万華鏡(カレイドスコープ)   作:山崎五郎

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今回から本編そのまんまの部分は改変したり、ナレーションベースで省略したりします。
原作を知りたくなったら原作をやろうぜ!と言うわけです。
予めご了承ください。


-6

 

 

 駆けつけた先には、天狗面やおかめ面の少女たち。

 またしても、そこには魑魅一座の姿があった。

 

 そして当然、それを止めようとするシズコと先生の姿も。

 

 

「───やっべ」

 

「ちょっ蒼星!なんで隠れるの!?」

 

「さっき色々あったんだよ。

 あ、俺がいることは絶対言うなよな」

 

「えー!?」

 

 

 文句を垂れるカエデを振り切り、ニシキは手近な建物の影に身を隠す。

 当然、魑魅(すだま)一座の姿を視認でき、尚且つ修行部や先生たちの居る方向(・・・・・・・・・・・・・)から外れることも忘れずに。

 

 懐にしまい込んであった銃を取り出し、弾丸を込める。

 買おうと思えば買える程度の手頃な品だし威力も期待はできないが、撹乱程度には使えるだろう。

 一応専用に改造(チューン)された愛銃もあるにはあるが、アレはこのような戦闘(・・・・・・・)には不向きだ。

 

 

 戦場を見れば、カエデを先頭に修行部の面々が何やら名乗りを上げている。

 それに気を取られている魑魅一座の一人に狙いを定めて、引金を───

 

 

 

「ぐはっ!? な、何だ!?どこから飛んできた!?」

 

「えっ!?あいつらの攻撃か!?」

 

「いや、なんか方向が違うような……」

 

 

 

 撃ち込まれた弾丸に驚き、魑魅一座(れんちゅう)の動きが止まる。

 その隙に、建物の影から影へと移動し、再び弾丸を撃ち込んでやる。

 

 

 

「うわっ!? ま、また!?」

 

「こ、今度は違うとこから…!?

 くそっ、こうなったら全方位に攻撃を…!」

 

「バカ!そんな事したら味方も巻き込んじゃうだろ!?」

 

 

「──スキありー!! ツバキ先輩、ミモリ先輩、行くよ!」

 

「うん〜…」

 

「は、はい!」

 

 

 

 混乱の隙を、カエデは見逃さない。

 修行部の攻撃に便乗するカタチで、先生のバックアップを受けたシズコも攻撃を開始した。

 

 こちらの撹乱策の成功を確信し、思わず口角が上がる。

 だが、こちらも攻め手を止めるつもりはない。直ぐに攻撃を再開───

 

 

 

ごんっ

 

 

 ……しようとしたその時、何かに衝突した。

 鈍いながら大きめの音が頭内に響き、ニシキは思わず頭を押さえ蹲る。

 

 

「───って、ぇ………!!

 悪い、大丈夫か……」

 

「は、ハイ、こちらこそ申し訳ないです───」

 

 

 

 

 ───差し出した手が、思わず止まる。

 

 よりにもよって、そこには、

 ニシキ(じぶん)が今最も会いたくなかった少女(イズナ)が居たのだから。

 

 

「────」

 

「あ、ニシキ殿!

 ……あのっ」

 

「───ッッ!!」

 

 

 身体が、逃走を選択した。

 意識的にか無意識的にかは知らないし、知る必要もないだろう。

 とにかく少年は、引き止める少女の声に聞こえないふりをして、脱兎の如く駆けていった。

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

「ニシキ殿!待ってくださーい!!」

 

「?」

 

 

 裏路地の方から声が聞こえた。

 つい先程聞いたばかりの、聞き覚えしかない声。

 戦場で今も大立ち回りをしているシズコと修行部の面々を見るに、その声は自分の耳にしか届いていないらしい。

 

 されど、未だ我戦場に在り。

 自分の役割を投げ出すわけには行かない。

 

 せめて早めに事を片付け、その後に彼女を探そう…。

 そう決意を固め、先生は生徒たちの指揮を再開するのであった。

 

 

 

 

 決着はあっという間だった。

 最初の謎の攻撃が思いの外効いていたらしい。当然肉体的ではなく、精神的な意味で。

 

 

「いやー、楽勝だったね!」

 

「今までは苦戦続きでしたが、今回はとても戦いやすかったですね……先生の指揮のおかげでしょうか?」

 

「んー、それもあるけど、やっぱ蒼星の……」

 

「……蒼星?」

 

 

 先生の呟きに、カエデは咄嗟に口元を押さえる。

 だが、そんな事をすれば『言ってはいけないことを言った』と自ら証明するようなものである。

 

 

「カエデ、ニシキに会ったの?

