昼行燈の女神は微笑む 作:匿名
白く輝く砂浜から続く、小さめの足跡を辿る。
ふらふらと続くヨルの軌跡は、森の入り口ーーー小妖精の森へと続いていた。
「うし、覚悟はいいか?タオ」
「うう、よくなくても行くしかないんだろ~……」
「そりゃそうよ!ヨル兄も探さないとだし、捕獲した後は冒険だってあるしね!」
「すごいな、タオ。いま平然と捕獲って言ったぞ」
深く青い空を背に、うっすらとした木漏れ日が綺麗な森へと一歩、踏み込む。
足を進めるごとに、砂浜の不安定な足場から、しっかりとした土の地面へ変わっていく。
「見た感じはただの森……だな。」
「まあ、村の人たちが勝手にそう呼んでるだけだし……って、うん?」
レントとタオが歩きながら話していると、ふと横の草むらから物音がする。
なんだ……?注視していると、青くぷにぷにとした弾力のある体の魔物……通称青ぷにが飛び出してくる。
「わっ!ま、魔物……!?」
「タオ、ライザ、構えろっ!」
「う、うん!」
驚くタオやライザにすぐさま指示を出し、レントが前に出て剣を構える。
ーーーが、当の青ぷには、「ぷに?」と一瞬こちらを見ただけで通りすぎていく。
その様子を眺めながら、「初の冒険がヨル兄探しで、初の魔物との対面がこれか……」と肩を落とすレントに、タオが「まあまあ」、と慰める。
そんな様子の二人を尻目に、ライザが森の奥に目を向ける。
「……?」
「?どうしたの?ライザ」
「いや……気のせいかな?今何か聞こえた気が……」
ライザの言葉に、タオとレントも耳を澄ます。
「ーーーーー!」
「!いま、なにか……!」
その瞬間、森の奥から二つの人影が飛び出す。
片や金髪の少女。片や亜麻色の、少女ーーーではなく、冒険の発端。ヨルだった。
「どこまで追ってきやがるあの化石燃料!」
「化石燃料ってなにー!?」
「……へ!?ヨル兄ーーー」
唐突に飛び出してきたヨルと見知らぬ少女に驚きと喜びが同時に湧き出す、その瞬間。
ライザの目には、ヨルが少女の手をつかんでいる光景が目に入る。
「……ヨルちゃん?」
「……ん?なんでお前たちいるんだ?いや、どうでもいい助けるなら助けろ!!!!」
その言葉と同時に、ヨルの背後から妖精のような魔物が現れた。
「おわ!?ヨル兄、何引き連れて走ってんだ!?」
「また失礼なことでも言って喧嘩売ったんじゃないの?」
驚くレントと呆れるタオの後ろに滑り込むように隠れる。
その様子をライザはジト目で眺めていた。
「バカいえ魔物に失礼さが伝わるわけないだろ!!初手からバカにしっぱなしだ!!!」
「……ヨルは、普段からあんな態度なの……?」
「ほっとけ!」
なんとか安全地帯に滑り込み、肩で息をするヨルと、それを心配する少女。
そこでライザがハッとして「レント、タオ!とりあえずあいつやるよ!」と声を張り上げる
「……」
「ヨル兄、もうライザを怒らせるのはやめとけよ。」
「……うん、僕もその方がいいと思うな。」
勝負は一瞬で決着した。
タオが遠距離で牽制し、隙をついてレントが押さえ込む。
その後は一方的な展開となり、ライザの怒涛のコーリングスターが魔物をどつきまくり、最後はレントの袈裟斬りで決着していた。
ヨルが澄ました顔で腕を組みながらクラウディアに溢す。
「俺何かしたか?」
「うーん……」
クラウディアが頬に手を当てながら、困ったように笑っていた。
ふうー。と息をついたライザがふとヨルに顔を向けつかつかと詰め寄る。
「心配したよ!もう!」
「ああ、お前らなら心配してくれると思ってたよ。」
鼻先寸前、というレベルで詰め寄るライザに、微動だにせずヨルが答える。
思わず詰め寄ったライザが顔を赤らめて目を泳がせた。
「……うぅ」
「すごいなタオ。こいつ顔の良さだけで乗り切る気だぞ。」
「神様はもう少し内面にも手を加えるべきだったと思うんだよね。」
もはやよく見る光景とばかりに呆れながら流すレントとタオが、「そういえば」と話を続ける。
「なあヨル兄。今更だけどその人は誰だ?」
「知らん。この先の広場で音楽を奏でーーー「わぁ!ご、ごめんヨル!!……コホン。私はクラウディア・バレンツです」
話しかけてたヨルの言葉を焦って遮りながら、自己紹介をするクラウディア。
「旅の商人をしてるお父さんについてきたの」と続ける。
その後は調子を取り戻したライザが、「私はライザリン・シュタウト。ライザでいいよ。」と名乗りながら雑にタオとレント。そしてアホの兄貴分もついでに紹介する。
「雑だなー……」
「まるで俺が置物みたいな紹介だったぞ。」
「まあ残当だろ。」
横暴だ、もっとしっかりと紹介すべきだー。と後ろで拳を振り上げながら抗議をするポーズを取るヨルを尻目に、ライザがクラウディアに話しかける。
「旅の商人ってことは……噂の村にやってくるって言う?」
「あ、うん。……さっきは助けてくれてありがとう。ついさっきヨルとも出会ったんだけど、魔物に襲われて……。多分みんな知り合い、だよね?」
「あぁー。まあ、そうだな。腐れ縁ってやつだな。」
(……ついさっき出会ったばかりだったんだ。)
再び思い出したように、どこ吹く風といった表情のヨルをジト目で眺める。
その様子を尻目に、タオが口を開いた。
「ま、まあまあ。とりあえずそれなら船着場に戻らない?クラウディアのお父さんもきっと心配してるよ」
「あぁ、たしかにそうだな。俺たちもヨル兄探しのついでの冒険だったしな。」
メインも捕獲したことだし、帰ろうぜ。と当たり前のようにレントがヨルを俵のように持ち上げる。
「……なんで俺を抱えるんだよ、レント」
「逃げないようにだよ。すぐにふらっとするだろー。」
「はい!わがまま言わない!もう帰るよ、ヨル兄!」
そう言いながら、通りざまにヨルの亜麻色の頭にチョップを入れながら歩く。
「ぐえー。」と、わざとらしくうめくヨルを尻目に、ライザの後を4人が追った。