「部活一緒にやりませんか?」
「いえ、遠慮しておきます」
……だめか。
「部活一緒に……」
「もう決めているので」
ダメか……。
「部活やりませんか?」
「それ、いい」
端的ぃ……。
窓際の主人公席に尻を預けてうつぶせる。
1週間で3人誘うことができれば部活成立、出来なければ既存の部に入部となる。
俺が魔法少女との接触を図るため、コキュロスの情報を得るため、その他ループするまでに必要な情報を集めるために時間が欲しい、授業は出るにしても部活までやってると取りこぼす事がありそうで不安だ。
その為に、部活を作る、理屈はこうだ。きっかけはレイミの「悩むなら新しく作れ」と言う解決法と言うにはストロングスタイルな答えだが。
「なんだよぉもぉ……誰も相手にしてくれないよぉ……」
「はいはい、私の方もさっぱりよ」
残念でもなさそうに報告をするんじゃない、出来なきゃ女子の中に投げ込まれて「あっす……うっす……」って曖昧な反応しながら三年過ごさなきゃならんのだぞ!
少し恨めしくレイミを観る。
「二日目よね、何人に話しかけた?」
「3人……」
「舐めてんの?」
「……そう言うレイミは?」
「サッと数えて50人くらい? 隣のクラス全員に声掛けたから多分合ってる」
「おま……すげぇな」
だからか、だからなのか、教室に入ってこないけどお前のことを見る目が多いのはそのせいか、気が付いてないのが幸いなのか、一体何をしたらそんな人が集まるんだよ、恨まれてる? とんでもない挑発でもした?
俺だって全くの他人との会話くらいは平気だけど、目的があって誘い込むってのは全然ダメ、誘い文句が決まらないし、変に緊張する。
「じゃあまた、成果報告に来るわ……次は2年生かしら」
すごいバイタリティだな……。
レイミが立ち去ると、教室に残された俺へ視線が刺さる、もう慣れたぞ、噂のせいだ。
噂というのは俺が『魔法少女部』なる他人が聞けば耳掃除してから聞き直すレベルの部をやろうとしている、と言う真実に基づく話だ。
別に困ることはないし、これで部活に興味を持ってくれたら万々歳、都合が悪いことと言えば俺は変人に見られているだけ。
ま、どの道ゼロになる、ループするからな。
「俺もめげずに頑張るか……」
この天当院高校の何処かにいるだろうキラちゃんましろちゃんとやらに、出会わないのが怖いな、予想が外れると予定も狂う。
そも、魔法少女って同時多発的に現れたんだっけ? ループしてから記憶が少し曖昧だ、覚える分忘れるのは人間の機能の範疇だけど。
「先のこと考えてても意味ないな、まずは目先の目標を達成しよう」
結論から言うと本日も惨敗でした。
◆
翌日。
午前の授業をなんとなく成り過ごして勧誘とかせずに昼メシ、腹が減っては戦はできぬと申すように腹が減っては勧誘できぬ。
と言うことでレイミの机を引っ張ってきて対面で弁当を食っていた。
レイミは凄い、自分で弁当を作っている、俺は母に丸投げだ、俺の主観で母の方が料理上手だと思ってたがレイミの弁当のクオリティは母に勝る。
よく考えたら日本式の弁当を母に教えたのレイミのお母さんだったな、そりゃ勝てんか……。
他愛のない話をしつつ仲良く弁当を食べていると周囲の視線が刺さる、しかし腹を好かせた男子高生がそんな事気にするものか。
「ねぇギーちゃん、2年の先輩にすっごく綺麗な人がいたの」
「へぇそうなの、どんぐらい?」
「女の私が惚れそうなくらい?」
同性が惚れるくらい美人なの? それなら噂になってても……あ、俺の噂で上書きされてる可能性が……。
じゃあ何もわかんないや、そんなに美人なら一度見に行きたいね、あわよくば友達に……。
「言っとくけど、その人天当院グループのお嬢様よ」
「……は? そっちのほうが凄いじゃん」
「アンタねぇ……」
呆れられた、なんで? 凄いじゃん天当院グループのお嬢様って。
車から薬まで売ってる天当院グループだぞ? 超大金持ちの更に上澄みだぞ? 世界富豪ランキングぶっちぎりの一位だぞ?
