かぐや様は告らせたい if ~伊井野ミコは勝ち取りたい~   作:つねこう

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※本作は、作成したプロットと原稿をベースに、AIを推敲・校正のアシスタント(壁打ち相手)として使用して文章を整えています。ストーリー展開やキャラクターの解釈は100%作者の妄想です。


◆プロローグ:伊井野ミコは動き出したい

3学期が始まって早くも1か月が経過した、1年で最も寒い、極寒の2月。受験という巨大な嵐が過ぎ去った高校三年生の教室は、自由登校という名目のもと、急速にその熱を失いつつあった。

 

かつては下らない雑談に花を咲かせる生徒や、色恋沙汰に一喜一憂する恋人たちで溢れかえっていた廊下は、今は見る影もなく閑散としている。

 

冬の陽射しは斜めに差し込むだけで、ちっとも床を温めてはくれない。歴史の古い秀知院学園高等部の校舎は、この時期、底冷えという言葉では生ぬるいほどの容赦のない冷気を孕む。人気ひとけの途絶えた廊下は、荘厳な建築様式も手伝って、どこか怪奇映画の舞台めいた不気味ささえ漂わせていた。

 

その冷え切った空間を、一人の小柄な少女が歩いていた。

 

伊井野ミコ。

 

2期連続秀知院学園生徒会長を務め上げた少女である。

 

背筋をピンと伸ばした凛とした佇まいは、小柄ながらも彼女の持つ不屈の意志を周囲に感じさせる。だが、今日に限っては、その白いシューズの足取りが妙に重い。

 

キュッ、キュッと、静まり返った廊下に自分の足音だけが虚しく霧散していく。

 

目指す先は、かつて自分が世界の中心として君臨していた生徒会室だ。自由登校となった自分たち3年生とは違い、当代の役員たちは今、授業の真っ最中。本来の主あるじのいない部屋の、重厚な木製の扉を押し開ける。

 

懐かしい匂いがした。だが、決定的に何かが足りない。

 

ミコは引き寄せられるように、部屋の中央へと歩を進めた。

 

好意があると、自分の心に認めたあの男が、いつもノートPCを広げて気怠げに座っていたソファの一角。彼女は、彼の残滓を求めるように、その特等席へぼつんと身を預けた。

 

「――っ、冷たっ……!」

 

思わず小さな悲鳴が漏れた。深く沈み込んだ身体を包み込んだのは、期待していた彼の肌の温もりなどではなく、冬の空気に晒され続けた本革の、容赦のない拒絶の冷たさだった。

思考の沼に溺れかけていたミコの意識は、その冷気によって一瞬で現実へと引き戻される。

 

現実。

 

それは、数日前に突きつけられた親友たちの言葉だ。

 

小学校からの付き合いである大仏こばちは、いつになく低いトーンでミコを見つめて言った。

 

『ミコちゃん。そろそろ終わりだね。結論出てるの?』

 

冗談めかした雰囲気は一切なかった。こばちのあの静かな眼差しは、これが引き返せない引き金なのだと物語っていた。

 

さらに、同じクラスで生徒会でも一緒の時を過ごした小野寺麗からも、追い打ちをかけるように告げられた。

 

『私は、あんたが後悔して泣いてる姿なんて見たくないから』

 

少し上ずった声。その切れ長の瞳は、今にも零れ落ちそうなほどに潤んでいた。

 

「……わかってる。わかってる、よ」

 

奇しくも同じ日に二人から投げかけられた、鋭いナイフのような言葉。二人が言っている「後悔」とは、決して受験の合否のことではない。人間関係のことだ。

 

石上優。

 

中学校の頃からの同級生だ。高等部の生徒会では、楽しい時間を過ごしながらも、長い時間を共に戦い、泥をすすり合ってきた。誰もが私と彼の関係を「友達以上」だと思っているだろう。

 

かくいう私自身もそうだ。私は間違いなく、彼をひとりの男として意識している。いつからなのか、今さら言葉で説明することなんてできない。

 

かつてこの部屋で、偉大なる先輩たちが命を懸けるように興じていた『恋愛頭脳戦』という名の不毛なチキンゲーム。「早く告白してこい」「これで、相手に告白させられる」――気づけば私も、その傲慢で、愛おしいゲームの盤面に引きずり込まれていたのだ。

 

「はあ……っ」

 

深いため息をつくと、白く濁った息が、甘酸っぱい思い出を冷酷に吹き飛ばした。

 

私たちの進学先は別々だ。このまま卒業の日を迎えてしまえば、私は彼にとって一生『生徒会で一緒だった同級生』というポジションのまま、過去の思い出にされてしまう。

 

「それはだめ……っ!!」

 

感情が爆発し、弾かれたようにソファから立ち上がった。広い生徒会室に、私の叫び声が虚しく反響する。

 

――だめ、だめ、だめ。

 

まるで自分の臆病さをなじるように、残響が耳の奥を刺した。

 

動かないといけない。

 

昔の私なら、たとえ勝ち目のない生徒会選挙であっても、正義を信じて迷わず立候補できたはずなのに。どうして恋となると、こんなにも足がすくんでしまうのだろう。「動く」と心に決めても、脳裏にどうしてもよぎってしまう『もう一人の主役』がいる。

 

残された時間は、指で数えるほどしかない。その事実を突きつけられた瞬間、全身の血が逆流するような焦燥感が私を突き動かした。

 

私はポケットからスマートフォンを取り出すと、震える指先で画面を叩き、自らの退路を容赦なく断ち切り始めた。メッセージを送る相手は、あの人しかいない。画面を見つめる私の瞳に、かつて生徒会長として壇上に立ったときのような、鋭く不屈の光が戻っていた。

 

【子安先輩、ご無沙汰しております。突然のメッセージで申し訳ありません。数日以内に、私とお会いいただけませんか。場所は、秀知院の生徒会室とさせてください。鍵は、私が確保しておきますので】

 

送信ボタンをタップする。画面が切り替わった瞬間、ミコはスマートフォンの画面を胸に抱きしめ、二度と引き返せない一歩を踏み出した。

 

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