昼行燈の女神は微笑む   作:匿名

10 / 20
10話

「ふーん、じゃあ今日は島の外から商人がくるんだ」

 

港へと続く道を、三人で歩きながら話す。

 

「あぁ、それのせいか、いつもより護り手が多かったぞ。」と、レントが答える。

 

そうして足を進めると、程なくしてクーケン港へと辿り着いた。

 

 

 

「ーーー到着!」

 

日陰のない道を歩き、うっすらと汗をかいた三人が港にたどり着く。

潮風の匂いを感じながら、港の市場を一望する。

 

「うわぁ、護り手がほんとに多いね。……これだけ多いならヨル兄さんだし、話を聞いていけばすぐに見つかるんじゃない?」

 

「うーん、アガーテ姉さんと話した後、少し探したけど見当たらなかったんだよなぁ……」

 

「……たしかに、ヨル兄さんって普段は目立つのにこういう時に限って見つからないよね」

 

そこで、ライザがちっちっち、と指を振りながらなぜか自信ありげな表情で話し始める。

 

「ヨル兄だよ?隠れてるんじゃなくてこうーーー」

 

「日差しから隠れて、どこか日光が入らないところで寝てる!とか!」そう言いながら路地、荷物の山、果ては船の中まで調べようとするライザ。

 

「……あれ、意外と見つからないね……?」

 

まるでこれしか答えはない、とばかりに調べていたライザが、腕を組んで首を傾げる。

その耳に、ふと漁師の会話が聞こえる。

 

「ーーーあぁ、だから対岸の島に行くんなら、もしあったらでいいから持って帰ってきてくれんか?」

 

「ーーー流された小舟、ですか。わかりました!」

 

「ーーーなかったら気にしなくていいからよ!すまねーな!」

 

 

「……」

 

三人が無言で、顔を見合わせる。

 

「……まさか、な」

 

「いやいや、ヨル兄さんだからってさすがに……」

 

「……でも、もしその小舟にヨル兄が乗ってたとしたら?」

 

思わず、その言葉に市場の賑やかさを忘れるほどの静寂が3人に訪れる。

 

「……島の外から今日、商人が来るんだよね。」

 

ライザが何やら考え込むように目を瞑る。

レントとタオは知っている。

こういう時のライザは、ろくなことを言い出さないと。

 

「よ、よしタオ。俺たちはもう少し港でーーー」

 

「これって冒険のチャンスじゃない?」

 

にやり、と笑うライザにガッチリと服を掴まれたレント、タオが諦めのため息をついた。

 

「……こういうところ、ヨル兄さんにそっくりだよね」

 

「……あぁ」

 

どこまでも自分のやりたいことを押し通すところだけは、妙にあの兄貴分と似ている。

 

「この似た者同士め……」

 

 

 

 

「とはいってもよ。こうも護り手が港にいちゃあ、船も拝借できなくねーか?」

 

市場の端から、船着場を眺めるレントが溢す。

 

事実、なんらかの確認作業のためか港の船着場には常に7、8人は忙しなく動いているのが見える。

 

「うーん……あ!そうだ!」

 

「ふっふっふ、あたしに任せなさい!」そう言いながら、レントとタオがライザに引っ張られる。

 

そして、場所はラーゼン地区シュタウト家の裏手にある、七色葡萄の森を抜けた先。

 

寂れた船着場まで連れて来られた。

 

「へぇ……こんなところにも船着場ってあんだな……」

 

「というより、漁師さんが昔使ってた沖釣り用の船だと思うけどね、これ……」

 

「ふふん。実は今朝、見つけたんだ〜!」

 

タオが、使い古された船を見ながら零す。

しかしそんな2人の哀愁などいざ知らず、ライザが高らかに宣言する。

 

「この船を使って!ヨル兄を探しに冒険にいくよ!」

 

「過去一壮大なヨル兄探しじゃねえか?これ。」

 

「過去一くだらない冒険でもあるかもね……」

 

目をキラキラと輝かせながら乗り込むライザと、はぁ…とため息をつきながら、乗り込むレントとタオ。

 

3人の足跡が、波に消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人が日差しを浴び、波に揺られながら対岸の島に近づく。

 

「ほんとに上陸する気なの……?」

 

「往生際が悪いぜ、タオ。」

 

ノリノリのライザを尻目に、弱音を吐くタオを、船を操舵するレントが諦めろ、と諭す。

味方はもういないのか……。と肩を落としていたタオが、ふとあるものに気がついた。

 

「……!二人とも!あの岩近くの砂浜を見て!」

 

「お?ありゃあ…」

 

「やっぱり!ヨル兄のことだから船で寝てると思ったのよね!」

 

「そうと決まればあの砂浜から上陸だ!」とライザが手を上げレントに指示を送る。

レントは呆れながらも、「はいはいわかってるよ」と船を砂浜に着けた。

 

船からはうっすらとサンダルの足跡が伸びており、その痕跡を見たライザが腕を組みながら目を細める。

 

「ふーーむ。この厚手の布の中で寝たら案外涼しくて熟睡、目が覚めた頃にはこの対岸の砂浜に!っていったところかな?」

 

「名探偵気取りか?ライザ……」

 

「地味にあってそうなのが怖いね……」

 

「そして、とりあえずよくわからないままあの森の入り口まで歩いて行った、と……。」

 

「それじゃ早速、足跡を追って冒険だー!」とライザが飛び跳ねる。

 

レントは、「初の冒険が手のかかる兄貴分の捜索か……と呆れを出し、タオに関してはすでに腹を括るしかない現状に遠い目をしていた。

(誰でもいい。なんならヨル兄さんでもいいから僕を助けて……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。