ロボットに乗って陰でスパイや裏切り者を始末してますが、幼なじみには筒抜けのようです 作:½夜城
「…れでアイツが助けたらしいよ」
「本当に?ただの噂じゃなくて?」
「正規の軍人が言ってるのも聞いたから本当だと思う」
教室に入ると話題は
内容は訓練飛行から帰還した学園の生徒———コウが事故を起こした戦闘機を救ったというものだ。
「〈金魚のフン〉くんも中々やるじゃん」
「どーせたまたまだろ?もし現場にいれば俺の方が速かったね」
「お前は無理だろ……」
交わされる会話の内容は、好意的なものが3割、否定的なものが7割くらいかな。まぁ、敵機を多数撃墜したわけじゃなくて、ただ事故を起こした機体を救助した————言い方は悪いけど、実績としては地味だ。
このくらいでコウを嫌っている人が手のひらを返すわけがない。
「あ、アークライトさん!」
「訓練お疲れ様でした!」
「そっちこそお疲れ様」
教室に私の姿を認めた途端、駆け寄って来るクラスメイト達。今日は側にコウが居ないからかいつもより多い気がする。
「流石アークライトさんです、何も出来ずにやられちゃいました」
「ロックオンしたと思ったら消えてるんだもんな」
「うん、一生追いつける気がしなかった」
「君たちもちゃんと上達してたから、次はもっとやれるよ」
当たり障りのない言葉で躱し、私は自分の席に就く。
……正直、こうして人に囲まれるのは苦手。
だからこそ、いつも立ちはだかってくれるコウには感謝してる。それに、英雄がするべきではない仕事をしてくれてるのも、ね。
————英雄とは高潔で、強くあるべき。
彼は自分の部隊にそんな事を言ってたらしいけど、実際はどうなんだろうか。
いつか、あなたの口から直接聞きたい。その言葉の本当の意味を。
「あの孤高のエースって感じ良いよなぁ…」
「確か6対1を5回やって被弾ゼロだったらしいぞ」
「マジで!?お、俺模擬戦申し込もうと思ってたけどやめようかな」
外を眺めながら考えごとしてるだけで、そんな言葉が聞こえてくる。さっきまでコウの話題で盛り上がってたのに、私が来た途端スッパリ変わるのは少し不気味ですらある。
でもコウの評価が上がるの、コウ自身にとっては不本意だろうしなぁ……
彼の覚悟を尊重すると言った手前どうなんだと思われるかもしれないけど、私だってコウが馬鹿にされてるのは、かなり不愉快だ。
それに、私やコウの親しい友人が何も言わないのを良いことに最近は悪口がエスカレートしてる気さえする。
などと思ってた、その時だった。
「それにしても、アークライトさんの無双と比べると、やっぱクルセイダーのやった事って
「お、おぅ…それは流石に言い過ぎじゃ…?」
「でもそうだろ?アークライトさんは訓練でも実戦でも凄いけど、クルセイダーは偶然そこに居合わせただけ————」
………何を、言ってるの?
コウ自身が馬鹿にされるのは、彼が受け入れてるから何も言うつもりはない。
でも、彼が成した功績を軽んじるのは話が別だ。そもそも救助活動による功績と戦闘における戦果は絶対同列に語られるべきじゃないし、軍人を志す者としてあまりにも倫理観の欠如した発言。
流石に見過ごせない。
「あなた——「黙って聞いてりゃ、好き放題言いやがって!」ッ」
だが、咎めようと立ち上がった瞬間、別の声が教室に響く。慌てて視線を向けると、茶髪の男子生徒が愚かな発言をした男子生徒を睨みつけていた。名前は確か……アルト・コンベルタ。
「な、なんだよ大声出して」
「お前のせいだよカムラ!お前は絶対言っちゃいけないことを言った!お前今のセリフを正規軍の救難部隊の前で言えるか?あ?ただでさえコウを馬鹿にして、その上で成し遂げたことの価値すら貶めるとか……軍人失格だ」
「……なんだと」
「なんだとじゃねぇよ。お前はたった今この国の軍人全員を敵に回した。周りを見てみろ」
言われて周囲を見回す茶髪の男子生徒。先ほどまでのざわめきは鳴りを顰め、また一緒にコウを馬鹿にしていた男子生徒達も、困惑しているような目を向けていた。