「金持ちってだけで見る目変えるようなバカにはなりたくないわね」
ぐ……確かに、それは失礼なことだ。
それはそれとして、昨日は2年へ勧誘に行くと言っていたが……まさか?
「……誘ったのか?」
「ん? もちろんよ、もう一押しあればって感じ、ギーちゃんの宣伝もしてきたよ」
あっけらかんと言うが、俺は目を見開いていた。まるで住む世界が違うような反応をされている、肝っ玉が据わりすぎ。あと俺の宣伝ってなに?
「まぁダメだったけどね、何の部活にも入ってないと思ったんだけど」
「どうしてそれが分かるんだ? と言うか思ったんだ?」
「だって、自然と人が集まるような人気者なのよ? 何処でどんな部活してたって目立つじゃない? そんな動き見たとこなかったからさ」
「ああ、そういう……確かに放課後、そういう動きをみたことがないな」
「ね? そうでしょ?」
魔法少女を探す中で放課後まで残ることがある俺も、レイミの言うように一人に対して人が集まるような動きはなかったな、取り巻きといえばいいか、そう言うのだ。
「ギーちゃん行って誘ってきてよ、あの人が入れば自然と人が集まるわよ」
「そりゃそうだろうけど、そう思うのは俺たち以外もだろ?」
天当院のお嬢様なら誰もがお近づきになりたいはず、本人はそれを自覚して一歩引いてるから部活に入ってないんだろう、原則入部しなければならないが、天当院のお嬢様が言うなら原則は原則でしかない。
「猶予1週間っていうけど実質5日間よ? あと、2日間で3人集められる? ま、2年生になってから設立してもいいのよ? 一年生で作ろうとするからこんなに余裕がないだけなんだから」
「言い出したのお前だろ」
「決められなかったギーちゃんが言う?」
「ごめん!」
「どういたしまして」
あと二日で3人だ、天当院のお嬢様を引き入れるくらいやって見せないと……いやいややっぱ無理だよ、他の子を誘うほうが成功率が高いよ。
「まあ……いいや、何が何でも新部設立を目指すわけじゃないし、できなかったら出来なかったで」
「そう……残念」
「2年で作っても遅くないし、むしろ一年ちょっとの猶予はある」
「……何の?」
「え? あ、あー卒業までね?」
「なるほど」
納得してくれた、良かった。
うっかり漏らした言葉からループしてるとまでは思われないだろうけど、迂闊だった、気を引き締めよう。
じゃあはい、あと二日で、三人集めよーおー!
「ごちそうさまでした……ちょっとトイレ、席直しておいて」
「はいはい」
人使い荒いな、やってやるけど。
さっさと席を元に戻してついでにウェットティッシュで拭いておく、レイミの几帳面さが移ったかな、なんて考えながら。
それが終わってから後の授業で使う教科書なんかを適当に机の上に置いておく。
「さて……ジュース飲みたいな……」
しょっぱめの弁当だった、なら食後はコーラだろうな、コーラはいいぞ遺伝子が喜ぶ、アメリカンジョークだよ。
「あ、天当院様……」
「天当院様って……ホントだ」
「天当院様が来たぞ……」
教室を出ようとした所で、ひそひそと声が聞こえてくる、天当院様、天当院様……って。
天当院さんって様つけられるような娘だったの? 姫様かなにか? 一学生が様つけて呼ぶくらい気品溢れる方なの?
教室の後ろから出てた俺は、反対に前の扉から入ってきたであろう天当院様が気になって、戻る。
皆の視線が集まる方へ視線を滑らせる。
飛び込んできたのは白と錯覚するような白銀の髪、目鼻立ちは精巧な人形のようで、目は紺色だ、スマートでスラリとした体付きはか弱さが連想されるが、同時に庇護欲を沸々と沸かせる、学校の制服が舞踏会のドレスに錯覚するほど本人が輝いていた。
あれが天当院様かぁ……と、野次馬の一人になって見ていると彼女が動く。
「あの、ギーちゃんさん、と言う方はいらっしゃいますか?」
ぎゅるん。首が動く、一斉に俺を見た。
「それ、誰からお聞きに……?」
引き攣った笑顔で、ほとんど意味のない問いを辛うじてひねり出すのが精一杯だった。