「ギーちゃん、ちょっと今日は変じゃない?」
「まぁな、寝不足かも……」
「夜更かししちゃダメなんだからね? お母さんに言うわよ」
「待ってくれ、お前が言うと強制力が強すぎる……無視したのは謝るから見逃してくれ、この通り」
「頭は下げなくても……私もそこまで本気じゃないし良いけど、無視は普通に傷付くから、やめてね? じゃあまた明日」
「また明日……」
レイミとの時間を過ぎた外食を終え、ファミレスの前で別れた、レイミはこれから新しい服を見に行くと言っていた。
俺はその背中を見送りつつ時計を見る、時間は15時を指していた。
「まずは落ち着く所へ行くか」
選んだのはネットが自由に使えるカフェ、俺の通い始める天当院高校が元女学校だった影響で女子人気の高いカフェだが、別に男子一人で居ても恥ずかしくない、というかそれよりも気になることがある。
ループ前の記憶との整合性が取れた影響で今を正確に、そして詳細に把握する必要がある。
魔法少女の有無、どれだけ時間が戻ったのか、そして何が正解なのかを考えないといけない。
ドリンクを注文し、テーブル席に陣取る、そしてスマホを取り出しまず検索するのは……。
『魔法少女 災害 ニュース』
件数 0
……なるほど、魔法少女はまだ居ない、そもそもこの世界線は魔法少女が居ない、存在が完全に秘匿されている、どれかだと当たりをつける。
前は否応なしにニュースとしてその活躍が知れたので、まだ居ないと言うことを前提に考える。
『コキュロス』
件数 0
これは魔法少女の敵だ、一般的に知られた名前じゃないから当然ヒットしなかった、これはついでだ。
これに合わせて巨大な存在の目撃情報や不自然な現象を粗方調べるが、コキュロスはネットにはまだその気配すら見せていない、と言う結果だ。
『今年』
2025年4月1日、15時35分
ご丁寧に現在時刻まで出してくれたが……そうか……これは三年前まで戻ってるな。
三年前と言えば転生者の自覚も前世があることも分かってない時期だ、更にループしたのは記憶だけかと思えば体の方も大人びた三年生らしさがある、成長は据え置きのようで安心……コキュロスから逃げるのに体力は幾らあってもいいからな。
その他、本当にループしたのかを確かめるために覚えている限りのニュース、事件、事故、を検索しても無いものはない、あるものはあると言う結果だった。
若い女性店員が来て、俺が注文したものを持ってきてくれた。
「ご注文のカプチーノです、ではごゆっくりどうぞ」
飲みながら、考える。
思い出すあの光景、コキュロスに滅ぼされていく街、悲壮な顔をしたあの小さなお姉さん……顔は嫌というほど脳裏に刻まれているが、あの時点で見たことがない顔だったな。
あの人はレイミの知り合いだったな、魔法少女繋がりだとしても、友達と紹介するあたり私生活でも会って遊んでいるはずだ。じゃなきゃあんなに…………やめよう、思い出すだけで絶望しそうになる。
これから俺がするべきことは、その小さいお姉さんを探すことか?
見つけて、話をする、ループしたんですけどってな……家も知らないし名前も知らないしな……レイミに言えば教えてくれるだろうけど、いつどのタイミングで知り合うのか、もう知り合ってるのか分かんねぇな……迂闊に変なこと言えばお姉さんに近寄れなくなる、それよりお姉さんが記憶を引き継いでない可能性が高い、俺にループを使うための力を与える時、忘れると言っていたからな、恐らく記憶を引き継がないと言う意味だ。
となると、他の魔法少女に接触したほうがいいか。
あの終わりの日に魔法少女が一人でも多く生きていれば、コキュロスや黒い太陽に対する手段が僅かながらでもあったんじゃないかと思う。
魔法少女のことを、強い女性と言う以外何も知らない、だから知りたい、一体彼女らが何なのか。
レイミと小さいお姉さん以外でとなると、パンクな魔法少女と白いドレスの魔法少女、どちらもあの日に学校で出会ったから、推定天当院学生と言える……いやいや、そうだとしても学年もクラスもわかんねぇわ。
今年のニ年と三年はまだ女学生ばかりでしかもご令嬢と呼ばれて差し支えない人たち、近寄るにも理由が無いと情報を得るどころではない。
仮にどちらも同級生か後輩ならいい、年上なら困る。
手掛かり……は、あるな、キラちゃん、ましろちゃん……誰に聞けば良いんだ、そもそも名前なのか名字なのか。
特にキラちゃんはどっちとも言えそう。
「すいません、カプチーノ一つ」
「承りました」
無くなったから同じ物を注文して、また考える。
柄でもない計画を立ててでも魔法少女にループ前の記憶を伝えなければ。
何万回も助けられなかった末の絶望、後悔を目の当たりにして、世界が終わる瀬戸際を何度も経験した彼女が俺を頼った、俺が希望に見えたんだろう、ならできる範囲で答える、コキュロスを魔法少女たちに全部任せると言う前提でだが。
世界を救うぞと、一人で気合を入れてみる。
「どうぞ、ではごゆっくり」
再び届いたカフェインを飲み込む。
一旦煮詰まった思考をフラットにした、コーヒーうめー……やっぱミルク欲しい。
「今後の方針か……」
俺自体、社会的地位は学生どまり、何か大きな事が出来るわけでもない、しかし行動は大事だ、何か起こせるかもしれない。
何が出来て何をするか、これが重要になってくる。
最終目標をコキュロスの消滅にするとして、必要な計画を練る、ループ物らしく戦略的に行こうじゃないか、俺はこう言うの好きだぜふへへ。
まず何をするかを決めよう、出来ることから考えてたらいつまでもゴール出来ねぇからな。
一つ、コキュロスの消滅条件を知る。
二つ、魔法少女全員の生存。
三つ、あらゆる被害を最小限に抑える最適化された作戦を作る。
必須なのはこの辺か。
で、それぞれの目標のために俺ができること。
1、魔法少女全員が揃った状態で挑んでトライアンドエラーを繰り返す、ゴリ押しループ作戦、2の成功前提。
2、お互いがお互いを守り合う関係にする、トモダチ作戦、成功したらそのパターンを再現し続ける。
3、絶対成功するプランAを考え続ける。
「無理に近い無茶……だ」
魔法少女同士がもう既に友達関係ならこんな事しなくていいけど……交友関係知らないから、まずここから。
まずは、ループする事を信じて魔法少女たちと交流しよう。
把握してる魔法少女はレイミ、名前だけのキラ、ましろ、顔だけの小さいお姉さん、あと顔も名前も知らない魔法少女がひとり。これで5人か……もっと増えてくれねぇか?
100人くらいで戦えばなんとか……魔法少女軍隊……メルヘンさが消し飛ぶな、この想像はやめよう。
「取り敢えずこれで行くか」
明日から魔法少女探し、タイムリミットは3年後でいいか、ループ前提で動く。
友達100人出来るかな、出来なくてもいいから5人は作るぞ、そして願わくば友情パワーでお互い強くなってくれ。
……あ、窓の外からレイミが見えた、なんか黄色いドレス着て……新しい服を買ったんだな……可愛い系がすきなんだねぇ……。
って魔法少女になってんじゃねーか!!!!