【プラターヌ研究所裏 バトルコート】
「よし行くぞコマタナ!」
『ぶっ飛ばしてやるぜ!』
『楽しみだ〜』
コマタナとネオの正面にカゲボウズが浮いて待っている
「野良バトルではあるけど一応合図だけ僕がするよ。…それでは、バトルスタート!」
プラターヌの号令と共にコマタナが走り出しカゲボウズが低空飛行で近づいてくる。浮遊していることや霊であることからコマタナより素早く近づいてゴーストタイプの基本技”おどろかす”を放とうとしている
「コマタナ、騙し討ちだ!」
『了解!』
コマタナが一瞬振りかぶってフェイントを掛ける。カゲボウズがそちらの攻撃に気を取られる間、いつの間にか移動しカゲボウズを斬りつける。
『うわっ!?』
「騙し討ちはあくタイプの技だからゴーストタイプのカゲボウズには抜群だ!もう一回!」
『行くz…あ…がぐ‥!?』
勢いよく騙し討を放とうとした瞬間、コマタナの体に黒いモヤがまとわり付き、技を阻害する
『…騙し討ちが…出せない…!』
「出せない!?まだPPは使い切ってないはずだろ!?」
『へへ〜ばあっ!』
その隙を狙ってカゲボウズが接近し”おどろかす”を放って弾き飛ばす。ダメージ自体は今ひとつだが怯みの確率を引いたことで更にコマタナは動けなくなっている。コマタナが怯んで騙し討ちの態勢を解くと黒いモヤが消え、普通に動けるようになった
『っ…悪い怯んだ…』
「大丈夫。でもなんで騙し討が使えないんだ…?」
そう言ってカゲボウズにもう一度ポケモン図鑑を向けると、ふと特性の欄が目に入る
特性
ふみん
おみとおし
隠れ特性
のろわれボディ
攻撃時、一定確率で数ターンの間相手のその技を封印する
「呪われボディって…隠れ特性!?厄介な特性だ…」
プラターヌ博士がコートの外で納得したように頷く
「なるほど、のろわれボディの発動が運悪く当たったせいで騙し討ちが使えなくなったのか…ネオくん!のろわれボディで封じられた技は数分間戻らない!他の技を使うんだ!」
「わかりました!コマタナ”メタルクロー”だ!攻撃力を上げて殴るしかない!」
『騙し討ちが使えなくなったのは面倒だな…!』
『へへ〜足元注意だよ〜』
コマタナが立ち上がりメタルクローを放とうとすると浮いているカゲボウズの影が伸び、メタルクローと競り合う。”かげうち”だ。そこまでの威力はないがカゲボウズ自身の練度が高く、1つの影から複数の道を伸ばし全方位からコマタナを削っていく
『どわっ!?』
『強いね〜でも力だけじゃ勝てないよ!』
「騙し討ちが使えなくなったせいで有効打がない‥」
『焦るな相棒、俺がなんとか凌ぐからその間に作戦考えとけっ!』
コマタナが地面を滑るように接近してから飛び上がり、全身の刃にメタルクローの光を纏わせカゲボウズのかげうちと斬り合う。
『体中でそれを纏っていつまで持つかなー?』
その通りだ、ポケモンの技はしっかり集中した状態で出している。コマタナは種族の特性上手だけでなく全身の刃で斬撃技を出せるが一部分のみではなく全身となるとかなりエネルギーを消費する。このままでは全方位から削り切られてしまう。その瞬間ネオの脳裏に1つの策が浮かぶ。理論上は問題ない、だが懸念はコマタナの体力が持つかどうか
・・・・・
「コマタナ!地面に潜れ!」
『…そういうことか!』
コマタナは1秒の迷いも疑いもなく身体を回転し地面に潜っていく。懸念など要らなかった。自身の最高の相棒はいつだって思いに応えてくれる。
『潜った所で‥あっ!』
そう、単純なことだ。かげうちは発動したポケモン自身の影を伸ばして利用する。では光なく影が出来ない地中なら?アタリだった。影がそもそも発生せず自身が視認出来ない場所には影は伸ばせず攻撃も届かない。
『影が届かないならこっちで!』
ナイトヘッド。自身のレベルに応じた威力に変化する珍しい技。他のゴースト技と同じくノーマルタイプに効かない欠点こそあれど、他のタイプ相性を無視できる効果も持つ。あくタイプを持つコマタナにはこの場で最も効果的な手段だった。
「ふいうちだ!」
攻撃態勢に入ったカゲボウズに地中から飛び出したコマタナのふいうちアッパーカットが文字通り刺さる。相手が攻撃してくる場合必ず先に攻撃できるふいうちは効果こそ絶大だが外した時の隙も大きい。先ほどまでのかげうちラッシュ中にするには少しリスキーな選択肢だったが今この瞬間、確実に相手が攻撃してくるという状況だからこそ活きる技であった。
