たまには違う武器を扱ってみたいと、ふと思った。
普段使っている愛刀に不満はないけれど、他のオペレーターが扱っているいろいろな機能がついた武器を目にしたら、つい俺も使ってみたくなってなったのだ。
エンジニア部へ行けば、何か面白そうな武器でも見つかるかもしれない。今日は任務もないし、試しに借りた武器で訓練でもしようか。
軽い足取りでとエンジニア部へと向かう。すると廊下で大きな段ボールを抱えて運ぶ女の子に出くわした。どこかで見かけたような気もするけれど、名前まではわからない。
種族の特徴がわかりそうな耳も尻尾、光輪も見えないということは、おそらくエーギルだろうか。エーギルには外見的な特徴が少ないオペレーターが多いから。
それにしても、荷物を運んでいる子はあまり腕力がないようだ。時々ふらついて通路の壁にぶつかりそうになっている。手を貸してあげたようがいいかもしれない。
「その荷物、よかったら持とうか?」
女の子が立ち止まる。振り返った顔はどちらかというと困惑しているように見えた。
「……大丈夫です。他の人に触ってほしくないので」
少し
荷物を持った子を追い越していく。何となく気になって、背後には注意を払っていたのだが――。
「きゃっ」
小さい悲鳴、靴底が床とこすれる甲高い音。荷物を持ったさっきの子が床につまずいてバランスを崩していた。
とっさに身をひるがえす。両手で荷物を持ったままでは受け身もとれず、ケガをしてしまうかもしれない。
右手で荷物を支えるとそれほど重くはなかった。それから空いている左手で女の子の腕をつかむ。彼女が床に直撃するのはなんとか免れた。
我ながらファインプレーだ、なんて思っていたのだけれど。
「触らないで!」
予想もしない大声。すごい形相でつかんでいた手を振り払われた。助けてあげたのにその反応は何なんだ、と思ったけれど口に出す余裕もなかった。
「あっ……ごめんなさい、私、その……あまり人に触られるのに、慣れてなくて」
ぎこちなく彼女は謝罪した。彼女自身もまた、自分が思ったよりも大きな声を出してしまったことに驚いているように見える。
「……そうか。ところでこの荷物はどこへ運んだらいい」
どうやら行き先は同じエンジニア部とのこと。この流れなら、荷物を運んであげるのが自然だろう。正直あまり気が進まないけれども。
道すがら、特に彼女とは言葉を交わすこともなく。エンジニア部に着いて荷物を下ろすとそそくさと立ち去ることにした。
「おや、君はウィーディの知り合い?」
エンジニア部から出ようとしたところで声をかけてきたのは、クロージャだった。ウィーディ、とはさっき荷物を持っていた子のことか。そういえばさっきはお互い名前も名乗っていなかったな。
「いえ、ここに来る途中で出くわしただけで。荷物を持って転びそうになってたところを、たまたま助けたんですけど……」
「そっか。ところでヘンな事聞いてもいいかな。あの子、もしかして君になんか失礼なことしたりしてないよね」
クロージャはこちらの様子をうかがうような、気づかわしげな視線を向ける。ウィーディのことで気になることでもあるのだろうか。
「荷物を持って転びそうになっていたのをとっさに支えたんです。そうしたら叫ばれちゃいましたよ。俺に触られるのを嫌がってるようでしたが」
あちゃー、とクロージャは額をおさえた。何か思うところがあるらしい。
「……彼女はね、相当な潔癖症なんだよ。研究熱心だし、悪い子ではないんだけど」
「潔癖症というのは、もしかして鉱石病と関係あるんですかね」
鉱石病の感染を恐れるがあまり、他人との接触を嫌っているのだろうか。俺はそんなことを考えてしまっていた。
「まさか、ロドスの職員が鉱石病を毛嫌いするわけないでしょ。あの子が潔癖症なのは生まれつき身体が弱かったせいなんだよ。幼いころから、ずっと汚染や感染に気を付けて育ったんだろうね」
「そうですか。鉱石病と関係ないなら、まあいいですけど……」
とはいえ、助けたところに「触るな」と言われたのは正直ショックだった。まあいい、同じロドスの暮らす同僚に対して腹を立てても仕方ない。
けれども腹が立っているのもまた事実。生まれもっての体質のせいだとしても、汚いもの扱いされるのは気分が悪い。気にしないようにとは思っているけれど、気にしないようと思うほどやはり気になってしまう。
なんとなくもやもやとした気分を抱えたまま、重い足取りでエンジニア部を後にした。本当は面白そうな武器を見せてもらうつもりだったんけど、もうそんな気にもなれない。
あのウィーディという子もエンジニア部所属だという。だから無意識のうちにそこから早く離れたかったのかもしれない。しばらくはエンジニア部にはなんとなく行きづらくなりそうだ。
