送り狼なへーか   作:輝波斗

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第1話

 夜道を歩くのはとっても危険。

 足元が見えなくて転んでしまうかもしれません。曲がり角から出てきた誰かとぶつかるかもしれません。

 

……………………何かが、後ろをついてきているかもしれません………。

 

―――――――――――

 

 とあるお家にお迎えされたふわふわたちは、毎日お外で頑張る家主の人間がとっても心配。

 だって、毎日疲れて遅い時間に帰ってくるのです。ふわふわたちには、「怪我をしないように遊ぶんだよ」「暗くなる前にお家に帰ってきてね」というくせに!

 どうやったら家主も暗くなる前に帰ってきてくれるかな。

 家主について行って守ってあげたいけれど、家主と一緒に行ったら暗くなる前には帰れません。

 とってもいい子なふわふわたちは頭を悩ませます。

 どうやったら家主とのお約束を守って、家主の安全を守れるのかな。

 光のふわふわ戦士達が一生懸命悩むのを、黒いふわふわがじっと見つめていました。

 

―――――――――――――

 

 今日も家主は頑張ってお仕事。

 帰ったらふわふわたちがお出迎えしてくれて、一緒にご飯を食べて、お風呂は嫌がられて、寝るときもふわふわおしくらまんじゅうで眠ります。

 お休みの日はふわふわたちとゆっくりしたり、お出かけしたり。

 そんな毎日のために頑張ってお仕事をするのです。

 ふわふわはとってもいいこと。とっても幸せ。

 家主はお家に帰ってきたらニコニコです。

 でも、最近なんだか気になることが……。

 お家に帰るために暗い道を帰っていると、じーっと誰かに見られているような気がするのです。

 嫌な感じはしないのだけれど、じーっと、じーっと見られています。

 今も足元に黒いものが走ってくるのが見えたような気がします。

 猫?と思うのですが、近くにそれらしい猫はいません。

 気のせいかな?

 

――――――――――――――――

 

 まったく。

 あいつらはいい子ちゃんだからこんな簡単なこともできないんだな。おれさまは悪い子だから暗くなっても外に出たい時に出るんだ。

 家主も家主だ、おれさまがどけてやらなかったら石ころを踏んでいたんだぞ、もっと気をつけて歩け。

 このおれさまの世話をするのにうっかり怪我をしてる暇なんかないんだからな。

 

 黒いふわふわが物陰でプンスコしていることは、誰も知らないのです。

 

――――――――――――――――

 

 今日も家主は暗くなるまで頑張ってお仕事。帰ったらふわふわたちがニコニコでお出迎えしてくれるので早く帰るために頑張ります。

 今日もふわふわたちは家主に早く帰ってきてもらうための作戦会議。だってふわふわたちと一緒にいると家主はニコニコ。暗いお外にいるより、ふわふわたちと一緒にいるほうが家も楽しいに決まっているのです。

 どうする?どうする?と、だんだん暗くなるお空を見ながらみんなで相談。家主はまだ帰ってきません。

 暗くなっちゃうよ、どうしよう?窓の外を見ながらソワソワするふわふわたちを尻目に、黒いふわふわがそっとお外に出ていきました。

 暗くなる前に家主の傍に行ってあげ……いやいや、暗くなってからのお散歩という悪いことを楽しむためなのです。

 さて、散歩ついでに家主を探してやらないと。

 お散歩コースを進んでいけば、そのうち家主が見えてきます。

 ふわふわはお目々もとってもいいので、あっという間に見つけるのです。

 家主の後ろをそーっとついて、足元の石ころを蹴飛ばし、飛んできた虫を追っ払い、車や自転車に気をつけ。やることはいっぱい。黒いふわふわは家主に見つからないようにたくさんのことをしているのでとっても大忙しです。

 なんで見つからないようにしてるかって?

 暗い中を外にいることがバレて世話係の家主にごちゃごちゃ言われてしまうし、言い終わってからは「心配してくれたの」と言われるのが目に見えているし、他のふわふわに知られればいろいろな意味で面倒くさくなるのがわかっているからです。

 心配なんてしていません。へーかほどのへーかともなれば、世話係の心配なんて全然していないのです。

 だというのに、まったく、どいつもこいつもおれさまに文句を言うなんて!

 プンスコプンスコしながら家主の後ろをついて行くお散歩を続けます。

 ところで、それだけ視線を感じれば、家主だって後ろを振り返ったりもします。

 そんなときは、さっと隠れるのがベストなのですが、へーかほどのへーかともなれば、相手が誰であっても隠れるなんてプライドが許しません。

 なので、家主が振り返ろうとすると、ふわふわもふもふのまぁるいお手々で家主のほっぺたを一発、もふんっ!と叩いて前を向かせるのです。

 夜道は前をしっかり見て歩かないと危ないので、もふもふへーかパンチは仕方のないことなのです。

 後ろを振り向いたり、転んでしまったら(もふもふへーかパンチで)襲われる。とっても怖い送り狼なへーかなのでした。

 

 ふわふわとふわふわし慣れている家主が、ついてきているのはふわふわだと気づいているのは内緒の話。もふもふへーかパンチは仕事で疲れた家主にとっても効くので、たまにわざと振り返っていることも内緒の話なのです。

 

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