で構えたベイクマグナムを連射する。
「グォ・・・オオ・・・!?」
弾丸が炸裂するたびブラッドゴーレムの深紅の表面が波打ち、削り取られていく。
物理も魔法もろくに通らなかった体が呆気なく崩れた。
「うっそだろ・・・!?」
剛が呆然と呟く。
その肩を雅人が支えながら、信じられないものを見る目で慶三の背中を見つめていた。
『なにあのおじさん!?』
『強すぎない!?』
『ブラッドゴーレムが押されてる・・・!』
『あの銃なに? 特殊武装?』
『でもなんか素人っぽいよな』
『何者!?』
コメントの混乱を知る由もない慶三は一発一発着実にゴーレムを削り、後退させていく。
肩の上のマスコットがリズムを取るように跳ねていた。
「クッキー!クッキー!」
「・・・うーん、やっぱ硬いなあ」
慶三はぼやきながらベイクマグナムを下ろした。
穿たれたゴーレムの体表がみるみるうちに盛り上がり、再生していく。
削ったはずの深紅の表面がまるで時間を巻き戻すように元の形状を取り戻していくのだ。
「グ、ルルル・・・」
ブラッドゴーレムの三つの目が怒りを込めて慶三を睨みつける。
再生を終えた腕の棘が、威嚇するように先ほどよりも鋭く伸びていた。
「あー、そうなるよねえ」
慶三は特に驚いた様子もなく、右手をぷらぷらと振った。
反動を抑えていたとはいえ連射したせいで手が痺れたのだ。
「結構痺れるな、これ。加減が難しいよ、ほんと」
「加減って・・・」
真樹が思わず声を上げる。
ブラッドゴーレム相手に加減も何も、そもそもまともに戦えていること自体が異常だった。
「クッキー!」
慶三の肩からピョンと跳ね、小さな箱のような体を震わせて、何かを訴えている。
「あー、そうだね。出し惜しみできる身分じゃないか」
慶三は相棒の言葉にうなずき、再びベイクマグナムを構え直す。
「君たち、今のうちに下がった方がいい」
上顎のような銃身が手前に引かれて折り畳まれる。
中央の基部を露出させ、肩から飛び降りた相棒───『ブレイクッキーゴチゾウ』を掌に収める。
「んじゃ、ちょっと借りるよ」
手の平で跳ねる小さない相棒を
ガチリ、と噛み合う感触と同時に機械音声が響いた。
───『
折り畳んだ
一回、二回、三回。銃身を上下させ、噛み砕く動きで内部機構が唸りを上げる。
───『
ゴチゾウが脈動するように明滅し始めた。
漏れ出る光が一瞬、周囲のダンジョンの薄明かりを塗り替える。
真樹たちは思わず目を細めた。
異常事態から始まった光景、すべて常識外の出来事であった。
『ちょっと待ってなにあれ』
『ゴーレム再生した!? やっぱり無理ゲーじゃん』
『おじさん・・・加減って今言った?』
『あの痺れてる感じ演技じゃないの? 素なの?』
『うさんくせぇ!』
『魔導具なのか?』
『変形した!?』
『なんだなんだなんだ』
『ダンジョンの古代の遺物とか?』
『これ探索者協会も把握してないやつじゃないか』
おどろおどろしい電子音が鳴り響く中、
「さぁて、焼き上がりはどうかな───変身」
───『
銃声と同時にベイクマグナムの銃口から放たれたのは、これまでとは明らかに異質な弾丸だった。
銃身の形に似た、大顎のように唸りを上げ獲物に向かって直進するそれは。
咄嗟に防御姿勢を取るブラッドゴーレムを嘲笑うかのようにすり抜けその背後で翻す。
「グオ・・・?」
弾道を追うが、もう遅い。
エネルギー弾は慶三の元へ向かい───その目前で急上昇し、覆うように上から嚙みついた。
慶三を中心に赤熱する電熱線を模したエフェクトが包むように幾重にも走る。
目に見えない熱の波が内側を一瞬で満たし、空気が揺らめいている。
眩い光の中で慶三が素体となる『ナックボディ』へとその姿を変質させた。
間を置かずに上空は粘性のある生地が降り注ぎ体の各部に纏わりつく。
───『
それはまるで膨らみ焼き上がるクッキーのようであり、熱を帯び脈動しているようでもあった。
そして焼き上がった余分が炸裂するように砕け散り、最適化された生体装甲が完成する。
───『
黄土色と焦茶の、砂漠迷彩のようなミリタリー色の強い装甲。
全体に刺々しく、攻撃的なフォルムは薄明りの下でより凶暴なシルエットを浮かび上がらせる。
『は?』
『変わった?』
『え、何あれ』
『ちょっと待って理解が追いつかない』
『へん、しん・・・?』
真樹は思わず半歩後ずさる。
息を呑む音が、やけに大きく響いた気がした。
「な、に・・・あれ」
呆然と呟く声は、誰に届くでもなく虚空に溶ける。
脳が現実を拒否している。
いや、理解が拒否されていると言うべきか。
変身した慶三───“それ”は、ゆっくりとこちらを向いた。
目らしき、双眸が、ギラリと光る。
真樹の背筋を、冷たいものが駆け抜けた。
「───割りと、上出来じゃない?」
慶三は変身した姿を披露するようにおどける。
その声は装甲越しでも意外なほどクリアに響き、口調は変身前と何も変わっていない。
「ちょっと近かったけど、熱くなかった? 大丈夫?」
刺々しい装甲に包まれた腕を持ち上げひらひらと手を振る仕草はも同じで。
そのギャップに、真樹は開きかけた口をそのまま閉じられずにいた。
「とりあえず。こっちはこっちでやるから、安全第一にちゃんと逃げるんだよ」
そう言って、彼はブラッドゴーレムに向き直った。
「さて。ニワカだけど、それらしく頑張ってみようか」
胡散臭い人物のその声には、確かな覚悟があった。
6人の高校生たちは、ただ呆然とその光景を見つめていた。
キャプチャー・オーブはそのすべてを記録し続けている。
視聴者数はすでに3000を超え、流れるコメントは異様な熱気に包まれていた。
『誰か説明してくれ!』
混乱と興奮の坩堝と化す中、謎の戦士───仮面ライダーベイクとブラッドゴーレムが対峙する。
ダンジョン12階層に、新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
文章書くの本当に下手なので、AI本文利用は本当に助かってます。
こうして思いついた話をAIに作文してもらい形に出来ました。
特に変身シークエンスを文字で表現できて満足です。
短編作であらすじの通り、内容としてはこれで終わりのつもりです。
続きは気が向いたら投稿します。