ひと気のない通路の一角に、自販機とベンチがあった。コーヒーを買って腰を下ろし、ふうっとため息をつく。新しい武器を試すこともできなかったうえに、通りすがりの潔癖症のオペレーターに難癖をつけられたときた。
さて、このやり場のないイライラをどうやって処理してやろうか、なんて考えて。
――潔癖症の子を汚すのはどんな気分なんだろうなあ。
むくむく、とそんな邪悪な考えがふと湧き上がってしまった。同僚でそんな妄想をするなんて最低だ。
でも、さっき嫌な思いをさせられた仕返しだと思えば、許されるんじゃないだろうか?頭の中で妄想するだけなんだ。仕返しといっても、誰にも迷惑かからないじゃないか。
――なら、いいか。
ウィーディは簡単に制圧できるだろう。それほど重くない荷物を持ってふらつくくらいだ、間違いなく腕力ならこちらの方が上に違いない。
彼女の細い手首を乱暴につかんで壁に押し付ける。触らないで、と言われても構いやしない。動けない状態で無理やりキスしてやる。
「な……何をするの!? 汚いでしょっ」
潔癖症の彼女にとっては耐えられない屈辱だろうな。抵抗はするけれど、大した力じゃない。簡単に押さえつけられる。
それから邪魔な服をはぎ取る。無理やり力を加えてやれば、彼女の上着のファスナーはあっさりとはじけ飛ぶ。
「いやぁぁ!」
華奢な肢体があらわになって、彼女は恥ずかしさで悲鳴を上げる。叫んでも無駄だ。どうせ誰も助けには来ないのだ。
つつましい大きさのバストを覆い隠している、シンプルで可愛いらしいブラジャー。丁寧にホックを外したりなんかしない。力づくで引きちぎる。
「う、うそでしょ……なんで、こんなことするのっ」
恐怖で抵抗する気力も萎えてしまったのか、彼女はその場にぺたんと座り込んでしまった。
仁王立ちで彼女を見下ろす。おもむろにズボンのチャックを空けて45ミリ都市防衛副砲を取り出した。
彼女の表情が恐怖と嫌悪にゆがむ。無理もないだろう。手が触れるだけでも嫌がるほどの潔癖症なのに、こんな汚いものを間近で見せつけられているのだから。
咥えろ、と端的に命令する。
彼女は涙目になりながらも首を横に振る。少しでも濡らしておいたほうが痛くないぞ、と言っても彼女は動こうとはしなかった。
まあいい。ならこのまま
シミやアザもない綺麗な脚を無理やり割り開く。彼女が身に着けている布の、最後の一枚。ショーツに手をかけた。
さすがに秘所をさらされるのは本気で嫌なのか、ウィーディは俺を叩いて抵抗する。怪我をしたいのか、と少しドスをきかせてやると抵抗はぴたりと収まった。
太ももをすべらせるようにショーツを下ろす。もはや彼女は涙を流すだけで、抵抗らしい抵抗もなかった。
どうやら彼女は上半身が華奢なわりに、下半身は肉付きがいいらしい。むっちりとした太ももが欲望を駆り立てる。秘所を見られるのはやはり嫌なのか、必死に手で隠そうとしているのが健気でたまらない。
手をどかせ、と命令する。殴るフリだけ見せると彼女はおずおずと手をどけた。あらわになったのはひとすじの割れ目。処理しているのか天然なのかはわからないが、まったく毛は生えていない。それも清潔を保つためなのだろうか?
まあ、関係ない。どうせこれから俺が汚してしまうんだから。
「やめて……お願い、それ以上は……」
彼女の股を強引に割り開く。こっちはもうさっきから臨戦態勢だ。
俺は猛り狂った45ミリ都市防衛副砲をねじ込み――。
「――いや、最低だな俺!」
同僚でスケベな妄想とか、本当に人として終わっている。ましてやかなり無理やりなシチュエーションだったし。嫌な思いをさせられた意趣返しだとはいえ、さすがにこれはダメだ。
無駄に悶々としているうちに、身体が熱くなっていることに気が付いた。アーツを使った後と同じ感覚に似ている。ということはアーツを使った副作用と同じ現象が出ているかもしれない。
すぐに部屋に戻って着替えたほうがよさそうだ。今の状態でもし女性オペレーターに近づかれたら、ナニかが起こってしまう可能性が十分にあるから。
「……最低、って何のこと?」
「うわっ」
いきなり声をかけてきたのはウィーディだった。いつの間にか俺の座っているベンチの方に向かってきていたようだ。よりにもよって彼女と出くわすとは。俺のアーツの副作用がエーギルの彼女にも作用するのかはわからないけれど、ここは距離をとった方がよさそうだ。
「離れてくれ、今の俺には近寄るな」
あと3,4メートルのところまで来たウィーディは足を止める。すると彼女は表情を曇らせ、おずおずと視線をこちらに向けた。
「……何もそんな言い方しなくてもいいじゃない、本当にさっきは悪かったって思ってるのよ。助けてくれたのに、その……ひどいことを言ってしまったから」
