モブオペでひたすら妄想を垂れ流す:ヴァルポ編 作:へまるてぃ
ススーロは医療部のシフトに入っていた。今日のシフトは軽度の感染者の処置、および緊急時は負傷者受け入れサポート。
もし端末にホットラインが入れば、すぐに救命処置に向かわなければいけない。症状の比較的軽い患者と談笑しつつも、緊張感は保つようにしていた。
いつだって備えはしておかないといけない。それが医者としての責務なのだから。そう自分に言い聞かせながら、男の子の皮膚にある原石を診察していた。
「大丈夫、症状は落ち着いているよ。このまま治療を続けていけば――」
電子音が穏やかな時間を切り裂いた。
診察していた男の子の患者が怯えた表情を浮かべる。ホットラインの着信は音量が最大に設定してあるから、いきなり大きな音がして驚いたに違いない。
「びっくりさせてごめん。ケガをした患者さんが待ってるから、行かなくちゃ」
泣きそうな男の子の視線。それを振り切って立ち去るのは心が痛むけれど――仕方ない。これもまた医者の責務だと、自分に言い聞かせて救命室へ向かった。
「ストレッチャー入ります!」
「ススーロ先生、こちらの患者さんをお願いします!」
救命室は修羅場となっていた。なんとか歩ける患者、頭から出血している患者、ストレッチャーの上でぐったりしている患者。そこそこ大きな規模の戦闘があったのだろう。
医療オペレーターが慌ただしく動いている中、私はストレッチャーに横たわる男性患者に駆け寄った。
「患者の状況は!?」
「意識はないですが心拍は大丈夫です。至近距離でアーツが炸裂したそうで、両腕と腹部の皮膚の損傷が激しくてっ」
「それなら私のアーツで治療できるよ。ここは私に任せて」
「ススーロ先生、よろしくお願いします。それでは他の負傷者の処置に向かいますので」
患者を搬送してきた男性オペレーターは患者をストレッチャーから処置室のベッドに移し、すぐに出て行った。
治療を始める前に端末を立ち上げる。患者のIDカードを読み取り、表示された情報にざっと目を通した。
【コードネーム】ハイゼ
【性別】男
【健康診断】造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。
循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。
以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。
【源石融合率】 0%
【血液中源石密度】 0.1u/L原石との接触は少ないと見られる
「えっ、この人があのハイゼさん!?」
驚いて思わず声を上げてしまう。以前ヴァーミルから聞いていた人物が、まさか目の前に急患として運ばれてくるなんて。
そういえば、ヴァーミルから聞いていた情報もある。
ハイゼがアーツを使用すると、周囲にいる女性オペレーターの発情を促すこと。ふざけた話だが、ロドスの端末にもそれを匂わせる記載があったから間違いないのだろう。
それともう一つ。
ヴァーミルいわく――アレがものすごく大きいとのこと。
その話を思い出すと、ベッドに横たわるハイゼの下半身につい視線がいってしまう。
だめだめ、治療に集中しないとっ。
ぴしゃり、と自分の顔をたたいて雑念を振り払おうとした。
にもかかわらず、なんだか妙に顔が火照る。お腹の奥がじんじんと熱を持っている感じがする。
まさか、発情してる? 運び込まれた患者相手に?
