昼行燈の女神は微笑む 作:匿名
船着場を目指し、5人は歩いていた。
木漏れ日が、レントの肩で頬に肘をついてるヨルの髪の毛をうっすらと輝かせる。
「そういや、ヨル兄はどう言う経緯でここにきてたんだ?」
「そうだな、答えは湖を泳ぐ魚さんに聞くのが懸命だな。きっと丁寧に答えてくれると思うぞ。」
「これ寝てただけでしょ絶対。」
「うん……迷子だと思う。」
「ひどい冗談だな。」
手をぶらぶらと垂れ下げ、レントに揺らされるヨル。
その様子を見ながらタオ、クラウディアが話しかけていた。
「いい加減変なとこで寝る癖、直した方がいいんじゃないか?」
「そうそう、どうせならライザの部屋で寝たらいいんじゃない?」
「なんであたしの部屋!?」
「え?だって昔よく寝てたんだしょ?一緒に。」
ミオさんやベリルさんから聞いてるよ?とタオが目を丸くしながら答える。
わたわたと顔を赤くしながらライザは焦っているが、「まあ……今回みたいなのになるくらいならあたしの部屋の方が……」と溢すように呟く。
そこでヨルが目をキリッとさせ、顔を上げた。
「いいけど条件がある。」
「そっちが条件出すことってあるんだ」
「俺が寝る時はベットから出てってくれ」
「ちょっと面の皮が厚すぎるな。」
「ここに置いて行った方がいいんじゃない?」
「顔以外が有害すぎるね……」
無言でむくれたライザに頭を再度チョップされ、撃沈される。
そこで、ふふ。っとクラウディアが微笑む。
思わずヨル以外の全員から視線が集まり、少し慌てながら話し出す。
「あ、ちがうよ!?なんだかほんとの兄弟みたいな掛け合いでおもしろくって、つい……」
笑っちゃった……。と顔を赤らめながら下を向く。
その様子を見たレントが「まーもう8年くらいだもんな、ヨル兄とは」と相槌を打つ。
「ライザに関したらもっとでしょ?」
「あぁ、もう5、6年になるな。」
「ヨル兄は黙ってな?」
「ちょっとまって!」
船着場を目指して歩く中、タオがみんなを制止する。
タオの視線の向こうには、ヨルが引き連れてきた魔物とは、見るからに違う手強い雰囲気の魔物が二匹。
こちらを睨め付ける。
「……レント。降ろせ」
ふと、レントの肩に担がれることに慣れ、船を漕いでいたヨルが声をかける。
「……おう。」
ゆっくりと降ろされるものの、ヨルはその場から動かずに四足の魔物と対峙する。
「おい、ヨル兄。戦えねぇだろ。俺の後ろに……」
「いい。」
「どうせお前らがやられたら俺も終わりだから、いい。」そう言いながら、微動だにせず魔物と睨み合いを続ける。
が、もう一匹四足の魔物がその静寂を破り、飛びかかる。
「ヨル兄!」
レントが飛びかかってきた魔物の前に立ち、上から剣を振り下ろすが、鈍い音があたりに響くのみだった。
「くっ、避けろヨル兄!」
「レント!」
「コーリングスター!」
タオとライザが急いでカバーに入るがそれを避け、ヨルに迫る。
白い首筋に、いま魔物の牙が迫るーーー
「ヨルちゃん!!」
「ーーーお前は何をしているんだ」
食い込む寸前に、魔物の体に赤い線が入る。
魔物は、一回だけ唸り声をあげ力なくその場に臥した。
「……え?」
唐突な出来事に、気の抜けたような声を誰かが出した。
そして、静寂を切り裂くもう一つの声が森に響く。
「お前たち、目を瞑れ」
刹那、ヨルの目に小さなタルかなにかが映る。
ギュッと、目を瞑るその瞬間。
大きな爆発音と共に衝撃が地面を震わせた。
「自殺願望でもあるのか?小僧」
「まったく、私たちが通らなければどうするつもりだったんだ?」
その硝煙の向こうから、若い男女の声が聞こえる。
モノクルをかけた銀髪の男が、静かな声音でヨルを諭す。
「お前さん……勇気と蛮勇は違うぞ。」
ヨルの亜麻色の髪が、硝煙とともに揺れる。
小柄な背中を眺めながらも、ライザは目の前で起きた爆発に目を輝かせていたーーー