昼行燈の女神は微笑む 作:匿名
「ほら、ヨル兄おきて!!」
窓から緩やかな日差しが部屋の隅を照らす。
顔まで毛布を深く被り、寝息が静かに聞こえる部屋に、大きな声が響く。
「…後5分…」
「昨日もそう言って15時まで寝てたじゃん!」
ていうかなんでいつも22時には寝てるのにそんなに寝れるの!?と栗色の髪の毛の少女が毛布越しのその人物を両手で叩くように起こす。
毛布を無理やり引き剥がそうとし、寝ている人物は弱々しい抵抗をするが、抵抗は虚しく容赦なく毛布は剥がされてしまった。
そこには、
亜麻色の長髪。
白磁を彷彿とさせる細やかな肌。
うっすらと開く瞼。
亜麻色の長いまつ毛の間から、クーケンフルーツを思わせる瞳がのぞく。
まさに、女神が眠っているようだった。
「…返せ…○すぞ…」
まるで物騒な言葉を口にした。
そんな言葉を口にした女神のような少女…否、ヨルと呼ばれた少年の頭を叩きながら少女は起こす。
「返さないわよ!ほっといたら一週間も寝るんだから、そのうち死んじゃうよ!」
そういいながら、上半身を羽交締めのように抱えながらベッドから引き摺り下ろす。
その際に服がズレ、日焼けとは無縁のお腹や膝が見え隠れするのを必死に見ないようにしながら、椅子になんとか着席させる。
うーん…といまだに眠気まなこなヨルを、少女…ライザリン・シュタウトが「髪の毛整えてあげるからちゃんと起きて!」と叱咤する。
「昼ごはんにしてももう遅いよ、どうするの!」
「…しらん…腹減ってない…俺はまだねれる…」
「もう起きてるでしょ!」
「目を開けてるだけだ。四捨五入すると寝ている…」
「どういう理屈よ!」
時刻は昼過ぎ。
すでに日もてっぺんを超えたあたりだが、どうにかして今日こそこのアホの兄貴分を
「今日こそ一緒に来てもらうからね!レント、入ってきて!」
その言葉と共に、おうよ!と元気に赤い短髪が目立つ、ガタイのいい青年ーーーレント・マルスリンクが入ってくる。
「ヨル兄も頑固だよなぁー。おら、さっさとライザの部屋に行くぞ!」
そういいながら俵を持つように肩に担がれる。
少女のような見た目のヨルが、ガタイのよいレントに連行される様は、事件現場にしか見えないほどだ。
なすすべなくレント、ライザに連行されるヨルは、家を出され、日向に呻き声をあげるが、2人は気にせずにライザ部屋ーーシュタウト家と連れてかれる。
「いやー、やっぱレントを連れてきて正解ね!一昨日は気付けば家に向かう最中に撒かれるし、昨日は手を掴んでたのにいつのまにか枝とすり替わってたし…」
「さーーあついたぞヨル兄。この集会に顔出すのは何日ぶりだー?」
まるでヨルを廃材か何かのように床に投げ捨てるレントと、しみじみと昨日の出来事を思い出すライザ。
ドンっと音が鳴るような勢いで落とされ、ヨルは白い指をレントに向けながら呟く。
「お前の性癖が俺にばれた時、覚悟しとけよ……。」
せいぜいお前の性癖を暴くために、行動を起こさないことを祈れや…。と、萎びた声でレントに抗議していた。
「まったく、ヨル兄さんとレントは顔を出して早々なにをしてるの…」
そういいながら、先に椅子に座っていたメガネをかけた小柄な少年ーーータオ・モンガルテンが呆れながらヨルに向き直る。
「人を俵か廃材みたいに扱ってくれたな、お前ら…。許さないからな……タオ。」
「なんで僕!?」
「……ふふっ」
ライザが笑う。
そんな二人を見ながら、レントは呆れたようにため息をついた。