見た目は仮面ライダーデモンズだけど親愛なる隣人スパイダーマンでやります   作:hachi hachi

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今回はスパイダーセンスの強化する話です!


15話:危機察知強化

 

 

数日後――勝利の翼号。

 

地上を覆う戦争とは対照的に、艦内には束の間の静けさが流れていた。

 

その廊下を、ラプンツェルが一人で歩いている。

 

ラプンツェル「ユウトさんのお部屋はこちらでしたね」

 

指揮官とリリーバイスから頼まれ、ユウトを呼びに来たのだ。

 

やがて目的の扉の前へ着く。

 

コンコン。

 

ラプンツェル「ユウトさん、いらっしゃいますか?」

 

返事がない。

 

ラプンツェル「……失礼しますね」

 

扉を開ける。

 

ラプンツェル「ユウトさ――」

 

ラプンツェルの言葉が止まった。

 

部屋の隅には見慣れない測定装置。

 

机の上には工具やウェブ液の容器が並び、床には何本もの切断されたウェブが散らばっている。

 

さらに分解された予備のウェブシューター。

 

ラプンツェル「また何か実験を……」

 

だが本人がいない。

 

ラプンツェル「ユウトさん?」

 

キョロキョロ。

 

すると。

 

ユウト「ラプンツェル?」

 

ラプンツェル「ん?」

 

頭上から声がした。

 

ラプンツェルが見上げる。

 

ラプンツェル「……まあ」

 

ユウトがいた。

 

天井に逆さまに張り付いたまま、普通に座るような姿勢でコーヒーを飲んでいた。

 

私服姿。

 

今日はお面も外している。

 

ラプンツェル「おはよう、ラプンツェル」

 

ユウト「……おはようございます」

 

ラプンツェルは数秒考えた。

 

ラプンツェル「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

ユウト「何?」

 

ラプンツェル「その状態で、どうやってコーヒーを飲んでいるのですか?」

 

ユウトはカップを見る。

 

ユウト「これ?」

 

ラプンツェル「はい。普通なら大惨事になると思うのですが……」

 

ユウト「ああ」

 

ユウトは何でもないことのように一口飲んだ。

 

ユウト「何回かやってたら慣れた」

 

ラプンツェル「慣れるものなのですか!?」

 

ユウト「僕の場合はね」

 

ラプンツェル「スパイダーマンというものは奥が深いのですね……」

 

ユウト「たぶんそこはスパイダーマン関係ないと思う」

 

ラプンツェルは床を見る。

 

ラプンツェル「ところで、このウェブは?」

 

ユウト「ああ、それね」

 

ユウトが天井から片手を離し、指差す。

 

ユウト「ウェブの硬度を上げる実験をしてたんだ」

 

ラプンツェル「硬度を?」

 

ユウト「ラプチャー相手だと今までの強度じゃ足りないことがあるから。粘着性を落とさず、引張強度をもっと上げられないかなって」

 

予備のウェブシューターも、それぞれ異なる調整が施されている。

 

ユウト「スノーが改良してくれた機構を基礎にしてる。僕も少しずつ調整してるんだ」

 

ラプンツェル「なるほど……」

 

ラプンツェル「それで」

 

ユウトは首を傾げる。

 

ユウト「ラプンツェルは何しに来たの?」

 

ラプンツェル「あっ」

 

完全に忘れていた。

 

ラプンツェル「指揮官とリリーバイスが呼んでいます」

 

ユウト「……あ」

 

ユウトの顔が引きつる。

 

ユウト「もしかして今日も?」

 

ラプンツェル「訓練だそうです」

 

ユウト「やっぱり……」

 

ユウトはカップを置く。

 

そして天井から手を離した。

 

ヒュッ――。

 

空中で身体を半回転。

 

スタッ。

 

普通に着地する。

 

ユウト「行こうか」

 

ラプンツェル「はい」

 

◆ 廊下

 

二人で訓練所へ向かう。

 

ラプンツェル「…………」

 

ラプンツェルは歩きながら、隣のユウトをちらり。

 

また、ちらり。

 

Tシャツ越しにも分かる、戦闘によって鍛えられた身体。

 

以前拾ってしまった本の内容が、不意に脳裏をよぎる。

 

ラプンツェル「…………!」

 

ラプンツェルの頬が赤くなった。

 

ラプンツェル(いけません……)

 

それでも妄想が勝手に膨らむ。

 

もしユウトに抱き寄せられたら。

 

耳元で名前を呼ばれたら。

 

そのまま――。

 

ラプンツェル「…………えへ」

 

