見た目は仮面ライダーデモンズだけど親愛なる隣人スパイダーマンでやります 作:hachi hachi
ゴッデス部隊には、地上基地とは別にもう一つの巨大な拠点が存在していた。
その名は――「勝利の翼号」。
世界各地を飛び回る、人類連合軍の巨大航空戦力。
四隅には巨大な垂直飛行用プロペラ。中央部には航空機を発艦させる長大な滑走路。右舷にはブリッジがそびえ、その周囲を各種対空兵器が固めている。
そしてブリッジ付近には、艦の象徴ともいえる巨大なエネルギー兵器。
飛行船というより、まさに空飛ぶ空母だった。
ラプチャー側のストームブリンガーによって人類が制空権を失った現在でも、この艦だけはゴッデス部隊を乗せ、危険な空を飛び続けている。
設計にはスノーホワイトも携わり、人類連合軍とV.T.C.が共同で建造した。
そして今日も――その巨大な艦内から鈍い衝撃音が響いていた。
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勝利の翼号・訓練区画。
スパイダーマンとリリーバイスが向かい合っていた。
リリーバイス「準備はいい?」
スパイダーマン「いつでも!」
ユウトが構える。
リリーバイスは笑顔のまま拳を構えた。
リリーバイス「それじゃあ――始めようか」
直後。
スパイダーマン「――っ!」
ユウトのスパイダーセンスが危険を告げる。
反射的に頭を下げた。
ブォンッ!!
頭上をリリーバイスの拳が通過する。
スパイダーマン「速っ……!」
リリーバイス「前より反応が良くなってるね」
スパイダーマン「スノーにスーツを改良してもらったからね!」
ユウトが後ろへ跳躍。
手首を向ける。
スパイダーマン「ウェブ!」
シュッ!
リリーバイスの足元へウェブが付着する。
スパイダーマン「これで――」
しかし。
ブチッ!
スパイダーマン「えっ」
リリーバイスが力だけで引きちぎった。
スパイダーマン「やっぱりそうなるよね!」
リリーバイス「ふふっ」
⸻
別室。
大型モニターには二人の訓練映像が映されていた。
指揮官をはじめ、スノーホワイト、ドロシー、ラプンツェル、レッドフード、そして新たに加入した紅蓮が見守っている。
スノーホワイトは端末へデータを入力していた。
スノーホワイト「回避速度が前回より上昇しています。スーツの補助機構も正常です」
レッドフード「おちびちゃん、また改造するつもりか?」
スノーホワイト「おちびちゃんではありません!」
レッドフードが笑う。
レッドフード「悪い悪い、スノー」
紅蓮だけは会話に加わらなかった。
鋭い目でユウトを見続けている。
紅蓮「……」
以前、紅蓮は言った。
弱い者に興味はない。
そしてユウトを、ゴッデスに混ざった奇妙な人間としか見ていなかった。
だが。
紅蓮「……妙だな」
ドロシー「何がですか?」
紅蓮「奴の動きだ」
紅蓮がモニターを指差す。
紅蓮「人間の反射速度ではない」
指揮官が少し笑う。
指揮官「やっと気づいたか」
紅蓮「……何?」
指揮官「あいつは普通の人間じゃないぞ」
紅蓮は再び画面を見る。
その瞬間――。
ユウトがリリーバイスの背後を取った。
スパイダーマン(今!)
拳を放つ。
だが。
ガシッ!
スパイダーマン「え?」
腕を掴まれる。
リリーバイス「いいところまで来たね」
スパイダーマン「まさか――」
リリーバイス「でも、まだ甘いかな」
リリーバイスはユウトを引き寄せ――
スパイダーマン「うわっ!?」
ドンッ!!
床へ倒す。
さらに素早く体勢を入れ替え、そのままユウトを押さえ込んだ。
スパイダーマン「……参った」
リリーバイス「はい。私の勝ち」
訓練終了。
紅蓮は無言だった。
しかしその目は、以前とは明らかに違っていた。
訓練後。
紅蓮は一人で映像を再生していた。
ユウトが避ける。
巻き戻す。
もう一度。
避ける。
巻き戻す。
紅蓮「……」
さらに速度を落とす。
リリーバイスが動く直前に、ユウトが反応している。
紅蓮「見てから避けているのではない……?」
もう一度。
紅蓮「攻撃される前から危険を察知しているような……」
紅蓮は目を細めた。
紅蓮「スパイダーマン……」
いつしか警戒心とは別の感情が芽生えていた。
興味。
紅蓮「貴様……何者だ?」
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二週間後
警報が勝利の翼号に響いた。
『市街地に多数のラプチャー出現!』
ブリッジで指揮官が立ち上がる。
指揮官「勝利の翼号を市街地付近まで接近させろ!」
艦が旋回する。
眼下には炎上する街。
逃げ惑う人々。
ゴッデス部隊が発進準備を始める。
ところが――。
スパイダーマン「じゃあ、先に行ってる!」
ユウトが格納庫の端へ走った。
指揮官が振り返る。
指揮官「おい、待て。何を――」
ユウトはそのまま飛び降りた。
指・リ・ド・ラ・ス・レ・紅「「「「「「「………………」」」」」」」
全員が固まった。
スノーホワイト「ユウト!?」
スノーホワイトが慌てて下を見る。
レッドフード「飛び降りやがった!」
レッドフードまで目を丸くする。
ラプンツェルが青ざめた。
ラプンツェル「だ、大丈夫なのですか!?」
紅蓮も思わず身を乗り出す。
紅蓮「正気か、あの男は!」
落下するユウト。
風がスーツを激しく叩く。
地面が急速に迫る。
だが――。
スパイダーマン「このくらいなら!」
方腕を伸ばす。
シュッ!!
