「うりゃー! …………ふげっ!」
レリチアから出てすぐに存在する広大な平原レギネ平原。そこにはある三人組がいた。
「ッッ……大丈夫?」
一人はギルドで受付嬢を行っている女性。彼女は目の前で起こった出来事に目を瞑り、大丈夫かと声をかける。
「大丈夫……」
声をかけられたのは右手に古びた銀色に光るダガーを握った少女リウム。彼女はモンスターに反撃され、痛むお腹を押さえながら立ち上がる。そんな彼女を見ていた腰に剣を携えた男……サフラはその光景を横目に考える。
(まさかこんなことになるとは……)
サフラはこのレギネ平原に着いた時の事を思い返す。
「よし、ここらへんでいいか」
「わぁ……! ヤブツギの近くにあった平原よりずっと広いね!」
リウムは目の前の光景を前に、目を輝かせる。そのあまりに広大な大地に感動している。その様子を見ながらサフラはその腰に携えた剣の柄を手に持ち、隣に立つ受付嬢へと確認を取る。
「もう一度確認するが、確かカウンターラビットを一匹でも討伐すればいいんだよな?」
「はい、一匹でも討伐出来れば冒険者登録が行えます。ただし、あくまでその人の能力を見たいので二人で協力するなどは認めません」
「そうか、わかった……そう言うことらしいが大丈夫か?」
サフラはそう言うと平原に目を向けていたリウムに話しかける。リウムは視線をサフラに変え、自信満々に言い放つ。
「うん! 大丈夫だよ!」
リウムから同意を得たサフラはその視線を周囲に向け、目的のモンスターを探す。リウムも一緒に周囲を見ながら口を開く。
「私たちが探してるその……カウンターラビット? ってどんなモンスターなの?」
「俺もあんまり戦った事はないが……この冒険者登録をする際に倒すにはぴったりなモンスターだと思う」
「ぴったり?」
「あぁ、このカウンターラビットは正直そこまで強くはない。強さだけなら正直こいつじゃなくてもいい。ただこいつの特性が少し特殊だからな……まぁ見た方が早い」
「見た方が早い……どんな見た目なの?」
「まぁ野生の兎とほぼ一緒の見た目のモンスターだ。このレギネ平原に野生の兎はいないから兎がいればそれはカウンターラビットだ」
サフラはリウムへと返事を返している間も周りを見ていた。するとその動かしていた視線を止める。それを見たリウムはサフラの視線を追う。そこにはサフラの言っていたように兎がいた。
しかしリウムはそのモンスターを見て、隣に立つサフラへ疑いの目を向ける。
「ねぇ……普通の兎と変わらないんだよね?」
「あぁ」
「あそこにいるのは?」
「カウンターラビットだ」
サフラは何の事でもないように話す。そこにいるのは茶色の体毛で体を覆ったリウムの膝程の大きさもないモンスター。しかしある一点のみが普通の兎と大きく違っていた。
そのモンスターはその額から一本の角を生やしていた。その角は禍々しく曲がっておりその角に突き刺されたら一溜りもないと感じる。
その姿を見てリウムは再度問う。
「普通の兎に見えるの? あのモンスターが?」
「あぁ……どうした? 怖くなったか?」
サフラはその質問の意図が分からず、逆に初めてモンスターと出会い、怖くなってしまったのではないかとリウムに心配する。
「いや……怖くはないんだけど……サフラって兎を見た事あるの?」
「? 見たことないと兎みたいなんて言えないだろ?」
「……そうなんだ」
リウムはこれ以上の質問は意味はないと話を切り上げた。サフラはなぜ質問されたのか理解できなかった。たがそれについて聞くより先に討伐を終わらせようと思い、その手に握っていた剣を鞘から引き抜きそのモンスターに近づく。
「まず俺がやるか。リウ……もう一人は二体目でいいか? 」
「?別にいいけど」
サフラはリウムの隣に立つ受付嬢を見て咄嗟に口を閉じる。その様子にリウムは疑問符を浮かべる。
(そういえば冒険者になるなら偽名も考えとかないとな……)
そんなことを考えながら一歩、一歩と近づいていく。その距離が10メートル程になるとカウンターラビットは瞬時にサフラの方に振り向く。しかしサフラはその歩みを止めない。
その距離がさらに縮まり剣を振るえば当たる距離にまで近づく。しかし…………
「……あれ? 攻撃してこない?」