口元が緩む。

 

ユウト「ラプンツェル?」

 

ラプンツェル「…………」

 

ユウト「ラプンツェル?」

 

ラプンツェル「…………ふふ」

 

ユウト「ラプンツェル!」

 

ラプンツェル「は、はいっ!?」

 

ラプンツェルが飛び上がる。

 

ユウト「大丈夫? 顔赤いよ」

 

ラプンツェル「だ、大丈夫です!」

 

ユウト「口元に涎が……」

 

ラプンツェル「――っ!?」

 

慌てて拭く。

 

ラプンツェル「な、何でもありません!」

 

ユウト「熱でもある?」

 

ユウトが顔を近づけようとした瞬間。

 

ラプンツェル「ありません!」

 

ユウト「そ、そう?」

 

その時だった。

 

レッドフード「よぉ、ユウト!」

 

ユウト「ん?」

 

向こうからレッドフードがやってくる。

 

ユウト「レッドフード」

 

レッドフード「今日もリリーと訓練だって?」

 

ユウト「そうみたい」

 

レッドフード「また地面と仲良くなるのか?」

 

ユウト「始まる前から負ける前提やめてくれる?」

 

レッドフード「ははは!」

 

レッドフードはそのままユウトの横へ来ると――。

 

ぎゅっ。

 

ユウト「え?」

 

ユウトの腕へ抱きついた。

 

ユウト「レ、レッドフード!?」

 

腕が彼女の胸元に挟まれ、ユウトの顔が一瞬で赤くなる。

 

レッドフード「おー?」

 

レッドフードがニヤリ。

 

レッドフード「ユウト君、顔赤くないかぁ?」

 

ユウト「近いって!」

 

レッドフード「何が?」

 

ユウト「分かってやってるだろ!」

 

レッドフード「さぁな~?」

 

ラプンツェルの笑顔が固まる。

 

ラプンツェル「…………」

 

ユウト「ラプンツェル?」

 

ラプンツェル「なんでもありませんよ?」

 

笑顔なのに妙な圧を感じる。

 

ユウト「な、なんか怖いんだけど……」

 

◆ 訓練所

 

三人が到着すると、指揮官が待っていた。

 

ユウトの右腕にはレッドフード。

 

左側にはラプンツェル。

 

指揮官がニヤッとする。

 

指揮官「おお、ユウト」

 

ユウト「何?」

 

指揮官「両手に花だな」

 

ユウト「違う!」

 

指揮官「青春だなぁ」

 

ユウト「指揮官!」

 

奥からリリーバイスの声。

 

リリーバイス「指揮官~?」

 

指揮官「はい」

 

指揮官は即座に姿勢を正した。

 

前回の握手が相当効いたらしい。

 

ユウトは整備を終えた新しいスーツを装着する。

 

赤と青を基調にした装甲。

 

蜘蛛の巣を思わせる白いライン。

 

両手首にはスノーホワイトと共同改良したウェブシューター。

 

ユウト「よし」

 

屈伸。

 

肩を回す。

 

軽く跳躍。

 

ユウト「問題なし」

 

紅蓮「ユウト」

 

横から紅蓮が声を掛けた。

 

ユウト「紅蓮?」

 

紅蓮は腕を組んでいる。

 

紅蓮「以前から一つ気になっていた」

 

ユウト「何?」

 

紅蓮「お前は危険が迫る前に察知できるのであろう?」

 

ユウト「うん。危機察知だね」

 

紅蓮「ならば――」

 

紅蓮が訓練場を見る。

 

紅蓮「目に頼らず、それを最大限まで研ぎ澄ませてみてはどうだ?」

 

ユウト「目に頼らない?」

 

紅蓮「見るからこそ、考える」

 

紅蓮は自分の刀へ手を置く。

 

紅蓮「考えるからこそ、僅かに遅れることもある。ならば身体そのものに危険を捉えさせればよい」

 

ユウトは黙る。

 

ユウト「…………」

 

そして頷いた。

 

ユウト「やってみる」

 

 

--------------------------------------------------------------------

 

 

 

向かい合う二人。

 

リリーバイス「今日こそ勝てるかな?」

 

リリーバイスが微笑む。

 

ユウト「できれば僕を地面に埋めない程度でお願いします」

 

リリーバイス「善処するね」

 

ユウト「その返事が一番怖いんだけど」

 

モニタールームでは指揮官たちが見守っている。

 

スノーホワイト。

 

ドロシー。

 

ラプンツェル。

 

レッドフード。

 

紅蓮。

 

そして指揮官。

 

ユウトは構えた。

 

そして――。

 

目を閉じる。

 

スノーホワイトが端末を見て驚く。

 

スノーホワイト「目を閉じました」

 

指揮官も眉をひそめる。

 

指揮官「何をする気だ?」

 

レッドフードがモニターへ顔を近づける。

 

レッドフード「寝てんじゃねぇよな?」

 

紅蓮だけは静かだった。

 

紅蓮「……」

 

ユウトは呼吸を整える。

 

視界を捨てる。

 

音さえ意識の外へ追いやる。

 

残すのは――。

 

危機察知。

 

全身に走る、あの独特の感覚だけ。

 

ピー――!

