世界初の魔法少女の誕生と、人類を脅かす敵コキュロスの登場から1週間後の教室、俺は憂鬱を抱えながら机を上に置いた紙とにらめっこしている。
「部活かぁ……」
4月の頭から色々あったな、そしてそれを乗り越えたどり着いた今日は何の日かといえば、部活決めの日。
入学式が終わった、オリエンテーションも特に真新しいことは何もなく終わった。
なら部活を決めよう、今日一日は授業ではなく部活紹介に当てられている、人数の大小はあるが多種多様な部活がある。
野球、サッカー、華道、茶道、卓球、バスケ、絵画。などなど。
毎年のように部の新設と廃部があると聞いた、そんな余裕どこから出てくるのかといえばここが天当院グループのお膝元であるといえばそれが理由になる。
世界的大企業である天当院グループはただの大富豪じゃなく、未来ある若者に投資を惜しまないみたいだ。
それを表すように大きな校舎の至る所で各部が紹介スペースを持っている、それを好きなように自由に見て回れる、運動部、文化部、新入部員獲得に向けて気合が入っている、そのどれもがクオリティと意欲が高く圧倒された、そのほとんどがお嬢様と言って間違いない女生徒だらけで……お嬢様もピンキリだな。
全部見て回って心惹かれる部活は幾つもあったが、俺は正直部活をする暇がない、キラちゃん、ましろちゃんと言う魔法少女を探し友好的な関係を作る、そして名前が不明な二名の魔法少女も探したい。
俺のやるべきことはいろいろあるのだ、ダラダラしているように見えて忙しい。
とは言え、いつまでも入部届とにらめっこしているわけにもいかない、基本的に部活に所属することが求められているので、入らないって選択肢はない。
悩む、どの部活なら自由時間が多く取れるのかと言う一点で考えていた。
すると教室で隣の席になったレイミが、わざわざ新しい友達との会話を切り上げこちらへやってくる。
「ギーちゃん、部活決めた?」
「え? あ、いやまだだ」
あと1週間の期限があるのに急かす、のではなく単純に聞きたいだけか、彼女の面倒見の良さと言うべきか、お節介焼きなだけと言うか。
掌中でボールペンを遊ばせながら入部届を睨む、レイミはどことなく「そんなに悩む?」と言いたげに眉を寄せた。
彼女はもうバスケ部に入ることを確定させている、さっきまで話してた新しい友達もバスケ部に入ることを決めた生徒たち、確かに小学生、中学生、とバスケ部だ、順当と言える。
「俺はスッパリ決められるタイプじゃないぞ」
「知ってるけど……何が悩むの?」
「そりゃ……」
レイミのように要領がいいなら、登校前、昼休み、放課後と少しの時間で魔法少女行為が出来る。
コキュロスがあの日を境に続々と現れている、週3ペースで時間もバラバラに、討ち漏らしはゼロ。
世間は魔法少女と謎の生命体(?)の戦いに連日沸いている、非日常を望む層は大いに沸き立ち、ネットに存在する悪質なフェイクだと疑る奴らも数日で消えた。
今や魔法少女はなくてはならない英雄だ、世界中が彼女を知りたがっている、だが前の時間軸でもその正体は一切明るみにでていなかった、心配せずとも魔法少女は秘密の少女、と言うことだ。
羨ましい限りだ、本当にそう思う、魔法少女になりたいとは言わないけど……ただループするだけの俺と違って戦う力が備わってる、結局は魔法少女が居ないとコキュロスは倒せない。
そんな事考えてたら、無意識にレイミを見つめていたようで、目線が合わされてそこで俺が見つめていたと気がついた。
「……バスケ部くる?」
「いや、俺は……」
「私と一緒じゃいや?」
「そういう事じゃない」
「幼馴染がなにに悩んでるのかさっぱり分かりません!」
椅子を引っ張っきて俺の隣へと腰を下ろすレイミ、なぜか教室にいた生徒たちから視線が送られてくる、俺宛じゃないな、レイミが見られているような感じがする。
「もしかして……女の子ばっかで気後れしてる?」
「……あっ」
「え、なんで今気が付いたって反応したの?」
「悩みすぎてそのこと忘れてたんだよ……そうだったわ……悩みが増えた」
「アホね」
どうしよ……下手に部活選んだら女子の輪に入れない俺はボッチになりそう、と言うかなる。
既存の部活はほぼ女生徒ばかりだし、今年入った男子生徒が何処に行くかなんて知らない、そもそも今年から始まった共学だから男子が少ない。
魔法少女の追っかけとか調査をしたい、なるべく部活に時間を割きたくない、でも学生である以上学校の意向は無視できない。
で、部活どうしように戻ってくる、と。
「はぁ……」
「部活が嫌なら生徒会とか?」
「それこそ無理」
「そうよね、なんかもう政府よねあそこ」
「うん、なにあれ」
生徒会なんて真っ平御免だ。
それにここが天当院高校だというのが更に拍車をかける、部活を見た通りかなり生徒の意思を反映してくれていると言うのは分かる、前の時間軸でも同じだ。
だからこそ生徒が選び、生徒から選ばれた生徒会は、端的に言って教員と同等の発言力を持つ、持たされていると言っていいかもしれない。
法律以外の校内ルールは生徒会が定めてそれをしっかり運用している、生徒による自治を天当院高校は認めている。
いずれ社会的地位の高い役職に就くことが約束された令嬢たちにとって予行演習も兼ねているのだろう、故に信を勝ち取り選挙に勝ち、生徒会となった生徒は羨望の的だ、同時に責任と義務が発生する。
細々小難しい事をしたくない、俺は生徒会なんて絶対やらないぞ、立候補もしない、ありえない。
「どうしよ」
「またそれね、もういっそ部活作れば?」
「無理だろ、新設するには最低5人、俺にそんな知り合いは居ない」
「私を入れてあと3人よ」
「……は?」
「兼部よ兼部、ここのバスケ部大会レベルじゃないらしいのよ、出れるには出れるみたいだけど、だから少し暇があるの」
お前バスケ部員から殺されるぞ、と言うか部活作る方向で決められてない? 俺の意志は?
あとレイミはなんでやる気なの? 助かるけども、大いに助かるけども。
「はい決まりね、あと1週間で3人集めましょ」
「……だな」
こうなればレイミは止まらない、まぁ、いいだろう、いいさ、俺が創設した部に俺が部長で自由にやらせてもらおう。
「所で何部にする? 何をする部活になる?」
「じゃあ、魔法少女研究とか?」
「…………はぁ、ミーハーね、ま、良いんじゃない? 魔法少女部」
魔法少女部。
えらく端的だか、オカルト部ってわけでもないし、これでもいいか。
「私も探しとくわ、部員、じゃあ1週間後ね」
「ああ、1週間に」
……探すか、魔法少女部に興味ある人。