見た目は仮面ライダーデモンズだけど親愛なる隣人スパイダーマンでやります   作:hachi hachi

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お待たせしました!
今回は悲しい話になります(汗)
嫌な気分させたなら申し訳ない(汗)


4話:大いなる責任

放課後、自宅へ帰ると庭の物置小屋の前にベン叔父さんが立っていた。ペンキの缶を抱え、古い刷毛を手にしている。白い髪が夕陽に染まり、皺の刻まれた顔に穏やかな笑みが浮かぶ。

 

ベン「ユウト、手伝ってくれるか」

 

ユウト「うん」

 

ペンキの匂いが鼻をつく。刷毛を動かすたび、古い木肌が白く覆われていく。叔父さんは黙々と作業をしながら、時折、遠くの空を見上げた。

 

ユウト「叔父さん」

 

ユウトは刷毛を止め、意を決して口を開いた。

 

ユウト「もし、僕が……すごい力を手に入れたら、どうすればいい?」

 

叔父さんは手を止めなかった。ただ、刷毛の動きが少しだけ遅くなる。

 

ベン「力か」

 

ユウト「うん。人には到底及ばないような、特別な力」

 

叔父さんはペンキの缶を地面に置き、腰を伸ばした。夕陽が彼の横顔を照らし瞳の奥に、ユウトには計り知れない時間の層が見えた。

 

ベン「力そのものに、善も悪もない…ただ、力を持った人間がそれをどう使うかで、意味が変わる。正しい使い方もあれば間違った使い方もある」

 

ユウト「正しい使い方って?」

 

ベン「誰かを傷つけるためじゃない。自分を誇示するためでもない。……誰かを守るためだ」

 

叔父さんはユウトの目を真っ直ぐに見た。その視線は、少年の内側に芽生えた異質なものを見透かしているようだった。

 

ベン「覚えておけ、ユウト。大いなる力には大いなる責任が伴う」

 

その言葉は、夕暮れの静けさの中に石を落としたように響いた。

ペンキ塗りが終わり母屋へ戻ると、メイ叔母さんが買い物袋を手に玄関に立っていた。

 

メイ「二人とも、お疲れさま。ちょっとスーパーまで付き合ってくれる? 」

 

ユウトは頷き叔父さんと共に車に乗り込んだ。夕闇が街を覆い始め、遠くの街灯がぽつぽつと灯り始める。車内では叔母さんが他愛ない話をしていた。明日の夕食のこと、近所の猫のことユウトの進路のこと。

 

スーパーの駐車場に車を停め三人は店内へ向かった。買い物は短時間で終わった。叔母さんがレジ袋を抱え、叔父さんが重い荷物を持ちユウトが車の鍵を開ける。

 

ふいに爆発は、音より先に光で訪れた。

 

閃光が駐車場を白く塗り潰し次の瞬間、爆風が全てを薙ぎ払う。車が宙に浮きガラスが雨のように降り注ぐ。ユウトの身体は、蜘蛛の力がなければ即死していただろう衝撃を受け、数メートル先の植え込みへ吹き飛ばされた。

意識が遠のく中ユウトは見た。炎の中に、動かなくなった二つの影を。

ベン叔父さんとメイ叔母さんが、燃え盛る車の傍らで重なり合うように倒れていた。

 

ユウト「いや……だ……」

 

声にならない声が喉を灼く。指先が震え地面を掴む。蜘蛛の力が、傷ついた身体を無理やり繋ぎ止めている。意識が何度も途切れそうになりながら、ユウトは炎の中へ這い寄ろうとした。

 

だが、その時。

 

「対象を確保」

 

無機質な声が、頭上から降ってきた。

黒い装甲服に身を包んだ複数の人影が、ユウトを取り囲んでいた。顔はヘルメットで覆われ、感情の欠片も見えない。胸元にはV.T.C.のエンブレムが刻まれている。

 

「蜘蛛の因子、反応値上昇を確認。回収します」

 

ユウト「離せ……っ!」

 

ユウトは抵抗しようとした。だが爆風で傷ついた身体は思うように動かず、蜘蛛の力も意識の混濁の中で制御できない。男たちの一人が注射器を取り出し、ユウトの首筋に針を刺す。

冷たい薬液が血管を巡る。視界が急速に窄まり、炎の音も、遠くのサイレンも全てが水の底に沈むように消えていく。

最後にユウトが覚えているのは、叔父さんの言葉だった。

 

——大いなる力には、大いなる責任が伴う。

 

その責任を果たす前に、自分は何も守れなかった。

 

意識が暗転する。

 

---------------------------------------------------------------------------

 

 

意識は、水底から浮かび上がる泡のようにゆっくりと戻ってきた。

 

最初に感じたのは硬い冷たさだった。背中、腕、脚——身体の至るところが金属に固定されている。指一本動かせない。まぶたを持ち上げると、白い光が網膜を刺した。天井。壁。床。すべてが継ぎ目のない白で、影というものが存在しないかのようだった。

 

白い女性「お目覚めですね」

 

声は、鈴を転がすように澄んでいた。

 

ユウトの正面椅子から数メートル離れた位置に、その女性は立っていた。白いシスターの衣装をまとい、顔の上半分をヴェールで覆っている。ヴェールの下から覗く唇は、静かな微笑みの形に整えられていた。まるで教会の祭壇に立つ聖像のように、彼女は動かなかった。

 

ユウト「ここは……どこだ」

 

声は掠れ、喉が痛んだ。どれだけ眠っていたのか身体の感覚が曖昧で、自分の輪郭が定かでない。

 

白い女性「V.T.C.の研究施設です。表に出る存在ではありません。あなたが私たちのことを知ることは、本来ならばあり得ない」

 