 

開始ブザー。

 

リリーバイスが消えた。

 

次の瞬間。

 

拳がユウトの顔面へ迫る。

 

数センチ。

 

その瞬間――。

 

ゾワッ!

 

ユウト(――そこ!)

 

ユウトが身体を沈める。

 

ブォン!!

 

拳が頭上を通過。

 

リリーバイス「!」

 

リリーバイスの目が開く。

 

シュッ!

 

左右のウェブシューターから同時発射。

 

両手首へ絡みつく。

 

リリーバイス「これくらい――」

 

リリーバイスが引き千切ろうとする。

 

だが。

 

ユウト(させない!)

 

さらに二射。

 

今度は両足。

 

リリーバイス「!」

 

ユウトが全力でウェブを引く。

 

手足を同時に逆方向へ崩されたリリーバイスの重心が初めて乱れる。

 

リリーバイス「わっ――」

 

ドン!!

 

リリーバイスが倒れた。

 

モニタールームが静まり返る。

 

スノーホワイト「…………え?」

 

スノーホワイトが呟いた。

 

だがユウトは止まらない。

 

目を開く。

 

一気に距離を詰め――。

 

リリーバイスへマウントを取る。

 

右拳を振り上げる。

 

リリーバイス「――っ!」

 

拳を振り下ろした。

 

そして。

 

リリーバイスの顔に当たる――寸前。

 

ピタッ。

 

止まった。

 

リリーバイス「…………」

 

リリーバイスとユウトの視線が合う。

 

モニタールームでは全員が固まっていた。

 

指揮官が我に返る。

 

指揮官「しゅ、終了!!」

 

ブザーが鳴った。

 

ユウトがゆっくり拳を下ろす。

 

ユウト「……勝った?」

 

リリーバイスが瞬きをする。

 

そして。

 

リリーバイス「…………負けちゃった」

 

初めて。

 

スパイダーマンがリリーバイスから一本取った。

 

モニタールームでレッドフードが叫ぶ。

 

レッドフード「マジかよ!!」

 

ドロシーも驚きを隠せない。

 

ドロシー「リリーバイスを……」

 

スノーホワイトの瞳は輝いていた。

 

スノーホワイト「ユウト……すごいです」

 

紅蓮だけが満足そうに僅かに口角を上げる。

 

紅蓮「……そうだ。それでよい」

 

訓練場。

 

ユウトがウェブを解除してリリーバイスへ手を差し出す。

 

ユウト「大丈夫?」

 

リリーバイス「うん」

 

リリーバイスはその手を握って立ち上がった。

 

笑っている。

 

しかし――。

 

頬が少し膨らんでいる。

 

リリーバイス「嬉しいな」

 

ユウト「え?」

 

リリーバイス「ユウトくんがここまで強くなったこと」

 

ユウト「ありがとう」

 

リリーバイス「でも……」

 

笑顔。

 

リリーバイス「ちょっと悔しい」

 

ユウト「……ですよね」

 

リリーバイス「だから次は――」

 

リリーバイスの笑顔がさらに明るくなる。

 

リリーバイス「本気でやろっか?」

 

ユウト「…………」

 

ユウトが硬直する。

 

モニタールームも沈黙。

 

ユウト「いや」

 

ユウトは一歩下がった。

 

ユウト「それは勘弁してください」

 

リリーバイス「遠慮しなくてもいいよ?」

 

ユウト「します!」

 

リリーバイス「大丈夫大丈夫」

 

ユウト「何が!?」

 

リリーバイス「死なない程度にはするから」

 

ユウト「その時点で訓練じゃないよ!」

 

 

 

------------------------------------------------------------------

 

 

 

同じ頃。

 

人類連合軍とV.T.C.が共同で進めていた、新世代ニケ計画。

 

ゴッデス部隊の戦闘データを基礎として開発されたフェアリーテールモデル第2世代。

 