ウェブが近くの高層ビルへ付着。
糸が張る。
ユウトの身体が弧を描いた。
一気に落下速度を利用して――
スイング。
スパイダーマン「行くよ!」
ビルとビルの間を飛び抜けていく。
指揮官は額を押さえた。
指揮官「……先に言ってから飛べ」
レッドフードは大笑いしていた。
ゴッデス部隊が到着する。
指揮官「散開!」
指揮官の号令。
銃声が響いた。
ドロシーが射撃。
ラプンツェルが援護。
スノーホワイトが狙撃。
レッドフードが豪快に敵陣を崩す。
そして紅蓮。
赤い刀身が閃く。
ズバッ!
ラプチャーが真っ二つになる。
紅蓮「次」
別方向では――
リリーバイスが拳を振り抜いた。
ドォォン!!
大型ラプチャーが吹き飛ぶ。
その時。
スノーホワイト「指揮官!」
スノーホワイトが叫んだ。
少し離れた路地。
一人の少女がいた。
白い髪。
手には――鉄パイプ。
少女の前にラプチャーが迫っている。
指揮官「民間人!?」
スノーホワイト「間に合わない!」
ラプチャーが武装を少女へ向ける。
少女は震えながら、それでも鉄パイプを構えた。
次の瞬間。
ガァン!!
少女「……?」
巨大なマンホールの蓋が横から飛来した。
ラプチャーの装甲へ突き刺さる。
そのまま敵が倒れた。
少女が顔を上げる。
空から一人の男が飛んでくる。
シュッ!
ウェブ。
スイング。
そして――着地。
スパイダーマン「大丈夫!?」
スパイダーマンだった。
少女は呆然とする。
少女「……あなたは?」
スパイダーマン「怪我してない?」
少女「……はい」
スパイダーマン「よかった」
ユウトはすぐ立ち上がる。
スパイダーマン「ここから離れて!」
少女「でも――」
スパイダーマン「大丈夫」
マスク越しに少女を見る。
スパイダーマン「僕が守る」
ユウトは走り出した。
地面に刺さったマンホールへウェブを撃つ。
シュッ!
スパイダーマン「来い!」
力いっぱい引っ張る。
マンホールが飛んでくる。
ユウトは跳躍。
空中で身体を三回転。
遠心力を乗せ――
スパイダーマン「それっ!」
投げる。
ギュンッ!!
一体。
ガァン!
二体。
ガァン!!
三体。
高速回転するマンホールが、並んでいたラプチャーを次々と貫通する。
最後には壁へ突き刺さった。
紅蓮「……」
紅蓮が戦いながら、その光景を見る。
人間離れした筋力。
反射速度。
空間認識能力。
そして何より――。
少女が襲われた瞬間、迷わず自分の戦闘位置を捨てて助けに向かった。
紅蓮は刀を振るう。
一体のラプチャーを斬り捨てる。
紅蓮「……弱者ではない」
小さく呟いた。
紅蓮「少なくとも、私が思っていたような男ではないようだ」
最後のラプチャーが倒れた。
スノーホワイト「周辺の敵影なし」
スノーホワイトが報告する。
指揮官が頷く。
指揮官「よし。勝利の翼号へ撤退するぞ」
リ・ド・ラ・ス・レ・紅・スパ「「「「「「「了解!」」」」」」」
その時だった。
少女「待って!」
先ほどの少女が走ってくる。
向かった先は――スパイダーマン。
少女「さっきは……ありがとうございました」
スパイダーマン「僕?」
少女は頷く。
少女「助けてくれて……」
ユウトは少し首を傾けた。
スパイダーマン「お礼なんていいよ」
少女「でも……」
スパイダーマン「人が危ないなら助ける、困ってる人がいたら助ける。僕にとっては、それが当たり前だから」
少女は何も言えなかった。
夕陽が街を照らす。
赤い光の中に立つスパイダーマン。
蜘蛛の巣を思わせる装甲が夕日に反射する。
少女は、その姿をじっと見つめ――。
少女「……美しい」
小さく呟いた。
スパイダーマン「え?」
少女「……何でもありません」
彼女は微笑んだ。
この時。
ユウトはまだ知らなかった。
この少女がやがて――
オールドテイルズ部隊の「シンデレラ」となることを。
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その夜――勝利の翼号
艦内の一角。
そこにはユウト専用の小さなラボが設けられていた。