そんなの医者としてダメでしょ。おかしい、発情の周期はある程度コントロールできているのに。いきなり発情期が来るなんて普通ならありえない。
発情期はまだしばらく先のはずなのに……おかしいな。
そうか、ハイゼがアーツを使用した副作用か。ここに運び込まれる前、戦闘でアーツを使用していたんだ。さっきから体が熱っぽいのは、彼のアーツの副作用のせいに違いない。
前にヴァーミルと話した時に、ハイゼがアーツを使用すると近くにいる女性を発情させると聞いていたけれど。こうして自分の身をもって体験するまでは、本当にそんなことがあるんだろうかと正直不思議に思っていた。
思い返せば、彼を搬送してきたのは男性オペレーターだった。ハイゼの副作用は女性にしか効果がないらしいから、異変に気付かなかったのだろう。
とにかく、まずは治療だ。
近距離でアーツが炸裂したせいで、両腕の皮膚は焼けだれている。重度の熱傷ならすぐに処置をしないと危険だ。
アーツロッドに意識を集中させる。発情からくる下腹部の疼きのせいでうまく集中できなくて、いつもよりアーツの発動に時間がかかってしまう。
集中を切らすな。目の前には傷ついた患者がいるんだ。
そう自分に檄を飛ばし、アーツロッドを握る手に力をこめた。アーツロッドから放出された淡い光がハイゼの身体を包み込む。
両腕の損傷がうまく治らなかったら、きっと日常生活にも支障が出るだろう。絶対に治療してやるんだ。
もう何十回アーツを発動させたかわからなくなってきた。集中しすぎたせいで呼吸すら忘れていたかもしれない。なんだか視界がぼやけてきた。
「ふぅっ……なんとか、終わった……」
アーツを酷使したせいで、脚から力が抜けてしまいそうになる。アーツロッドを杖がわりにして何とか体を支えた。
どうやら他の患者の処置もピークは過ぎたらしい。落ち着きを取り戻しつつある処置室で息を整え、私は残りの手当てをなんとか終わらせた。
「お疲れさまです、ススーロ先生。少し休んでくださいね。……大丈夫ですか? なんだか顔が赤いですよ」
「あ、ありがとう。大丈夫だよ」
ハイゼは大部屋の病室に移された。他のベッドにも患者はいるが、カーテンで仕切れば一応周囲からは見えなくなる。
男性の医療オペレーターから冷えたペットボトルを受け取り、喉をうるおす。冷たい水が火照った身体に染みわたっていった。
「後の処置は、私が代わりましょうか。バイタルも安定していますし」
男性オペレーターの申し出に、どう返答しようか一瞬迷った。この人はハイゼのアーツ使用の副作用のことを知っているのかもしれない。だから女性よりも自分が処置した方がいいだろう、と心配してくれているような気もする。
「ありがとう、でも……もう少し様子を見てるよ。できれば、意識が戻ったら私から処置について説明したいし」
「わかりました。お疲れでしょうし、無理はしないでくださいね」
男性オペレーターが立ち去ってから、カーテンを閉める。
区切られた空間には、患者であるハイゼと私のふたりきり。彼はまだ眠ったままだ。大部屋には他の患者もいるけれど、みんな眠っているのか物音はまったくしない。
つい、視線がハイゼの下半身に移ってしまう。かけられたシーツの上からでも、
手首くらいの太さがある、ってヴァーミルは言っていた。それなら痛くて
でも、どうしても繋がりたいというなら――もう一つ手段はある。
お尻なら入るんじゃないかな?
我ながらバカなことを考えてるって思うよ。でもしょうがないよ、アーツを使いすぎてちょっとテンションがおかしいんだ。
前にちょっとした興味で、成人向けの雑誌で読んだことがあったなあ。お尻もちゃんと準備をしてうまくやれば、すごく気持ちがいいんだって。
お尻から数センチ入った直腸内部には、ヒューストン弁というヒダみたいなものがある。お尻に20センチほど挿入すれば、直腸が折れ曲がってS字結腸につながっている部分にたどり着く。
そこを開発すれば、今まで体験したことない不思議な快感を得られるらしい。
お尻を刺激される快感も、膣を刺激される快感も、同じ骨盤神経を通って脳までたどり着くそうだ。もちろん個人差はあるだろうけれど、それならきっとお尻でも気持ちよくなれそうだ。
私はそもそも男性経験が少ないし、お尻で……なんて試したことすらない。でも、いったいどんな感じなんだろう。ハイゼさんのなら、もしかした直腸の奥まで届くかも。
私のお尻にそんな太いものが入るんだろうか。おなかの奥を突き上げられたら、私はどうなってしまうんだろうか。
ヴァーミルに勧める前に、まず自分の身体で試したほうがいいんじゃないだろうか。これは安全を確かめるためだから。患者の安全のためなんだから、しょうがないじゃないか。
ごくり、と唾をのむ。つい気持ちが高ぶってしまい、下着の中に手を入れた。
声を殺しながらくちゅくちゅと指をくねらせる。こんな風に自分でするなんて、いつ以来だろう。普段は発情しても薬で抑えてしまっていたから。
「……最低だ、私って」
浮かれた熱が少しだけ冷めて、我に返って。罪悪感と疲労が身体の奥からわき上がってくる。
医者としてありえない。自分が処置した患者のすぐそばで、こんな事をするなんて。 とりあえず、部屋に戻って下着を変えないと。
まあでも、一応。
お尻でする方法もある、というのは一応ヴァーミルにも教えておこうかな。
次はジュナーの予定です