弱々しい声。どうやら転びそうなところを助けた時のことを言っているのか。確かにあの時ウィーディに「触らないで」と言われたことはショックだったけれど、別に俺は仕返しのつもりで「近寄るな」と言ったわけではないのだ。
とはいえアーツの副作用のことを説明するのも気が引ける。彼女は潔癖症で性格がキツそうだし、セクハラで訴えられそうな気がした。
「お詫びにと思って、その……私が精製したミネラルウォーター。よかったら、飲んで」
ボトルを持って近づこうとする彼女をあわてて制する。それ以上近づかれるとまずい。俺のアーツの副作用が効いてしまうかもしれない。
お詫びの品を受け取ってもらえないことにショックを受けたのか、ウィーディは泣きそうに眉をひそめた。これでは俺が彼女をいじめているみたいじゃないか。
「大丈夫だ、あの時のことはもう気にしてないから。気持ちだけもらっておくよ。どう説明したらいいかな……俺はアーツを使うと、周りによくない影響を与えてしまうことがあるんだ。だから少し離れた方がいい」
「こんなところでアーツを使っていたの?」
「あ、うん」
嘘です、アーツなんて使ってません。スケベなことを考えていました。しかも目の前にいるウィーディで。
とはいえ、ボトルを持ったまましょんぼりしている彼女を見ていると心が痛む。なるべく近寄らない方がいいけれど、ボトルを受けるくらいなら大丈夫か。その後すぐに立ち去ればいいんだ。
「お願い……受け取って」
「じゃあ、いただくよ」
すがるようなウィーディの視線に罪悪感を覚えつつボトルを受け取る。そそくさと立ち去ろうとした瞬間、ウィーディは何かに気づいたようだった。
「何かしら……香水?」
すんすんとウィーディが鼻を鳴らす。あ――これは、ちょっとヤバいかも。俺のアーツの副作用をモロにくらってしまう。
「じゃ、じゃあ俺はこれで」
「待って。なんだか妙に身体が熱い……。この匂いは何だろう、神経系に作用するものかしら」
「さ、さあ? 俺にもよくわからないんだ。とにかく俺は部屋に戻るからっ」
がしっ、と手首をつかまれる。振りほどこうにもびくともしない。おかしいな、ウィーディってこんなに腕力が強かっただろうか。というか潔癖症なのに俺の腕をつかんで大丈夫なのか。
「私のラボにいっしょに来て……今なら誰もいないから」
「ラ、ラボなんかでナニをするつもりなんだい?」
「決まってるでしょ、あなたの身体をすみずみまで調べるのよ。匂いの原因を特定しないと。貴方の身体を直接触れるのは気が引けるけど……抗菌石鹸で全身を洗えばイケるかしら。ああ、でもそうしたら匂いのサンプルが取れなくなっちゃうかも」
「ちょっと落ち着いて。君は直接他の人に触れるのは苦手なんだよね」
「私は自分でも潔癖症だってわかってる。でも……」
ウィーディはほんのりと顔を赤らめる。こんな差し迫った状況じゃなければ、素直に可愛いと思える表情なんだけれど。
「あのね、私だってそういう欲求がないってわけじゃないないから。でも今までは薬で抑えてた。でも、もう……抑える必要なんてないよね?」
「いや、ちょっと落ちつこうか」
「うん、落ちつくためにあなたを連れて行くのよ」
ひきずられるようにラボへと連れられていく。手首がもげそうだ。もしかしてエーギルの子って意外と狂暴なんだろうか。
まるで食肉加工場へ連れていかれる駄獣になった気分だ。たぶん俺は食べられてしまうんだろう、いろんな意味で。
ラボに連れ込まれてナニをされたか詳細は省くけれど――今までそういった欲求を押さえていた反動だろうか。解放された彼女はとどまることを知らず。ウィーディの体力が尽きるまでずっと相手をさせたれたわけだけれど、まさかこちらの体力の方が先に尽きるとは思わなかった。
ちなみに――ウィーディと関係を持ってしまってから小さな変化があった。自室に戻ると、必ずドアの前にミネラルウォーターのボトルが置いてあるのだ。
贈り主は言うまでもない。そのボトルは、以前ウィーディからもらったミネラルウォーターのボトルとまったく同じものだったから。
わざわざ毎日そんなことをしてもらうのも申し訳ない、とやんわりと断ろうとしたこともある。けれどもその申し出を受け入れてはもらえなかった。
「そのボトルに入った水は私だと思って飲んで。それと……他の子と関係を持つのはやめてほしいかな。だって、衛生的じゃないもの」
透き通ったボトルの水と裏腹に、ウィーディの目はなぜだか濁って見えた。今でも、いつの間にかドアの前にはいつも液体の入ったボトルが置かれている。
本当にただの水かどうかは――今でも、わからないままだ。
ちょっと生意気そうな言動をする子を曇らせるのっていいですよね。
ついに10人の大台に乗ったね!複数のパートナーを持つのがよくある独自設定にしていますが、いつ刺されてもおかしくなさそう。
次回はケルシー先生でお送りする予定です。