オールドテイルズ部隊。

 

その開発の中心を担ったのが、V.T.C.主席研究員――エイブだった。

 

そして現在。

 

そんな次世代戦力たちは――。

 

シンデレラ「ここ! ここ見て!」

 

戦闘研究ではなく。

 

スパイダーマンの録画映像を鑑賞していた。

 

シンデレラが映像を止める。

 

画面には、市民の前へ着地するスパイダーマン。

 

シンデレラ「この人が私を助けてくれたの」

 

シンデレラはどこか誇らしげだった。

 

まるで自分のことを紹介しているようである。

 

セイレーンが画面へ近づく。

 

セイレーン「あう?」

 

シンデレラ「スパイダーマン」

 

セイレーン「あうあうーあー?」

 

シンデレラ「そう。人間よ」

 

セイレーン「あー……」

 

セイレーンはじっと映像を見る。

 

ウェブで瓦礫を止める。

 

子供を助ける。

 

ラプチャーへ飛びかかる。

 

そして戦闘が終われば、何事もなかったように去っていく。

 

セイレーン「あう……」

 

セイレーンの表情が柔らかくなる。

 

シンデレラ「会ってみたい?」

 

セイレーン「あう!」

 

大きく頷いた。

 

そして興奮したのか――。

 

セイレーン「会ってみた――」

 

セイレーンが自分の口を押さえる。

 

セイレーン「……!」

 

シンデレラが微笑む。

 

シンデレラ「今、喋った」

 

セイレーン「あ、あうあう!」

 

ヘンゼルも映像を見る。

 

ヘンゼル「ヘンゼルはこの人に興味がある」

 

隣のグレーテルを見る。

 

ヘンゼル「グレーテルも興味があると思ってる」

 

グレーテルが頷く。

 

グレーテル「……うん」

 

ヘンゼル「グレーテルが喋った」

 

シンデレラ「そこに驚くの?」

 

シンデレラが尋ねる。

 

ヘンゼルは真顔で答える。

 

ヘンゼル「驚く」

 

少し離れた場所ではレッドシューズが映像を分析していた。

 

レッドシューズ「興味深いですね」

 

画面には、ラプチャーの攻撃を紙一重で回避するユウト。

 

レッドシューズ「ニケではない人間なのでしょう?」

 

シンデレラ「そう聞いてる」

 

シンデレラが答える。

 

レッドシューズ「それなのに、この身体能力……」

 

レッドシューズは映像を巻き戻す。

 

跳躍。

 

壁面走行。

 

空中での姿勢制御。

 

ウェブによる高速移動。

 

さらに拳と蹴りを主体とした近接戦闘。

 

レッドシューズ「筋力だけではありませんね。反射速度も異常なほど高い。それに攻撃される前から回避行動へ入っているように見えます」

 

シンデレラは嬉しそうにする。

 

シンデレラ「美しいでしょ?」

 

レッドシューズ「ええ。戦闘技術として非常に興味深いです」

 

シンデレラ「顔もきっと美しいと思う」

 

レッドシューズ「そこはまだ見ていないのでは?」

 

シンデレラ「絶対美しい」

 

レッドシューズ「ずいぶん信頼しているんですね」

 

シンデレラ「だって私の王子様だもの」

 

レッドシューズが困ったように笑った。

 

その時。

 

扉が開いた。

 

エイブ「お前たち」

 

エイブだった。

 

エイブ「何を――」

 

テレビを見る。

 

スパイダーマン。

 

シンデレラを見る。

 

もう一度テレビ。

 

エイブ「…………」

 

深いため息。

 

エイブ「今日もスパイダーマンの話か」

 

シンデレラ「もちろん」

 

エイブ「もちろん、ではない」

 

ヘンゼルが振り返る。

 

ヘンゼル「エイブも見る?」

 

エイブ「見ない」

 

ヘンゼル「グレーテルは、エイブも本当は見たいと思ってる」

 

グレーテルが頷く。

 

エイブ「勝手に私の気持ちを決めるな」

 

シンデレラが突然言った。

 

シンデレラ「そういえば」

 

嫌な予感。

 

エイブの眉が動く。

 

シンデレラ「エイブはスパイダーマンと会ったことがあるの」

 

エイブ「…………」

 

セイレーン。

 

セイレーン「あ?」

 

ヘンゼル。

 

ヘンゼル「何?」

 

グレーテル。

 

グレーテル「……!」

 

三人の視線が一斉にエイブへ向く。

 

エイブ「シンデレラ」

 

シンデレラ「何?」

 