カウンターラビットはサフラに近づかれてもまったく動く様子はない。その様子にリウムはなぜ動かないのか分からなかった。剣を持った人間が自分の近くにいるのに攻撃する事も逃げることも行わないからだ。
しばらくその様な様子で見合う。するとサフラがその剣を上に掲げる。すると次の瞬間。サフラの足元から大きな鈍い音が響いた。
「うわっ!?」
「何!?」
その音にリウムと受付嬢は驚き、咄嗟に目を閉じる。しかしリウムはすぐに目を開き音の鳴ったサフラの方を見る。そこからは土煙が立ち上っていた。
「サフラ!? 大丈夫!?」
おそらく音の中心にいたサフラにリウムは声をかける。すると土煙の中から音が再び響く。それは何かを引き裂いた音だった。その音にリウムはあの角を思い出し、最悪な想像をしてしまう。
(まさかサフラ、あの角で……)
リウムがその顔を青くしていると土煙が広がって消えていく。次第にその光景が明らかになっていく。そこにあったのは。
「ちょっと力加減間違えたな……」
そこにあったのは剣を手に持った特に何とも無さそうなサフラと体が真っ二つになったカウンターラビットの死体であった。
リウムは中から出てきたサフラに近寄って怪我をしてないか確認をする。その様子にサフラは首を傾げる。
「何だ? 返り血でもついてたか?」
「いやいや!?そうじゃなくて何があったの!?すごい音したけど」
「音?……あぁそういうことか」
サフラは合点がいったのか自身の手にある剣を見せながら答える。
「さっきの音は俺がこいつを地面に叩きつけた音だ」
「剣を?何で?外したの?」
「……まぁ外したみたいなもんだな」
「どういうこと?」
そう言うとサフラはカウンターラビットの死体を見ながら説明する。
「このカウンターラビットってモンスターは名前どおりカウンターをしてくる。それだけのモンスターだ」
「……それが攻撃を外すことと何が関係あるの?」
「こいつはどんな攻撃だろうと相手に気付いてさえいれば絶対に避けてカウンターをいれてくるからだ」
「絶対に?」
「そう。俺がどんだけ早く剣を振ろうが気付かれてたら絶対に避けられる」
その事にリウムは驚く。サフラは騎士団最強の聖騎士、その騎士がどれだけ早く振っても当たらないと明言したからだ。しかしそれと同時に疑問も湧いてきた。
「サフラはどうやってそのカウンターラビットを倒したの?」
そう言ってリウムは傍らに倒れているカウンターラビットを指差した。絶対に当たらないならばどうやって倒したのか。その質問にサフラは答える。
「それはこいつにカウンターさせたからだ」
「カウンターをさせた?」
「こいつの特徴として気づいた相手の攻撃を避けてカウンターをするんだが、そのカウンターをした後少しの間無防備になる」
「じゃあさっきのわざと外したって言ってたのは」
「こいつに最初の攻撃は当たらないからわざと外すようなもんだからだな」
それを聞いてリウムはこのモンスターについて理解した。だが、それはそれとしてもう一つ疑問がある。
「最初の一撃が当たらないならそんなに強くふる必要あったの?」
そうリウムが聞くとサフラは顔を背ける。そして背けたままでリウムに伝える。
「それは……教えるためだ」
「教える?」
「……カウンターラビットはどんな攻撃でも避けるってことを目で見てもらおうと思って強めに振り下ろした。だが……」
そこまで口にしてサフラは何も言わなくなった。しかしリウムが黙って見ているとサフラは口を開く。
「……だが、力の加減を間違えて土煙をあげてしまった……すまない
……」
そう言うサフラの背中は申し訳なさそうに小さくなっていた。そんな様子のサフラにリウムは笑ってしまった。
「……ふ、ふふふ、サフラってやっぱり思ったよりドジだよね!」
「すまない……」
リウムに笑われさらにその背中を小さくしていくサフラ。しかしリウムは続けて言葉を掛ける。
「あ! いやいや、別に馬鹿にしたわけじゃないよ? ただサフラってそういうドジとかあんまりしないような雰囲気だからつい笑っちゃって」
「……別に失敗を全くしないような人間ではないが、そのように思われるのは心外だな」
そのように思われることは不本意なのかサフラは抗議をする。その様子にリウムはさらに笑いが込み上げてしまう。
「あはは!やっぱりサフラって冷静な風に見えて以外に熱血だよね!まだ一日しか一緒にいないけどサフラの事が分かってきたよ!」
