昼行燈の女神は微笑む 作:匿名
青空の下。
乾いた木剣がカン、カンとぶつかる音が響く。
「ほっ!」
「ふんっ。」
2人の剣士ーーーーーボオスとレントが、目まぐるしく打ち合っていた。
乾いた日差しに照らされる2人を、木陰から眺める寝そべった人影が、一つーーーー
「……」
力強い一撃を狙うレントと、その一撃を捌くボオス。
切磋琢磨する2人を尻目に、ヨルが仰向けに寝返る。
「終わったら声かけろ……。置いていくなよ……」
「オラァッ!」
「グッ……!」
ボオスがレントの強打を捌けず、わずかに木剣の構えがズレる。
レントが、その隙を見逃さず大振りな横薙ぎでボオスに膝をつかせる。
「ハァ……ハァ……」
「ハァ……よし、今日の手合わせはこんなもんでいいだろ?ボオス」
「クッ……お前、リラとか言う女に師事してから、動きが明らかに変わったな……」
「……まぁな。今のままじゃあ、不足だったからな」
「……ふん。」
どこか遠い目をしているレントに、ボオスが鼻を鳴らし、一度深呼吸をして立ち上がる。
膝についた土を叩き落としながら、「おいヨル!寝るな!」と叫ぶ。
「……あぁー。もう終わったのか?早いな。」
「むしろなんで最初から寝ないんだよ」
「木剣の音がやかましくてな。……もっと静かに打ち合え……」
「悠々と眺めてるだけな割にはわがままな野郎だな、お前は」
呆れながら見下ろすレントとボオスを、ヨルが欠伸をしつつ見上げる。
「クァ……。ボオス、俺を連れて飯にいけ……。腹が減った。」
「こいつはここに置いていくがそれでいいな?レント」
「そうだな。」
「優しくねー弟分だな……」
ゆっくりと起き上がるヨルに、憎まれ口を叩きながらボオスが手を差し出す。
その手をマジマジと眺め、赤い瞳で、上目遣いにボオスを見つめる。
「土で汚れてるな……逆の手を差し出せ。」
「シバくぞテメェ……」
そういうと、ボオスが強引にヨルの首根っこを掴み、レントに押し付ける。
「おいおい、結局俺が担ぐのかよ。」
「お前の肩は硬いな。肩だけに。待て、下ろそうとすんなレント」
「ハァ……。おい、くだらねえことやってないでさっさと飯に行くぞ。」
「……で、なんでここでご飯を食べてるんだい……?」
ボーデン地区にある売店。
ライザたちも顔馴染みの雑貨屋。
フレッサの店先の端にヨル、ボオス、レントが腰掛けながら飯を食べていた。
ペロッと、親指についたソースを舐め取りながら、ヨルが話す。
「この前、顔をまた出せっていってただろ。」
「そうはいってたけど、売人としては、こう、さ……!」
「やめとけフレッサ。このバカは顔にしか栄養がいってない。」
「ヨル兄がそんな気配りできるわけないだろ?」
とほほ……と肩を落としたフレッサに「俺の顔が見れて満足か?ちゃんと見ろよ?」とヨルが戯れる。
昼下がりの日差しを避けるように、3人が軒下で体を休めていた。
「レント、それ美味しそうだな。一口よこせ。」
「えぇー、仕方ねーな。そっちもよこせよ。」
「おいレント、ヨルを甘やかすな」
呆れるボオスを無視し、レントから半ば奪ったサンドイッチを頬張るヨル。
ため息をつきながら、ボオスがレントに話しかける。
「……それで?リラとか言う女にどんなふうに鍛えられてんだ?」
「……お前、気になるのか?想像を絶する鍛錬とストレッチの繰り返しだぜ……」
「思い出すだけで……身震いが……」と顔を青ざめるレントに、「何をいってんだ、お前は……」とボオスがため息をついた。
「結局俺の飯全部食いやがったな、ヨル兄」
「美味かったぞ。」
呆れるレントに、ヨルが悪戯に笑いかける。
「そんな顔しても許さん」と言いながら亜麻色の頭を拳でぐりぐりとする。
「いてえ、やめろ。」とヨルが手を払いのけ「デカくなりやがって……」と零し、立ち上がる。
「お前ら午後も手合わせすんのか?」
「いや、俺はリラさん……師匠から言われてる鍛錬があるからよ。」
「俺も親父の手伝いがある。」
「ヨルはそこら辺で寝とけよ?」とにやりと笑いながら言うボオスに、「やかましい」とデコピンをかます。
「まあせいぜい俺を守れるくらい強くなってくれよ、ガキ共。」
そう続け、フレッサの店を後にした。
「結局何も買っていかなかったな、ヨルくん……」