エイブ「余計なことを言うな」

 

遅かった。

 

セイレーン「あうあうあうー!?」

 

セイレーンが駆け寄る。

 

エイブ「近い」

 

ヘンゼル「エイブ! ヘンゼルは詳しく聞きたいと思ってる! グレーテルも詳しく聞きたいと思ってる!」

 

グレーテルが珍しく自分から尋ねる。

 

グレーテル「どんな人?」

 

ヘンゼル「グレーテルが喋った!」

 

エイブ「今そこはどうでもいい!」

 

完全に囲まれた。

 

エイブが額を押さえる。

 

エイブ「……一度会っただけだ」

 

シンデレラが訂正する。

 

シンデレラ「一緒に装置を作ったんでしょ?」

 

エイブ「少し協力した」

 

レッドシューズ「何の装置?」

 

レッドシューズまで興味を示す。

 

エイブ「侵食の進行を抑制する試作装置だ」

 

セイレーンが目を丸くする。

 

セイレーン「あう……」

 

エイブ「奴が原型を考えていた。私は技術面を補助しただけだ」

 

レッドシューズが感心する。

 

レッドシューズ「戦闘能力だけでなく、技術知識も持っているのですね」

 

エイブ「専門の研究者ではない。だが頭は回る。それに――」

 

エイブが一瞬考える。

 

エイブ「諦めが悪い」

 

シンデレラが嬉しそうに微笑む。

 

シンデレラ「そこも美しい」

 

エイブ「何を言っても結局それか」

 

シンデレラが立ち上がった。

 

シンデレラ「決めた」

 

エイブが露骨に嫌そうな顔をする。

 

エイブ「今度は何だ」

 

シンデレラ「みんなで会いに行く」

 

エイブ「誰に」

 

シンデレラ「スパイダーマン」

 

エイブ「却下だ」

 

シンデレラ「どうして?」

 

エイブ「お前たちは遊びに行くために造られた部隊ではない」

 

ヘンゼルが手を上げる。

 

ヘンゼル「ヘンゼルは会いたいと思ってる」

 

グレーテルを見る。

 

ヘンゼル「グレーテルも会いたいと思ってる」

 

グレーテルが頷く。

 

グレーテル「会いたい」

 

セイレーン「あうあう!」

 

セイレーンも両手を上げる。

 

レッドシューズまで微笑む。

 

レッドシューズ「私も、一度お話ししてみたいですね。特に身体能力については興味があります」

 

エイブが周囲を見る。

 

四方から視線。

 

そして中心には――。

 

期待に満ちた青い瞳のシンデレラ。

 

シンデレラ「エイブ」

 

エイブ「何だ」

 

シンデレラ「会わせて」

 

エイブ「……」

 

シンデレラ「お願い」

 

セイレーン「あう」

 

ヘンゼル「ヘンゼルもお願いする。グレーテルもお願いしてる」

 

レッドシューズ「お願いします、エイブ」

 

エイブ「…………」

 

沈黙。

 

エイブは長く息を吐いた。

 

エイブ「機会があればだ」

 

シンデレラの瞳が輝く。

 

シンデレラ「約束?」

 

エイブ「約束とは言っていない」

 

シンデレラ「じゃあ約束ね」

 

エイブ「話を聞け」

 

シンデレラ「楽しみ」

 

シンデレラは再び画面を見る。

 

スパイダーマンが高層建築の間をウェブで飛び回っている。

 

セイレーンも隣へ座る。

 

セイレーン「あう……!」

 

ヘンゼルとグレーテルも画面を覗き込む。

 

レッドシューズは戦闘データを興味深そうに確認する。

 

エイブだけが、その後ろで頭を抱えていた。

 

エイブ「……どうしてこうなった」

 

そんなエイブをよそに。

 

シンデレラは画面のスパイダーマンへ小さく微笑んだ。

 

シンデレラ「待ってて、私の王子様」

 

彼女の青い瞳には、憧れだけではない明確な恋心が宿っている。

 

シンデレラ「今度は私一人じゃない」

 

シンデレラは仲間たちを見る。

 

シンデレラ「みんなで、あなたに会いに行くから」

 

――この時のユウトはまだ知らない。

 

自分がリリーバイスから初勝利を挙げて喜んでいた、その同じ頃。

 

遠く離れたオールドテイルズでは――

 

シンデレラ一人だけでなく、第2世代の少女たちにまで「スパイダーマンへの興味」が広がり始めていたことを。

 

 




次回はオールドテイルズ部隊と会う話の予定です!

ヒロインするなら?パート2

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