「…………」
その評価にあまり納得のいかないサフラであったがもういいかとリウムとの会話を止め、カウンターラビットの角を折り、こちらを見ている受付嬢の元へ行く。
「とりあえずこれで俺の分は終わりか?」
「…………へ?」
「……?やはり見えていなかったから駄目か?」
「い、いやいやそんなことはありません。私たち以外誰もおりませんでしたし、倒し方も熟知されているようですので」
そう言うとサフラからカウンターラビットの角を受け取り合格をもらう。サフラはまだ笑っているリウムに向けて伝える。
「これで俺の分のクエストは終わった。あとはあと一体狩れば終わりだ」
「そっか!まだ私の分が終わってなかったね」
「あぁ、だからさっさと終わらせて登録を終わらせるぞ」
サフラはまた平原を見渡してカウンターラビットを探す。するとリウムは
「……じゃあ私は向こうで探してくるよ!」
リウムはそう言ってサフラから離れていく。そうして離れていくリウムを見てサフラは大丈夫なのかと思案する。
(できれば俺から離れないでほしいが……まぁこの辺にはそこまで危険なモンスターもいないし、受付嬢の女性もついてくれてる。少しは目を離していいか。あまり行動を制限したくもないしな)
サフラはそのように結論を出し、今回の試験について考える。
(カウンターラビットはモンスターの中でも危険度はかなり低い。カウンターの威力もそこまで高くもない上、普通のモンスターと違って倒し方に工夫がいる)
サフラは騎士団の頃に知り合った冒険者の言っていたことを思い出す。
(冒険者になるには戦闘力だけじゃ駄目だって言われたが……確かにこいつより危険で複雑な奴らと戦う事になるならこいつと最初に戦わせるのは最適なのかもしれないな)
この試験の事について考えながら捜索を続け三十分程が経った頃一度リウムと合流するべくリウムの行った方へサフラが向かっていくとリウムの声が聞こえてきた。
「てりゃ! …………いたぁ!?」
「ん……? 何だ?」
サフラはそのリウムの声に違和感を覚える。何だと思いリウムの方へと向かっていく。
(まぁ、カウンターラビットに苦戦するのは俺みたいな近接しか出来ないようなやつだし、リウムならすぐ終わるだろ。仮に倒せなくても魔法使いなんてそれだけでギルドにとっては貴重だしな)
サフラはこの後ギルドに張り出されているどのクエストを受けようか考えながら向かう。リウムと受付嬢の姿が見える距離にまで近づくとそこに広がっていた光景にサフラは混乱する。そこには……
「おりゃ! …………ぶべ!?」
素手でカウンターラビットに殴りかかり、カウンターを腹に食らったリウムの姿があった。
(??????????)
その光景にサフラは人生において一度しか起こしたことがない、情報量によるフリーズを起こした。
しかし、リウムが起き上がりまた向かっていこうとするとサフラはフリーズから復活し、リウムの手を掴み止める。
「うわっと!? どうしたの?」
「いや、なにやってんだ?」
「何って? カウンターラビットを討伐しようとしてるよ?」
「……すまない、言い方が悪かった。何で素手で戦ってる?」
「?」
サフラは言い方を変えてリウムへ問う。しかし、リウムは何が言いたいのか分からないのか首を傾げる。サフラは受付嬢から距離を取り小声で話す。
「魔法はどうした? 魔法の腕は落ちたってのは聞いたが使えないわけじゃないだろ?」
「あー……その事なんだけどぉ……」
「何だ?」
サフラがそう聞くとリウムはその体をくねらせながらしどろもどろに口を開く。
「そのぉ……私ぃ……サフラが二日酔いで倒れてるときに試してたんだけどぉ……」
「……まさか」
サフラは何を言うのか予想がつく。だが、リウムから真実を聞くため静かにする。リウムは下を向きながら答える。
「私……ほとんど魔法使えなくなってた……」
「はぁ……結局駄目だったなぁ……」
「大丈夫だよ、別に試験はいつでも受けれるし、私も忙しくなかったらいつでも付き合うから」
「ホントに? ありがとう~受付嬢さん」
俺達は今レリチアへと帰ってきている。リウムはその体をボロボロにして、ひどく落ち込んでいる。
(まぁ、カウンターラビット見つけてから五時間戦って、倒せなかったら落ち込みもするか。というより受付嬢といつ仲良くなったんだ?)
