万華鏡(カレイドスコープ)   作:山崎五郎

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普通じゃない男/女(ひと)
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「………確か、この辺りに来るはずだけど」

 

 

 百鬼夜行連合学院、その数ある商店街の第七番街。

 指定の学ランにマントと帽子というバンカラな制服を身に纏う“少年”がひとり、何かを探して歩いていた。

 

 少年の名は蒼星(あおぼし)ニシキ。

 この百鬼夜行という学園における生徒会組織、『陰陽部』の部員の一人である。

 

 

 街は活気づき、人々が賑わう百鬼夜行の祭り……『百夜(ももよ)()(はる)()桜花祭(おうかさい)』の日。

 そんなハレの日に何故彼が人探しに歩いているのかと言うと。

 それは一時間ほど前に遡る。

 

 

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

 

 

『シャーレの先生?』

 

『そう。その人をうちの社長が呼んだんだってさ』

 

 

 桜花祭当日、普段より(せわ)しなさを増していた陰陽部本部に掛かってきた一本の電話。

 

 電話の主は木須井(きすい)サスケ。

 桜花祭の実行委員であるお祭り運営委員会の一員である男子生徒であり、ニシキの顔見知りでもある。

 

 

『そういえばニュースとかでもやってたっけ。

 連邦生徒会長と入れ替わりでやって来た大人……』

 

『生徒の頼みならなんでもござれ、がキャッチコピー。

 つい先日もアビドスのゴタゴタを解決に導いたとか何とか』

 

 

 ああ、それも聞き覚えがある。

 なんでもアビドスの生徒に交渉をさせたカイザーコーポレーションの不正を暴いた……だっただろうか。

 その中でトリニティやゲヘナというキヴォトスの名門?校の協力を取り付けたという影響力は、ニシキの耳にも入っていた。

 

 

『で、そんな人に協力を頼んだってことは。

 おたくのシズコ先輩は何か困りごとがあるって訳だな?』

 

『まあ、そういうコト。

 魑魅(すだま)一座の連中が最近騒がしくって、このままじゃせっかくの祭りが台無しだーってさ』

 

 

 魑魅一座。百鬼夜行内に(いく)つか存在する不良生徒の集団、その総称。

 正確に言えばいくつかの分派に分かれているらしいが、そんなことはどうでもいい。

 

 

『───なるほど、先生を呼ぶ理由はなんとなく分かった。

 んで、俺に連絡をよこした理由は?』

 

『………先生って人、百鬼夜行に来るの初めてらしくってさ。

 百鬼夜行(うち)の領内ってただでさえ複雑だし、今は人も多いから迷わないか心配だ……って社長が』

 

『……要するに、お前らの手伝いをしろってことでいいのか?』

 

『文句なら社長に言ってよ、取引の報酬の話も。

 オレだって本当なら、わざわざこんな電話したくなかったって』

 

『─────』

 

 

 ニシキははぁ、と軽く息を吐き、

 

 

『了解。シズコ先輩には「報酬については後でじっくり話を」って伝えといて。

 ……んで、先生はどの辺りに迎えに行けば?』

 

『先生のいるシャーレから早いルートで、百夜堂(うち)に近い入り口ってなると……第七商店街の方かな』

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

(───とまあ、そう頼み込まれて来たはいいものの)

 

 

 改めて周囲を見渡す。

 祭りの熱に当てられ心の逸りを抑えられぬ生徒たち。

 そんな子供たちを微笑ましいと眺めつつ、自らもそれなりに楽しむ大人たち。

 ………目に映るのはそんな人々ばかりで、話に聞いていた“先生”の姿はまるで見当たらない。

 

 

「というか───、この文字通りの祭り騒ぎの中で一人を狙いすまして探せ、なんてそれこそ無茶なんじゃないのか……」

 

 

 思わず愚痴が(こぼ)れる。

 が、そのような事をぼやいてもこの現状は変わらないだろう。

 仕方ない、と割り切って捜索を再開しようとして、

 

