見た目は仮面ライダーデモンズだけど親愛なる隣人スパイダーマンでやります 作:hachi hachi
楽しんで読んで頂きたいです!
――それから、さらに1年。
人類側ではニケの量産化技術が確立され、戦場へ投入されるニケの数も増え始めていた。
だが、戦争が終わったわけではない。
ラプチャーは依然として地上を支配している。
そんな戦争の最中でも――勝利の翼号には、束の間の日常があった。
◆ 勝利の翼号・食堂
スノーホワイト「いただきます!」
スノーホワイトの前には、明らかに一人分とは思えない量の料理が積み上がっていた。
肉料理。
パン。
スープ。
野菜。
さらにデザートまで確保してある。
スノーホワイトは黙々と食べ続けていた。
レッドフードが呆れた顔をする。
レッドフード「おちびちゃん……それ全部食うのか?」
スノーホワイト「おちびちゃんではありません」
モグモグ。
スノーホワイト「それと、全部食べます」
レッドフード「即答かよ」
スノーホワイト「訓練と戦闘にはエネルギーが必要です」
レッドフード「いや、限度ってもんが……」
スノーホワイト「レッドフード」
レッドフード「ん?」
スノーホワイト「私のお肉を見ないでください」
レッドフード「取らねぇよ!」
リリーバイスが楽しそうに笑った。
リリーバイス「スノーは今日も元気だね」
スノーホワイト「はい、リリーお姉ちゃん」
そこへ――。
スパイダーマン「空いてる?」
全員が振り返る。
私服姿のスパイダーマン。
ユウトだった。
ただし顔には、いつものお面。
レッドフードが自分とスノーホワイトの間を叩く。
レッドフード「ここ座れよ」
スノーホワイト「そこ狭くない?」
レッドフード「詰めりゃ入るって」
スノーホワイトも少し横へ動く。
スノーホワイト「どうぞ」
スパイダーマン「じゃあ……失礼します」
ユウトが二人の間に座る。
スパイダーマン「近いなぁ……」
レッドフード「気にすんな」
スノーホワイト「私は気にしません」
スパイダーマン「僕が気にするんだけど……」
ドロシーがくすっと笑った。
だが――。
ユウトは料理へ手を伸ばさなかった。
スパイダーマン「……」
何かを考えている。
スノーホワイトが気づく。
スノーホワイト「どうしました?」
スパイダーマン「いや……」
ユウトは皆を見る。
指揮官。
リリーバイス。
ドロシー。
ラプンツェル。
スノーホワイト。
レッドフード。
紅蓮。
ここまで何度も共に戦った仲間たち。
スパイダーマン「……決めた」
指揮官「何をだ?」
指揮官が尋ねる。
ユウトはお面へ手をかけた。
スパイダーマン「もう、みんなには隠さない」
数秒だけ迷う。
それから――。
ゆっくりとお面を外した。
ユウト「…………」
食堂が静まり返った。
現れたのは、まだ17歳ほどにしか見えない少年の顔。
レッドフードのスプーンが止まる。
ドロシーも目を見開く。
紅蓮まで固まった。
ラプンツェルは口元へ手を当てる。
リリーバイス「まあ……」
リリーバイスが瞬きをする。
リリーバイス「思ってたよりずっと若いね」
指揮官も驚く。
指揮官「お前……その顔で、本当に何十年も生きているのか?」
ユウト「うん」
指揮官「……とても見えんな」
ユウト「僕の身体は17歳で止まってるから」
その時。
レッドフードが横を見る。
レッドフード「……ん?」
スノーホワイトだけは普通に食事を続けている。
レッドフード「おい、スノー」
スノーホワイト「何ですか?」
レッドフード「なんでお前だけ驚いてねぇんだ?」
スノーホワイト「…………」
スノーホワイトの動きが止まった。
ユウト「……」
ユウトも彼女を見る。
レッドフード「スノー?」
スノーホワイト「……気のせいです」
レッドフード「いやいやいや」
レッドフードが身を乗り出す。
レッドフード「絶対もう知ってただろ!」
スノーホワイト「し、知りません」
レッドフード「目ぇ泳いでるぞ?」
スノーホワイト「知りません!」
スノーホワイトは顔を赤くして料理を食べ始めた。
ユウトは首を傾げる。
ユウト「……?」
彼はまだ知らない。