同時に、彼の自室でもある。
ユウト「……出力が少し強すぎるかな」
ユウトは私服姿で椅子に座り、手首用ウェブシューターを調整していた。
通常ウェブ。
高速ウェブ。
電気ショックウェブ。
裂けるウェブ。
弾むウェブ。
ウェブグレネード。
切断ウェブ。
スノーホワイトと一緒に改良した大切な装備だ。
コンコン。
ユウト「はい?」
入口を見て、すぐお面を付ける。
紅蓮「……入るぞ」
紅蓮だった。
スパイダーマン「紅蓮?」
彼女はラボへ入る。
いつもの鋭い表情。
だが今日は、どこか違っていた。
スパイダーマン「どうしたの?」
紅蓮「話がある」
スパイダーマン「僕に?」
紅蓮「ああ」
紅蓮はしばらく黙っていた。
気の利いた言葉を探すような性格ではない。
だからこそ、率直に言った。
紅蓮「……謝罪する」
ユウトの手が止まる。
スパイダーマン「え?」
紅蓮「私はお前を侮っていた」
スパイダーマン「……」
紅蓮「人間でありながらゴッデスに紛れ込んだ、得体の知れない者だと思っていた」
紅蓮はユウトを見る。
紅蓮「弱者だともな」
スパイダーマン「まあ……最初は結構怖い顔で見られてたね」
紅蓮「否定はしない」
ユウトが少し笑う。
スパイダーマン「でも、もう気にしてないよ」
紅蓮「簡単に許すのだな」
スパイダーマン「だって、紅蓮は僕のこと知らなかったんだから」
紅蓮「……」
スパイダーマン「知らない相手を警戒するのは普通だよ」
紅蓮は意外そうにユウトを見る。
スパイダーマン「それに」
ユウトはウェブシューターを机へ置いた。
スパイダーマン「今は仲間なんでしょ?」
紅蓮「仲間……」
スパイダーマン「僕はそう思ってる」
紅蓮は黙った。
今日の戦場が脳裏によみがえる。
少女へ攻撃が迫った瞬間。
誰より早く飛び込んだ男。
報酬も求めず。
称賛も求めず。
助けることを当然と言った男。
紅蓮「……スパイダーマン」
スパイダーマン「うん?」
紅蓮「いや」
少し迷ってから紅蓮は言う。
紅蓮「ユウト、と呼んでも構わないか?」
ユウトは一瞬驚いた。
それから笑う。
スパイダーマン「基地や勝利の翼号の中だけならね」
紅蓮「そうか」
紅蓮の表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
紅蓮「ならば……ユウト」
スパイダーマン「何?」
紅蓮「いつか私とも手合わせをしろ」
スパイダーマン「えぇ……」
紅蓮「何だ、その反応は」
スパイダーマン「リリーとの訓練だけで毎回ボロボロなのに……」
紅蓮「私とは戦えないと言うのか?」
スパイダーマン「そんなこと言ってないよ!」
紅蓮「なら決まりだ」
スパイダーマン「勝手に決まった……」
紅蓮の口元に、ほんの僅かな笑みが浮かんだ。
ユウトも笑う。
スパイダーマン「分かったよ。今度ね」
紅蓮「ああ」
紅蓮は踵を返す。
しかし入口で一度だけ振り返った。
紅蓮「ユウト」
スパイダーマン「ん?」
紅蓮「今日は……見事だった」
スパイダーマン「ありがとう」
紅蓮「ではな」
扉が閉まる。
一人になったユウトは首を傾げた。
スパイダーマン「……仲良くなれた、ってことでいいのかな?」
そして廊下。
紅蓮は一人で歩いていた。
胸の奥に、今までの戦闘とは違う妙な高鳴りを感じる。
強者への興味。
仲間への信頼。
――それだけではない。
夕陽の中で少女を守った、あの背中。
紅蓮「……ユウト」
名前を口にすると、不思議と先ほどの姿が蘇った。
紅蓮は眉を寄せる。
紅蓮「……何なのだ、この感覚は」
まだ彼女自身にも分からない。
ただ一つ確かなことがあった。
紅蓮にとってスパイダーマンは、もはや警戒すべき「奇妙な人間」ではない。
そして同時に――
ユウトという一人の異性が、紅蓮の心の中へ入り始めていた。
スパイダーマンはスイングしてるのがカッコいいよね!
ヒロインするなら?パート2
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