「百夜堂っていえば、あの有名な喫茶店だね」
「百夜堂のイチゴ餡蜜が最高でねぇ…」
「色々美味しいものがあるんだけど、何より最高なのは……」
「「「シズコたんの可愛い笑顔!」」」
「「…………」」
───まず、ここに至るまでの経緯を振り返るとする。
忍者を目指す少女、久田イズナを見送った後。先生と蒼星ニシキは再び百夜堂へ向けて歩き出した。
しかし、その道中。
『そういえばニシキ。百夜堂ってどんな店なの?』
『ん? ……どんな、って言われてもなぁ』
『もし、そこのお二人さん』
『え?』
『ん?』
『今、百夜堂の話をしたかい?』
……その声かけから、聞いてもいないのに百夜堂について語られた。
更に言うと、決まって最後に語られるのは、看板娘の笑顔が素晴らしいだとかそういうこと。
更に更に言うと、
先生とニシキは、そんな話をかれこれ数十回は聞かされていた。
とまあ、そんな事があったものの。
二人は無事、
「お頭ァァ! ようこそいらっしゃいマシタッ!
わざわざシャーレ組からいらっしゃると聞いて、このフィーナ! 心よりお待ちしておりマシタァッッッ!!」
「……………」
「……はい?」
入店した二人を迎え入れたのは、金髪の少女だった。
言葉の節々に何やら任侠的な雰囲気を纏わせたその言葉に、
ニシキは困惑で言葉を失い、先生は素っ頓狂な声を漏らした。
「ちょっとフィーナ!先生が困ってるでしょ!」
「エ、でも…『先生が来たらビックリするくらい盛大にお出迎えを』って、さっき委員長が……」
「ビックリの意味が違うでしょソレ……物理的に脅かしてどーすんの。
失礼しました、先生。百夜堂へようこそいらっしゃいませ」
「はっ!……こ、コホン。
いらっしゃいませ先生!百夜堂へようこそ、にゃんにゃん♡
───あ、それと蒼星くんもいらっしゃいませ」
「にゃんにゃん…?」
「いかにも“物のついで”な挨拶だなオイ……」
入店早々、情報が大渋滞を起こす。
兎にも角にも客らしく着席し、先生たちは話を聞くことにした。
「おっすー、蒼星。
連れてきてくれてサンキュ」
「おう。ま、正直俺が必要だったかは分かんないけどな。
それはそれとして、ちゃんと報酬はいただくんでそのつもりで」
「………社長、そういうことなんでヨロシク」
「何が!?
サスケあんた何私に黙って勝手な契約してくれたのよー!?それも陰陽部の、よりによって蒼星ニシキに!!
よりによって蒼星ニシキにっ!!」
二回言った。
わざわざ強調するように二回言った。
「───あの、ニシキに頼み事するのってそんなにマズイの?」
「んー……ワタシはそういうのは分からないデスね…」
「まーまー、そんな事は関係ないから
んで、社長さん? 先生に何か頼みたいことがあったんじゃねーの?」
「う、ぐ……そうよ河和シズコ、本来の目的を見失うことなかれ……んん゛っ!!」
咳払いをし、改めてシズコは自己紹介と現在の状況を先生に話した。
百鬼夜行とはどのような学園なのか、
「
「被害の話は陰陽部にも届いてる。
まあ……ヘルメット団と似たり寄ったりな連中って言えば分かるか」
「成る程」
「でも、最近のあいつらは明らかにヘンなんです!
昔はそれこそただ暴れたいがままって感じだったのに、やたらと組織だって動いてるみたいで……『桜花祭』を台無しにしようとしてる、とでも言いますか……。
ああもう、本当に何なのよ!今までは何とか私たちだけでも止められる程度だったのに、なんか最近は頻度も数も増えてる気がするし、このまま桜花祭がダメになったら私たちがあちこちから責められるじゃない!たまったもんじゃないわよ!」
「「…………」」
「「…………」」
「───はっ!?
な、な~んちゃって、シズコ怖いです〜」
流石に、それは無理がある。
来客のみならず、部下までも言葉を失ったこの現状はその程度では取り繕えまい。
いっそ素直に認めて頭を下げたほうがまだ潔いというものだ。
「───まあ、そういうわけだからさ。
このままだと、皆が楽しみにしてる祭りが滅茶苦茶になっちゃうんです。力を貸してください、先生」
「フィーナからもお願いしマス!
この通りデスっっ!!」
「だからフィーナはそんな大げさにしなくていいから!
……お願いします!」
「うん、良いよ」
「「軽っ!!」」
「本当デスか!?」
「うん。生徒が困ってるなら、先生としては放っとけないからね!」
「いや、あの!
その、助けてもらえるのは嬉しいですけど!
……本当に、いいんです?」
「もちろん!」
「……ありがとうございます!!」
先生の堂々とした答えに、
シズコの暗く重い雰囲気は明るいものへと変わり、
フィーナは先程以上にハイテンションで喜び、
サスケも驚きながらも密かに喜びを握り拳で表していた。
……唯一、
ニシキだけは、厳しい表情を浮かべたまま。
先生を見つめていた。
高評価、感想お待ちしています。