かつてスーツ改良の途中、眠っていた自分のお面をスノーホワイトがそっと外したことを。
やがてユウトは真剣な表情になった。
ユウト「みんなに話しておきたいことがある」
誰も茶化さなかった。
ユウト「僕が……どうしてスパイダーマンになったのか」
ユウトは自分の手を見る。
ユウト「始まりは、学校の行事だった」
会社の研究施設を見学する、ごく普通の校外学習。
そこで一匹の蜘蛛に噛まれた。
ユウト「その蜘蛛が、放射性物質の影響を受けていたんだ」
翌朝。
身体が変わっていた。
筋力。
反射神経。
壁に張り付く能力。
危険を察知する感覚。
ユウト「最初は……何が起きたのか分からなかった」
しかし、その日の夕方。
人生はさらに大きく変わった。
ユウト「叔父さんと叔母さんが乗っていた車が……爆発した」
笑っていたレッドフードの表情から笑みが消える。
スノーホワイトも食事の手を止めた。
ユウト「二人とも亡くなった」
スノーホワイト「……ユウト」
スノーホワイトが小さく名前を呼ぶ。
ユウト「その直後、僕はV.T.C.に捕まった」
ユウトは続ける。
気絶させられたこと。
地下研究所へ運ばれたこと。
肉体を不老にされたこと。
シスターの格好をしたアンヘルという人物によって、実験を繰り返されたこと。
そして――20年。
ユウト「ガラス張りの部屋でずっと暮らしてた」
紅蓮の表情が険しくなる。
紅蓮「……20年だと?」
ユウト「うん」
紅蓮「正気の沙汰ではないな」
ユウト「でも、一人じゃなかった」
ユウトは少しだけ笑った。
ユウト「マックスさんとオクタビアスさんがいたから」
同じ地下施設で実験対象にされていた二人。
三人で話した。
励まし合った。
脱出方法を考えた。
ユウト「二人は……僕の大切な友達だった」
そして20年後。
三人は脱出を決行した。
だが――。
ユウト「研究所を出る時に、二人とも亡くなった」
沈黙。
ラプンツェルが悲しそうに目を伏せる。
ドロシーも何も言わない。
ユウト「僕だけが生き残った」
ユウトは胸へ手を当てた。
ユウト「それでも……叔父さんが教えてくれた言葉が残ってた」
皆がユウトを見る。
ユウト「大いなる力には、大いなる責任が伴う。」
ユウトは静かに笑う。
ユウト「だから僕は、この力を誰かを守るために使おうと思った」
隣の市街地へ移り住み――10年間。
スパイダーマンとして人々を守り続けた。
そしてラプチャーが襲来。
さらに数年を経て――。
ユウト「みんなに会った」
リリーバイスが優しく笑う。
リリーバイス「そうだったんだね」
ユウト「……うん」
リリーバイス「話してくれてありがとう、ユウトくん」
ユウトも微笑んだ。
ユウト「聞いてくれてありがとう」
少し重くなった空気を変えたのは指揮官だった。
指揮官「しかし……」
ユウト「?」
指揮官「ラプチャーが来る前も10年間戦ってたんだろ?」
ユウト「そうだよ」
指揮官「どんな奴と戦ってたんだ?」
レッドフードも興味を示す。
レッドフード「それ、アタシも聞きたい!」
紅蓮も腕を組む。
紅蓮「私も興味がある」
ユウト「じゃあ……何人か話そうか」
ユウトは思い出す。
ユウト「まず――スコーピオン」
スノーホワイト「蠍?」
ユウト「そう。機械式の巨大な尻尾を装備してた」
レッドフード「あ、それ格好いいな」
ユウト「戦う側は全然格好よくないよ! あの尻尾、すごい勢いで飛んでくるんだから!」
ユウトは身振りを交えて説明する。
ユウト「正面を警戒してたら後ろから尻尾が来るし、尻尾を見てたら本人が殴ってくるし……」
指揮官「なるほど」
指揮官が笑う。
指揮官「面倒な相手だったんだな」
ユウト「すごくね………次は――ライノ」
ユウトが両手を大きく広げる。
ユウト「ものすごく大きい」
リリーバイスが興味を示す。
リリーバイス「強いの?」
ユウト「とにかく突進がすごいんだ」
リリーバイス「へぇ」
ユウト「僕がウェブを何重にも張っても――」
ユウトは両手を広げる。
ユウト「ブチブチブチッ! って全部破ってくる」
リリーバイスが楽しそうに笑う。
リリーバイス「一度戦ってみたかったなぁ」
指揮官が呟く。
指揮官「……似た者同士か」