サフラは先程もそうであったが受付嬢とリウムはかなり打ち解けていた。試験中は敬語を崩すことはなく、サフラには今でも敬語を崩すことはない。
(まぁ、リウムは俺相手にも普通に話せる子だし、そもそも仲良くなるのが上手いのかもしれないな)
そんなことを考えながら歩いているとサフラ達はギルドの前に立っていた。
「あっ、ギルドに着いちゃった。じゃあ私はこれからギルドで仕事だから」
「これから仕事か……すまない今日はずっと俺達に付きっきりで」
サフラがそう言うと受付嬢は笑顔で答える。
「いやいや、これも仕事だから。それに新しい友達も出来たし」
そう言うと受付嬢はリウムの方へ視線を向ける。リウムは落ち込んでいたその顔を少しだけ明るくし、答える。
「……うん! そうだね! 今日はありがとう! またね!」
「うん、またね」
そう言うと受付嬢はギルドの中へと入っていく。サフラ達はその後ろ姿を見送ると誰もいない道を歩きながらレリチアの宿屋に向かっていく。サフラは今後の動き方について考える。
(とりあえず俺の冒険者登録は終わったが、リウムの方をどうしようか、一旦俺のダガーを貸してるがダガーの扱いを見てると少しばかり難しそうなんだよな。それに今後の動き方も少し変えなきゃいけないし、それから……)
その様に考えているとリウムがサフラに近づき小声で話しかけてくる。
「サフラ……ごめんね……」
「……? 何がだ?」
「いや……そりゃ色々だよ……」
リウムはサフラに謝る。しかし、サフラは何に謝っているのか理解できなかった。するとリウムは口を開く。
「その……カウンターラビットを倒せなかったのもそうだし……ここまで時間をかけることになったのも私が言ったせいだし……それに魔法の事だってそうだし」
「…………あぁ、そういうことか」
実はサフラは最初リウムが魔法を使えなかった時点で切り上げようとしていた。しかし、リウムがやりたいと言ったためこの時間まで続けた。
サフラはリウムの口から伝えられたことでようやく理解した。リウムは自分のせいでサフラの立てた計画を崩してしまったと、自身が続けたいと言ったからこんな時間まで続けてしまったと。
「……リウム」
「……何かな」
リウムはサフラが何を口にするのか分からず思わず体を強張らせる。そんなリウムにサフラは伝える。
「そんなことを気にしてどうするんだ?」
「……へ?」
サフラからの言葉が予想外であったため間の抜けた声が出てしまう。サフラは気にせず言葉を続ける。
「別にこれくらいの事を気にしてどうするんだ?」
「……いや、いやいや、そんな訳なくない? だって冒険者登録するのは前提でしょ? それが出来ないなんて想定できてないでしょ?」
「確かに冒険者登録出来なくてつまづくなんて思ってなかったし、何なら魔法が使えないなんて想定なんか出来るわけがない」
「そうでしょ? なら……」
サフラはそんなことは想定できるわけがないとリウムからの言葉を肯定する。その事にリウムも続けて言葉を出そうとする。だが、その前にサフラが言葉を挟む。
「だけど、別に気にする程の事でもないし、何よりこの旅は記憶を取り戻す旅だ。リウムが何よりも早くその記憶を取り戻したいってことじゃなければ別にそこまで急ぐべきことでもない」
サフラから出る言葉にリウムはその口をぱくぱくと開けたり閉じたりする。何か言葉を紡ごうとしているが出来ずにいる。
「それでもリウムがまだ自分を責めるのなら俺も自分の事を責めなくちゃいけない」
「……え? 何でサフラが自分を責めるの?」
リウムはサフラが自分自身を責めることがなぜなのか理解できなかった。