 今どこに居るとか、良かったら教えてくれないかな?」

 

「いや、ええっと、そのお……」

 

 

 しどろもどろな口調に、泳ぎっぱなしの目。

 何かを隠していることは素人にも丸わかり。

 

 

「……先生、実は…」

 

 

 後輩の姿を見るに見かねてか、或いは単純な親切心からか。

 ミモリが真実を打ち明けようとしたその時、

 

 

 

「イズナ流忍法!四方八方もくもくの術!」

 

 

 その声の後、

 炸裂音と爆発、それに伴って煙幕が一帯を包む。

 

 

「ゲホ、ゲホッ……今の声は」

 

「イズナ、再び参上です!!」

 

「やっぱり……」

 

 

 案の定、現れたのはイズナ。

 自分の耳は案外まだまだ衰えていないのかもしれない…などと、先生は思ってみたりする。

 

 

「やはり、ですか……つまり先生も、イズナと再び出会うことを分かっていたのですね!」

 

「えっと、まあ……うん」

 

 

 そういうことにしておこう、というやつである。

 どういう目的(つもり)で現れたのかは知らないが、何にせよこちらにとっても好都合なのは違いない。

 

 

「ちょうど良かったよ。私もイズナと話したいことがあったんだ」

 

「へっ? 話したいこと…?」

 

「うん、だから……今のうちに、ちょっと移動しようか」

 

 

 イズナの手をとり、煙に紛れて駆け出す。

 文字通りの強引な手だが、こうでもしなければ話を聞いてくれるかどうか分からない。

 まずは裏路地へと駆け込み、その後はしばらく走ってどこかの通りにでも抜け出よう……あ、あとシズコたちへの連絡も忘れずに。

 

 そんなこんなで、先生とイズナは戦場から逃げ出したのだった。

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

「ゲホッ……やっと煙が収まってきた…魑魅一座は!?」

 

「みんな居ない!逃げられたー!」

 

「あの煙の直前の声、確かあのイズナって娘の声よね……まさか本当に魑魅一座の味方だなんて……何考えてるの…?

 命令がどうとか言ってたけど、やっぱり裏で糸を引いてる奴が……」

 

「あ、あの……」

 

「? なに、ミモリ?」

 

「ええっと……先生は、どこでしょうか?」

 

 

「─────」

 

 

 周囲を見回す。

 先程まで自分たちの指揮をしてくれていた大人の姿が、今はどこにもない。

 

 

「───まさか、連れ去られたーー!?」

 

 

 シズコの叫びが一帯に響き渡る。

 もし今の間に魑魅一座に連れ去られでもしたなら一大事、何をされるか分かったものではない。

 それだけではない、重要人物の(そば)にいながらみすみす連れ去らせたとあれば自分の背負う責任は間違いなく軽くはないだろう。

 シズコの背筋は絶対零度、悪寒と冷たい汗は全身から止めどなく走り溢れる。

 

 

 ブーッ、ブーッ

 

 

 

「ん、着信……!?

 

 ──先生から!?」

 

 

 

 唐突に入った迷い人からの着信に、ひとまず悪寒は消えた。

 慌ててSNS(モモトーク)の画面を開き、その内容を確認する。

 

 

 

「……………」

 

「し、シズコちゃん?

 その、先生はなんと?」

 

「……………」

 

 

 黙って画面を見ろ、と言わんばかりに携帯が向けられる。

 そこには、

 

 

『ちょっとイズナと話したいことがあるので、いったん離れます。

 私は無事だし、ちゃんと作戦があるから心配しないで!』

 

 

 と、書かれていた。

 

 

 

「………心配するに決まってるでしょうがーーーっ!!

 

何考えてるのよ、先生ーーーっっ!!!」

 

 

 ………シズコの怒りは大音声になって、一帯に響き渡った。

 

 






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