ユウトは記憶を手繰った。駐車場。閃光。炎。倒れた二つの影。

 

ユウト「叔父さんと……叔母さんは……」

 

女性は答えなかった。その沈黙が、すべてを語っていた。

ユウトの喉の奥で、何かが軋む。叫びたいのに声が出ない。涙も出ない。ただ内側で、熱い何かが冷たい何かに置き換わっていく。蜘蛛の力が、傷ついた心臓を無理やり動かし続けている。

 

白い女性「二日前あなたの学校の行事で、研究所の見学しましたね。そこで、あなたは放射性の蜘蛛に噛まれた」

 

ユウトは息を呑んだ。あの時の、手の甲の小さな痛み。誰にも言わなかった。言うほどのことではないと思ったから。

 

白い女性「あの蜘蛛は、ある研究機関が開発していた生物兵器の試作体。放射線耐性と人間の限界を超える身体能力を付与する目的で設計されました。……あなたは、その唯一の成功例です」

 

女性は一歩、近づいた。床に足音がしない。彼女の動きは、影が伸びるように静かだった。

 

ユウト「あなたの体内では、蜘蛛の因子が細胞レベルで融合を進めています。筋力、反射速度感覚、治癒能力——通常の人間の数十倍。そして、おそらくはそれ以上の何かがまだ眠っている」

 

ユウト「だから……何」

 

ユウトの声は震えていた。恐怖ではない。怒りでもない。ただ、全てを失った人間が持つ空洞のような響きだった。

女性は微笑んだ。慈悲深い、母が子に向けるような微笑みだった。

 

白い女性「V.T.C.は、あなたを守ります。そしてあなたを研究します」

 

ユウト「研究……?」

 

白い女性「ええ。あなたが眠っている間、私たちはあなたの身体に処置を施しました。細胞の老化を停止させる処置です。あなたはこれから、生きている限り歳を取らない」

 

ユウトの頭の中で言葉がゆっくりと分解され、理解へと組み立てられていく。不老。生きている間。実験。

 

ユウト「つまり……僕は、ここから出られないのか」

 

白い女性「あなたは、人類の未来のために必要な存在です。V.T.C.は表に出ません。しかし、私たちは人類を守るために存在しています。ラプチャーがいつか必ず来る。その時のために、あなたの力は必要不可欠なのです」

 

彼女は胸の前で指を組み、祈るようにユウトを見つめた。

 

白い女性「私たちは、あなたを大切にします。決して傷つけはしません。ただ、あなたの力を理解し制御し、人類の希望へと変える。それが私たちの使命です」

 

ユウト「希望……?」

 

ユウトは乾いた声で笑った。笑おうとしたが、顔の筋肉がうまく動かなかった。

 

ユウト「僕は……何も守れなかった。叔父さんも、叔母さんも……目の前で」

 

白い女性「だからこそ、です」

 

女性の声は、揺るがなかった。

 

白い女性「失ったものの上に、未来を築く。それが生き残った者の責任です」

 

その言葉が、ユウトの胸の奥深くに突き刺さった。叔父さんの言葉が蘇る。大いなる力には、大いなる責任が伴う。だがその責任を果たす機会は、すでに失われたはずだった。なのにこの女はそれを与えると言うのか。こんな場所で、拘束されたまま。

 

白い女性「あなたに、部屋を用意しました」

 

女性が手を挙げると、白い壁の一部が音もなく消えた。向こう側には、ガラス張りの部屋があった。ベッド机、椅子、本棚。窓のない、しかし生活のための最低限の設備が整えられている。四方の壁と天井が、すべて透明なガラスで覆われていた。

 

白い女性「快適とは言えませんが、不自由はさせません。食事も睡眠も、運動もすべて保証されます。あなたはただ、そこにいてください」

 

固定具が外れる音がした。両腕、両脚が自由になる。ユウトはゆっくりと起き上がった。身体は驚くほど軽い。だが、足元がふらつく。蜘蛛の力がまだ制御できていない。

 

白い女性「私の名は、アンヘルとお呼びください」

 

女性は、初めて名乗った。

 

アンヘル「V.T.C.の一員として、そしてあなたの監視者としてこれから長い時間を共にします。どうぞ、よろしく」

 

ユウトはアンヘルを見た。ヴェールの奥の瞳は、感情を映さない。だがその唇は、ずっと微笑んでいる。

 

彼は何も言わず、ガラス張りの部屋へと歩き出した。一歩また一歩。足音が白い床に吸い込まれていく。部屋の中に入ると、背後で壁が閉じる音がした。振り返るとそこにはもう、アンヘルの姿しか見えなかった。ガラスの向こうで、彼女は静かに手を重ねユウトを見つめている。

 

透明な壁。透明な天井。透明な床。

 

だが、その透明度は自由を意味していなかった。

 

ユウトはベッドに腰を下ろした。手のひらを見つめる。あの日、蜘蛛に噛まれた手の甲。傷跡はもうない。皮膚は滑らかで、まるで何もなかったかのようだ。しかし内側では確かに、異質なものが脈打っている。

 

——大いなる力には、大いなる責任が伴う。

 

叔父さんの声が、頭の中で繰り返される。

 

だが、今のユウトには、力しかなかった。責任を果たす場所も守るべき人も、もうどこにもない。ただこの白い檻の中で、不老の身体だけが残された。

ガラスの向こうで、アンヘルが何かを書き記している。記録。観察。実験。

ユウトは目を閉じた。まぶたの裏に、炎が焼きついている。決して消えないあの夕暮れの光景が。

 

そして、長い長い時間が静かに幕を開けた。




今回はここまで!
次回はスパイダーマンで有名なヴィランの2人がユウトに味方をします!

ヒロインするなら?

  • シンデレラ
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