「数回来たけどやっぱいいところだなこの森は…」
『空気が大分都市部に比べて澄んでるからな。俺達も過ごしやすい』
『ボクは人がいるほうが色々吸えるしいいんだけどね〜』
ネオ達は翌日、プラターヌ博士の研究所があるミアレシティから離れ最初のジムがあるハクダンシティ近くのハクダンの森に来ていた。新しく手持ちに入ったカゲボウズ、その特徴や技を確認するためわざわざ人気が少ないここまで来たのだ。
「じゃあカゲボウズ、おどろかすとかげうち、ナイトヘッド以外で出来る技いくつか出してみて。コマタナに当てても大丈夫だから」
『格闘技じゃないならどんとこい。』
『分かった〜』
そしてカゲボウズは次々技を繰り出していく。
―――相手を火傷状態にすることで物理攻撃の威力を半減させる”おにび”
―――不安になる電子音の様な音波で敵の防御を下げる”いやなおと”
―――状態異常の相手に倍の火力を出せる”たたりめ”
―――ゴーストタイプのカゲボウズの場合自身の体力を削って相手を呪いにかける”のろい”
―――電気の力を貯めて放ち、自身の特攻を高確率で上げる”チャージビーム”
なおおにびを食らった後にチャージビームで火力が上がったたたりめを撃たれたコマタナは数メートルぐらいぶっ飛んで瀕死直前になりかけたので現在オボンのみで回復中だ。
カゲボウズの技構成を確認したネオはうんうんと頷いてカゲボウズに声を掛ける。
「すごい技のバリエーションが豊富だな。コマタナは特殊技を全く覚えてなくて遠距離苦手だったからそっちは今度からカゲボウズに任せられるな…ところでチャージビームは何処で覚えたんだ?自然に覚えるカゲボウズはいないって図鑑に書いてあるんだけど。」
カゲボウズがふよふよと浮きながら嬉しそうに答える。
『研究所の近くに住んでたデデンネに教えてもらったらなんか出来た〜』
「なんか出来た…?」
少し考えて納得する。経験を積んで自然に覚える技がそのポケモンにとって適性が高いということなら、技マシンで覚えられる技も適性は当たり前だがある。そしてポケモンには技教えという技術も存在する。ポケモンが他のポケモンに技を教えて覚えられるというのを人工的に再現したのがわざマシンなら野良で教えてもらって出来ても不思議ではない。実際わざマシンでカゲボウズはチャージビームを覚えることが確認されている。
「なるほどなあ…でも凄くいいコンボじゃないか?特殊技メインのカゲボウズにチャージビームがあるのは…そういえばコマタナ、お前なんか新しい技覚えたとか言ってなかった?」
オボンのみで回復したコマタナがニヤリと笑う
『見せてやろうか?』
地面に刃を突き立てるとコマタナの影が蠢いて黒い爪の様な形状で出てくる。
”シャドークロー” 急所に当たりやすいゴーストタイプの技だ。通常は経験だけで覚えることはないはず。
『こいつとの戦いで死ぬほどかげうち食らったからな。影の動かし方見てたら上手いこと出来たんだよ、まあまだ上手く動かせないけど』
『ボクから学んだんだね〜すごいすごい!』
『ふんっ!』
軽口で話すカゲボウズにコマタナがキッと顔を向け、おぞましい顔をするとカゲボウズの動きが鈍る
『ひえええ…』
「…それってもしかして”こわいかお”か!」
”こわいかお”相手の素早さをがくっと下げるデバフ。素早さがそこそこのカゲボウズやコマタナに取っては相手に追いつくために重要な技となるだろう。
「よっしゃー…コマタナ、後何使えたっけ。ひっかく、メタルクロー、連続斬り、睨みつける…ああ後、タマゴの影響で”ふいうち”も有ったな。」
『”ちょうはつ”忘れてるぞ。爺さんのゲンガーのお古のわざマシンで覚えたやつだから記憶に薄いかもだが』
技の選択肢があることはその中から4つ選んで戦術を組み立てる以上幅が広がって喜ばしいことと同時にトレーナーの力も試される。ネオはノートに技と特性を書き込んで唸っていたがふと顔を上げて2匹に言う。
「―やっぱジムに挑むにはもう一人仲間が欲しいかも。」
バッジなしの1つ目のジム戦の場合はジムリーダー側は手持ち2匹かつ交換禁止。トレーナー側はバトル中の交換に制限がなく手持ちの制限もない。制限がないということは2匹で言ってもルール上問題はないのだがジムリーダーという格上相手とのバトルとなるともう1匹。出来ればタイプの弱点を突けるポケモンが必要だとネオは判断した。
『慎重…というか賢明な考えだろ。だって技構成今確認して虫タイプに弱点突ける技ねえもんな…』
『むしは何が苦手なの〜?』
「ほのおといわとひこうだよ。」
そう、ハクダンジムの虫タイプに弱点を取れる炎・岩・飛行技が1つもない。この状態で挑むのは少し不安がある。ゴースト単タイプのカゲボウズも悪・鋼タイプ複合のコマタナも虫技の受けは等倍で更にメインウェポンのあくタイプの技は虫に今ひとつの効果だった。
「飛行とか炎だと…ヤヤコマとかか?」
『ま、そこまで急いで考えることでもないだろ』
「…そうだね!よし、やることはやったしご飯でも食べに…」
ネオが腰を上げて街に向かおうとした瞬間だった。
ドッカーン!!!
森に似つかわしくない爆音が轟き、ヤヤコマ達が驚いて飛び立つ。爆音と同時に黒煙が上がっていた。
「ッ…何?ポケモンの技か!?」
するとカゲボウズが顔をしかめて轟音の方向を向く
『違うよネオ…あっちの方から恨みとか怒りの感情が流れてきてる…人間の気配だよ。』
「人間…ポケモントレーナー!どうして森であんなことを…」
ネオ達は森のポケモンを助けるため音と煙の方向に走り出す。始まったばかりの旅に純粋な悪意が訪れようとしていた。