「ッ…お前ら…!」
その様子に激昂した様子で手近な机を蹴り飛ばし————舌打ちをして、彼は荒々しく教室を出て行ってしまった。
◇
『クソッ!』
『プレイヤー2、後ろから来るぞ!』
『速度に緩急があるせいで捉えられねぇ…!』
叫びながら放つ光条は、当たらず。逆に
しかし、徐々にその差は縮まっており……カスケード隊にも焦りが生まれ始めている。
『粘りやがるぜッ…!』
「敵はネームドだ。焦らずに削るしか無い…」
『ですが、我々と違って敵は増援を要請出来る可能性があります。グズグズしていたらマズイのも事実です!』
『その通りだ。それに貴官らの第一任務は皇女の捜索と保護、あまり時間は…』
「分かっているッ…!」
ここで始めて、カスケード1の表情が崩れた。
平時とは異なり、戦闘中は感情の起伏が非常に少ないカスケード1だが、こと本質は18歳の若者である。
故に、任務を達成出来ない可能性……更にその任務の重大性が極めて大きい時は、感情の発露を引き起こすのだ。
(このまま消耗戦を続ければ任務達成は困難か?だがわざわざ敵の間合いで戦う訳にも…)
『隊長、機体性能と我々の技量を擦り合わせて、最善の戦術を採り続ける事自体に異論はありません。ですが、我々の身を案じ安全策のみを採用するのでは、勝てるものも勝てなくなります』
「カスケード3……」
『無論、以前私が
「……分かった。各機、次の一撃を以て戦術変更。近接格闘戦に移行する。無理はするなよ」
『オーライ!』『了解しました』
動き出しは先程までと変わらず、カスケード3が牽制射撃を放つと同時にカスケード1、2、4が高速で接近。
プレイヤー隊の応射を意に介さず急速に距離を詰め—————
『ッ!コイツ…!?』
「かかった」
今度も一撃離脱と踏んでいたプレイヤー隊は、その場に留まっての
『喰らった…が、まだ動ける!』
『戦術を変えてきた…!』
『この距離ならこちらが有利!』
無論、その場に留まるという事は敵の反撃を確実に受けるに等しい。
「ッ!」
『墜ちろッ!!』
一瞬で体勢を立て直したプレイヤー1による攻撃。上段からの剣閃をビームセイバーで受け止め、カスケード1は周囲の状況を確認した後、バックブーストで距離を離す。
追撃は無く、牽制の射撃を放ちつつカスケード1は、自身と同様に突入した部下の方向へ視線を向ける。
『こんのッ…』
『鬱陶しい!』
「援護する」
幾ら近接戦に移行したとしても、数的不利を背負っている時点で長く敵機の近くに留まる事は危険という思考の元、未だカスケード2、4に絡んでいる敵機へ射撃。離脱を援護した。
『チッ!』
『プレイヤー1より各機。連携は敵の方が一枚上手だ、可能な限り1対1に持ち込め』
『すまねぇ助かった!』
「礼は後に回せ、来るぞ」
カスケード隊が戦術を変えた事を察したプレイヤー隊は、今一度空中で停止した敵機へ突貫。
攻守が入れ替わる。
『先ず目標を
『『『了解!』』』
「狙いは俺か」
呟きつつ、向かって来るプレイヤー1に対して3連射。しかし臆する様子を全く見せずに速度を上げてくる姿を見て、カスケード1は背部ウェポンユニットに背負っていたシールドを取り出す。
『ハァッ!!』
「クッ…」
正面からの剣戟をシールドで受け、刹那、背後に回り込んだ2機へとビームセイバーを振るう。
『うぉっ!?』
『危ッ…!』
当たりこそしなかったものの……背後の敵機の動きを制限する事に成功。間髪を容れず、シールド諸共断ち切らんとするプレイヤー1の胴体へ蹴りを叩き込む。
如何に全高15mを超えるVHと言えど、然程重量差が無い機体から蹴りを受ければ、後退は確実である。
「ッ!!」
そこへビームライフルによる追撃を行う、が、これはプレイヤー1に防がれて終わった。
『コイツ…!』
「互いに攻め手に欠ける、か…!」
言い合いながらも、口元へ
その時だった。
『こちらクルーメル皇国親衛隊所属、第2戦略機動連隊。戦闘中の両部隊へ告げる。直ちに戦闘を停止せよ』