『がっ…あたまくらくらする…』
カゲボウズもネオも気づいていなかったがコマタナが防御のために全身で展開したメタルクロー、それはかげうちを弾くと同時に1つ1つに攻撃判定が入っており、知らぬ間にこうげきランクを数段上げていた。故に物理攻撃のふいうちが通常より威力が上がっていたのだ。そして長い攻防の末についにコマタナの体のモヤが晴れる。
「…!コマタナ!騙し討ち!」
『これで終いだッ!!』
『最後まで諦めるかー!』
フィールドの中央でこうげきランクが数段上がったコマタナの”騙し討ち”とふらつきながらも全力で放ったカゲボウズの”ナイトヘッド”が衝突し小さく砂煙が立ち上がる。そして煙が晴れると真っ直ぐにコマタナが立っており、カゲボウズは地面に倒れていた。
「やったー!コマタナよく頑張った!」
『かげうちめっちゃ来たときはどうなるかと思ったが…ネオの作戦が刺さったな。こいつも地面の下には影を伸ばすって発想がなかったんだろ。』
互いに健闘したコマタナとカゲボウズにオレンのみを食べさせる。2匹とも夢中で食べている
『うめー』
『…悔しいけどなんか…なんか楽しかった!』
「そっかそっか…じゃあ…?」
『ネオについていくよ!楽しい旅になりそう!』
カゲボウズの了承も得て、ネオはモンスターボールをこつんとカゲボウズの額に当てる。光線と共にボールに吸い込まれ、カチッという捕獲完了音が鳴った。
「よーし!カゲボウズゲットだ!2人目の仲間!」
『賑やかになるな〜』
そこにプラターヌが研究所内から走ってやってくる。
「ネオ君、カゲボウズに勝利とゲットおめでとう!それでなんだが‥最初の3匹を渡せなかったのはこちらの落ち度だ。だからこれを代わりに渡そうと思ってね。」
プラターヌがネオに手渡したのは薄い紫色の透明な宝石の中に、黒と黄色の遺伝子模様が入っている不思議な石だった。カゲボウズがボールからでて、その力を感じるように見ている
「これって……もしかしてばあちゃん達も持ってたメガストーン!?いいのこんな貴重なもの…しかもこの色って…ジュペッタナイト?」
祖母のサーナイトがペンダントとしてつけていたメガストーンを見たことが何度もあったネオは、類似点からすぐに察する
「良いんだよ。僕の手持ちにはジュペッタがいないし…君がこれからの旅で役立てて、そのデータを図鑑で保存してくれたほうがよっぽど研究資料としてはいい使い方さ。あ、でもメガシンカ自体はシャラシティのマスタータワーでキーストーンを手に入れないと使えないからそれまで大事に持っておいてね。」
ネオは頷いてジュペッタナイトをカバンの中の大事なもの入れに仕舞う。
「はい!色々とありがとうございます博士!」
プラターヌは頷くと真剣な顔になる。
「さて、これから君はトレーナーとして様々なポケモン、様々なトレーナーと出会い…別れ…成長していくだろう。君の冒険は君だけの宝物だ。自分とポケモンの意志で道を選んで…ポケモンと同じように君も進化、さらにはそれを超えたメガシンカを次に会うとき見れる事を楽しみにしているよ。…ここまでが僕の導けるところだ。さあ、唯一無二の冒険を楽しんでおいで!」
プラターヌの激励と共にネオはコマタナ、カゲボウズと走り出す。
「行ってきます博士!また色々連絡しますね〜!」
『色々ありがとなー』
『ネオに会わせてくれてありがと〜!』
1人と2匹の姿が見えなくなり、プラターヌは研究所に戻る。腰のボールからガブリアスが出てきて研究所内を一緒に片付ける。
「…いつになっても新しい子を見送るのは泣きそうになるけど、それを堪えて笑顔でトレーナー達を送って支えるのが僕の仕事だ。さて!3匹を盗んだ犯人を特定しつつ、フィールドワークに行こう。着いてきてくれるかなガブリアス。」
『ガギャア!』
プラターヌはそれを聞いて笑顔で外に出る。どこかネオたちの行った方向を見ながらも、自分の役目を果たすため車のエンジンを動かした。
「さーて目指せポケモンリーグ!仲間集めとバトル経験だ!」
『『おー!』』
少年の旅が始まる。その先に何があるか誰も知らないが、だからこそ人は旅に出るのだろう。
戦闘描写って難しいよね