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

 

 突然、声をかけられた。

 恐らく二十代ほどの、若い男性。

 シンプルな黒髪に、ヘイロー……が、ない。

 

 キヴォトスの人物なら大概の人にあるものが、この男性には付属していない。

 そして、首から下げられていたのは、連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)を示すシンボルマーク。

 

 

「ちょっと、道を尋ねたいんですが……」

 

 

 ニシキは確信した。

 今眼の前に居る人物こそ、自分の探していた“先生”に他ならない、と。

 

 

「───質問を返すようですが、こちらもお尋ねしても良いでしょうか」

 

「え? は、はい。良いですけど」

 

「……シャーレの“先生”とは、あなたのことで合っていますか」

 

「……うん、その通りです」

 

 

 ほっ、と胸を撫で下ろす。

 渡りに船とはこのことか、と内心ガッツポーズをとった。

 

 

「はじめまして、『陰陽部』の蒼星ニシキと申します。

 この度は、先生のご案内の為に参りました。よろしくお願いします」

 

「おお、凄くしっかりしてる……。

 シャーレの先生です、よろしくねニシキ。あんまり堅苦しくしなくてもいいよ?」

 

「………それで、尋ねたいというのは?

 恐らく目的地は同じだと思いますが…」

 

「あ、うん。えっと、百夜堂って喫茶店なんだけど……」

 

 

「あっ、あっ!危ないですーーっっっ!?」

 

「な──!?」

 

「!?」

 

 

 ───声のする方から、狐耳の少女が急接近してきた。

 凄まじい速度。ニシキは咄嗟に反応し、先生を軽く押しのけた。

 

 

ごんっ

 

 

 ……と、鈍いながら大きめの音が響く。

 少年と少女は、それぞれの頭を押さえながら(うずくま)った。

 もちろん、うめき声も忘れずに。

 

 

「────っつぅ…!

 お前、商店街で咄嗟に止まれない勢いで走るな!」

 

「うう、も、申し訳ありません…あっ!

 そ、そちらのお方も無事でしょうか!?」

 

「う、うん。ニシキが庇ってくれたから…ありがとうね」

 

「………はぁ。

 ほら、立てるか」

 

「あ、はい! ありがとうございます!」

 

 

 

 

「────」

 

 

 差し出された手を、取ろうとして。

 少女は息を呑む。

 目に映る少年以外の情報(すべて)が、世界から消失したかのような錯覚を覚えた。

 

 

「…………」

 

 

 一方で、

 少年もまた、驚きによって静止した。

 それまでハッキリと見ていなかった少女の特異さに、或いは形容し得ぬ何かに目を奪われたから。

 

 

 

 

 ────と、まあ。 これが二人の出会い(はじまり)

 

 なんとも月並みだ、というのは勘弁してほしい。

 物語とはいつだって、こんな普遍的な出会いから始まるものなのだから。

 





蒼星(あおぼし)ニシキ

イメージCV:木◯良平

本作の主人公。男子生徒。
百鬼夜行連合学院一年生。

身長172cm、僅かにクセのある黒髪に露草色の瞳が特徴的な少年。
陰陽部の所属。

一人称は“俺”。
自称、平々凡々な男子生徒。


名前の元ネタは万華鏡の発明者であるデイヴィッド・ブルースター(蒼い星)と、万華鏡の別名である錦眼鏡(にしきめがね)から。



木須井(きすい)サスケ

イメージCV:阿◯上◯平

ニシキの友人。男子生徒。
百鬼夜行連合学院一年生。
お祭り運営委員会所属。

身長168cm、真っ直ぐに伸びた栗色のセミロングヘアに、杏子色の瞳をした少年。

一人称は“オレ”。

名前の元ネタは同委員会のシズコとウミカの『河』和と『ウミ』カより、海と川の境目である汽水(きすい)域からとった。


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