リリーバイス「指揮官?」
指揮官「何でもない」
前回の教訓を生かしたらしい。
ユウト「次はヴァルチャー」
ラプンツェル「鳥ですか?」
ユウト「巨大な機械翼で空を飛ぶ相手」
ドロシーが少し興味を示す。
ドロシー「空中戦ですね」
ユウト「そう。でも一番嫌だったのは足」
ドロシー「足?」
ユウト「機械の鉤爪が付いててさ」
ユウトは苦笑する。
ユウト「捕まって、そのまま空中で何回も殴られた」
ドロシー「……痛そうですね」
ユウト「痛かったよ……最後はリザード」
紅蓮「蜥蜴か」
ユウト「この人は少し違った」
元々は人間。
だが実験によって巨大な爬虫類のような姿へ変貌した。
ユウト「だから僕は倒すんじゃなくて、元に戻したかった」
スノーホワイト「どうしたんですか?」
ユウト「戦ってる最中に身体の特徴を調べて、それから市街地の研究所にこっそり入って――」
ドロシー「こっそり?」
ドロシーが笑顔で聞き返す。
ユウト「……緊急事態だったので」
ドロシー「続けてください」
ユウト「治療薬を作った」
エイブがこの場にいたら目を輝かせそうな話だった。
ユウト「それをガスにして、リザードに吸わせたんだ」
指揮官「成功したのか?」
指揮官が聞く。
ユウト「うん」
指揮官「……お前、戦うだけじゃないんだな」
ユウト「助けられるなら、助けたいから」
気づけば。
食堂には笑い声が響いていた。
ユウト自身も笑っていた。
ユウト「それでライノがまた壁に突っ込んで――」
レッドフード「またかよ!」
ユウト「本当に止まらないんだって!」
ラプンツェル「ふふっ」
ドロシー「ユウト、それは貴方も無茶をしすぎです」
ユウト「ドロシーまで!?」
その時、ユウトはふと気づく。
――楽しい。
昔。
マックスとオクタビアスと話していた時のような。
いや。
それとはまた違う温かさ。
自分の素顔を知っている。
過去も知っている。
それでも、変わらず隣にいてくれる。
ユウトは皆を見回した。
ユウト(……そっか)
ずっと一人で戦ってきたつもりだった。
でも今は違う。
ユウト(僕……もう一人じゃないんだ)
スノーホワイトがユウトを見る。
スノーホワイト「どうしました?」
ユウト「ううん」
ユウトは笑った。
ユウト「なんでもない」
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別の施設。
一人の少女がテレビを見ていた。
美しい白銀の髪。
そして――澄んだ青い瞳。
シンデレラ。
画面ではニュースが流れている。
『本日もゴッデス部隊がラプチャーを撃破――』
シンデレラは真剣に見ていた。
シンデレラ「ゴッデス……」
彼女にとって「美しさ」は、単なる外見ではない。
強い心。
高潔な意志。
誰かを守ろうとする姿。
それもまた――美しい。
その時。
ニュース映像が切り替わった。
『さらに、ゴッデス部隊と共同で活動している謎のヒーロー――』
画面に映ったのは。
赤と青。
蜘蛛の巣を思わせる装甲。
シンデレラ「――!」
シンデレラが身を乗り出した。
『通称、スパイダーマン――』
シンデレラ「……スパイダーマン」
忘れるはずがない。
かつて市街地で、自分を救ってくれた存在。
鉄パイプしか持っていなかった自分。
ラプチャーの攻撃が迫った瞬間。
飛んできたマンホール。
そして、自分の前へ降り立ったヒーロー。
『困ってる人がいたら助ける。僕にとっては、それが当たり前だから』
あの言葉。
夕日に照らされた姿。
シンデレラ「……やっぱり」
シンデレラの頬が緩む。
シンデレラ「美しい」
扉が開く。
エイブ「シンデレラ」
シンデレラ「……」
返事がない。
エイブ「おい」
シンデレラ「……」
エイブ「シンデレラ」
シンデレラ「何?」
ようやく振り返る。
入ってきたのはエイブだった。
エイブ「何を見ている」
シンデレラ「スパイダーマン」
即答。
エイブ「……そうか」
エイブもテレビを見る。
エイブ「あの男か」
シンデレラが振り返る。
シンデレラ「知ってるの?」
エイブ「ああ」
シンデレラ「…………」
数秒。
シンデレラ「会ったことあるの?」
エイブ「ある」
ガタン!
