ロボットに乗って陰でスパイや裏切り者を始末してますが、幼なじみには筒抜けのようです   作:½夜城

5 / 7
EP.05 消える灯火、されど明かりは残らんと

 

 

 

 

 日の落ちる間際の空を、4つの黒い人型が切り裂く。

 淡い緑の膜———大気を切り裂く力場を纏ったそれらは、実に音速の20倍もの速度で飛行していた。

 

 

『ヘルキーパーよりカスケード隊、目標情報更新。座上特定完了』

 

 通信機から言葉が発され、加えて軽い電子音がカスケード1から4のコックピットに鳴り、同時にディスプレイへ目標の位置が表示された。

 

『目標はスデムル渓谷に沿って無主地帯を北東へ逃走中。現在は最寄りの国境から20km地点で停止している。また〈ステルス・カートリッジ〉を展開中のため、通常手段での探知は困難だ。以後は逐次情報を確認しつつ追跡しろ』

『『『「了解」』』』

 

 

 

『カスケード3よりカスケード1。今回の相手はどれほどの腕なのでしょうか』

「不明だ。目標はクルーメル皇国所属のVHパイロット、ネームドではない。この情報のみ。———任務に集中しろ」

『……了解』

『やっぱコイツ切り替えがハッキリし過ぎだよな』

『今更でしょう。それより貴方はコックピットの中で煙草を吸わないでください。煙が見えてますよ』

 

 カスケード4の言葉が響き、やや遅れてカスケード2の機体が揺らぐ。

 …しかし、寸分の狂いなく組まれた4機編隊が崩れることはない。

 

「カスケード2、4。君達もだ。我々はシーシア連邦の中で任務を果たす存在に過ぎない。分かっているだろう」

『まぁ…』

『もちろんです、隊長』

 

 紅く灼けた()()()の光を僅かに反射しつつ、彼等は移動を続ける。

 その姿は夜闇から這い出んとする悪魔の如きモノであり…同様に、獲物を追う猟犬の様でもあった。

 

 無論、彼等の実態は飽くまでシーシア連邦政府の要請を受けて出撃する————或いは裏切り者を捕縛する実働部隊でしかない。

 比較的脅威度の高いとされる目標への割り当てが大多数を占めるとは言え、()()()()()()()()()()()()()()()のがそれを最も示しているだろう。

 

 悪魔、味方殺し、連邦最凶…一見ネームドに与えられる二つ名に思えるこれらは全て、非公式に設定されたものであり、ネームドの様に政府から設定された物では無いのだ。

 

 

『ヘルキーパーよりカスケード隊。間も無く目標付近だ。突発的な交戦に備えろ』

 

 再度通信が入り、カスケード隊各員の表情が硬くなる。

 ————しかしそれは、直ぐに驚愕の表情へと変わった。

 

 何故なら。

 

「……カスケード1よりヘルキーパー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『カスケード2、同じく』

『カスケード3、4も同様に見えます。見間違いでは無いかと』

『何だと?』

「……接近する」

 

 

 山肌の中腹から立ち昇る火の手を観察しながら、カスケード隊は上空を旋回。警戒を続けつつ徐々に接近を試みる。

 

「……」

 

-目標スキャン開始-

 

 近付くにつれ顕になったのは、炎上しているのはバックパックのみであり、胴体に大きな損傷は見られない事。またコックピットハッチが解放されている事などであり……これらが示すのは、救助目標が未だ生存している可能性。

 

「カスケード1よりヘルキーパー。目標にはパイロットが脱出した形跡がある。付近の捜索を継続する」

『了解した。こちらでは改めて目標位置情報の精査を—————敵影探知!』

 

 目標の状況から、周囲を捜索すべく高度を上げるカスケード1。

 ヘルキーパーもそれに応え、自分の役割を全うしようとした瞬間だった。

 

 ヘルキーパーの警告が飛び、カスケード1のレーダーディスプレイ、その最遠に6つの光点が姿を表す。

 

「ッ!」

『クソ、何処の何奴だ、反応は6機編隊。方位1-2-0、高度2000。高速で接近してくる』

「カスケード1よりヘルキーパー。こちらでも捕捉した。敵は————」

 

 

 

 

 カスケード1が視線を向けた方向から接近する、6機の赤茶色のVH。これを駆るのは、クリテロス軍のネームド。

 

 

 クリテロス共和国空軍 第431特殊戦術飛行隊 〈プレイヤーズ〉

 

 