なぜならサフラは何も計画と違う行動をとってはいなかった。サフラはずっと旅の未来の事を考え、実行していた。その様に考えているとサフラが告げる。
「そもそも俺達はまだほとんど一日しか、一緒にいなかった。まだお互いの事を何も知らない。そんな状態なのに計画を作っても意味はなかった」
「そんなことは……」
リウムはサフラにそんなことはないと言おうとするが、リウムが口を出すより先にサフラは言う。
「だから。今から飲みに行こう」
「…………え?」
リウムはその突然の言葉に驚いた。そのリウムに理解する暇を与えずサフラは喋る。
「俺はお前に伝えられた事しか分からないが、酒を飲んだ時の俺は感情的になるんだろう? だったら俺が酔っているときに言っているのは何か打算があるわけじゃない、俺の事を知って貰うのに一番だと思う。」
「まさか……」
何を言おうとしているのかリウムは察する。
「俺は今からリウム。君と出会った時と同じ量の酒を飲む。その俺に質問をするといい。その質問の答えは本当の事のはずだ。」
「……また二日酔いになるよ?」
「確かにまた二日酔いになるかもしれないが、リウムと仲良くなるなら安いと思う。」
リウムはサフラの目を見つめる。その目を見ると分かったのだ、その言葉に嘘偽りはないと。本当になんでもないと思っているのだと。
「……そっか」
「あぁ、だから今から酒場に行くぞ。今ならまだ客も少ないはずだ」
そう言うとサフラは酒場に向かって歩き始める。その背中を追っていき、後ろから話しかける。
「私、お酒飲んだことないんだよね」
そう言うリウムにサフラは驚き、後ろを向く。
「……リウムも飲むのか?」
「えぇ! 私はお酒飲んじゃ駄目なの?」
「いや……リウムが酔ったら誰が質問するんだ」
そう言われるとリウムはサフラの前に出る。その顔はサフラからは見えない。
「もう大丈夫だよ。今はとりあえず二人で楽しもうよ!」
「……リウムがいいならいいが……」
サフラはリウムがいいと言ったのを聞いて、一旦はリウムの意思を尊重する事にした。二人は並んで歩き、他愛ない話をしながら酒場に向かっていった。
「お前らみたいなガキが入れるわけねぇだろ! さっさと家に帰んな」
勢いよく扉が閉まる。その扉の前でサフラとリウムは立ち尽くす。
「…………………………」
「……やっぱりサフラって意外とドジだよね」
ギルド内、サフラ達と別れた受付嬢は仕事をキリの良いところで終わらせ、休憩する。そんな彼女の頭にある事が浮かんでいたそれは二人の少年少女についてだった。
「あの子達……冒険者やるのかなぁ……嫌だなぁ……」
受付嬢はあの二人の冒険者志望者の事を考える。冒険者という仕事は危険が多いそんな職業にあんな子ども達がなることに受付嬢は強い拒否を示す。しかし、一ギルド職員にはそんなことに口を出す権利はない。せめて少しでも危険がないように祈ることしか出来ない。
その様に考える横で彼女はもう一つ考えなければならないことがあった。それは少女が少年に呼び掛けた際に言っていた名前だ。
『サフラ!? 大丈夫!?』
「サフラって、今朝張り出された指名手配書に書かれてる人と同じ名前……」
その様に受付嬢は考えていた。なぜ同じ名前なのか。もしかして本人なのではないかそう考えてた。しかし。
「……まぁ、偶然かな。そもそも年齢からして違うし」
受付嬢はその思考を端に追いやった。仮にそうだとしても自身がやるべき事ではないとして、受付嬢は目の前の仕事に取り掛かり始めたのだった。
ありし日のサフラとラニ
「友達作るにはまず相手の事を知ることが大事ですよ」
「いらない」