シンデレラが勢いよく立ち上がった。
シンデレラ「本当に!?」
エイブが少し後ろへ下がる。
エイブ「近い」
シンデレラ「どんな人!?」
エイブ「落ち着け」
シンデレラ「本名は?」
エイブ「それは本人の秘密だ」
シンデレラ「素顔は?」
エイブ「知らない」
シンデレラ「どこに住んでるの?」
エイブ「質問が多い」
シンデレラはテレビへ戻る。
画面ではスパイダーマンがウェブで市民を救助していた。
シンデレラ「……やっぱり素敵」
エイブ「そうか」
シンデレラ「強いだけじゃない」
シンデレラの青い瞳が輝く。
シンデレラ「人を守るために迷わず飛び込める。自分が危険でも関係ない」
エイブ「……」
シンデレラ「そういう心が、一番美しい」
エイブは黙って彼女を見る。
シンデレラ「エイブ」
エイブ「何だ」
シンデレラ「決めた」
エイブ「何をだ?」
シンデレラは胸元で両手を合わせる。
シンデレラ「私、スパイダーマンと結婚する」
エイブ「…………」
エイブが完全に停止した。
エイブ「何?」
シンデレラ「だから、結婚する」
エイブ「まず知り合え」
シンデレラ「知り合う」
エイブ「そういう意味ではない」
シンデレラ「本名も知りたい」
エイブ「本人に聞け」
シンデレラ「素顔も見たい」
エイブ「本人に頼め」
シンデレラ「二人きりで話したい」
エイブ「……好きにしろ」
シンデレラ「それから結婚する」
エイブ「話が飛びすぎだ」
シンデレラは楽しそうに笑った。
シンデレラ「だって――」
テレビ画面へ手を伸ばす。
その向こうで戦っている、名も知らない少年へ。
シンデレラ「私にとって、スパイダーマンは――」
シンデレラの頬が赤くなる。
シンデレラ「運命の王子様だから。」
エイブ「……」
エイブは額を押さえた。
エイブ「重症だな」
シンデレラ「恋ってそういうものじゃない?」
エイブ「私に聞くな」
シンデレラ「じゃあ、今度会わせて」
エイブ「なぜ私が」
シンデレラ「知り合いなんでしょ?」
エイブ「一度協力しただけだ」
シンデレラ「お願い、エイブ」
エイブ「……」
シンデレラ「お願い」
エイブ「…………」
エイブは長い沈黙の末、ため息をついた。
シンデレラ「機会があればな」
シンデレラの顔が一気に明るくなる。
シンデレラ「本当?」
エイブ「期待するな」
シンデレラ「楽しみ」
エイブ「話を聞け」
シンデレラはもうテレビへ戻っていた。
画面の向こうでは、スパイダーマンがラプチャーの攻撃から人々を守っている。
シンデレラは、その姿から目を離せなかった。
シンデレラ「待っててね、スパイダーマン」
小さく呟く。
シンデレラ「いつか絶対――あなたの本当の名前も、仮面の下の顔も知るから」
そして、まだ見ぬ未来を想像して微笑む。
シンデレラ「私の王子様」
この時。
ユウトはもちろん知らなかった。
遠く離れた場所で――
かつて自分が救った少女が、スパイダーマンとの再会を誰よりも強く願い始めていることを。
自分にとってシンデレラは推しです!
ヒロインするなら?パート2
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