『プレイヤー1よりハンドラー、目標が情報と違う。恐らく〈レイダー〉を追ってきた部隊だ。またレイダーの機影は確認出来ない』

『了解。先ずは敵を排除だ、捜索は後回しにしろ』

『了解した』

 

 

 通信を切り、プレイヤー1は部下へと告げる。

 

 

『プレイヤー1より各機、卓に着け—————遊戯の時間だ』

『『『了解』』』

『……楽しませてもらうとしよう』

 

 

 

 

 

『敵機高速で近づく』

『隊長、どうします?』

「已むを得ん、迎撃するぞ」

 

 

 -リアクター 戦闘出力 各武装オンライン データリンク接続完了-

 

 カスケード1の号令で、4機のボルテックスは一斉に武装を展開。また紅いバイザーがリアクターの出力が上昇するにつれて輝きを増していく。

 

 そして彼等はビームライフルの照準をデータリンクを以て共有し、()()()()()()

 

 

 瞬間、放たれた4本の紅い光条が一直線にプレイヤー隊へと猛進。VH程度なら容易に破壊可能なそれは、しかし。

 

『全機散開(ブレイク)、牽制射に当たるなよ』

『撃ってきたか、中々正確な狙い……少なくともニュービー狩りにはならなさそうだ』

 

 複数機による統制射撃は本来、ターゲットとなった機体に対して多大な回避機動を要求する。

 されど今回は距離が離れていたこともあり、プレイヤー隊は、6機バラバラに散開する事でこれを回避した。

 

『お返しといこう』

 

 日が沈み、紅く焼けた地平線の彼方へと消え去るビームには目もくれず、琥珀色の単眼を煌めかせ、お返しとばかりにこちらもビームライフルでの統制射撃を行う。

 

 狙われたのは、カスケード3だ。

 

「来るぞ」

『回避します』

 

 対応して急降下、螺旋旋回を行うカスケード3。他のカスケード機はその回避機動を狙われぬように再び牽制射を放つと同時、スラスターを吹かせてプレイヤー隊へと接近を開始した。

 

「一撃離脱を図る。敵の陣形内部に取り残されるな」

『『了解』』

 

 

 

 

『敵部隊、接近してきます』

『サンダースターで近接戦?いや、一撃離脱か。各機、連中と接触したら決して逃すな。足を止めさせろ————何?』

『敵部隊急加速…!疾いッ!』

 

 ここでプレイヤー1が見誤ったのは、相対する部隊がただの追跡部隊であると判断した事。加えて、システムが判断した敵機体の種類をそのまま信頼した事だ。

 

 もし仮に敵部隊———カスケード隊であると気付けていれば、また違った結果になっただろう。

 

 ——————斬。

 

 咄嗟に防御態勢を取るプレイヤー隊だったが、黒い影とすれ違った瞬間、3つの剣閃が迸り、その内の一つが赤茶色のVHを両断した。

 

『ぐッ!』

『プレイヤー3、ロスト!』

『この速度、唯の追跡部隊じゃ無い…!』

『反転してまた来るぞ!!』

 

 

 

 

『敵機1機撃墜確認。パイロットの脱出は確認出来ず』

「流石に反応されたか」

『構わねェ、俺が1機ぶった斬った。適応されるまでにもう1機は落とせる』

 

 カスケード1及び4の攻撃はプレイヤー隊に反応された。されど、カスケード2の攻撃はこの2つの攻撃タイミングからやや遅れ、結果として標的となったプレイヤー3は撃墜されたのだ。

 

 

 ボルテックスの加速性能を存分に活かした一撃離脱。一見低速から中速に見えて、急速接近を行う…カスケード隊が好んで用いる戦法である。

 

 

 

『ハンドラーよりプレイヤー1。敵部隊は外的特徴から推測するに、〈堕天使〉だ』

『堕天使だと?』

『あ、俺…聞いたことがあります、シーシアには味方を殺す事も厭わない部隊が居ると。その部隊の呼び名が悪魔とか、堕天使だった様な……』

『詳細は分からん。だが司令部のデータベースに、4機の黒いサンダースターで構成される名称不明のエース部隊が登録されていた。ネームドでは無いが…油断するな』

『……了解した』

 

 

 欠けたプレイヤー3の穴を埋めるが如く、陣形を変えるプレイヤー隊。先程とは打って変わって各機間の距離は至近だ。無論距離ゼロでは無い為、相互援護に支障は出ない。

 

 

 

『チッ、連中密集しやがった。悪ィ、そう簡単にはもう1機落とせなさそうだ』

「ネームドの名は伊達ではないな。だがこちらには———カスケード3」

『支援砲撃準備良し、いつでも』

「…よし、()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。