人は皆、「顔」を持っている。
その顔たちを使い分けて、日々生きている。
その中に、「全く別人のような顔」を持つ人はどれだけいるのだろうか。
俺は、数多の顔を使い分け、人々を守る。
世間の声曰く、俺は「FACE MAN」だと。
顔を分ける男。FACE MAN。
世界を相手に、「FACE」を変える、最高で最強の__
__カフェ&バー「カズキ」__
「いらっしゃい」
「あ、フクマン!」
「ッだぁれがフクマンだ」
「えー、覆真さんだしフクマン、でしょ!」
「服男じゃねえか」
俺、「数城 覆真」をいつも「フクマン」と呼ぶこの女は、最近高校生になったばかりの常連だ。
2年前からこの店を利用している。
「勉強、ついていけてるか?」
「大丈夫だしー」
「ほんとかよこのギャル……」
なかなか特殊な性格だが、学校側は特に気にしていないのだろうか。
「なぁ、知ってるか?」
「何をだよ」
「俺らの学校の七不思議!」
……あの2人、このギャルと同じ学校だな。いやしかし、七不思議の噂話とは、まさに学生って感じだ。
「なんでも、理科準備室のホルマリンに、目ん玉が浮かんでいるとか!」
「……元からそこにあるのでは?」
「違うんだよ!ある日とない日があるんだぜ!」
「まじぃ!?」
学生2人は盛り上がっているようだ。
……その目ん玉とやら、どうやら人を驚かすだけの弱い「存在」だな?
……覆真の目に、紫色が宿る。
__夜の高校、理科準備室__
「……さて、ここだな」
紫色と白の和風な服を纏った男が、数珠を手に掛け理科準備室へ入る。
……数城 覆真だ。しかしカフェにいた時とは打って変わってピシッとしたオーラを感じる。
「ふむ、あれだな」
机に置かれたビーカーの液体は、ホルマリン特有のツンとした刺激臭を放っており、すぐに特定できた。
……親のコネを使って独学で化学実験しまくったお陰だ。
ギョロッ!
「……おぉ、w」
おっとつい冷笑が。
ビーカー内に、目ん玉が1つ。こちらを睨もうとしているのか、ジッとこちらを見ている。
「すぅぐ祓ってやるからなぁ。“祓霊解呪、急急如律令”」
ギョルロロロロロ!
目が勢いよく回転し、苦しそうに蠢く。
「“聖清波”」
パンッという音とともに、目ん玉は消え去った。
「……任務完了」
そう言って廊下に出て、扉を閉める。
ピッキングで理科準備室の扉の鍵を開けていたが、それを閉める術は__
「そい」
霊力を扉に込めると、カチッと鍵の閉まる音がした。
「ふー、じゃ、屋上に戻りますかな」
廊下を歩き、階段を上って屋上へやってくる。屋上の扉の鍵は、外から鍵を開けるタイプだったので侵入は簡単だった。
「そいじゃ、Ciao〜」
いつの間にか黒い衣装を纏い、ロープをつたって下へ降りる。防犯カメラを避けるルートは把握済みだ。
「……はい、おつかれちゃん!」
「おつかれちゃん、じゃないですよ」
おっと怖い。
近くに止まっていた黒い車の助手席を開けると、ムスッとした顔の女性が運転席に座っていた。
彼女の名は「金井 茜」。茜は、「警察学校時代の同僚」だ。いつも協力してもらっている。
「だいたいこんな夜に呼び出すなんて、アイドルとしては寝ていたい時間なんですよ!」
「それはぁ……ごめん」
「もう……いいですけどね」
シートベルトをしてすぐ、彼女がエンジンを掛ける。
「じゃあ、撤収!」
「はいはい、撤収」
俺たちを載せた車は、夜の街へ溶け込んでいく__。